どんどん参りましょう。
今回は「第3 適用範囲」です。
1 適用される研究
この指針は、我が国の研究機関により実施され、又は日本国内において実施される人を対象とする生命科学・医学系研究を対象とする。ただし、他の指針の適用範囲に含まれる研究にあっては、当該指針に規定されていない事項についてはこの指針の規定により行うものとする。
ポイントは2つです。
- 「日本の研究機関によって実施される研究」が対象。
- 「日本国内において実施される研究」が対象。
ここで「日本の研究機関」ってなんだろう?という疑問が出てきます。
大学のような教育研究機関や、研究所のような研究機関だけなのでしょうか?
文部科学省による認可が必要なのでしょうか?
実は、一般の民間企業も、この指針でいう「日本の研究機関」としてみなされ得ます。
詳細はガイダンス等で補足があるはずなので、それを待ちましょう。
また、次に掲げるいずれかに該当する研究は、この指針( 既に作成されている匿名加工情報又は非識別加工情報( 個人情報保護法に規定する大学その他の学術研究を目的とする機関若しくは団体又はそれらに属する者により学術研究の用に供する目的で用いられるものに限る。) のみを用いる研究にあっては、第21を除く。) の対象としない。
ア 法令の規定により実施される研究
イ 法令の定める基準の適用範囲に含まれる研究
ウ 試料・情報のうち、次に掲げるもののみを用いる研究
① 既に学術的な価値が定まり、研究用として広く利用され、かつ、一般に入手可能な試料・情報
② 既に匿名化されている情報( 特定の個人を識別することができないものであって、対応表が作成されていないものに限る。)
③ 既に作成されている匿名加工情報又は非識別加工情報
研究用として広く利用され、かつ、一般に入手可能な試料・情報とは、有名なものはHeLa細胞でしょう。
既に匿名化されている情報とは、例えば電子カルテデータから、個人を識別可能な情報が一通り削除されていて、もとの患者さんに辿れないようになっているものなどです。
匿名加工情報又は非識別加工情報とは、認定された機関が作成できる「匿名加工情報(又は非識別加工情報)」のことです。
2 日本国外において実施される研究
⑴ 我が国の研究者等が日本国外において研究を実施する場合( 海外の研究機関と共同して研究を実施する場合を含む。) は、この指針に従うとともに、実施国又は地域の法令、指針等の基準を遵守しなければならない。ただし、この指針の規定と比較して実施国又は地域の法令、指針等の基準の規定が厳格な場合には、この指針の規定に代えて当該実施国又は地域の法令、指針等の基準の規定により研究を実施するものとする。
要は、複数国をまたぐ研究の場合、「厳しい方のルールに合わせて実施しなさい」ということです。
⑵ この指針の規定が日本国外の実施国又は地域における法令、指針等の基準の規定より厳格であり、この指針の規定により研究を実施することが困難な場合であって、次に掲げる全ての事項が研究計画書に記載され、当該研究の実施について倫理審査委員会の意見を聴いて我が国の研究機関の長が許可したときには、この指針の規定に代えて当該実施国又は地域の法令、指針等の基準の規定により研究を実施することができるものとする。
① インフォームド・コンセントについて適切な措置が講じられる旨
② 研究の実施に伴って取得される個人情報等の保護について適切な措置が講じられる旨
複数国をまたぐ研究で、現地のレギュレーションよりもこの指針の方が厳しくて、指針を守らなければならないとしてしまうと、現地での研究が出来ない場合には、現地のレギュレーションに従うのでもいいですよ、という余地を残している部分です。
ただ、その場合であっても「インフォームド・コンセント」と「個人情報保護」の部分は、きちんと研究計画書に書いていなければならない、とされています。
また、研究責任者が所属する、研究機関(日本の研究機関でなければならない)の長の許可も必須となっています。