ビジネス全般

臨床研究等 ICT 基盤構築・人工知能実装研究事業(令和4年度厚生労働科学研究)

2021年8月20日

1.研究事業の目的・目標

【背景】

健康・医療・介護・福祉分野の大規模データの分析は、医療の質向上・均てん化、及び日本発の医療技術の開発に必要なエビデンスを提供するものである。しかし、医療機関や研究機関、行政等の個々の主体が管理するデータに互換性がなく、その活用は未だ十分になされていない。

膨大な健康・医療分野のデータの収集・解析によって、予防・健康管理に向けた効果的なサポートを、国民が身近で受けられる環境の整備をするとともに、個人に最適な健康管理・診療・ケアを実現する基盤を整備する必要がある。

また、平成 29 年より「データヘルス推進本部」、平成 30 年より「保健医療分野 AI 開発加速コンソーシアム」が設置され、健康・医療・介護分野における医療情報を連結した ICT システム構築や AI 実装に向けた取組みが開始された。令和元年6月に「保健医療分野 AI 開発加速コンソーシアム 議論の整理と今後の方向性」をとりまとめた後、保健医療分野 AI 開発加速コンソーシアムを令和元年 11 月、令和2年1月に開催した。これらを踏まえ、引き続き、個人情報・パーソナルデータの保護にも配慮しつつ、医療データを収集し、AI 技術等を用いた解析を通じ医療の質の向上に繋がる研究に取り組む必要がある。

【事業目標】

健康・医療分野における ICT インフラの整備によるデータ利活用を推進し、行政政策の科学的根拠を得ること、及び健康医療分野における AI 技術の活用を促進する環境を整備し、個々人の特性に応じた適切かつ迅速な医療を実現することを目標とする。

【研究のスコープ】

  • 医療情報を利活用するための基盤研究
  • 健康・医療分野における AI 技術の活用を推進するための基盤研究

【期待されるアウトプット】

①「ICT 基盤構築と AI による医療の質の向上及び均てん化」
②「AI の保健医療分野への応用及び実装」
③「種々の医療データの横断的分析による医療の質の向上及び均てん化」

IT 関連事業者との連携を意識するなど、官民連携の体制を取り入れつつ、①~③に資する基盤を構築し、健康医療分野の行政政策に資する科学的根拠を創出することが期待される。

例)

  • 患者報告アウトカム(patient reported outcomes:PRO) の ICT 化による PRO の社会実装推進(①)
  • AI を用いた医療安全に係るデータの解析・分析の有効性等の検証(②)
  • 医療機関の電子カルテデータと PHR(Personal Health Record)ビューワー等の Web サービスとの双方向連携(③)
  • ICT を用いた医師の労働時間短縮に向けた取組に関する研究(①)
  • ICT を利用した医学教育コンテンツの開発と活用にむけた研究(①)
  • 大規模データの利活用研究の加速のための研究(③)

【期待されるアウトカム】

①~③の成果により

1)患者・国民の個々の特性に応じた迅速・正確な医療の提供
2)医療の質向上および均てん化
3)ビッグデータ、ICT 技術を活用した、科学的根拠に基づく効果的な行政政策の実施

が期待される。これは、データヘルス改革で目指す未来である「AI を用いた保健医療サービスの高度化・現場の負担軽減」の達成に資するものである。

2.これまでの研究成果の概要

  • 「集中治療領域における生体情報や診療情報等を活用した人工知能(AI)の実装を推進するための基盤整備に係る社会的・技術的課題等についての実証的研究」については、集中治療領域における医療データの解析、現在のデータからのバイタルデータの変化の予測の実証検証を進めている。(平成 31 年度~令和3年度)
  • 「ICT を活用した医師に対する支援方策の策定のための研究」については、医療現場における ICT を用いた支援策を行うにあたっての課題、システム構成等の要件を整理した。(平成 30年度~令和元年度)

3.令和4年度に継続課題として優先的に推進するもの

  • 「AI を活用した医療安全の確保に向けた取組を推進するための研究」
    開発する AI システムを実際の臨床現場で検証する計画(前向きに性能を評価する検証も含む)であるが、令和4年度には検証規模を拡大し、医療安全の確保に AI が資するか、より確かなエビデンスを構築する。
  • 「大規模データの利活用研究の加速のための研究」
    特定匿名加工医療情報作成事業者が取り扱うデータ項目は令和3年度当初時点は限られているが、今後増大が見込まれ、令和4年度により大量のデータを扱う有用性検証を行い、匿名加工医療情報の利活用の技術的課題の抽出及びその解決策の提案を行う必要がある。

4.令和4年度に新規研究課題として優先的に推進するもの

  • 「保健・医療分野における ICT・AI 開発に求められる環境整備に関する研究」
    AI 戦略フォローアップ(令和3年6月頃を予定)を踏まえ、ICT・AI 開発に求められる環境整備に関する研究、ICT・AI を活用した現場の負担軽減に関する研究を実施する。具体的には、医療分野における AI の研究開発・活用を進めるための医療従事者等の人材育成・確保に関する研究、医療従事者の負担軽減に資するツールの開発に関する研究を実施する。
  • 「保健医療分野の AI 実装等データ利活用状況等についての調査研究 」
    政府全体でデータ戦略に基づき動いているほか、厚生労働省でもデータヘルス改革が進行している。本課題では、AI・ICT 技術を用いた保健医療情報の活用の状況・将来像等を把握・分析し、保健医療分野における AI 実装等のデータ利活用推進の方策を提案する。
  • 「保健医療分野における ICT、AI を利用した教育コンテンツの開発と活用にむけた研究」
    ICT、AI を駆使した教育コンテンツの開発ならびに活用するための基盤づくりを進める。

5.令和4年度の研究課題(継続及び新規)に期待される研究成果の政策等への活用又は実用化に向けた取組化に向けた取組

  • 「AI を活用した医療安全の確保に向けた取組を推進するための研究」については、手術動画の記録・解析ヒヤリ・ハット事例報告の解析等の場面において、構築する AI システムを実証することで、効率的な記録、事故の原因解析、従事者の負担軽減が実現され、医療安全の確保に AI が資するか、エビデンスが得られることが期待されている。(継続)
  • 「保健・医療分野における ICT・AI 開発に求められる環境整備に関する研究」については、ICT・AI 開発のためにデータを安全かつ円滑に使用できる環境整備および基盤構築に取り組むことで、日本における ICT・AI 開発の加速化が期待される。また、「保健・医療分野におけるICT・AI を活用した現場の負担軽減に関する研究」については、医療従事者の負担軽減に資するツールの開発や、具体的な労働時間短縮につながる方策の提案が期待される。(新規)

参照

令和4年度厚生労働科学研究の概要

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