ビジネス全般

倫理的法的社会的課題研究事業(令和4年度厚生労働科学研究)

1.研究事業の目的・目標

【背景】

昨今の医療技術の発展は目覚ましく、これら最先端の技術が、社会に思わぬ影響を及ぼすことがある。特に近年は、ゲノム、ICT、人工知能(AI)等の新たに生み出された科学技術を社会実装してより一層イノベーションを推進していくことが重要であるが、これらの新たな技術がもたらす倫理的、法的、社会的諸問題(以下「ELSI(※)」という。)が、既存の社会的枠組に与える影響が大きいことも予想されている。

この影響が、イノベーション推進にブレーキをかけることがないように、新たな技術がもたらす ELSI を抽出し、その影響度等に応じて必要な政策を立案、実施することが必要である。特に、厚生労働分野は国民生活と密接する部分が多く、国民の関心も高いものの、健康・医療関連に特化した具体的な ELSI の抽出、解決に向けた研究は、国内では十分行われていないことが指摘されており、より一層の研究の推進が必要である。

※ELSI:Ethical, Legal and Social Issues(倫理的・法的・社会的課題)

【事業目標】

医療技術の中でも特に影響が大きいと予測される、ゲノムと AI に焦点を当て、これらの新たな科学技術の開発と、新たな科学技術がもたらす ELSI を検討する事業を並行して行うことにより、イノベーションを加速させることを目指す。

【研究のスコープ】

①ゲノム分野における ELSI に関する研究

②AI 分野における ELSI に関する研究

【期待されるアウトプット】

ゲノム分野については、ゲノム医療推進のための ELSI ガイドラインの作成、ガイドライン作成後の継続的な議論が行える体制の提言が期待される。

AI 分野については、AI 含め研究のデジタル化による ELSI の抽出、解決策の提言、研究者が活用できる資料の作成が期待される。

【期待されるアウトカム】

国民が安心してゲノム医療又は AI を活用した医療・介護等を受けるための環境整備の進展、開発・受容に伴う課題の解決によるイノベーションの加速が期待される

2.これまでの研究成果の概要

  • ゲノム分野の研究に対しては、がんゲノム医療推進を目指した医療情報等の利活用にかかる国内外の法的基盤の運用と課題に関する調査研究を行った(平成 30 年度終了)。
  • AI 分野については、主に診断・治療支援の場面で活用される AI に関する ELSI を整理し、課題を抽出した(平成 30~令和元年度)。また研究開発において顕在化する課題、開発者が遵守すべき生命倫理を整理した(令和2~3年度)。

3.令和4年度に継続課題として優先的に推進するもの

  • ゲノム分野については、「全ゲノム解析等実行計画(第1版)」において、今後検討すべき事項として、ELSI への対応が早急に求められている。今後、全ゲノム解析等の結果を患者に還元する等、全ゲノム解析等の推進を加速させるためには、ELSI の検討は最優先事項に進める必要がある。また、ゲノム医療の新たな技術として、リキッドバイオプシーも今後保険適用される見込みであり、社会実装に当たってはその ELSI に関する検討も必須である。

4.令和4年度に新規研究課題として優先的に推進するもの

  • 世界的に研究活動のデジタル・トランスフォーメーションの流れが加速している。人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針においても電磁的同意(eConsent)に係る規定が設けられる。AI の開発・利活用にデータは不可欠であり、本事業において、デジタル技術を活用した研究活動(eConsent、データ取得(病院内カメラ動画の研究目的の二次利用)等)に関する ELSI の検討を進める。

5.令和4年度の研究課題(継続及び新規)に期待される研究成果の政策等への活用又は実用化に向けた取組

  • ゲノム分野においては、平成 31 年より遺伝子パネル検査を用いたゲノム医療が実用化され、さらには全ゲノム解析を用いた研究等も進められている。ゲノム医療を進めるに当たっては、適切なゲノム情報の取扱い、ゲノム解析等の結果判明する二次的所見への患者サポート対応やカウンセリング体制の強化、国民に対するゲノム・遺伝子に関する知識の普及啓発や教育の充実等といった倫理的、法制度的、社会的課題を解決し、国民が安心してゲノム医療を受けるための環境整備を進める必要がある。具体的には、全ゲノム解析等を推進するにあたり、全ゲノム解析等実行計画に示されている ELSI に対応する体制を検討するための基盤を提供する。
  • AI 分野においては、内閣府を中心に関係省にて策定された「人間中心の AI 社会原則」が平成 31 年3月に公開され、同年 8 月には総務省が「AI 利活用ガイドライン」を公開した。また、令和2年度から内閣府 人間中心の AI 社会原則会議が再開し、AI の倫理に関する議論が国内外で活発に行われている。eConsent 等のデジタル技術を活用した研究手法の課題の抽出、解決策の提案によりイノベーション推進に資すること、国内外の ELSI の議論の動向の分析により国際調和を意識した議論に資することが想定される。

参照

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