今回は「米国FDAのRWEプログラム」について、さわり程度ではありますが、ご紹介いたします。
Table of Contents
Framework for FDA's Real-World Evidence Program
序論
アメリカでは、リアルワールドデータやリアルワールドエビデンスを、各種の意思決定への使うことが義務付けられています。
根拠法は主に次の二つです。
- The 21st Century Cures Act
- 連邦食品医薬品化粧品法
具体的には、次の二つが義務付けられています。
- 既に承認された医薬品の新効能・効果の承認を支援するためにリアルワールドエビデンスを使うことを評価する枠組みを作る
- 医薬品承認後の試験要件を支援又は満たすためにリアルワールドエビデンスを使うことを評価する枠組みを作る
さらにポイントは、このフレームワーク(Framework for FDA's Real-World Evidence Program)は医療機器をスコープに含めていないという点です。
医療機器には別のガイダンスがあるので、あえて外しているのですね。
Scope of RWE Program Under 21st Century Cures Act
Cures Actの下では、FDAのRWEプログラムは、FD&C法第505条(c)に基づいて承認された医薬品の新しい適応症の承認をサポートするため、または承認後の研究要件をサポートまたは満たすために、製品の有効性に関するRWEを生成するためにRWDを使用する可能性を評価しなければなりません。
FDAのRWEプログラムは、公衆衛生法第351条に基づいて認可された生物学的製剤にも適用されます。
RWDは、製品の有効性に関するRWEの生成に使用されていなくても、臨床試験の効率を向上させるために使用することもできます。
使用方法としては例えば下記のようなものが考えられます。
- 無作為化比較試験における検定のための仮説の生成
- 薬剤開発ツールの特定(バイオマーカーの特定を含む
- 地理的地域内または特定の試験実施場所の両方で、関連する集団における計画された除外基準の影響を検討することにより、試験の実施可能性を評価すること。
- ベイズ統計モデルにおける事前確率分布の情報化
- 濃縮または層別化のための予後指標または患者のベースライン特性の特定
- 地理的に分散した研究コホートの集合(例:希少疾患や標的治療薬のための医薬品開発において
FDAのRWEに関する声明
FDAは、リアルワールドエビデンス(RWE, Real-World Evidence)について次のような声明を出しています。
https://www.fda.gov/science-research/science-and-research-special-topics/real-world-evidence
だいたい、下記のような内容が書かれています。
リアルワールドデータ (RWD) とリアルワールドエビデンス (RWE) は、ヘルスケアに関する決定においてますます重要な役割を果たす
- FDAは、市販後の安全性及び有害事象をモニタリングし、規制当局の判断を下すためにRWD及びRWEを使う
- 医療関係者は、「医療保険の範囲を決める」「治療ガイドラインの作成」「日常診療での治療選択の意思決定」等のために、RWD/RWEを使う
- 医薬品開発者は、革新的で新しい治療アプローチを生み出すための臨床試験デザイン(例:大規模で単純な試験、実用的な臨床試験)及び観察研究を支援するためにRWD及びRWEを使う
2016年に成立した法律「21st Century Cures Act」では、承認薬の新しい適応の承認を含め、規制上の意思決定を支援するために、リアルワールドデータの利活用にさらに重点が置かれています。
RWEは、従来の臨床試験以外の情報源から得られた医薬品の使用に関するデータ、あるいは潜在的なベネフィット又はリスクと定義されました。
なぜ今このようなことが起こっているのでしょう?
大量のhealth-related dataを収集・蓄積するためのコンピューター、モバイルデバイス、ウェアラブルデバイス、あるいはその他のバイオセンサーの利用が急速に加速しています。
このデータは、これまでは実現不可能であった疑問に答えるために、医療現場で臨床試験や臨床研究をよりよくデザインし、実施することを可能にする可能性を秘めています。
さらに、高度で新しい分析能力の開発により、これらのデータをよりよく分析し、分析結果を医薬品の開発や承認に適用することができます。
RWDとは何か、どこから来たのか?
リアルワールドデータ (RWD) とは、さまざまな情報源から定期的に収集された患者の健康状態及び/又は医療の提供に関するデータです。
RWDは様々な情報源から生じる可能性がある。例えば、下記のようなものが考えられます。
- 電子医療記録 (EHR: Electronic health record)
- 請求及び請求業務(いわゆるレセプトデータ)
- 製品及び疾患のレジストリ
- 患者さん自身が作成したデータ(在宅を含む)
- 健康状態を知らせることができる他の情報源(モバイル機器など)から収集したデータ
RWEとは何か?
リアルワールドエビデンス (RWE) とは、RWDの解析から得られる医薬品の使用及び潜在的なベネフィット又はリスクに関する臨床的エビデンスです。
RWEは、大規模で単純な試験、プラグマティックトライアル、及び観察研究(前向き及び/又は後ろ向き)を含むがこれらに限定されない様々な試験デザイン又は解析から得られます。