エビデンス全般 デジタルヘルス ビッグデータ 規制

医療情報の歴史

2020年は新型コロナウイルス対策を契機に、オンライン診療が本格的に根付き始め、同時にマイナンバーカードの普及対策も実施されたという歴史的な一年になりました。

公衆衛生やパブリックヘルスといった耳慣れなかった言葉も一般紙やワイドショーを賑わせるなど、ヘルスケアという言葉が特別なものではなく身近で切り離せない話題として捉えられる契機ともなったでしょう。

2021年は、3月にマイナンバーカードを保険証利用することが徐々に開始されることになり、医療情報の新たなステージが幕を開けつつあります。

とはいえ、個人番号であったり、医療情報の改革のための取り組みは2020年よりもずっと以前からコツコツと始まっていました。

ICT技術の進歩であったり、スマートフォンを始めとするデバイスへの私たち自身の慣れがあり、そこへ「新型コロナウイルスという猛威への対応を余儀なくされた」という価値観の大転換があっての変貌とも考えられます。

本記事では、日本における医療情報の歴史を少しだけ紐解いてみましょう。

1980年頃:部門システムの始まり

最初の波は、医療機関の各部門における部門システムの導入でした。

病院には、医事課をはじめ、検査課、放射線科、薬剤科、栄養科など様々な部門が存在しています。

この各部門の業務支援のために、それぞれの部門で部門システムが導入されたのでした。

病院全体を統合して管理するという発想は、当時のシステムや機器のスペックからは難しく、まずは個々の部門における業務効率化が行われました。

1990年頃:オーダリングシステムの始まり

部門システムののちに来たのが「オーダリングシステムの導入」です。

医療の起点になるのは、医師による診断と治療の意思決定です。

オーダリングシステムは、医師による診断や治療の意思決定の結果生じる”指示(オーダー)”を、病院の各部門に伝達するシステムです。

1980年頃に導入された部門システムでは、部門間のやり取りは別個に生成される指示伝票を人が運ぶという状況でした。

オーダリングシステムによって、人の手を極力介さずに電磁的に指示内容を伝達することができるようになったのです。

オーダリングシステムとは、ある意味で部門システム間を繋ぐような役割を担うことになりました。

2000年頃:電子カルテシステムの始まり

1990年代後半になると、電子カルテシステムという言葉を耳にする機会が増えました。

紙で管理されていたカルテ情報を電子システム上で取り扱おうというのが基本コンセプトです。

カルテとは患者さんの状態を記録し、その情報を管理するための媒体です。

受診の都度発生するものですから、紙で管理しているとその紙の量は膨大なものになっていきます。

電子化することで情報の保管に割かれていたスペースも節約され、また管理や検索も紙に比べて格段に効率的になりました。

とはいえ、ただ紙情報を電子情報に置き換えたということには留まりません。

前述の部門システム、オーダリングシステムと連携することにより、クリニカルパス(あるいはクリティカルパス)として治療の工程、治療方針も管理しやすくなりました。

個々の患者さんの状態を記録し、それぞれに合った治療方針を検討することがより効率的に行えるようになったのです。

情報を処理しやすい形で管理することは、業務を効率化し、頭を悩ませるべきところに集中する時間を作り出すことにもなります。

2010年頃:クラウド移行の始まり

電子カルテシステムの導入は、個々の医療機関レベルで始まりました。

扱っている情報も、それぞれの患者さんの健康関連情報ということでデリケートなものだということから、インターネットに繋がっていない独立したパソコン上で管理するべきだという考えもあります。

一方で、2011年の東日本大震災を契機に、一施設での情報管理は危険だという考え方も広まりました。

事業継続計画(Business Continuity Plan, BCP)は、新型コロナウイルスを契機に最近もよく耳にしますが、BCPの観点からも一施設単独管理は医療の継続の観点からもリスキーだということです。

災害時にその施設の医療情報が失われたら、そこの医療機関を受診していた患者さんたちの過去の情報も全て失われることになります。

過去の健康情報であったり、治療情報は、これからの治療方針を検討するうえで非常に重要な情報になります。

それが、災害で一気に消え去ってしまうことの損失は計り知れないのはご想像の通りです。

その医療情報の保管場所として白羽の矢が立ったのがクラウドサーバーです。

一施設のローカル環境にデータを保管するのではなくて、全く別の場所にデータを保管するという考え方です。

クラウドサーバーといっても結局は巨大な記録媒体で物理的に存在してはいますが、複数のサーバーで補い合っているために1つが壊れても残りでバックアップを取る体制もとられています。

当然ながら地理的に強い場所を選んで設置されており、サイバーセキュリティも集中して資本投資されているために、クラウドサーバーの安全性は高いと一般的に考えられています。

クラウド移行は、見方を変えれば「施設単位から地域単位へ」の医療情報の管理単位の変遷でもあります。

2020年頃:オンライン化の始まり

2020年は新型コロナウイルスに社会が振り回された一年でした。

既存の価値観もすっかり破壊されて、新しい日常という言葉と共に、今までの常識という常識が通用しなくなっています。

2021年もその影響は残っており、全ての基本はオンライン、という考えが基本になりつつあります。

言い換えるならば、「オンラインで済むものは極力オンラインで。オンラインではだめならリアルで。」という検討の優先順位の変更でしょう。

今までは「基本的にはリアルでやろう。オンラインで出来るものはオンラインでやってみてもいいが。」という順番でした。

医療においても、初診対面原則が叫ばれていましたが、新型コロナウイルスへの対応のために、時限付きで初診オンラインが許可されました。

この流れは新型コロナウイルスが落ち着いてからも、勢いが弱まることはあっても逆行することはないでしょう。

これからの医療情報

医療情報の管理単位は、部門単位 ⇒ 施設単位 ⇒ 地域単位と徐々に広がっていきました。

いきなり国をまたいで世界中で繋がるということにはならないでしょうから、まずは都道府県単位または国単位で包括して管理され利用する時代になります。

都道府県をまたいで、専門的な医療機関に受診に通っているという人も一定数いらっしゃいますし、転居等による移動もありますから、都道府県単位よりは国単位の方が望ましいでしょう。

ただし、医療情報の管理主体は、都道府県あるいは国単位ではなくて、個人単位になると考えられます。

1億を超える人数のデータのため、集中管理するような粗い管理方法だと機動力が落ちてしまうためです。

それよりは、個々人に管理責任を持たせて、管理方法は民間サービスで補うというほうが合理的です。

幸い、ブロックチェーンのような技術も銀行や物流を中心に発展しているため、情報のアクセス管理という意味では使える技術は育っています。

自分の情報を自分で管理する時代はすでに到来しています。これからますます自己管理の求められる度合いは強まっていくでしょう。

-エビデンス全般, デジタルヘルス, ビッグデータ, 規制

© 2021 Real-World Data/Evidence website