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いまさら聞けない?疫学の基礎ーその1「疫学の始まり」

しばらくブログから離れておりました、E-Taroです!ぼちぼちこちらの活動もゆる~く再開していきます!

疫学の歴史

疫学的な考え方は、Hippocrates、John Graunt、William Farr、John Snowなど多くの先人達から受け継がれたものではありますが、「疫学」という名前で、一つの独立した学問として認知され始めたのは第二次世界大戦後とみる向きもあります。そう考えると、まだ学問として独り立ちしてから100年経っていない、比較的若い学問とも考えられますね。

疫学は、いくつかの基礎的な学問をベースとする応用的な学問分野であり、例えば統計学や経済学の礎がないと成り立たないとも言えます。人口動態学なども疫学にとって欠かせない学問分野です。

今では、疫学の方がより広範な学問分野として学ばれる流れも出来つつあるので、相補的な位置づけになってきているかもしれません。

ヒポクラテスの前の時代

ヒポクラテスは、紀元前460年頃から紀元前370年頃の時代の方とされていますが、それ以前の時代では、病気の発症や感染症の流行に対する理解は今とは全く異なるものでした。科学という概念もまだ生まれる前か生まれたばかりの頃でしょうから、医療が科学的なエビデンスのもとに語られるのが当然の今とは様相が異なるのは当然といえば当然です。

そのころ、病気の発症や流行は、次に列挙するようなものとして捉えられていたようです。

  • 神様の怒り
  • 信仰の崩壊
  • モラルの欠如
  • 天候の影響
  • 悪い空気 (Bad Air)

最後の悪い空気というのは、排気ガスで汚れた空気ということではありません。今でもマンガ等で「瘴気(しょうき)」という言葉を耳にすることがあるかもしれませんが、敵とか悪いやつらが出てきそうな場面で立ち込めてくる「黒いもや」的なあれのようなイメージじゃないかと想像できます。上記5つを見ても、「天候の影響」以外は、SFチックというか、オカルトチックというか、今の科学的な思考とは異なるように見えます。

ヒポクラテスの提言

そんな、SF的、オカルト的な文脈で病気や疾患について語られることに異論を唱えたのがヒポクラテス(紀元前460年頃から紀元前370年頃)です。ヒポクラテスは、疾病に影響を与える要因として、その人の行動や、その人の周りの環境(空気、水、土壌など)が重要ではないか、と提言しました。残念ながら、その時点ではどこまで定量的に分析されていたのかは不明ですが、少なくとも、主観的な世界(神様、信仰、モラルなど)から客観的な世界(空気、水、土壌など)へと考え方を180度変えるという点で、非常に重要なターニングポイントだったといえます。

John Graunt による定量化(1620年4月24日~1674年4月18日)

物事を定量的に語る時代が来るまでは、ヒポクラテスの生きた時代から2000年という時間が必要でした。最初に健康を取り巻く種々の要素について定量化を行ったのはJohn Graunt (1620年4月24日~1674年4月18日) とされます。彼が定量化を行ったものとしては、下記のものがあります。

  • 出生、死亡、疾病発症のパターン
  • 男女間の違い
  • 乳児死亡率
  • 都会と田舎の違い
  • 疾病の発症・罹患の季節的多様性

見てみると、いま医療や公衆衛生の分野で重要とされる要素が一通り含まれています。

人口統計調査の父:William Farr(1807年11月30日~1883年4月14日)

その後、John Grant の後を継ぐように、発展させたのがWilliam Farrです。彼は現代人口統計調査の父、などと呼ばれます。例えば、イギリスの死亡統計を系統的に収集し解析するなどということを行いました。William Farr が人口統計調査の実施方法について系統的に行うまでは、今のような「きっちりした(系統だった)」調査というものは確立されていませんでした。William Farrは、今日の人口統計調査の手法の根本的な考え方を作り出したという点においても、偉業を成し遂げたと言えるでしょう。

そして、調査した結果を保健機関や一般市民に報告したという点も、現在でも重要とされる「調査結果のフィードバック」に繋がります。

疫学の父:John Snow(1813年3月15日~1858年6月16日)

そして、「疫学の父」として有名なJohn Snowが登場します。といっても、「人口統計調査の父」William Farrと同時代を生きた方です。顕微鏡が開発される20年も前に、コレラ流行の原因を発見したということで、疫学のポテンシャルを十二分に発揮したというのが有名なエピソードでしょう。原理が完璧に判明していなくても、データをもとに推測を立て、現実的な打ち手を提案するという、まさに今、リアルワールドデータを使ってリアルワールドエビデンスを作り、治験のような実験的な研究を行う前にある程度の推測をできないか、試行錯誤している状況に繋がります。

まとめ

疫学はさまざまな基礎学問のもとに成り立つ、総合的な学問です。そして、まだまだ「疫学」として認知されて100年ほどしか経っていないため、学問としては若い部類に入るでしょう。

これからヘルスケア領域に踏み込む方は、疫学という学問を軸に知識を深めていくと、ヘルスケア全体を俯瞰してみることができて楽しいかもしれません。

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