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人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針の一部を改正する件 概要

人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針の一部を改正する件 概要

令和3年11月8日
文部科学省研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室
厚生労働省大臣官房厚生科学課、医政局研究開発振興課
経済産業省商務・サービスグループヘルスケア産業課

1.改正の趣旨

  • 個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律(令和2年法律第 44 号。以下「令和2年改正法」という。)及びデジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律(令和3年法律第37号。以下「令和3年改正法」という。)の 一部が令和4年4月1日に施行することに伴い、人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(令和3年文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第1号。以下「指針」という。)について、これらの法律の規定による改正後の個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号。以下「改正後個情法」という。)の規定を踏まえた見直しを行う必要があることから、「生命科学・医学系研究等における個人情報の取扱い等に関する合同会議 」(以下「合同会議」という。)において検討がなされてきた 。
  • 今般 、令和3年10月26日に公表された合同会議の取りまとめを踏まえて、指針について所要の改正を行う 。

2.改正の内容(案)

(1)指針の体系に係 る規定の見直し

① 用語の整理【現行指針第2 (24) ~ (31) 関係】

イ 指針における 生存する個人に関する情報についての用語は、 改正後個情法 における用語に合わせ、その定義・用い方を改正後個情法に合わせる。

ロ 死者の情報については、指針に用語の定義規定を置かない。なお、死者の試料・情報を用いる研究については、指針の規定に準じて生存する個人の試料・情報と同様に取り扱う旨の規定を お く。

ハ 「匿名化」の用語は用いず、匿名化されている情報については、改正後個情法上の該当する各用語を当てるとともに、仮名加工情報及び匿名加工情報に該当しない加工された情報は個人情報として取り扱う。

二 指針上の「対応表」は、個情法上の「匿名加工情報」「仮名加工情報」の加工の方法や加工に係る削除情報等についての法の規定との対応関係が明確になるよう整理を行う。

ホ 個人に関する情報に係る用語を含む規定について、上記整理を踏まえた所要の見直しを行う。

② 指針の適用範囲 の見直し 【現行指針第3関係】

特定の個人を識別できない試料・情報(既に作成された匿名加工情報を除く。)のみを用いる研究についても 指針の対象とする。

③ 指針における個人情報の管理主体

生命・医学系研究における個人情報の管理に係る責任主体は、研究機関の長又は既存試料・情報の提供のみを行う者が所属する機関の長とする。

(2) インフォームド・コンセント (以下「IC」という。 を受ける手続等の見直し

① 新たに試料・情報を取得して研究を実施する場合 【現行指針第8の1⑴関係 】

イ 研究対象者から新たに要配慮個人情報 を 取得して研究を実施する場合については、改正後個情法第20条第2項の規定 も踏まえ、一律に原則ICを取得することとする 。

ロ 改正後個情法第20条第2項に定める本人同意原則の例外要件に該当する場合で、試料を用いない研究かつ研究の実施等について拒否する機会を保障する場合であって研究対象者の権利利益を不当に侵害するおそれがない場合は、ICを受ける手続(以下「IC手続」という。)を適切な形で簡略化することができるものとする。

ハ 新たに取得した情報(要配慮個人情報を除く。)を共同研究機関に提供する場合のIC手続は、 改正後個情法第27条の規定も踏まえ、見直し後の指針に定める既存の個人情報(要配慮個人情報を除く。)を他の研究機関に提供する場合のIC手続 と同様とする。

ニ 改正後個情法第20条第2項に定める本人同意原則の例外要件について指針で規定する際は、学術研究であることによる場合とその他の特段の理由による例外に分けて規定することとする(以下この(2)において同じ)。

ホ 研究協力機関が試料・情報を取得 ・提供する場合においては、 研究者等は、当該研究協力機関の代理で当該取得・提供に関する適切な同意を受けるとともに、当該試料・情報を用いた研究の実施についてICを受けるものとする。

② 自機関で保有する既存試料・情報を用いて研究を実施する場合 【現行指針第8の1⑵ 関係】

イ IC手続を行うことが困難な場合に、IC手続を行うことなく利用できる既存試料・情報は、既存の仮名加工情報(個人情報であるものにあっては利用目的を公表している場合に限る。)、匿名加工情報、行政機関等匿名加工情報及び特定の個人を識別できない状態に管理されている試料とし、試料については当該試料から個人情報が取得されない場合に限るものとする。

ロ 社会的に重要性の高い研究に既存試料・情報を用いる場合 及び人体から取得された試料を用いない場合について、改正後個情法第18条第3項に定める例外要件に該当する場合で、研究の実施等について拒否する機会を保障する場合であって研究対象者の権利利益を不当に侵害するおそれがない場合にオプトアウトが許容される旨明確にする。

③ 他の研究機関に既存試料・情報を提供する場合 【現行指針第8の1⑶・⑷関係】

イ IC手続を行うことなく提供することができる既存試料・情報は、匿名加工情報、行政機関等匿名加工情報、特定の個人を識別できない状態に管理されている試料とし、試料については当該試料から個人情報が取得されない場合に限るものとする。

ロ 既存試料・情報の提供主体の位置づけ(当該既存試料・情報の提供先と共同で研究を実施するか否か)によって場合分けをし、提供される既存試料・情報の種類(人体から取得された試料又は要配慮個人情報を提供する場合か否か)で場合分けした規定とする。

ハ 人体から取得された試料又は要配慮個人情報を提供する場合 については、改正後個情法第27条の規定も踏まえ、原則ICを 取得するものとする。なお、 改正後個情法第27条第1項に定める例外要件に該当する場合で、研究の実施等について拒否する機会を保障する場合であって研究対象者の権利利益を不当に侵害するおそれがない場合においては、社会的重要性の高い研究のために提供される場合はIC手続を簡略化できるものとし、それ以外の提供の場合は、オプトアウトによる提供が許容されるものとする。なお、IC手続の簡略化は本告示による改正前の指針(以下「現行指針」という。)第8の9に定めるところによるものとする。

ニ 上記イ及びハ 以外の場合については、IC又は適切な同意を受けるものとする。 改正後個情法第27条第1項に定める例外要件に該当する場合で、研究の実施等について拒否する機会を保障する場合であって研究対象者の権利利益を不当に侵害するおそれがない場合においては、オプトアウトによる提供が許容されるものとする。

ホ オプトアウトにより既存試料・情報を提供する際に研究対象者等へ通知し、又は公開する事項について、現行指針に定める事項から、利用する者の範囲、当該既存試料・情報の管理責任者を削除し、令和2年改正法の内容も踏まえ、試料・情報の提供を行う機関の名称及びその長の氏名、提供される 試料・情報の取得の方法を加えるものとする。

④ 海外へ第三者提供する場合 【現行指針第8の1⑹関係】

イ 外国にある第三者に提供する場合には、引き続き、現行指針の規定を維持し、原則として、適切な同意を求めることとし、 改正後個情法第28条第1項に定める例外要件である改正後個情法第27条第1項各号に該当する場合であっても、(ア)本人の同意を得た場合、(イ) 個人情報委員会が定める基準に適合する体制を整備している者に対する提供である場合 又は (ウ)我が国と同等の水準国にある者に対する提供である場合に限り提供できるものとする。

ロ 改正後個情法 第 27 条第 1 項各号に該当する場合であって (イ 及び (ウ)に該当しない場合で、かつ、本人同意の取得が困難な場合にあっては、倫理審査委員会の意見を聴いた上で、オプトアウトを許容することとする。

ハ 改正後個情法 第 27 条第 1 項各号に該当する場合であっても (ア)の場合には、 改正後個情法第28条第2項と同様、同意取得に当たっては 、外国の名称等の情報を本人に提供する必要があるものとする。

ニ 改正後個情法 第 27 条第 1 項各号に該当する場合であっても (イ)の場合には、 改正後個情法第28条第3項 と同様 、相当措置の継続的な実施を確保するために必要な措置を講ずるとともに、本人の求めに応じて当該必要な措置に関する情報を本人に提供する必要があるものとする。

⑤ その他

第三者提供の際の個人関連情報の取扱いについては 、 個情法上の取扱いに準じた取扱いとする。また、提供を受けた研究機関は、研究を実施するに当たっては、第8の1(2)( 自らの研究機関において保有している既存試料・情報を用いて研究を実施しよう とする場合のインフォームド・コンセント の規定に準じたICを行うものとする。

(3)現行指針第9章の見直し 【現行指針第18~21関係】

イ 生存する個人に関する情報、死者の情報、人体から取得された試料の保護に関して規定する章とする。

ロ 生存する個人に関する情報については、 指針 に 規定しない 改正後個情法 の規定の取扱いを含め、 改正後個情法 の規律や条例等の適用を受ける事項については、指針のほか、それら規律 を遵守する旨の規定を おく。

ハ 死者の情報についても、特定の個人を識別することができるものは、生存する個人に関する情報と同様に、改正後個情法 や条例の規定により適切に取り扱う旨の規定をおく。

二 人体から取得された試料について、 他の研究機関への提供について、個人情報の利用停止請求等と同様に、改正後個情法 や条例等の規定に準じて取り扱う旨の規定をおく。

ホ 現行指針第19 、20 及び 21 に定める個人情報等及び匿名加工情報の取扱いについては、 改正後個情法 が適用することになるため、指針から削除する。

へ 現行指針第18 の2に規定する個人情報等の適正な取得等については、試料・情報の適正な取得等として、第 4 に規定する研究者等の責務として定めることとする。

(4)経過措置

  • 現行指針及びそれ以前の指針の規定により実施中の研究については、 個人情報保護関連法令及びガイドラインの規定が遵守される場合に限り、 なお従前の例によることができることとする。

(5)その他記載の適正化等 、上記を踏まえた 所要の見直しを行う。

3.施行期日

○令和4年4月1日

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