エビデンス全般

いまさら聞けない?疫学の基礎ーその3「臨床研究の大まかな流れ(前編)」

2020年10月16日

疫学は、臨床医学や公衆衛生学における「共通言語」的な位置づけの学問だと述べました。

そしてその他の学問と同じく、「研究」というものが疫学の中でも重要な位置を占めます。

疫学研究は医学的な側面も有しており、「臨床研究」という枠組みの中に含まれるもの、と捉えられています。

では、その臨床研究ですが、どのような手順で進められるのか、今回はその全体像を見てみましょう。

臨床研究のステップ

まずは、臨床研究のステップを列挙してみます。

  1. 臨床的な疑問(クリニカルクエスチョン)を取り上げる。
  2. 研究のための課題(リサーチクエスチョン)を設定する。
  3. 研究の実施のための背景や意義について文章にする。
  4. PECOを設定する。
  5. 研究デザインを考える。
  6. データの収集方法を設定する。
  7. 研究対象者の基準を設定する。
  8. 研究対象者の人数を設定する。
  9. バイアスや交絡因子の取り扱いを定める。
  10. 研究のクオリティ担保や、実施に当たってのリスクをコントロールするのための対策を定める。
  11. 研究報告書の作成および批判的吟味を行う。
  12. 研究結果を公表する。

1. 臨床的な疑問(クリニカルクエスチョン)を取り上げる

疾患に対する臨床的な知識と洞察、実臨床における経験等を通じて「今、臨床において分かっていないこと、重要な問題」を探すのが臨床研究の始まりです。

例えば、「この疾患(疾患A、とします)を持つ患者さんは、〇〇と△△を食べない方がいいと言われているけれど、□□は食べても大丈夫なんだろうか?□□は今まではそこまで日本では流行っていなかったけれど、最近急に流行りだしたからよくわからないな。。。」のような素朴な疑問もクリニカルクエスチョンの1つと言えます。(実際にはもっと専門的な疑問の方が多いでしょう…)

2. 研究のための課題(リサーチクエスチョン)を設定する

「疾患Aを持つ患者さんは、〇〇と△△を食べない方がいいと言われているけれど、□□は食べても大丈夫なんだろうか?」という質問に対しては、「□□を食べてもよい」か「□□を食べてはいけない」のどちらかになりますが、このままだと研究デザインを設計することはできません。「どんな条件を満たせば、□□を食べてもよい、と言えるのか?」を明確にする必要があります。

例えば、「□□を食べると、疾患Aの症状が悪化する」のなら、□□は食べてはいけない、と言えるでしょう。では「疾患Aの症状が悪化する」というのは具体的にどんな状態を指すでしょうか?

疾患Aがアレルギー系の疾患であれば、アナフィラキシーショックを引き起こすというのを「症状の悪化」の非常に重い場合として設定してもよいかもしれません。

疾患Aが腎臓系の疾患であれば、腎機能の悪化についてみてもよいでしょう。その場合、腎機能を数値で測る指標があるので(健康診断では、クレアチニン値という値がありますね)その数値が基準値から外れた患者さんの人数を数える、というのも一つでしょう。

重要なのは、数値などの客観的な指標で測れるものを使って、恣意性を可能な限り排除することです。

3. 研究の実施のための背景や意義について文章にする

なぜその研究を行うのか、背景や意義について明確にすることは非常に重要です。

人を対象とした研究であれば、その人の健康に関する情報を使うことになります。研究デザイン次第では、人に何らかの薬を投与したり、あるいは行動を規定する(毎日30分歩いてください、と強いるような場合も含む)ことともあるでしょう。

その場合、きちんとした理由が必要です。必要でないのに、人の情報を使ったり、あるいは人に薬を投与したり、行動を規定する(≒制限する)ようなことは、道義的に認められないでしょう。

また、背景情報をきちんと調べないと、いざ研究をしても、過去の研究ですでに分かっていることを繰り返してしまったら研究の価値としては非常に致命的です。実はそのリサーチクエスチョンに対する回答は実施済の先行事例で分かることだったのであれば、わざわざ新しい研究をやる必要がそもそもない、ということになります。

論文化する際にも、研究の本題に入る前に、なぜこの研究をやったかを記載するセクションがありますので、いずれ研究結果を公表するときのことを考えながら、背景や意義についての文章を作成するとイメージしやすいでしょう。その疾患領域に詳しくない方が読んでも「なるほど、確かにこの研究は必要だし重要だ」と思えるような内容だと文句なしです。

さらにそれ以降のステップ

クリニカルクエスチョン、リサーチクエスチョン、研究の背景や意義、がそろえば、研究の基盤の部分は固まったと言えます。その次には、より研究を構造化するためのステップに入ります。

とっつきやすいのは、PECOのようなフレームワークを用いて、自分のリサーチクエスチョンをより考えやすい枠組みに落とし込むことです。

それについては次回に回しましょう。

まとめ

臨床研究の始まりはクリニカルクエスチョンです。

それをリサーチクエスチョンに昇華することで、どんなデザインや規模、スケジュールになるのかが少しずつ形になっていきます。

あまり固く考えず、まず何かやってみるというのがいいでしょう。

続きはこちら

いまさら聞けない?疫学の基礎ーその4「臨床研究の大まかな流れ(後編)」

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