エビデンス全般

いまさら聞けない?疫学の基礎ーその13「因果関係の判定とエビデンスピラミッド」

2020年11月10日

意外に知られていないのが、エビデンスピラミッドは因果関係の判定に有用な度合いで並んでいる、という点です。

エビデンスピラミッドの図

エビデンスピラミッドってなに?という方向けに、「一般社団法人Jミルク」のサイトに掲載されている図を引用させてもらいます。

引用元:ちょっと気になる基礎知識 「疫学研究」って?https://www.j-milk.jp/knowledge/food-safety/uwasa_ekigaku.html

因果関係の判定に使う際の「強さ」

因果関係を考えるためには、研究を実施して、その結果を見ることになるのですが、研究の種類(研究デザイン、とも言います)に応じて、因果関係の判定に使う際の根拠の強さがあります。

一般的に、因果関係の判定において「根拠の強さ」順に並べると次のようになります。

  1. ランダム化比較試験
  2. 前向きコホート研究
  3. 後向きコホート研究
  4. 症例対照研究(ケースコントロール研究)
  5. 横断研究(クロスセクショナル研究)
  6. 生態学的研究

エビデンスピラミッドの中には「生態学的研究」の表現がないですし、「生態学的研究」を記述的研究に加えてしまう見方もあります。

また、エビデンスピラミッドの中では、コホート研究は一般に観察研究と言われる、と書かれていますが、コホート研究の中にも介入が含まれるものもあります。

ランダム化比較試験だけが介入研究ということはありません。

また、ランダム化比較試験、コホート研究、ケースコントロール研究、クロスセクショナル研究のいずれも「数値でものを語る」研究、すなわり量的研究ですが、研究の中にも質的研究のように、あえて数値化することをせずに個々の患者さんあるいは個人のエピソードを丁寧に追っていくような研究もあります。

当然ながら、どちらが優れた研究であるというものではなく、研究で明らかにしたい疑問が何のかや、今何が分かっているのかによって、適切な研究デザインは変わってきます。

繰り返しますが「何でもかんでもRCTが出来れば万々歳」というのは間違いです。

エビデンスピラミッドは何の順に並んでいるのか

簡単に言うと「再現性の高さ」の順番に並んでいます。小難しい言い方をするなら、「内的妥当性の強い順番」です。

それなら、「in vitro研究が一番高いんじゃないのか?」という指摘もありますが、このエビデンスピラミッドは臨床研究あるいは臨床試験を軸に考えられているので、「人間の体にどう影響するのか?」という疑問に答えることが前提として組まれています。

そのため、動物実験であったり、細胞を使ったin vivo研究、あるいは、in silico研究のエビデンスレベルは、「実際、人間の体ではどうなのか?」の疑問にそもそも直接的に答えられない限界があるので、必然的に低くなってしまいます。

そのため、エビデンスピラミッドの順番をさらに正確に言うと「人間の体で実際にどうなのか、という疑問に対する回答についての再現性の高さ」の順番、となります。

まとめ

エビデンスピラミッドあるいはエビデンスレベルは、現状、「再現性の高さ」に焦点が当てられている点は、ぜひ覚えておきましょう。

さらに深堀りして詳しく学びたい方は、ざつさんのnoteをご参照ください。

エビデンスピラミッドを俯瞰する

https://note.com/zatu1977z2/n/nabccc4e03600

-エビデンス全般

© 2024 RWE