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Let's 解読!倫理指針 Part 09 「インフォームド・コンセントを受ける手続等・その2」

第8インフォームド・コンセントを受ける手続等における、「1 インフォームド・コンセントを受ける手続等」の続きです。

前回の記事は下記をご覧ください。

Let's 解読!倫理指針 Part 08 「インフォームド・コンセントを受ける手続等・その1」

Table of Contents

自らの研究機関において保有している既存試料・情報を用いて研究を実施しようとする場合のインフォームド・コンセント

これはどんなことかというと、例えば、「大学病院で、以前採取した血液を保管しており、その血液を使って研究する場合」や「クリニックで、自分の施設の電子カルテ情報を使って研究する場合」などです。

もともと自分の施設で手元に持っている血液サンプルや、電子カルテデータを使って研究する場合なので、やろうと思えば「血液を採取された患者さん」や「電子カルテに病歴等の情報が入力されている患者さん」に無断で研究することも出来そうですが、倫理的観点から無断でやっちゃだめですよ(やるなら相応の理由が必要ですよ)、ということになります。

研究者等は、それぞれ次のア又はイの手続に従って研究を実施しなければならない。

  • ア 人体から取得された試料を用いる研究
  • イ 人体から取得された試料を用いない研究

ア 人体から取得された試料を用いる研究

研究者等は、必ずしも文書によりインフォームド・コンセントを受けることを要しないが、文書によりインフォームド・コンセントを受けない場合には、5 の規定による説明事項について口頭によりインフォームド・コンセントを受け、説明の方法及び内容並びに受けた同意の内容に関する記録を作成しなければならない。ただし、これらの手続を行うことが困難な場合であって次の(ア)から(ウ)までのいずれかに該当するときには、当該手続を行うことなく、自らの研究機関において保有している既存試料・情報を利用することができる。

(ア) 当該既存試料・情報が次に掲げるいずれかに該当していること。

① 匿名化されているもの( 特定の個人を識別することができないものに限る。) であること。

② 匿名加工情報又は非識別加工情報であること。

(イ) 当該既存試料・情報が(ア)に該当しない場合であって、その取得時に当該研究における利用が明示されていない別の研究についての研究対象者等の同意のみが与えられているときには、次に掲げる要件の全てを満たしていること。

① 当該研究の実施について、6 ① から④ までの事項を研究対象者等に通知し、又は公開していること。

② その同意が当該研究の目的と相当の関連性があると合理的に認められること。

(ウ) 当該既存試料・情報が(ア)又は(イ)のいずれにも該当しない場合であって、社会的に重要性の高い研究に当該既存試料・情報が利用されるときにおいて、次に掲げる要件の全てを満たしていること。

① 当該研究の実施について、6 ① から⑥ までの事項を研究対象者等に通知し、又は公開していること。

② 研究が実施されることについて、原則として、研究対象者等が拒否できる機会を保障すること。

読みづらいので要約すると、次のようになります。

  • ア 人体から取得された試料を用いる研究 → 必ずしも文書によりインフォームド・コンセントを受けることを要しないが、文書でIC取得しないなら口頭でIC取得して記録に残しなさい(IC取得困難だから免除、となるためには次の3つのどれかを満たすこと)
    1. 当該既存試料・情報が「匿名化されている」または「匿名加工情報(非識別加工情報)である」。
    2. 別の研究で同意が得られている。そして、「説明事項を通知または公開しており」「これから行おうとしている研究と、既に同意を得ている別の研究が関連ありとみなせる」。
    3. これから行おうとしている研究が社会的に重要である。そして、「説明事項を通知または公開しており」「研究参加者が自分の試料や情報を使われるのを拒否できる機会が保障されている」。

簡単にいうと、

血や細胞を使う研究なら、同意は文書か口頭で必ず取りなさい。「同意取れないので免除して」、という言い訳が通用するのは「匿名化されている場合」か「別の研究で同意を取得済で、それを今回にも応用していいと言える場合」か「社会的に重要な研究オプトアウトが保障されている場合」のいずれかの場合だけですよ。

というところですね。

イ 人体から取得された試料を用いない研究

研究者等は、必ずしもインフォームド・コンセントを受けることを要しないが、インフォームド・コンセントを受けない場合には、次の(ア)から(ウ)までのいずれかに該当していなければならない。

(ア) 当該研究に用いられる情報が次に掲げるいずれかに該当していること。

① 匿名化されているもの( 特定の個人を識別することができないものに限る。) であること。

② 匿名加工情報又は非識別加工情報であること。

(イ) 当該研究に用いられる情報が(ア)に該当しない場合であって、その取得時に当該研究における利用が明示されていない別の研究についての研究対象者等の同意のみが与えられているときには、次に掲げる要件の全てを満たしていること。

① 当該研究の実施について、6 ① から④ までの事項を研究対象者等に通知し、又は公開していること。

② その同意が当該研究の目的と相当の関連性があると合理的に認められること。

(ウ) 当該研究に用いられる情報が( ア)又は(イ)のいずれにも該当しない場合であって、学術研究の用に供するときその他の当該情報を用いて研究を実施しようとすることに特段の理由があるときは、次に掲げる要件の全てを満たしていること。

① 当該研究の実施について、6 ① から⑥ までの事項を研究対象者等に通知し、又は公開していること。

② 研究が実施又は継続されることについて、原則として、研究対象者等が拒否できる機会を保障すること。

こちらも読みづらいので要約すると、次のようになります。

  • イ 人体から取得された試料を用いない研究 → 必ずしもインフォームド・コンセントを受けることを要しないが、その場合、次の3つのどれかを満たすこと。
    1. 当該既存試料・情報が「匿名化されている」または「匿名加工情報(非識別加工情報)である」。
    2. 別の研究で同意が得られている。そして、「説明事項を通知または公開しており」「これから行おうとしている研究と、既に同意を得ている別の研究が関連ありとみなせる」。
    3. これから行おうとしている研究が社会的に重要である。そして、「説明事項を通知または公開しており」「研究参加者が自分の試料や情報を使われるのを拒否できる機会が保障されている」。

簡単にいうと、

血や細胞を使わない研究でも、同意は取りましょう。同意を取らなくてもいいのは「匿名化されている場合」か「別の研究で同意を取得済で、それを今回にも応用していいと言える場合」か「社会的に重要な研究オプトアウトが保障されている場合」のいずれかの場合だけですよ。

というところですね。

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