ビジネス全般 臨床試験 規制

CRAとCRCはなぜ対立?治験現場の葛藤を解消する方法

2025年7月14日

治験の現場で働く中で、「SMO(治験施設支援機関)のCRC(治験コーディネーター)」と「CRO(開発業務受託機関)のCRA(臨床開発モニター)」の間で、疑問や不満が生じている、という話を聞いたことはありますか。そういった話を耳にしたことがあるのは、決してあなた一人ではありません。これは、治験業界で多くの人が経験する共通のストレスによるものです 1

さらに、CRCの業務遂行能力について話をしようとすると、いつの間にか「CRCの待遇」の話にすり替わってしまう、という経験はないでしょうか。業務の責任に関する議論が、なぜ労働環境の問題へと転換してしまうのか。この現象もまた、多くのCRAが直面する根深い問題です。

この記事は、こうした現場の率直な疑問とフラストレーションに真正面から向き合ってみたいと思います。非常にデリケートな話題であり、踏み込むのは怖い部分もあります。

私たちは、単に表面的な現象をなぞるのではなく、治験という複雑な生態系を、ビジネスモデル、社会学の理論、そして関係者それぞれの立場から多角的に分析し、その「不思議な関係性」を深堀することを目的とします。なぜCRCは「施設寄り」に見えるのか、なぜ業務の押し付け合いが起こるのか、そしてなぜ仕事の話が待遇の話になるのか。その構造的な理由を、一つひとつ丁寧に見ていきましょう。

治験の登場人物たち ―それぞれの立場と役割―

治験というプロジェクトは、それぞれ異なる目的と責任を持つ多様な登場人物によって成り立っています。この複雑な関係性を理解するためには、まず、それぞれの立場と役割を正確に把握することが不可欠です。

依頼者とCRA ―品質とスピードを背負う―

新薬開発の出発点には、常に「依頼者」である製薬会社がいます。その至上命題は、開発中の新薬が規制当局の定める基準を満たす信頼性の高いデータを生み出し、一日でも早く世に送り出すことです 4。この目的を達成するため、治験の品質、スピード、そしてコスト効率に対するプレッシャーは計り知れません。

この依頼者の代理人として、治験の最前線に立つのがCRA、すなわち臨床開発モニターです 6。CRAの多くは、依頼者から医薬品開発業務を委託されたCRO(開発業務受託機関)に所属しています 4。CRAの最も重要な責務は、治験が「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP)」という厳格なルールに則って、科学的かつ倫理的に正しく実施されているかを確認する「モニタリング」業務です 4

GCPは、被験者の人権、安全、福祉を守り、治験データの信頼性を確保するための法的な拠り所です 8。CRAが行う原資料の照合やプロトコル遵守の確認は、このGCPによって定められた責務であり、決して個人的な要求ではありません 4。つまり、CRAの視点から見れば、彼らの医療機関への指示や確認は、すべてが法的・科学的根拠に基づいた、必要不可欠な行為なのです。彼らは、品質とスピードという重責を背負い、治験全体を俯瞰する「監視者」としての役割を担っています。

実施医療機関と医師 ―治験を「実施」する―

一方で、治験が実際に行われる舞台となるのが「実施医療機関」です。病院やクリニックの第一の使命は、言うまでもなく日々の患者さんの診療です 11。治験は、その通常業務に加えて行われる、非常に専門的で煩雑な業務を伴う特別な活動です。

その現場の最高責任者が、治験責任医師です。治験責任医師は、自らの施設で行われる治験の実施と、参加する被験者の安全に対して、法的かつ倫理的な全ての責任を負います 12。しかし、GCPが要求する膨大な量の文書作成・管理や厳格な手続きは、多忙な医師や医療スタッフにとって大きな負担となりました。この負担が原因で、日本国内での治験実施が敬遠され、海外で治験が行われる「治験の空洞化」という現象さえ引き起こしたのです 14

このような背景から、医療機関が治験を円滑に進めるためには、外部からの専門的なサポートが不可欠であるという認識が広まりました。これが、次に登場するSMOが誕生するきっかけとなったのです。

SMOとCRC ―医療機関を支える「支援者」―

治験の空洞化という危機的状況を背景に誕生したのが、SMO、すなわち治験施設支援機関です。SMOの存在意義は、その名の通り、治験を実施する「医療機関を支援」し、その「負担を軽減」することにあります 4。ここで極めて重要なのは、SMOが契約を結ぶ相手は依頼者(製薬会社)ではなく、あくまで医療機関であるという点です 11

そのSMOの最前線で活動するのが、CRC、治験コーディネーターです。CRCの使命は、医療機関の「内部」で、医師、医療スタッフ、そして被験者の間に立ち、治験が円滑に進むよう調整することです 4。彼らは院内スタッフに溶け込むために白衣を着用することも多く、まさに医療機関側チームの一員として振る舞うことが期待されます 6

しかし、CRAのモニタリング業務がGCPで明確に定義されているのとは対照的に、CRCの具体的な業務内容はGCPで厳密に定められていません。CRCは、医師の指導の下で、医学的判断を伴わない範囲の業務サポートを行う、とされています 4。この役割の「曖昧さ」こそが、後に詳述する様々な軋轢を生む、決定的な要因の一つとなっているんです。

見えざる構造 ―なぜ対立と不満が生まれるのか―

CRAとCRCの間に生じる摩擦は、個人の性格や能力だけの問題ではありません。その背後には、治験という特殊な環境が生み出す、見えざる「構造」が存在します。ここでは、経済学や社会学の視点を取り入れながら、なぜ対立と不満が必然的に生まれてしまうのか、そのメカニズムを考えてみましょう。

三角関係 ―誰が誰にお金を払い、誰が誰のために働くのか―

治験の現場における関係性は、一見すると複雑です。お金の流れを追ってみると、その構造がより鮮明になります。まず、依頼者(製薬会社)が治験の実施にかかる費用をSMOに支払います。そして、そのSMOは医療機関と契約を結び、CRCを派遣して医療機関の業務を支援します 17。これが、「不思議な関係性」の正体です。SMOの収益は依頼者に依存していますが、その顧客満足度は医療機関の評価によって決まるという、ねじれた構造になっているのです。

この状況を理解するために、経済学の「プリンシパル・エージェント理論」という考え方が役立ちます 18。この理論では、仕事を依頼する側を「プリンシパル」、依頼を受けて実行する側を「エージェント」と呼びます。治験に当てはめると、質の高いデータを迅速に得たい依頼者(製薬会社)がプリンシパル、そしてその業務を代行する医療機関やSMOがエージェントとなります。

この関係には、二つの大きな問題が内在します。一つは「情報の非対称性」です。エージェントである現場のCRCは、日々の業務の実態について、プリンシパルである依頼者やCRAよりも遥かに多くの情報を持っています 21。もう一つは「目的の不一致」です。依頼者はデータの品質とスピードを最優先しますが、医療機関(そしてそれを支援するSMO)は、通常診療への影響を最小限に抑え、業務負担を軽減することを優先します 4

この情報の差と目的のズレが組み合わさると、エージェント(CRC)が、最終的な資金提供者(依頼者)の利益よりも、直接の顧客である医療機関の利益を優先する行動をとることは、ごく自然な帰結と言えます。これが、CRAからの依頼が現場の負担を増やすと判断された場合に、CRCが抵抗を示す根本的な理由、すなわち「エージェンシー問題」なのです。

さらに、この対立構造はSMOのビジネスモデルそのものに起因しています。SMO業界は競争が激しく、その収益構造はCRCの人件費が大部分を占めるという特徴があります 25。利益を確保するためには、SMOはCRCという最も重要な資産を効率的に管理しなければなりません。結果として、一人のCRCが多くの試験を担当することになりがちです。過重な業務を抱えるCRCにとって、自らの第一の使命が「医療機関の支援」である以上、CRAから要求される追加業務に対して抵抗し、時にそれを押し返そうとするのは、個人の態度の問題だけでなく、彼らが置かれたビジネス構造から生まれる合理的な反応なのです。つまり、CRCが「施設寄り」になるのは、このシステムがそうさせるように設計されているからに他なりません。

「やってくれるはず」のすれ違い ―業務の押し付け合いが起こる?―

地検においても、他の仕事同様、誰が担当すべきか明確に定義されていない「グレーゾーン」の業務が数多く存在します。業界の専門家によるワーキンググループの報告でも、治験の現場で慣習的に作成されているワークシートやチェックリスト、検査キットのような関連資材の管理、あるいはITシステムのトラブル対応といった業務が、責任の所在が曖昧な領域として指摘されています 26

CRAの視点から見れば、これらの業務は「治験の円滑な実施を支援する」というCRCの役割に含まれるべきものと映ります。しかし、CRCの立場からすると、これらは依頼者側がもっと簡便化するか、あるいはCRAが主体的に担うべき管理業務と見なされることがあります。

特に、依頼者から提供される資料が英語のみであったり、手順が煩雑であったりする場合、CRCは「依頼者の不備のせいで、なぜ我々が余計な仕事をしなければならないのか」と感じ、その不満がCRAに向けられるのです 27

このような責任の押し付け合いは、単なる感情的な対立に留まりません。各々が「相手がやるべきだ」と思い込むことで、結果的に必要な検査が実施されなかったり、手順からの逸脱が発生したりといった、治験の品質を揺るがす致命的なエラーにつながる危険性をはらんでいます 28。そして、その逸脱の報告や是正措置の対応に追われるのは、最終的に監視責任を負うCRAです。これが、「仕事を押し付けられた」という感覚を一層強固なものにしてしまうのです。

ここで理解すべき重要な点は、この問題が単なる個人間のコミュニケーション不足や態度の問題ではないということです。このフラストレーションは、業界全体が認識している構造的な課題であり、その根本には、これらのグレーゾーン業務に対する明確な役割分担の基準が業界全体で確立されていないという、プロセスそのものの不備があるのです。対立は、個人の資質によってではなく、不完全に設計されたシステムによって引き起こされていると言えるでしょう。

役割の葛藤に揺れるCRC

CRCが置かれている状況を、社会学の「役割理論」という観点から見てみましょう。人は社会の中で「医師」「母親」「部下」といった様々な役割(社会的役割)を担っており、それぞれの役割に応じた行動を期待されます。しかし、一人の人間が複数の、しかも矛盾する期待に同時に直面した時、「役割葛藤」と呼ばれる深刻な心理的ストレスが生じます 29

CRCという職務は、まさにこの役割葛藤の震源地と言っても過言ではありません。彼らは、以下の四方からの矛盾した期待に常に晒されています。

  1. 多忙な医師に対しては、従順で有能な「部下」であり「支援者」でなければなりません 1
  2. 厳しい要求をするCRAに対しては、迅速かつ正確な「実行者」であり「窓口」でなければなりません 2
  3. 治験に参加する不安な被験者に対しては、共感的で信頼できる「ケア提供者」であり「案内人」でなければなりません 32
  4. そして、被験者登録数などで評価を行う自社(SMO)に対しては、生産性の高い「従業員」でなければなりません 32

このように、四方八方から寄せられる要求の板挟みになる状況(「板挟みストレス」)は、CRCに絶え間ない精神的プレッシャーを与えます 1。このような極度のストレス下で、人は無意識のうちに、自分を守るための防衛機制を働かせます。その一つが、複雑な要求の網の目を単純化することです。つまり、遠くにいる「外部の人間」であるCRAの要求よりも、日々顔を合わせ、協力関係を築かなければならない医師や院内スタッフとの関係を優先するのです。

したがって、CRAの目には「横柄」あるいは「非協力的」と映るCRCの態度は、実は役割葛藤という過酷な状況に対する、自己防衛的な反応である可能性が高いのです。それは、すべての人を満足させようとして精神的に破綻するのを避けるための、苦肉の対処戦略なのかもしれません。CRCが「施設寄り」になるのは、それが彼らにとって、この複雑でストレスフルな役割を生き抜くための、最も合理的な選択肢だからです。

「仕事の話」が「待遇の話」にすり替わる?

「仕事の話が待遇の話にすり替わる」という現象。これは、治験の現場に潜む「バーンアウト(燃え尽き症候群)」と深く結びついています。

バーンアウトとは、長期間にわたる過度なストレスによって引き起こされる、情緒的、身体的、精神的な極度の疲労状態を指します。その主な症状は、「情緒的消耗感(エネルギーを使い果たした感覚)」、「脱人格化(仕事や他者への冷笑的・非人間的な態度)」、そして「個人的達成感の低下(仕事の成果や有能感の喪失)」の三つです 35

これまで見てきたように、CRCという職務はバーンアウトのリスクに満ちています。高い業務負荷、深刻な役割葛藤、被験者の安全という重圧、そして休日や夜間でも対応を求められる緊張状態 38。これに加えて、看護師や薬剤師といった前職よりも給与が下がるケースも少なくなく 40、これらの要因が複合的に絡み合い、CRCをバーンアウトへと追い込んでいくのです。

ここで重要なのは、バーンアウトの行動的兆候、すなわち意欲の低下、冷笑的な態度、ミスの増加、無気力といった症状が、他者の目には「職務怠慢」や「サボり」と全く同じように映るという事実です 43

これが、根源的な不満に対する直接的な答えです。CRAが、業務遂行という観点からCRCのパフォーマンスの低さを指摘したとします。しかし、バーンアウト状態にあるCRCにとって、そのパフォーマンスの問題は、自らが置かれている「待遇」や労働環境と決して切り離すことができないのです。彼らにとって、過度の疲労、低い報酬、高いストレスこそが、期待される水準の仕事ができない根本原因です。

したがって、CRAからパフォーマンスについて問われたCRCが「待遇」の話を持ち出すのは、決して責任転嫁や言い訳ではありません。それは、彼らの視点から見た、問題の「本質」を訴える悲痛な叫びなのです。CRAはそれを無関係な言い逃れと捉え、CRCはそれを問題の根源と捉える。この致命的な認識のズレこそが、バーンアウトという見えづらい現象が引き起こす、コミュニケーションの断絶なのです。

より良いパートナーシップを目指して ―できること、変えること―

これまでの分析で、CRAとCRCの間の摩擦が、個人の資質だけでなく、それ以上に、ビジネスモデル、役割の曖昧さ、そして心理的ストレスといった根深い構造的問題に起因することが明らかになりました。では、私たちはこの困難な状況を乗り越え、より建設的な関係を築くために、何ができるのでしょうか。最後に、そのための具体的な道筋を探ります。

立場を超えた共通の価値観

CRAとCRCの対立の根底には、「依頼者の代理人」と「医療機関の支援者」という、それぞれの立場を守ろうとする意識があります。しかし、真のプロフェッショナリズムとは、自らの立場や縄張りを守ることではありません。それは、立場を超えた共通の、より高い目的のために尽くす姿勢を指します。

その共通の目的の礎となるのが、GCPそのものです。GCPの根幹には、「被験者の人権、安全及び福祉の保護」と「治験の科学的な質及び成績の信頼性の確保」という、二つの揺るぎない倫理的原則があります 8。この原則は、依頼者の商業的利益や、医療機関の運営上の都合よりも、常に優先されなければならない共通の価値観です。

この視点に立てば、プロフェッショナリズムの定義も変わってきます。CRAにとってのプロフェッショナリズムとは、単にルール遵守を求めるだけでなく、CRCや医療機関が直面するプレッシャーを理解し、協力的な姿勢を示すことです。同様に、CRCにとってのプロフェッショナリズムとは、いかなるプレッシャーの下でも、データの信頼性確保と誠実なコミュニケーションという責務を全うすることです。それは、互いの立場を尊重し、被験者と科学に対して共同で責任を負うという意識に他なりません 47

現在見られる対立の多くは、「お金を払っているのだから、これをするべきだ」「あなたのせいで私の仕事が増えた」といった、取引的な思考から生まれています。この状況を打開するには、両者がGCPという共通の憲法の下、倫理的責務を共有するプロフェッショナルなパートナーであるという認識へと、思考の枠組みを転換することが不可欠です。これにより、敵対的だった関係は、協働的な関係へと発展していくことにつながるのではないでしょうか。

コミュニケーションと役割分担の再設計

「もっとコミュニケーションを取りましょう」という精神論だけでは、構造的な問題は解決しません。対立を協働に変えるためには、プロセスの再設計が必要です。

そのための最も効果的な手段の一つが、治験開始時における役割分担の明確化です。例えば、プロジェクトマネジメントで用いられる責任分担表(RACIチャートなど)の考え方を応用し、治験責任医師、CRA、CRCが一堂に会して、主要な業務、特にこれまで見てきた「グレーゾーン」の業務について、「誰が主たる実行者(Responsible)か」「誰が最終的な説明責任者(Accountable)か」「誰に相談すべき(Consulted)か」「誰に報告すればよい(Informed)か」を、一つひとつ具体的に合意形成するのです 26。このような事前の明確な取り決めが、将来の「言った、言わない」「やってくれるはずだった」という不毛な対立を防ぐための、最も強力な予防策となります。

さらに、この関係性は、政府も推進する「パートナーシップ構築宣言」の理念にも通じます 52。これは、取引関係において、不合理なコスト削減圧力や一方的な要求を排し、対等な立場で共存共栄を目指す考え方です 55。治験の文脈で言えば、依頼者は自らが課す業務負荷を正当に評価し、適正な対価を支払う責任があり、SMOや医療機関は業務の透明性と品質を確保する責任があります。

こうした明確な役割分担と対等なパートナーシップを支えるのが、仕組み化されたコミュニケーションです。CRAとCRCが共有のアジェンダを持って定期的にミーティングを行う、緊急時の連絡体制やバックアップ担当者を事前に定めておくといった具体的なルール作りが、コミュニケーションの断絶を防ぎます 57。また、医療関係者向けのコミュニケーションアプリなどを活用し、情報共有の効率と速度を高めることも有効な手段となり得ます 58

こうした対立は、不完全に設計されたシステムの予測可能な結果です。したがって、その解決策もまた、システムそのものを改善する「構造的」なものでなければなりません。役割分担の事前合意やパートナーシップの理念に基づいた契約、そして仕組み化されたコミュニケーションは、単なる行動指針ではなく、より良い協働関係を築くための具体的な手法です。

おわりに

本記事を通じて、治験の現場でCRAとSMOのCRCとの間に生じる摩擦が、単なる個人の態度の問題ではなく、依頼者と医療機関という異なる顧客を持つSMOのビジネスモデル(プリンシパル・エージェント問題)、曖昧な業務分担(グレーゾーン業務)、そしてそれらが個人に与える過剰な心理的圧力(役割葛藤とバーンアウト)という、複数の構造的要因が絡み合って生まれることを明らかにしてきました。

この複雑な問題を解決し、より良い未来を築くためには、二つのアプローチが不可欠です。一つは、私たち一人ひとりが、相手の立場とそれがもたらすプレッシャーを理解しようと努める「共感」です。CRAはCRCが置かれた構造的な困難を、CRCはCRAが背負う規制と品質への重い責任を、それぞれ理解する必要があります。

そしてもう一つが、より本質的な「システム変革」です。上下関係や敵対的な思考を捨て、真のパートナーシップを構築すること。そのパートナーシップは、GCPという共通の倫理原則を土台とし、治験開始前の明確な役割分担の合意によって定義され、そして、仕組み化されたオープンなコミュニケーションによって維持されなければなりません。

新薬という希望を患者さんの元へ届けるという共通の目標に向かって、私たち治験関係者全員が、互いを尊重し、支え合う「対等なパートナー」として手を取り合うこと。それこそが、この不思議で困難な関係性を乗り越え、未来へと進む唯一の道筋なのです。

引用文献

  1. 治験コーディネーターのストレスって何ですか? - CRCばんく, https://crc-bank.com/keijiban?gu=46
  2. CRAにかかるストレスで主なものを教えてください, https://cra-bank.com/keijiban?gu=157
  3. 元CRCが見る!CRCに向いている人・向いていない人の特徴 - CRCJOB, https://crcjob.jp/job/aptitude/
  4. 新薬開発に携わるCRA/CRC/CRO/SMO 4つの違いを元CRAが解説 ..., https://www.apexkk.com/blog/2023/08/clinical-organizations-and-jobs
  5. 計画 | 治験が実施されるまでの道のり - 中外製薬, https://www.chugai-pharm.co.jp/ptn/clinical-trial/flow/plan.html
  6. CRA(臨床開発モニター)とCRC(治験コーディネーター)の違い - CRCJOB, https://crcjob.jp/job/cra-crc-hikaku/
  7. 新薬の開発に携わるCRA、CRO、CRCとは?それぞれの概要を解説します - ジョブメドレー, https://job-medley.com/tips/detail/816/
  8. 医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令 - e-Gov 法令検索, https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=409M50000100028_20231226_505M60000100161
  9. 医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令, https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/ich/0076.html
  10. 「「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」のガイダンスについて」の改正について, https://www.hospital.or.jp/site/news/file/4642997567.pdf
  11. SMOとは?主な業務やサポートの流れ・CROとの違い - マイナビコメディカル, https://co-medical.mynavi.jp/column/other/about-smo/
  12. 医薬品の臨床試験の実施の基準に関する大阪医科薬科大学病院手順書, https://www.ompu.ac.jp/u-deps/crc/img/images/cmn/dl/dl01.pdf
  13. 治験責任医師の責務 | 東京大学医学部附属病院臨床研究推進センター, https://www.ut-crescent.jp/doctors/doctor/chikensekininishi/
  14. SMOの役割と主な業務 | 治験とSMO | 日本SMO協会, https://www.jasmo.org/business/outline/index.html
  15. SMO(治験施設支援機関)とは? - CRCばんく, https://crc-bank.com/smotoha
  16. 治験という一大プロジェクトの進行を陰で支える “縁の下の力持ち” ――SMA(治験事務局担当者)の仕事とは - トライアドジャパン, https://www.triad-j.co.jp/column/column-176/
  17. SMOと病院の違いは何ですか。 - CRCばんく, https://crc-bank.com/keijiban?gu=133
  18. 株主と経営者の関係を読み解く「プリンシパル・エージェンシー理論」とは?, 株主と経営者の関係を読み解く「プリンシパル・エージェンシー理論」とは? | Region Growth Partners 株式会社(リージョングロースパートナーズ)
  19. 理想のコーポレートガバナンスを考える上で重要な「エージェンシー理論」とは?, https://frontier-eyes.online/principal-agency-theor/
  20. (新用語・難解用語)プリンシパル・エージェント問題 | 上場会社役員ガバナンスフォーラム, https://govforum.jp/member/news/news-news/news-others/others-others/12527/
  21. エージェンシー問題とは?定義から具体例・解決策まで完全解説 - WARCエージェント, https://agent.warc.jp/articles/c4nolfo32c8q
  22. 医療経済学第5回 情報の非対称性と医師の機会主義的行動, https://www3.cuc.ac.jp/~t2yamada/he_2014_05.pdf
  23. 情報の非対称性-WTOと貿易政策, https://www.ritsumei.ac.jp/ec/~tanigaki/jyouhou.html
  24. 医療情報の「非対称性」解消を!-健康ビッグデータを活かす | ニッセイ基礎研究所, https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=58087?site=nli
  25. SMOにも再編の荒波‐急拡大の反動で淘汰進行|薬事日報ウェブサイト, https://www.yakuji.co.jp/entry21684.html
  26. CRC/CRAが考える臨床試験業務別 Role & Responsibility - R&D Head Club, https://rdhead-club.com/struct/wp-content/uploads/RD-HeadClub_WG2_Role-Clarification_20220214.pdf
  27. グローバル試験から排除されないために ~コスト意識が日本の治験を活性化する~, https://www.phrma-jp.org/wordpress/wp-content/uploads/2020/12/2020_CRC_slide.pdf
  28. ②治験依頼者と医療機関の役割分担 (Document Log含む) グループA, http://www.moni2.org/moni2/PDF/20180127-GW_Summary.pdf
  29. 役割内葛藤と役割間葛藤 - アープラノート - Scrapbox.io, https://scrapbox.io/arpla/%E5%BD%B9%E5%89%B2%E5%86%85%E8%91%9B%E8%97%A4%E3%81%A8%E5%BD%B9%E5%89%B2%E9%96%93%E8%91%9B%E8%97%A4
  30. 【わかりやすい解説】第33回3問 人間関係における役割葛藤の例 | ケアスタディ, https://job.minnanokaigo.com/carestudy/careworker/a/2021/3/
  31. 役割理論とは?心理学と社会学の視点から学ぶ基本知識とアプローチ方法, https://socialconnection-wellbeing.com/role/
  32. 治験コーディネーター(CRC)のやりがい, https://crc-bank.com/crcnohyoubankigyouyarigai
  33. 治験コーディネーターは楽しい仕事!魅力や必要なスキルなどを解説 - 医療転職.com, https://www.iryo-tenshoku.com/column/detail.html&id=494
  34. 治験コーディネーターは離職率が高い?理由や対策などを解説, https://www.iryo-tenshoku.com/column/detail.html&id=495
  35. 燃え尽き症候群(バーンアウト)とは? なりやすい人の特徴と診断項目も解説 - ジョブメドレー, https://job-medley.com/tips/detail/894/
  36. バーンアウトとは?原因と対策を解説 - TECH CREW株式会社, https://techcrew.co.jp/jinjicrew/blog/post-1921/
  37. バーンアウト(燃え尽き症候群)とは?原因や予防策、なってしまった時の対処法, https://mba.globis.ac.jp/careernote/1494.html
  38. アンケートの概要 目的 JASMO自主ガイドラインの浸透度等の確認 対象 CRC業務に携わっている会 - 日本SMO協会, https://www.jasmo.org/assets/pdf/news/20181109_3.pdf
  39. 治験コーディネーターになって辛いことはなんですか? - CRCばんく, https://crc-bank.com/keijiban?gu=42
  40. 治験コーディネーターの仕事がきついと言われる理由は?対処法も紹介 - マイナビ看護師, https://kango.mynavi.jp/contents/nurseplus/career_skillup/20230407-2162593/
  41. 治験コーディネーター(CRC)の給与・年収 - CRCばんく, https://crc-bank.com/crcnokyuuryou
  42. 治験コーディネーター(CRC)として働く看護師の仕事内容|口コミも紹介 - ワンナース, https://one-nurse-cmic.com/clinical-trial-coordinator-crc-nurse/
  43. 職務怠慢は証明できる? 調査方法・解雇リスクに徹底解説 - デジタルデータフォレンジック, https://digitaldata-forensics.com/column/labor_problem/233/
  44. 【弁護士監修】モンスター社員とは?4つの特徴や対応・予防方法について解説 | Smart相談室, https://smart-sou.co.jp/mag/article/monster-employee
  45. 医薬薬審発 0401 第3号 令和7年4月1日 各都道府県衛生主管部(局)長 殿 厚生労働省医薬局, https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T250401I0060.pdf
  46. 〜治験責任医師の役割と責務を中心に〜 - ICR臨床研究入門, https://www.icrweb.jp/mod/resource/view.php?id=11124
  47. 倫理規定に関する決め事には、専門職、プロフェッショナリズムの理解が必須であるため, https://jpncns.org/about/doc/coi.pdf
  48. “改訂コアカリのプロフェッショナリズム”について考えてみよう ~どう理解し, http://jsme.umin.ac.jp/com/pro/pro_2023symposium-report.pdf
  49. プロフェッショナリズムとは?その意味と重要性 - 顧問のチカラ - KENJINS, https://kenjins.jp/magazine/president/53744/
  50. RACIチャートの作り方|活用するメリットと注意すべきポイントを解説 - Kaizen Penguin, https://kaizen-penguin.com/raci/
  51. RACIチャートとは?作り方や使い方、RASICとの違いを解説 - クラウドログ, https://www.crowdlog.jp/blog/104731/
  52. パートナーシップ構築宣言等に関する 現状と今後の取組, https://www5.cao.go.jp/keizai1/partnership/20220210/20220210siryo2.pdf
  53. パートナーシップ構築宣言とは?宣言を行うメリットと5つの広報施策 | PR TIMES MAGAZINE, https://prtimes.jp/magazine/partnership/
  54. パートナーシップ構築宣言 - 取引先と共存共栄関係を築きませんか? - 商工会議所, https://www.jcci.or.jp/partnership/
  55. 「パートナーシップ構築宣言」, https://www.biz-partnership.jp/declaration/29722-05-16-kanagawa.pdf
  56. 「パートナーシップ構築宣言」のひな形(2024 年 3 月版), https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240325003/20240325003-1.pdf
  57. 第20回 CRCと臨床試験のあり方を考える会議 2020 in NAGASAKI PhRMA/EFPIA Japan共催セミナー 付録2, https://www.efpia.jp/link/20th_Conference_on_CRC_and_Clinical_Trials_2020_in_Nagasaki_PhRMAEFPIAJapan_Joint_Seminar_Appendix_2.pdf
  58. 医療関係者間コミュニケーションアプリを応用した「治験DX」 実証研究開始 - 国立がん研究センター, https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2025/0303/index.html

-ビジネス全般, 臨床試験, 規制

© 2025 RWE