規制

臨床研究法の見直しに係る各論点について(令和3年10月20日)

目次

1.特定臨床研究で得られた情報の薬事申請における利活用について

現在の取組み

  • 特定臨床研究で得られたデータを薬事申請に活用するには、治験と同程度の 信頼性が確保されていることを申請者が確認していることが前提。
  • 現在、一部変更申請を予定している個別品目をパイロット的に取り上げ、企業と厚労省・ PMDAにおいて、特定臨床研究で得られた既存データを活用して承認申請を行う場合の信頼性確保等について協議を行っているところ。
  • 具体的には 、薬事申請への活用に向け、申請における試験 の位置づけに応じたデータの信頼性が確保されているかどうかを確認すべく、まず以下を初めとした基本的な事項を精査中 。
    • 申請者が、試験の品質管理・品質保証プロセスを根拠資料に基づき確認・点検できること
    • 申請者が、詳細な解析データにアクセスし、申請資料を作成することができることなど
  • これらの検討・精査が終わった後、得られた知見 等を基に、特定臨床研究で得られたデータを薬事申請に活用する場合の要件、留意点等を取りまとめて公表することを予定している。

2.研究資金等の提供に関する情報公表の範囲の見直しについて

課題として挙げられている論点

製薬企業等が医薬品等の臨床研究に対して資金提供を行う際の情報公表の対象範囲について、現在法に基づく公表の対象外とされている 情報提供関連費や接遇費等を公表の対象とすべきか 。

これまでの議論(3/17 臨床研究部会資料2の要約)

  • 法33条の目的は、製薬企業等が自社製品にかかわる臨床研究を行う医師・医療機関に対して行う資金提供の状況を透明化することで、臨床研究の不正を防止し、国民の臨床研究に対する信頼性を確保することにある。
  • 情報提供関連費及び接遇費については、臨床研究を実施する特定の医療関係者等に、必要実費の範囲を超えて直接支払われる性質のものではなく、当該 費用提供が臨床研究の不正につながる蓋然性は低いと考えられることから、研究資金や寄附金等と異なり、法第33条に基づく公表の対象にはしていないところ。
  • 法制定時の附帯決議の要請についての検討においては、まず、製薬企業等における情報提供関連費及び接遇費の実態や、業界自主ガイドラインに基づく公表の状況等について施行後の状況を調査し、その結果を踏まえて臨床研究部会で議論すべきではないか。

企業活動における外部研究者等への資金提供に係る情報公表等に関する調査を実施

調査対象等

  • 調査対象:医薬品、医療機器、再生医療等製品の製造販売業者
    ※調査に際しては、日本 製薬団体 連合会 (日薬連 、日本医療機器産業連合会(医機連)構成団体(臨床研究法との関連性の比較的薄い団体を 除く)の会員企業に対し、両連合会経由で調査票を送付
  • 調査 業務受託者:慶應義塾大学 前田正一教授
  • 調査期間 :令和3年8月 16 日~9月 10 日
  • 回答数:日本製薬団体連合会会員企業 115 社、日本医療機器産業連合会会員企業

※93 社 両連合会の会員企業の重複を含む

主な調査論点

  1. 業界 団体の透明性ガイドライン等に 基づく情報公表状況
  2. 情報提供関連費及び接遇費の基準策定の状況
  3. 処方誘導や研究不正等の防止に向けた取組状況
※留意点
  • 回答率の概算:日薬連約3割(製薬協 10 割)、医機連約1割回答率は研究開発指向型の製薬企業団体である製薬協の会員企業で高く、日薬連のその他の製薬企業団体や医機連会員団体の会員企業で低い。
  • 今回回答率が低かった団体には、 異業種企業なども含め多くの企業が参加。
  • また、今回の調査で回答があった企業の中では、特定臨床研究に係る研究資金の提供の有無について、無と答えた割合が製薬協会員企業に比べて高く 、業種の性質上、特定臨床研究に係る資金提供に馴染みのない企業も多く含まれていると考えられる。

(参考)今回の調査において、「特定年度において、臨床研究に対して研究資金等を提供したことがあるか」との質問に対し、「提供したことがない」と答えた割合

  • 製薬協会員:23.0%
  • 日薬連団体会員・製薬協非会員:63.4%
  • 医機連団体会員・日薬連団体非会員:65.7%

調査結果の概要

①業界団体の透明性ガイドライン等に基づく情報公表状況

  • 日本製薬工業協会(製薬協)、医機連若しくはその他 業界団体の透明性ガイドライン又は業界団体によるガイドラインの内容を踏まえた自社ルールに基づき情報公開を行っている企業は、日薬連・医機連ともに9割前後 であった。

②情報提供関連費及び接遇費の基準策定の状況

  • 情報提供関連費及び接遇等費用については、基本的に、日薬連・医機連ともに9割以上の企業が実際の支払い額と費用の根拠を照合し確認を行っている。
  • 費目により差があるものの、 日薬連企業のうち約72%~約94%、医機連企業のうち約68%~約86%が、各社の基準や規定に照らして、拠出について事前承認を行っている 。
  • 日薬連・医機連ともに、 9割近くの企業が資金提供に係るコンプライアンス推進のための社内規定を 設けている 。
  • 説明会費や接遇等費用については、 日薬連では約8割、医機連では7割前後の企業が、標準的な支払金額等の社内基準を定めている 。また、その基準については公正競争基準を考慮して設定したものとなっている場合が多い。
  • 一方で、 講演会等会合費(会場代等)や文献提供費については、統一的な支払基準設定が難しいこと、実費としていること、支払いの発生頻度が少ないこと等の理由により、標準的な支払金額を定めている企業が比較的少ない。

③処方誘導や研究不正等の防止に向けた取組状況

処方誘導や研究不正等の防止に向けた取組として、

  • 公正競争規約についての社員教育 を行っている企業は、日薬連会員企業・医機連 会員企業ともに9割近く
  • 内部通報窓口を設置し、通報を受けた場合の対応手順の整理 を行っている企業は、 日薬連会員企業で約84%、医機連会員企業で約74%
  • 利益相反の管理を行うための組織体制整備 を行っている企業は、日薬連会員企業 ・医機連会員企業ともに約7割

情報公表の範囲の見直しに係る方向性(案)

調査結果を踏まえて

【公表範囲を検討するにあたっての考え方 】
  • 法33条の目的は 、臨床 研究の不正を防止し、国民の臨床研究に対する信頼性を確保することにあり、 法令で規制される事項は、この法目的を達成するために真に必要な事項に限られるべき である。
  • 法創設時、情報提供関連費及び接遇費については、臨床研究を実施する特定の医療関係者等に、必要実費の範囲を超えて直接支払われる性質のものではなく、 当該費用提供が臨床研究の不正につながる蓋然性は低いと考えられることから、研究資金や寄附金等と異なり、法第33条に基づく公表の対象にはしなかった。
  • 平成26年に法の制定に向けてまとめられた「臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会」報告書においては、「自由な研究環境を確保しつつ法規制による研究の萎縮防止のためには、法規制と研究者等の自助努力・法規制以外の対応方策とのバランスが重要」とされていることを踏まえると、 情報公表の範囲の在り方については、製薬企業等の自助努力や法規制以外の対応 方法等とのバランスを考慮して検討を行う必要がある 。
【調査結果 】
  • 多くの企業において、 情報提供関連費及び接遇費について、実際の支払い額と費用の根拠の照合により、必要実費の範囲を超えた拠出となっていないかの確認を行っている 。
  • あわせて、コンプライアンスに係る社内規定や、統一的な基準を設定することができる費目については 公正競争規約に基づく標準的な支払金額に関する基準を設け、これらの規定・基準等に照らして拠出について事前承認を行っている場合が多い。
  • さらに、コンプライアンスに係る社員教育の実施、内部通報窓口の設置・対応手順の整備及び利益相反管理を行うための組織体制の整備等、処方誘導や研究不正等を排除するための取組が行われている 。
  • 現状、日薬連では約94%、医機連では約86%の企業が、業界の透明性ガイドライン等に基づいた情報公表を行っている 。

法創設当時の考え方を変更し、更なる法規制を行う必要性は小さいと考えられることから、臨床研究法に基づく情報公表範囲の拡大は不要ではないか。

3.医療機器に関する臨床研究法の適用範囲について

現状

  • 未承認・適応外の医療機器を用いた臨床研究は一律に特定臨床研究の対象となっている。
  • 「適応外」は、承認、認証又は届出に係る使用方法、効果及び性能と異なる使用方法等で用いる場合のことを指す。
  • 臨床研究法に規定する臨床研究に該当するか否か判断できるように、 Q&A や事例集を示している。

これまでの主な御意見

  • 医療機器については、医薬品と異なり非侵襲・低侵襲なものが存在するが、これらを特定臨床研究の対象とするのは過剰な規制ではないか。
  • 臨床研究法の「医薬品等の使用」の解釈においては「医行為に該当するもの」を行うこととされているが、現行の通知等では「医行為」の解釈が困難な上に、特に医療機器の研究において「医行為」に該当するかどうか判断がしづらく、研究の萎縮を生じさせているのではないか。
  • 薬機法や医療機器規制国際整合化会合(GHTF においては、リスクに応じたクラス分類に基づき規制の内容 を規定しており、臨床 研究法においても医療機器毎のリスクに基づき取り扱うべきではないか。
  • 既存の製品の改善・改良を臨床現場で評価する場合も、未承認医療機器として特定臨床研究に該当すると判断されると、手続の負担や資金の観点から実施が困難となる場合がある。
  • 特に、工学系研究者に対する特定臨床研究の範囲等に関するルールの周知が不十分なため、本来は該当しないものまで特定臨床研究とされているのではないか。
  • 必ずしも全てのAROやCRBが医療機器の開発に詳しいわけではないことから、特定臨床研究に該当するとの判断が過大になされているケースがあるのではないか。
  • 医療機器の臨床試験の海外における取扱いを確認した上で、国際整合性にも配慮したあり方を考える必要があるのではないか。

医療機器に関する検討の方向性(案)

クラス分類と薬機法における医療機器の考え方

  • 医療機器規制国際整合化会合(GHTF)は「クラス分類」という考え方を示しており、医療機器 については 、人体に与えるリスクの程度に応じて、4つのクラスに分類されている(クラスⅠ-Ⅳ)。
  • 日本においても、国際整合性の観点から同様の考え方を採用しており、薬機法において、一般医療機器、管理医療機器 、高度 管理医療機器が定義されている(それぞれクラスⅠ、Ⅱ、Ⅲ及びⅣに相当)。
  • 薬機法上 、医療機器については 、使用方法等を特定し適正な使用目的に従い適正に使用されることを前提に承認等を受けており、その前提に基づき、一般医療機器、管理医療機器、高度管理医療機器のいずれに該当するかが判断されている。
  • よって、 一般医療機器については 、適正な使用目的に従い適正に使用される場合において、一般医療機器に分類されており、その範囲から逸脱して(=適応外)使用する場合においても、不変的に一般医療機器に分類されるわけではない(管理医療機器、高度管理医療機器についても同様) 。

検討の方向性

適応外の医療機器の臨床研究において、当該医療機器が既に許認可を受けた際に分類されたリスク分類と同程度のリスクとみなせる場合について、医療機器の多様性も考慮し、研究の実態等を調査した上で、当該調査結果に基づき方策を検討してはどうか。

<参考>令和3年度厚生労働科学特別研究事業
  • 研究課題名:臨床研究法が医療機器開発研究に与えた影響の実態把握に向けた調査研究
  • 研究代表者:京都大学 黒田 知宏(日本生体医工学会 理事)
  • 研究内容:生体医工学会に所属する工学系研究者(1300 人程度)及び製造販売業者等の医療機器開発に関わる企業( 4000 社程度)を対象としたアンケート調査を実施し、調査対象者が臨床研究法への該当性判断に迷った事例を収集する。最終的には、集積した事例を特定臨床研究に該当する事例、特定臨床研究以外の臨床研究に該当する事例、臨床研究に該当しない事例に分類し、事例集として公表することを目指す。

4.重大な不適合の取扱いについて

現状・課題

  • 特定臨床研究実施時の不適合については、臨床研究法施行規則第15条に基づき対応がとられている。
  • 一方で、生命科学・医学系研究指針においては、重大な不適合が発生した場合は、公表することが定められており、両者の取扱いに不整合があるのではないかとの指摘があった。

関係条文

(不適合の管理)

規則第15条 研究責任医師は、臨床研究がこの省令又は研究計画書に適合していない状態(以下「不適合」という。)であると知ったときは、速やかに、実施医療機関の管理者に報告しなければならない 。

3 研究責任医師は、第一項の不適合であって、特に重大なものが判明した場合においては、速やかに認定臨床研究審査委員会の意見を聴かなければならない 。

5 研究代表医師は、第一項(前項の規定により読み替えて準用する場合を含む。)の規定により多施設共同研究が不適合であることを知ったときはその旨を、速やかに他の研究責任医師に情報提供しなければならない。

〔通知 〕(5)省令第 10 条第4項関係

研究責任医師は、対象者に配慮し、研究分担医師や当該臨床研究に従事する者による規則及び研究計画書の遵守を図るとともに、臨床研究の進捗管理や監督、疾病等や不適合の把握及び報告並びに当該臨床研究に従事する者に対する適時な情報共有を行うこと。また、疾病等や重大な不適合が発生した場合は、再発防止策を講じ、研究分担医師や当該臨床研究に従事する者に周知するとともに、再発防止の徹底を図ること。

〔人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針 〕

研究機関の長は、当該研究機関が実施している又は過去に実施した研究について、この指針に適合していないことを知った場合(1⑵若しくは⑶又は2⑵若しくは⑶の規定による報告を含む。)には、速やかに倫理審査委員会の意見を聴き、必要な対応を行うとともに、不適合の程度が重大であるときは、その対応の状況・結果を厚生労働大臣(文部科学省の所管する研究機関にあっては文部科学大臣及び厚生労働大臣。経済産業省の所管する研究機関にあっては厚生労働大臣及び経済産業大臣。以下単に「大臣」という。)に報告し、公表しなければならない。

検討の方向性

特定臨床研究においても、重大な不適合があった場合には、研究機関の長に公表を推奨することとしてはどうか。

参考

その他、AMED や厚生科学研究費等の公的研究費について、研究不正が認定された場合、研究者に対する申請資格及び参加資格の制限、研究機関に対して研究資金の返還、翌年度以降の競争的研究資金の配分の停止(体制整備等の不備について改善が認められない場合)等が規定されている。

5.臨床研究審査委員会の認定要件について

現状・課題

臨床研究審査委員会の認定及び認定の更新に係る現行の法制度

  • 臨床研究審査委員会は、法に規定する要件(委員構成等の体制、業務 規程、その他の実施基準)に適合することで認定を受けることができる 。
  • 認定の有効期間は3年とされており、更新要件は上記の認定 要件に加えて年11回以上の開催実績が要件となっている 。(施行規則第 66 条)

現在の認定臨床研究審査委員会(CRB)の状況

  • 特定臨床研究は自施設内のCRBで 審査されていることが多く、特定臨床研究の実施件数に比して多数のCRBが設置されており、年11回の開催が困難なCRBがある。
  • 認定の要件が外形的なものが多く、審査基準・審査能力・審査手数料にばらつきがあり、必ずしも適切な審査がされていない場合があるとの指摘がある。

これまでの取組

  • 模擬審査事業、厚労省HPに審査の視点等を掲載するほか、アンケート調査等を実施してきた。

これまでの主な御意見

更新要件に係る御意見

  • 開催回数については、現状で多くのCRB が満たすことができていない。要件として残しておいてもよいが、見直しは必要。
  • 審査の質を担保する観点から、新規の審査件数を要件に入れるべきではないか。

その他更新に係る御意見

  • 更新できない場合、同一機関がもう一つの臨床研究審査委員会の認定を申請することは問題である。
  • 更新できない場合は一定期間の猶予をおくなど急激な変化を避ける方法を考える必要があるのではないか。

質の向上に向けた御意見

  • 委員に対する研修をしっかりやっているか、発言のしやすさや内容を向上させるため、委員長に対する研修も必要。
  • 議事録の公開については、概要のみであったり発言者不明であるなど、内容が不十分な場合がある。
  • 欧米では相当な国費を出して、中央審査機関が審査をしたり、サイトビジットを実施しており、日本においても責任を持ってチェックするための体制整備を行うべき。

その他の御意見

  • CRB設置が臨床研究中核病院の承認要件となっていることにより、一種のブランド的な印象を持たれているのではないか。病院側の意識を変えていくことも重要。
  • 治験環境の整備の観点からも、国の支援により審査手数料の減免が図られることも重要。

CRBの更新要件に係る論点と検討の方向性(案)

論点

  • CRBの更新要件について、引き続き年間開催回数を要件とすることは妥当か。また、年間開催回数を要件にするにしても、厳密に年11回以上とする必要があるか。
  • CRBの審査能力の向上に向けて、制度による対応のほか、 どのような取組が考えられるか。
  • CRBの審査の質の維持・向上のために、適切な審査件数の範囲は考えられるか。
  • 現状のCRBは審査の質にバラツキがあることを踏まえ、今後、CRBの集約化に向けてどのような取組が考えられるか。
  • 更新が困難なCRBについては、円滑な業務の終了のために、新規の審査受付を中止した後も、当該CRBが審査中の臨床研究を他のCRBへ移行するために一定の期間を設ける等の対応が必要か。

検討の方向性

  • 個々の CRB が十分な審査経験を 積むことで、 CRB の審査の質の担保を図っていく必要があるのではないか。
  • これまでの御意見を踏まえ、開催回数の要件を見直すと共に、新規の審議件数を要件に加えてはどうか。
  • アンケート調査等による実態を踏まえ、当面、新規の審議件数については毎年1件以上、かつ、開催回数については毎年4回以上を要件としてはどうか。ただし、疾病等報告等、迅速に取り扱う議題がある場合については、更新要件にかかわらず、迅速な開催を求めることとしてはどうか。
  • なお、 上記 要件を満たさない場合は、継続案件を他のCRBへ引き継ぐなど、円滑な廃止に向けた準備を進めていただくこととしてはどうか。
  • 今後、CRBの審査の質の観点からも更新要件を検討すべきであるが、まずは、定期的にCRBの活動状況を確認しそれらを分析した上で、必要な見直しを行っていくこととしてはどうか。
  • 更新要件の見直しにあたっては、実施中の臨床試験に支障が生じないように必要 な対応をとる必要があるのではないか。

参照

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