デジタルヘルス

成長戦略フォローアップ案1デジタル化への集中投資・実装とその環境整備

2021年6月18日

(1)デジタル庁を中心としたデジタル化の推進

成長戦略実行計画に基づき、以下の具体的施策を講ずる。

ⅰ)国民目線のデジタル・ガバメントの推進

  • 官民双方が一層安全・安心にクラウドサービスを採用し、継続的に利用していくため、2021 年3月にクラウドサービスリストが公開された政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)において、統一的なセキュリティ要求基準に基づき安全性の評価がされたクラウドサービスについて当該リストへの追加登録や更新審査を行い、全政府機関における本制度の利用を促すとともに、運用状況を踏まえ、基準等について見直す。
  • 公共安全 LTE については、2021 年度から先行的に基本機能の運用を開始し、安定性・信頼性の確保のための技術的検討を実施した上で、2022年度から本格運用する。
  • Gビズ ID の普及拡大やJグランツの利便性向上、Gビズコネクトを通じたデータ連携の推進など、法人デジタルプラットフォームの整備を進め、事業者向け行政手続の利便性を向上させる。
  • 世界最高水準の事業環境を実現するために、以下の取組を行う。
    • 法人設立ワンストップサービスについて、起業時に本サービスが一般的に利用されるよう広報活動を行う。
    • 商業登記電子証明書について、法人の本人確認をデジタル完結させる手段として一般的に利用されるよう広報活動を行う。2021 年度中に、利便性の向上策や無償化の可否を検討する。あわせて、クラウド化に向けた検討を行う。また、費用対効果も踏まえつつ、2025 年度までの可能な限り早期に新規システムの運用開始を目指す。
    • 年末調整・所得税の確定申告手続について、マイナポータルを活用した各種申告書の入力自動化等を行う。具体的には、①医療費通知データについては、2022 年2月を目途に、②ふるさと納税の寄附金控除証明書データについては、2021 年度以降に、自動入力可能とする。
    • 地方税共通納税システムについて、2021 年 10 月より個人住民税の利子割・配当割・株式等譲渡所得割を対象税目に追加し、金融機関等の特別徴収義務者が行う申告・納税の電子化に取り組む。
    • 裁判手続について、司法府の自律的判断を尊重しつつ、①現行家事事件手続法の下でのウェブ会議を活用した非対面での運用について 2021 年度中に一部の家裁本庁で試行すること、②「刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会」で令状等の書類発受、捜査・公判での各手続等のオンライン化に係る法制化を早急に検討し、2021 年度内を目途に取りまとめること等を期待する。
    • AI を活用したデータベース化の実現のために具体的な課題や方策を 2021 年度中に検討し、民事判決情報の利活用に向けて取り組む。
    • オンラインでの紛争解決(ODR)の推進に向け、AI 技術の活用可能性等の検討を進め、ODR を身近なものとするための基本方針を 2021年度中に策定する。下請かけこみ寺でのオンライン相談を 2021 年度から実施する。
    • 固定資産評価額の証明書の取得・提出の慣行をなくす観点から市町村から法務局への評価額通知のオンライン提供の拡大推進を図る。
  • 乳幼児の定期予防接種について、民間による電子的な予診票を利用可能とするため、2021 年度中できるだけ早期に、本人(保護者)及び医師が従来求められていた署名に代えて、同意ボタンやチェックボックスにチェックを入れるなど簡易な確認方法により行うことができるという考え方を整理して公開する。これにより、先行対応可能な市区町村から統一された予診票のデジタル化を順次実現することを目指す。自治体業務(対象者への予防接種の周知、予防接種記録、医療機関との間の請求支払など)のシステム標準化の支援については、2025年度までに実現する自治体システム標準化対象の 17 業務の1つとなっている予防接種台帳システムを含む健康管理システムにおいて、優先順位を上げて対応する。

ⅱ)デジタル社会の共通基盤の整備(マイナンバー制度)

  • 社会保障・税・災害の3分野以外におけるマイナンバーを利用した情報連携及び、行政事務全般(治安、外交等を除く)における機関別符号のみを利用した情報連携について、2021 年度に検討し、国民の理解の得られたものについて、2022 年の通常国会に法律案を提出する。
  • マイナンバー付き公金受取口座の登録・利用の仕組み等について、可能な限り 2022 年度中の運用開始を目指す。また、預貯金付番を円滑に進める仕組み(相続・災害時のサービスを含む)については、2024年度中の運用開始を目指す。付番の状況を見つつ、更なる検討を行うこととする。

なお、関係各所と調整の上、政省令の制定や金融機関におけるガイドラインの策定を進めるとともに、関係機関及び金融機関におけるシステム整備を行い、円滑な施行に向けて準備を整える。

  • マイナポータルなどのユーザー・インターフェース、ユーザー・エクスペリエンスの最適化として、2021 年度までに利用者(国民)の満足度(分かりやすい、操作しやすい、時間がかからない等)、業務で利用する地方公共団体等の満足度(操作しやすい、不備案件が少ない、業務システムと連携しやすい等)を抜本的に改善・最大化する。その際、更なる民間の知見や技術の活用を含めて検討する。また、2022 年度以降も、継続的に改善を行う。
  • 優先的な取組が求められる医師、歯科医師、看護師等の約 30 の社会保障等に係る国家資格等について、マイナンバーを活用した住民基本台帳ネットワークシステム及び情報提供ネットワークシステムとの連携等を目指す。あわせて、2021 年度に、各種免許・国家資格等の範囲等について調査を実施し、2023 年度までに、資格管理者等が共同利用できる資格情報連携等に関するシステムの開発・構築を行い、2024年度にデジタル化を開始する。
  • 運転免許証のデジタル化を図り、2024 年度末にマイナンバーカードとの一体化を開始する。これに先立ち、警察庁及び都道府県警察の運転免許の管理等を行うシステムを 2024 年度末までに警察庁の共通基盤上に集約する。
  • 在留カードとマイナンバーカードの一体化について、2021 年中に結論を得て、所要の法律案を 2022 年の通常国会に提出する。政省令等の整備・システム改修を経て、2025 年度から一体化したカードの交付を開始する。
  • マイナンバーカードの 2024 年度中の国外での継続利用の開始に向け、在外公館でのマイナンバーカードの交付等の検討を進める。また、開始に伴い、マイナンバーを活用した海外在留邦人に対する円滑な領事業務の在り方の検討を進める。
  • 2022 年度から旅券(パスポート)のオンラインでの申請を可能とし、その際、マイナポータルを利用し、マイナンバーカードの公的認証機能を活用する。また、マイナポータルを利用し、2024 年度までに、法務省が構築する戸籍情報連携システムにより提供される戸籍電子証明書を利用した戸籍謄抄本の添付の省略を検討する。
  • 養育費の支払確保策として、マイナンバー制度の活用の可能性を検討する。
  • デジタル化による利便性の向上を国民が早期に享受できるよう、2022年度末を目指して、原則、全地方公共団体で、特に国民の利便性向上に資する手続について、マイナポータルを活用し、マイナンバーカードを用いてオンライン手続を可能にする。
  • 2021 年度末までにマイナポイント事業の基盤を活用したモデル事業を複数の地方公共団体で実施し、地方公共団体が多様なポイント給付事業を実施できる基盤を構築する。
  • マイナンバーカードの電子証明書のスマートフォンへの搭載の実現に向けて、2021 年度末までに技術検証・システム設計を行い、2022 年度中の実現を目指す。その際、暗証番号によらずに生体認証を活用する方策について、その課題を整理・検討を進めるほか、マイナンバーカードの券面情報を正確に入力する機能など、マイナンバーカードの他の機能についても、関係する国際標準規格との相互運用性の確保など様々な課題を整理した上で、スマートフォンへの搭載方法について検討する。あわせて、公的個人認証サービスと紐付けられた民間事業者の ID の利活用に関する課題と対応を整理する。
  • 自動車検査登録手続について、業務改革を徹底した上で、マイナンバーカードの利活用を含めたデジタル技術の活用による国民の利便性向上及び業務の効率化を実現するため、2021 年度初めから実施している業務フロー改善調査の検討結果も踏まえ、制度整備やシステム改修等を行い、2022 年度から新たな業務フローを順次導入する。

(国・地方を通じたデジタル基盤の標準化等の推進)

  • 地方公共団体の主要な 17 業務を処理するシステム(基幹系システム)について、「デジタル・ガバメント実行計画」(令和2年 12 月 25 日閣議決定)に基づき、関係府省が標準仕様を作成する。国は、地方公共団体情報システムの標準化に関する法律に基づき、地方公共団体の意見を丁寧に聴きながら、2025 年度を目標時期として、地方公共団体がガバメントクラウド上に構築された標準準拠システムへ円滑に移行できるよう、先行事業を通じた検証を行うとともに、デジタル基盤改革支援基金等による支援を行う。
  • 地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」(2020 年 12 月改定)に基づき、住民情報の流出防止の徹底を維持しつつ、国が認めた特定通信に限りインターネット経由での申請等のデータの電子的移送を可能とする等地方公共団体での適正なセキュリティ対策の徹底を働きかける。また、地方公共団体の業務システムの標準化・共通化を踏まえ、「三層の対策」の抜本的見直しを含め新たなセキュリティ対策の在り方を検討する。さらに、地方公共団体のパブリッククラウドの利用について、ISMAP の運用状況等を踏まえ、必要なセキュリティ対策を検討する。
  • 2020 年 12 月に策定した「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」に基づき、地方公共団体の取組を着実に進めるため、2021 年夏を目途に自治体の情報システムの標準化・共通化や行政手続のオンライン化等の進め方を「(仮称)自治体 DX 推進手順書」として提示する。

ⅲ)包括的データ戦略の推進と準公共分野等における共通基盤の整備(データ戦略)

  • データ利活用の促進のため、行政分野では、ガバメントクラウドやガバメントネットワーク、ベースレジストリなど官民が DX を進める上で共通基盤となるインフラを 2021 年9月に発足予定のデジタル庁において中長期的に整備・運用することとして、2025 年度を目標に、各府省・地方自治体にサービス提供を行うとともに民間事業者のサービスと連携し、プラットフォームとしての行政を実現する。
    また、データ流通を阻害する要因を除去するルールをデータ戦略タスクフォースにおいて整理し、今後、データ連携を促進する取組やプラットフォームを構築する取組において具体化を図る。
    健康・医療・介護、教育、防災の分野において、デジタル庁及び関係府省が連携してこれらのルールの具体化を図るとともに、2021 年度中に、それぞれの分野の抱える政策課題を特定する。
  • バイオ分野、マテリアル分野、宇宙分野などデータ連携が進みつつあ
    る重要な産業分野において、データの連携や提供の方法と安全管理措置、データ連携に係るコスト負担の考え方等、データ連携に関する基本的な考え方を 2021 年度までに取りまとめる。

    • バイオ分野において、国際的な市場獲得に向けて必要なデータ連携基盤の構築を目指し、2022 年度中に「バイオデータ連携・利活用に関するガイドライン(仮称)」を策定する。このため、SIP 等の研究開発プロジェクトも活用し、データの構造化やクリーニング、連携API の作成等の要件を実証できるよう、2021 年度半ばまでに当該ガイドラインの中間取りまとめを行う。
    • 製造プロセスを効率化・合理化するためのプロセス・インフォマティクスの推進に向けて、2021 年度中にファインセラミックスや機能性化学品等のプロセスデータの整備方針を策定する。また、2022 年度以降、効率的なデータ取得基盤を整備し、取得オープンデータを活用するシミュレーションツールを構築する。さらに、材料開発の現場でのクローズデータの活用等も通じた同ツールの精度の向上により、その普及を図る。
    • 必要なデータの創出、蓄積、利活用促進によるマテリアルズ・インフォマティクスの推進に向けて、2021 年度から、先端的な共用設備の提供体制を構築し、AI 解析機能の実装によりデータ中核拠点に集約される良質なデータを基軸にした研究開発を推進する。また、2022 年度までに国費研究データに係る優先領域と保管形式の考え方を整理するとともに、2023 年度までにデータを一元的に利活用するシステムの試験運用を開始する。
    • 2021 年度に政府衛星データプラットフォーム「Tellus(テルース)」での衛星データの利用・分析等の更なる拡充を図るとともに、国際標準に基づく API での衛星データの提供と利用を推進する。また、ユーザー向けのハンズオントレーニングやコンテストの実施、地方公共団体等が有する地理空間情報とのデータ連携、ユーザーと連携したニーズベースのアプリ開発実証、欧州コペルニクスとのデータ連携等により、衛星データの利用拡大や新たなビジネス創出を促す。
    • 「農業分野におけるオープン API 整備に関するガイドライン」に基づき、2021 年度からトラクター、コンバイン等農業機械から取得される位置や作業記録等のデータの連携・共有を進める。また、農業データ連携基盤においてデータ連携を実現する API の実装等の活用促進と運営体制の強化に向けた検討を進め、生産から販売・消費までのデータ連携を実現するスマートフードチェーンのプラットフォームを 2022 年度までに構築する。
    • 都道府県が導入を進める森林クラウドとデータ連携が可能な ICT 生産管理システムの標準仕様を 2021 年度末までに作成し、民間事業者への導入促進を図るとともに、サプライチェーンでの需給や合法性確認等データをシステム共有する取組を加速化する。
    • 水産資源の評価・管理の高度化、効率的な操業・経営の支援や水産関連ビジネスの創出を支援するため、水産業データ連携基盤に基づき水産分野のデータ連携・共有を推進するとともに、データ利活用の推進に向けたデータポリシーの確立やデータ標準化の検討を進め、2021 年度にデータ契約ガイドラインを策定する。
    • 官民が有する不動産関連データの連携を進めることで、不動産市場の透明性向上、不動産業の生産性や消費者の利便性の向上、低未利用不動産の利活用や所有者不明土地の所有者探索を促進するため、2021 年度中に不動産関連データの連携基盤となる不動産 ID(共通
      番号)のルール整備に着手する。
    • 港湾の電子化(サイバーポート)については、民間事業者間の物流手続の電子化を行う港湾物流分野(2021 年4月から運用開始)の利用促進・機能改善を図るとともに、港湾管理分野及び港湾インフラ分野の電子化を進め、2023 年度以降のデータ連携による3分野一体の運用を目指す。
    • 2021 年度から利用者の意見を踏まえて海のデータに関する API 連携やデータの標準化に関するルールを見直すとともに、関係者間でのデータ活用を促し、2022 年度までに海のデータ連携を着実に進める環境を整備する。これにより、航路設定の最適化や漁場の探索精度の向上等に向けて、水温、海流、船舶通航量等の海のデータの活用や官民での共有を図ることとし、2021 年度は試行版を公開した上で、利用者からの意見・要望等を踏まえて機能改善を行い、2021 年度末までに海のデータに関する API の正式版を公開する。
    • 内閣府においてインフラ分野全体での連携型インフラデータプラットフォーム構築に向けて、官民共同による運営体制などの環境整備を 2021 年度中に行い、関係機関におけるデータ連携を開始する。
    • 2021 年度中に製造分野でのデータの単位や表現方法等データ品質の改善活動を開始するとともに、2022 年度から企業間でのデータ流通の仕組みを導入し、製造現場の価値あるデータの最大限の活用を目指す。
    • 公共交通における混雑状況等の MaaS(Mobility as a Service)関連データの提供等、MaaS の社会実装を推進するため、2021 年4月に改訂した「MaaS 関連データの連携に関するガイドライン」に基づく MaaS 関連データの連携・利活用を推進する。

(準公共分野等における共通基盤の整備)

  • デジタル庁は、健康・医療・介護、教育、防災等の準公共分野や、契約・決済等の業種を超えたシステム間連携が必要な相互連携分野について、①社会課題の抽出や実現すべきサービスの設定、②必要なデータ標準の策定やデータ取扱いルール・システムの整備、③運用責任者の特定やビジネスモデルの具体化など、デジタル化やデータ連携に向けた取組を一気通貫で支援するためのプログラムの創設について検討する。当該支援プログラムは、府省庁の枠を超えた管理を行うため、デジタル庁が分野ごとに関係府省庁や関係機関等を含め推進体制を整備した上で、各分野におけるデジタル化を推進していく仕組みとなるよう検討を進める。

ⅳ)デジタル人材の育成

  • DX の推進を支える人材育成のため、デジタル人材育成プラットフォームを整備するとともに、産学官金を巻き込んだ地域包括 DX 推進拠点を全国でネットワーク化し、DX 成功例の創出や人材育成に資する DXプロジェクトを実施する。
  • 高齢者等のデジタル活用の不安解消に向けて、民間企業や地方公共団体等と連携したオンラインによる行政手続やサービスの利用方法等に関する助言・相談等の支援を 2021 年度から全国で本格実施する。
  • デジタル改革をけん引する人材を確保するため、IT スキルに係る民間の評価基準を活用して採用を円滑に進める等、優秀な人材が民間、自治体、政府を行き来しながらキャリアを積める環境の整備を進める。デジタル庁を中心に各府省においては、2022 年度以降、国家公務員採用総合職試験に新たに設けられるデジタル区分及び国家公務員採用一般職試験において試験内容を見直した上で改称されるデジタル・電気・電子区分の合格者について、積極的に採用する。あわせて、国・地方の職員に対する研修の充実・強化、キャリアパスの設定促進など行政機関におけるデジタル人材の育成を図る。さらに、レベルの高いデジタル人材が企業に供給・活用され、企業のデジタルケイパビリティを向上させるべく、デジタル人材の育成・確保を進めていく。

(2)5G の早期全国展開、ポスト 5G の推進、いわゆる 6G(ビヨンド 5G)の推進

成長戦略実行計画に基づき、以下の具体的施策を講ずる。

ⅰ)安心安全な 5G・ローカル 5G やポスト 5G の推進

  • 低遅延や多数同時接続が可能となる全国 5G・ローカル 5G の整備を、サイバーセキュリティやオープン性を確保しつつ推進するため、5G 法に基づく税制支援措置等を行う。
  • 5G について、全国的な整備を推進するため、条件不利地域において実施する携帯電話等エリア整備事業等を引き続き実施するとともに、インフラシェアリングを活用した基地局整備の促進等、官民の役割分担を踏まえた支援を行う。
  • 5G を活用したソリューションの普及を促進するため、ローカル 5G 等の開発実証によるソリューション事例の創出に取り組むとともに、当該ソリューション事例や携帯電話事業者による 5G を活用したソリューション事例を多くの企業等において提供・利用しやすい仕組みの構築を目指す。
  • 今後の産業用途への拡大のために必要となるポスト 5G(多数同時接続や超低遅延の機能が強化された 5G)などの情報通信インフラに関して、O-RAN、vRAN を始めとする各要素技術の研究開発、社会実装、国際展開を支援する。加えて、ポスト 5G で必要となる先端半導体を将来的に国内で製造できる技術を確保するため、製造技術の開発に取り組む。
  • ポスト 5G ネットワークを利用しつつ、クラウドより利用者に近いエッジで高速・高度な AI 学習・データ処理を行う 5G-MEC(Multi-access Edge Computing)技術の利活用により、スマート工場や自動運転、スマートシティなど多用な産業の高度化・DX を促進するため、2021 年度に 5G と MEC に関するデバイス・システム・アプリケーションの開発を行い、社会実装に向けて導入支援する。
  • 情報通信基盤の早期の全国展開に資する以下の取組を行う。
    • 光ファイバや携帯電話について、従来の目標を1年前倒して、いずれも利用できない地域を 2022 年度末までにゼロとすることを目指す。
    • 高度無線環境整備推進事業等により光ファイバ整備を推進するとともに、地方公共団体が保有する光ファイバの高度化の支援やブロードバンド基盤の担い手に関して「公」から「民」への移行の推進に取り組む。
    • ブロードバンドのユニバーサルサービス化に向けた検討を行い、2021 年夏頃に取りまとめるとともに、その結果を踏まえ、所要の措置を講ずる。
  • 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴うインターネットトラヒックの急増を踏まえ、インターネットの混雑緩和や品質確保を図るため、インターネットトラヒック増の対応に係るガイドラインを 2021 年度中に策定する。また、大規模かつ突発的なトラヒックに関する情報の事前共有の仕組みの実証や東京・大阪に集中する IX の地域分散の推進、インターネットの接続改善に係る利用者への啓発活動に取り組む。
  • 5G について、我が国の O-RAN や vRAN の取組に対する 5G 法による税制支援等の成果やシステム実用化の状況も踏まえつつ、G7 各国等と連携してオープン化とベンダーの多様化によるセキュリティと強靱性の確保を進めるとともに、我が国企業の 5G に係る製品・システムの海外展開を推進する。
  • 日米首脳での合意を踏まえ、インターネットエコノミーに関する日米政策対話(IED)や日米戦略デジタル・エコノミーパートナーシップ(JUSDEP)を通じてこれまで培われてきた協力体制を基礎とした「グローバル・デジタル連結性パートナーシップ」(GDCP)を立ち上げ、日米による第三国連携や多国間の枠組みでの連携等を行うことにより、我が国を含む世界的なデジタル経済の一層の促進に向けた協力関係を構築する。

ⅱ)いわゆる 6G(ビヨンド 5G)の推進

  • ビヨンド 5G について、世界最高水準の研究開発環境を整備し、積極的な先行投資とともにシェア確保に向けた取組を推進する。あわせて、ビヨンド 5G の実現に向けてグローバルな官民連携の下で戦略に取り組む体制を整備する。具体的には、
    • 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)に創設された研究開発基金及びテストベッド等の共用施設・設備を活用し、官民の叡智を結集して、テラヘルツ波等高周波の利用技術やマルチコアなどの高速大容量の光ネットワーク技術等の研究開発に取り組む。また、当面5年間の集中的な研究開発投資に向け、ビヨンド 5G 研究開発への電波利用料の活用についても検討を行う。
    • 産学官のビヨンド 5G 実現に向けた取組の加速化及び国際連携の促進のため、「Beyond 5G 推進コンソーシアム」の活用等により、2021年度中に我が国が今後注力すべき分野等を分析し得られた知見を共有するとともに、国外のビヨンド 5G 推進団体との情報共有等を含む MOC の締結等することで、国際的な連携体制を構築する。
    • Beyond 5G 新経営戦略センター」を核として、産学官の主要プレーヤーを結集し、知財の取得や国際標準化に向けた取組を戦略的に推進するとともに、研究開発の初期段階から国際標準化活動ができるよう、信頼でき、かつ、シナジー効果も期待できる戦略的パートナーである国・地域の研究機関との国際共同研究を実施する。また、ビヨンド 5G に関する標準の戦略的な活用に向けた省庁横断的な取組について、統合イノベーション戦略推進会議標準活用推進タスクフォースと連携して推進する。
  • 電波模擬システム(日本版コロッセオ)について開発及び整備を 2023年度までに行うとともに、2022 年度までにユーザー向けの検証環境を一部開放し、新たな電波システムの開発・検証を促進する。
  • 通信ネットワークの更なる高速・大容量化の早期実現に向け、通信トラヒック及び消費電力の急激な増大に対応するための光伝送技術等を実用化する。具体的には、2025 年度末までに基幹網及びアクセス網の伝送速度を現状の 100 倍にする技術の確立を目指す。

(3)携帯電話料金の低廉化

成長戦略実行計画に基づき、具体的施策を講ずる。

(4)デジタルプラットフォーム取引透明化法の着実な執行とデジタル広告市場の透明化・公正化のためのルール整備

成長戦略実行計画に基づき、同計画に記載する施策のほか、以下の具体的施策を講ずる。

  • デジタルプラットフォーム取引透明化法に基づき、相談窓口や各種実態調査を通じた課題把握やデジタル技術を用いた取引モニタリング等を進め、規制対象事業者による取引の透明性・公正性向上に向けた自主的な取組を促す。
  • デジタル市場における競争促進の観点から、反競争的行為への厳正・的確な対処、実態調査の継続的な実施、海外競争当局との連携などに取り組むとともに、外部人材活用を含めた専門的知見に係る人的基盤の整備など、デジタル・経済分析・審査情報解析分野における公正取引委員会の体制を強化する。
  • 改正個人情報保護法の施行に向けて、個人情報保護委員会において、民間事業者、国の行政機関、独立行政法人等、地方公共団体における個人情報の取扱いを一元的に監視・監督する組織体制を構築する。
  • 取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律に基づき、2021 年秋頃に官民協議会の円滑な立ち上げのための準備会合を開催するほか、2021 年内を目途に取引デジタルプラットフォーム提供者が講ずべき措置等に係る指針等の具体案を公表するとともに、施行に向けて必要な体制の整備を図る。
  • デジタル取引の適正化による公正な市場環境の実現に向けて、アフィリエイト広告に係る景品表示法の適用等に関する考え方や不当表示の未然防止等のための取組を検討し、2021 年中を目途に一定の結論を得る。
  • デジタル社会に不可欠なデータの利活用を促進し、データ流通量の増加を図るため、情報銀行によるデータの加工・仲介・分析機能の強化に向けた環境整備を 2021 年度に行い、その成果を踏まえて、2022 年度中に情報銀行と自治体・地域事業者とのデータ連携による地域活性化や情報銀行をハブとしたデータポータビリティの実現に向けた検討を行い、データ連携に係る要件や仕様を取りまとめるとともに、必要な認定指針の見直しを行う。
  • 個人情報や視聴データの適切な取扱いのために、「放送受信者等の個人情報保護に関するガイドライン」を 2022 年4月1日までに改正するとともに、地域の実情を踏まえたネット配信と放送番組の視聴データの活用の仕組みの構築に向け、伝送方式に応じた最適な配信基盤や受信環境の在り方の検討等を行い、2022 年度中にガイドラインの解釈に資する事例を取りまとめることで、業界団体における自主ルールの策定等を促進する。
  • インターネット上の誹謗中傷やフェイクニュース、偽情報に関し、プラットフォーム事業者による対応状況に係るモニタリングを実施し、2021 年9月までに評価結果について中間取りまとめを行う。さらに、プラットフォームサービスに係る通信端末の位置情報、端末 ID、クッキー、インターネット上の行動履歴等の利用者情報の適切な取扱いを確保するために、プラットフォーム事業者の利用者情報の取扱いの状況のモニタリングを実施するとともに 2021 年度中に「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」等を見直し、2022 年度より適用する。
  • 特定のサービスに依存せずに、個人・法人によるデータのコントロールを強化する仕組み、やり取りするデータや相手方を検証できる仕組みなどの新たな信頼の枠組みをインターネットの上に付加するトラステッド・ウェブ(Trusted Web)の実現に向けて、技術仕様の検討を進める。

(5)デジタル技術を踏まえた規制の再検討

成長戦略実行計画に基づき、以下の具体的施策を講ずる。

(モビリティ分野)

  • 自動車の完成検査について、実証事業の結果、AI 等を活用した検査が可能と考えられる検査項目が整理された。これを踏まえ、こうした項目について、現在完成検査員が行っている検査を AI 等で代替することが可能となるよう、2021 年内に制度改正を行う。あわせて、国が自動車メーカーに対して行っている型式指定監査について、2020 年度の検討結果を踏まえ、2021 年度には検査データのセキュリティ確保等の観点から更なる検討を行い、遠隔からの監査を可能とするシステムを構築することができれば、制度を見直す。

(金融分野)

  • プロ投資家対応について、実証事業の結果、投資家としての能力と関連性のある項目が特定された。これを踏まえ、プロ投資家の要件の弾力化に向けて 2021 年度中に制度改正を行う。
  • 金融商品販売における高齢顧客対応について、実証事業の結果、投資家としての能力と関連性のある項目が特定された。これを踏まえ、投資家の能力や状況に応じた柔軟な顧客対応に向けた制度改正について 2021 年度中に結論を得る。
  • 現状、各金融機関が個別に取り組む、マネー・ロンダリングに関する疑わしい取引の検知や制裁対象者の照合といった業務を効率化していくため、各社が共同で取り組む業務プロセスの構築や AI を活用したシステムの開発に向け実証事業を実施した。今後、実証事業の提言を踏まえ、共同化プラットフォームにおいて、取引情報の活用及び共有を円滑に行えるよう、共同化プラットフォームの運営・ガバナンスや規制・監督上の位置付けの明確化を図る。

(建築分野)

  • 外壁調査を行う赤外線装置を搭載したドローンについて、実証事業の結果、精度の向上が認められた。これを踏まえ、2021 年度に残された課題について検証を行い、一級建築士等による打診調査と同等以上の精度で問題箇所を検出する性能を確認の上、制度改正を行い、2022 年度以降、建築物の定期検査における外壁調査で使用可能とする。

さらに、上記3分野における検討の深掘りを行うとともに、スマート保安を始め他分野への展開を図る。

  • 電力、都市ガス、高圧ガス、液化石油ガスの分野において、テクノロジーを活用しつつ自立的に高度な保安を確保できる事業者については、行政の適切な監査・監督の下に、画一的な個別・事前規制によらず、自己管理型を基本とした事業者の保安力に応じた規制体系へ移行することを許容し、手続き・検査の在り方を見直す。このため、2022年通常国会での関連法案の提出を念頭に、検討を進める。
  • 労働安全衛生法の規制対象であるボイラーについて、2021 年3月に、開放検査周期を最長 12 年に延長したことについて周知を図る。また、検査周期を設備の状態により管理する手法(CBM)や事業者による自主的な検査の導入に向け、適用可能な技術の把握やその信頼性の担保といった技術的課題、必要となる組織体制や客観性等公正さの担保といった体制的課題について、2021 年度中に対応を検討し結論を得る。
  • また、労働安全衛生法上の防爆規制について、2021 年2月に示した電子機器等を活用する場合における危険エリアの判断基準の周知を図る。また、防爆エリアにおける非防爆ポータブル機器の持ち込み規制の見直しに向けて、検定制度によらない安全確保措置の在り方について、2022 年までを目途に議論が進められている IEC における動向も踏まえつつ、対応を検討し結論を得る。

(6)ブロックチェーン等の新しいデジタル技術の活用

成長戦略実行計画に基づき、具体的施策を講ずる。

(7)スマート農林水産業

成長戦略実行計画に基づき、以下の具体的施策を講ずる。

ⅰ)スマート農業の推進

2022 年度までに、生産基盤の強化を技術面から支えるスマート農業の本格的な現場実装を着実に進める環境が整うよう、以下の取組を一体的に進める。

(スマート農業の推進)

  • 2019 年度から実施している実証プロジェクトで収集した農業経営データを基に、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)を中心に、農業者が利用しやすい形で経営診断を行うシステムを開発し、経営向上に資するスマート農業の導入を促す。
  • 実証プロジェクトの中で、2021 年度から新たに、農業生産段階での省力化のみならず、農産物の付加価値向上や、雇用の拡大、地域活性化にもつなげていけるよう、流通・消費者も含めたスマート商流の取組を行う。
  • 生産から販売・消費までのデータ連携を実現するスマートフードチェーンプラットフォームを 2022 年度までに構築する。このスマートフードチェーンの社会実装を進めるため、事業者へのインセンティブ付与や消費者への価値訴求を図るフードチェーン情報公表 JAS(仮称)の策定について検討する。
  • 米と比較して開発・導入が遅れている野菜・果樹等について、スマート農業技術の導入を促進するため、地場メーカー、農業者、大学、スタートアップ企業、地域金融機関等による地域コンソーシアムの組成を促し、地域のニーズに応じた改良等の可能性も含め、効果的な社会実装につながる汎用性の高い技術の研究開発等の取組を推進する。
  • 農地の集積等が進んだ地域については、担い手農業者に対するスマート農業機械の導入支援などを通じて、引き続きスマート農業の実装を後押しする。加えて、スマート農業のメリットを感じにくい、農地の集積等が進んでいない小規模農業産地において、農地の集積・集約化を促進しつつ、スマート農業産地の形成・創出に取り組み、スマート農業技術の導入による生産性向上を促す。産地が目指すスマート農業技術を用いた農業の姿を合意形成できた複数の経営体が参画し、スマート農業機械のレンタル・シェアリングも活用し初期投資の課題を乗り越えながら、農作業の集約化を図る。
  • スマート農業産地のメリットの明確化を図り、合意形成に資するよう、各産地のビジネスモデルに関するコンサルテーション機能を担う情報発信拠点を形成するとともに、スマート農業実証プロジェクト実施地区の取組事例や多様な農業支援サービス事業者が持つスマート農業技術の情報などを一元的に集積し、優良事例の全国展開に向けた取組を行う民間主体の全国規模の協議会の設立を図る。
  • スマート農業産地における、減農薬・減化学肥料による環境保全や大幅な省力化などの効果があるスマート農業技術の導入を促進する仕組みについて、今後のスマート農業機械の導入状況を見極めながら、検討し、具体的な措置を講ずる。
  • スマート農業の実装を促進するため、自動走行農業機械に適した農地の大区画化や ICT 水管理施設等の整備を推進する。
  • スマート農業の推進に資する農村周辺での通信環境整備のため、現場の状況に応じて、農林水産省の関連事業と総務省の関連事業を効果的に活用する。
  • 農林水産省と総務省の間で、スマート農林水産業を加速化する必要性についての危機感、農林水産業の各分野・地域横断的な課題、各分野における取組の進捗状況などを共有し、民間会社の協力も得ながら解決に向けた対応策を検討するための連絡会議を設置する。
  • 道府県立農業大学校でのスマート農業のカリキュラム化について、現在の 32 校から、2022 年度までに、42 校全校に拡大するとともに、既に就業している農業者を対象としたスマート農業研修も充実させる。
  • 都道府県の農業普及指導員が、農業者や農業支援サービス事業者からの相談に対応する体制を構築する。
  • 農業高校(林業関係学科を含む)に関して、スマート農業・林業に関する学習内容が盛り込まれた新高等学校学習指導要領が実施される2022 年度に向けて、農林水産省等が作成する教育コンテンツの活用等によりスマート農業に関するアクティブな学習を前倒しして実施する学校の増加を促す。
  • 変化する農林水産業への就業を高校生が常に意識できるよう、スマート農業機械等の導入を支援することに加えて、授業や現場実習において、スマート農林水産業を実践する卒業生をはじめとする地域の農林水産業関係者や農業支援サービス事業者などの外部人材の活用を図るとともに、高校教員の更なる指導力向上のために、オンライン方式も含めた研修を充実させつつ、参画を促す。
  • 農林水産省と文部科学省の間で、スマート農林水産業を加速化させることの必要性について認識を共有し、スマート農林水産業に精通した人材の育成を推進するため、連絡会議を設置する。
  • スマート農林水産業をより一層促進するため、異なる技術力や発想力を持つ多様な関係者が業種横断的に集まる地域コンソーシアムの組成を促す。その際、特に大きな役割が期待される地方大学と地域金融機関の参画を積極的に促す。また、地域コンソーシアムの取組は、スマート農業の全国の取組事例等を一元的に集積し優良事例の全国展開に向けた取組を行う民間主体の協議会に集積し、併せて全国への情報発信を図る。
  • 国立大学改革の一環として、地方貢献に資するため、スマート農林水産業等の推進に向けて、地方国立大学における人材供給や研究開発を促進する。
  • 地域における資金供給の円滑化を促進するため、スマート技術の活用やそれらに対する目利きに関する研修の実施など、株式会社日本政策金融公庫と地域金融機関の連携体制を一層強化する。

(農業支援サービスの育成・活動環境整備)

  • 改正農業法人投資円滑化法に基づく投資スキームや日本政策金融公庫の資金融資等の活用により、資金面で農業支援サービス事業者の活動を支援する。
  • 新規就農に向けた情報や求人情報をワンストップで提供しているポータルサイトで、2021 年度から、農業支援サービス事業者の求人情報も提供する。また、この求人情報を各都道府県の技術力豊かな高等専門学校にも提供し、エンジニアなど農業以外の分野から人材を確保する。さらに、農業支援サービス事業者のサービス情報が登録され、農業者が手軽に検索・比較できるポータルサイトを 2021 年度中に立ち上げるとともに、農業支援サービス事業者間の情報交換を行える場を、2021 年度中に設置する。
  • 地域とのつながりが乏しい農業支援サービス事業者が各地域に円滑に参入し、農業者が必要なサービスを受けられるよう、地方公共団体等が行う農業者とのマッチングを促進する。地方公共団体等による参入支援の取組や農業支援サービス事業者の活動による具体的な成果を、スマート農業新サービス創出プラットフォームの民間企業や研究機関等と共有し、農業支援サービスの市場拡大を図る。さらに、農業支援サービス事業者への農研機構の専門家の活用に向けた情報提供体制について検討する。
  • 2025 年度までに新しい病害虫発生予察を実現するため、ドローン等を活用した病害虫発生量の情報収集や AI 等を活用した病害虫発生予測技術の開発に取り組む。

ⅱ)スマート林業の推進

2024 年度までに、スマート林業の本格的な現場実装を着実に進める環境が整うよう、以下の取組を一体的に進める。

  • 2021 年度に産官学の様々な知見者が参加する「林業イノベーションハブセンター(森ハブ)」を設置し、林業機械の無人化・自動化等の戦略的技術の開発・実証に関し、先端技術の導入促進のための林業分野以外の技術探索等を行い、その成果を活用し、技術開発方針の策定や民間事業者による事業化への支援を推進する。
  • 安全で生産性の高い林業を実現して、若者や女性、自伐型林業を含めた様々な林業経営者にとって安全で魅力ある産業への転換を図るため、森ハブの知見も活用し、2024 年度までの実用化を目指し、伐採、運搬、造林の作業を遠隔・自動で行う機械と、その基盤となる無線通信技術等に関する開発・実証を行う。また、これらの機械の実用化に合わせて安全性ガイドラインを整備する。
  • 市町村や林業経営者が利用可能な森林資源情報をまとめた都道府県森林クラウドを 2021 年度までに全ての都道府県で導入する。また、精密なレーザ計測を進め、順次、森林クラウドに計測成果を掲載するとともに、国有林の森林資源情報も掲載する。さらに、民有林・国有林の森林資源情報を一体的に国民一般へ公開する仕組みについて検討する。
  • 全国でのスマート林業のモデル的な導入に向け、国有林のフィールドも活用しつつ、2022 年度までに全国 12 か所程度での実践事例の分析・提供や、技術モデルの提示を行う。
  • 林業大学校でのスマート林業のカリキュラム化について、現在の全国19 校から、2024 年度までに、21 校全校に拡大するとともに、農業高校(林業関係学科を含む)に関して、スマート農業・林業に関する学習内容が盛り込まれた新高等学校学習指導要領が 2022 年度に実施されることを踏まえ、農林水産省等が作成する教育コンテンツの活用等によりスマート林業に関するアクティブな学習を実施する学校の増加を促す。

ⅲ)スマート水産業の推進

2023 年度までに、スマート水産業の本格的な現場実装を着実に進める環境が整うよう、以下の取組を一体的に進める。

  • 2023 年度までに、水産資源の評価対象の有用魚種全体(200 種程度)への拡大と資源評価の精度の向上を目指し、主要な産地市場・漁協の水揚げ情報を電子データで収集する体制を構築する。2021 年度は 200市場を目途に体制を構築し、2023 年度に全国 400 市場程度に拡大することを目標とする。また、水揚げ価格情報を船上で確認できるシステムや船上から漁獲情報を産地市場関係者と共有するためのシステムの導入を促進する。
  • 2023 年度までに、沖合・遠洋漁業を行う漁船 1,000 隻以上が、漁場予測を含む衛星情報等からの精度の高い漁海況情報を活用できるよう、漁海況予測システムの開発・実証を行う。
  • 2021 年度中に、沿岸漁業で7日先までの漁海況予測情報の提供により経験が浅い漁業者でも漁場に効率的に到達できるような取組を 10 都道府県以上で実施する。
  • 養殖について、2021 年度中に赤潮発生予測情報を活用する取組を 10か所以上で実施するとともに、個別の海域での養殖生産力の推定サービス、いかだの最適配置提案サービスなどの漁業支援サービスの活用を促進する。
  • スマート技術と親和性の高い養殖に関し、革新的な技術を開発するため、産官学金の異なるアイディアを有する様々な業種からなるプラットフォームを、2022 年度までに構築する。
  • 海上での通信環境整備の一環として、衛星コンステレーションを用いた低廉な通信サービスが速やかに利用可能となるよう、2021 年度中に、必要な制度整備を行う。
  • 2024 年度までに、水産大学校におけるスマート水産業のカリキュラム化を実施する。また、漁業の既就業者向けの短期スマート研修も充実させる。
  • スマート水産業に関する学習内容が盛り込まれた新高等学校学習指導要領が実施される 2022 年度に向けて、大学や企業等の専門家によるアクティブな出前授業を活用した学習が実施される水産高校の増加を促す。

(8)企業等における DX の推進

  • 2021 年6月に DX 銘柄 2021 を選定・公表したことと併せて、デジタルガバナンス・コードの基本的事項に対応する企業を国が認定する制度(DX 認定制度)の普及促進を引き続き行う。また、2022 年度にデジタルガバナンス・コードの見直しを進める。
  • 企業や投資家等が DX をより具体的に理解した上で進められるよう、個別企業が DX の取組状況を評価する上で有効な業種別リファレンスシナリオを 2021 年度中に策定する。また、非上場企業や中堅・中小企業が適切に DX を進められるよう、2021 年度中に DX 推進のためのリファレンスシナリオを策定するとともに優良企業の選定等を行う。
  • 企業が DX によりグローバルで競争力のあるデジタル技術の提供主体となるために必要な要素を 2021 年度中に取りまとめる。また、社会全体で DX を加速するため、全国の水道事業者への導入支援を通じて水道情報活用システムの展開を進めつつ、上水道事業等を事例として得られる知見を活用し、介護等の多様な業界で協調領域を形成して共通プラットフォームを構築するための技術的支援を行うとともに、組込みソフトウェア等の技術を活用した低遅延サービスの基盤構築を開始する。
  • サプライチェーンの寸断リスクなどに対応するための企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)を強化すべく、2021 年度中に無線通信技術の製造現場での本格活用に資する技術開発支援に着手する。
  • デジタルアーキテクチャ・デザインセンターを中心として、複数の事業者間等でのデータの連携・活用を促進するための基盤となる共通技術仕様(アーキテクチャ)について、デジタル庁をはじめとした各府省等からの依頼に基づき、先導的プロジェクトを進め、2021 年度中に一定の成果を得る。
  • システム等のオーナーが、第三者によるセキュリティ検証を活用することでそのサービスの品質を確保しやすい環境を整備するため、2021年度中に、システム等を構成するソフトウェアの適切な管理に資するソフトウェアの部品構成表である SBOM(Software Bill of Materials)の日本における活用に向けた実証事業を開始するとともに、セキュリティ検証を担う事業者の信頼性を可視化する制度をはじめ、我が国のセキュリティ検証ビジネスの発展に資する取組の検討を行い、方向性を取りまとめる。
  • シェアリングエコノミーについて、安全性・信頼性向上を果たしつつ社会への浸透・定着を促進するため、シェアワーカー及びシェア事業者の認証制度の普及を図る。また、地域でのシェアリングエコノミーの活用に向けて、防災分野におけるモデル連携協定を基に、地方公共団体の協定締結を促すとともに、2021 年度中に災害発生時等のシェア事業者向けの実施マニュアル等を作成する。さらに、シェアリングシティ推進協議会と連携し、地方公共団体等とともに公共サービスとしてのシェアリングエコノミーの新たな活用モデルを検討し、事業者団体よりその検討結果を提示する。
  • 実空間における3次元情報を利用者間で共通利用できるよう、実空間における位置情報を統一的な基準の下、共通仕様で表現する「空間 ID」の整備に向けて、2021 年度から「空間 ID」の技術的な実装方式や管理について検討し、2022 年度中に「空間 ID」の運用に関するガイドラインを策定するとともに、2024 年度までに「空間 ID」の標準化を進める。

(9)サイバーセキュリティの確保

「サイバーセキュリティ戦略」を 2021 年中に策定し、東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて進めている取組の活用やサプライチェーンリスクに関する技術検証体制・システム整備を進めるとともに、DX・ウィズ・サイバーセキュリティ(DX with Cybersecurity)の推進に向け、経営層の意識改革や地域・中小企業対策、人材育成・確保といった必要な取組を着実に進める。また、「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」(令和2年 12 月 25 日閣議決定)に基づき、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)がその体制を強化しつつ、デジタル庁が整備・運用するシステムを含めて国の行政機関等のシステムに対するサイバーセキュリティ対策強化のための監査等を行う。

サイバーセキュリティに関する技術・情報を海外に過度に依存している状況を脱却するため、我が国独自にサイバーセキュリティ情報を国内で収集・生成・提供するためのシステム基盤を 2021 年度中に構築し、サイバー攻撃情報の分析を開始する。また、これらの情報を活用した製品検証環境や演習環境の試験運用を 2022 年までに開始し、産学への開放を通じて国産製品の開発や人材育成を促進する。

  • 2020 年 11 月に設立されたサプライチェーン・サイバーセキュリティ・コンソーシアムと連携し、2021 年度中に、中小企業向けセキュリティサービスの普及や各地域でのセキュリティ・コミュニティ形成、産学官連携等中小企業を含むサプライチェーン全体でのセキュリティ対策の促進に必要な取組を整理し、取りまとめる。
  • データの改ざんや送信元のなりすまし等を防止する仕組み(トラストサービス)について、2021 年度に以下の取組を行う。
    • eIDAS 等の諸外国との十分性認定を見据えた制度比較等の調査検討タイムスタンプについて、国による認定制度が電子文書の送受信・保存に関する法令において有効な手段となるよう、その利用の拡大に向けた施策を実施
    • eシールについて、民間の認定制度として実施する場合の在り方について指針を策定

これらの取組状況を踏まえ、民間の保存書類の電子化を含めトラスト基盤を検討する。

  • デジタル空間での安全・安心な民間取引等において必要となる本人確認手法について、公的個人認証サービスの利用促進に加え、2021 年中に有識者検討会を立ち上げ、安全性や信頼性等に配慮しつつ具体的な課題と方向性を整理し、その結果も踏まえ簡便な手法の一つであるeKYC 等を用いた本人確認手法の普及を促進する。

参照

令和3年第9回経済財政諮問会議・第12回成長戦略会議合同会議

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2021/0618/agenda.html

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