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Beyond 5G 推進戦略 -6G へのロードマップ-

2021年6月19日

はじめに

移動通信システムは、世代を重ねる中で、通信基盤から生活基盤へと進化してきた。

各国で導入が進みつつある第五世代移動通信システム(5G)は、生活基盤を超えた社会基盤へと進化すると見込まれるが、その次の世代の Beyond 5G(いわゆる 6G)は、サイバー空間を現実世界(フィジカル空間)と一体化させ、Society 5.0 のバックボーンとして中核的な機能を担うことが期待される。

他方、現在、世界中で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の爆発的な感染拡大が生じており、これに伴う外出制限等により、好むと好まざるとにかかわらず、テレワークなど全面的に ICT に依存せざるを得ない状況が生じているが、このような状況の中、我が国においては社会のデジタル化を支えるための ICT インフラの高度化・強靭化や制度の見直し等を一層進める必要があるという事実が明らかになっている。

こうした状況においても国民生活と経済活動を円滑に維持するためには、早急に、5G をはじめとする ICT インフラが徹底的に使いこなされる環境を実現する必要がある。これに加え、COVID-19 の感染拡大で我々が目の当たりにしているような事態に対応するためには、デジタル・トランスフォーメーションによるスマート化や、信頼性のある自由なデータ流通(DFFT:Data Free Flow with Trust)の推進等により、フィジカル空間で起きている事象をリアルタイム・ビッグデータを活用してサイバー空間に投影し、解決策を見いだす仕組みを実現することが求められる。これらは、まさに、Beyond 5G 推進に向けた処方箋でもある。

したがって、本戦略は、Society 5.0 という新たな社会システム構築に向けた取組であると同時に、Society 5.0 からバックキャストして行う COVID-19 の感染拡大という現下の世界的な課題への緊急対応策、かつ感染拡大終息後(ウィズコロナ・ポストコロナ)の日本の成長戦略を見据えた対応策でもある。

ここで重要なのは、我が国として、今回の COVID-19 の流行拡大という「危機」をBeyond 5G ready な環境づくりを加速する「契機」として捉え、強靭かつセキュアなICT インフラの整備を含む社会全体のデジタル化を一気呵成に進める必要があることである。例えば、高度な光ネットワークに支えられた 5G を全国約 1700 の市町村にいち早く届け、セキュアな通信を医療や教育に活用できるようにするといったことが求められる。世界規模で起きている社会全体の急速なデジタル化の動きに取り残されてしまうと、我が国が Beyond 5G の議論をリードできなくなるという危機感を持ち、本戦略を推進する必要がある。

以上を踏まえ、2030 年頃に見込まれる Beyond 5G 導入までの取組を「先行的取組フェーズ」と「取組の加速化フェーズ」に分け、特に「先行的取組フェーズ」においては期間を区切った集中的な取組を推進し、遅くとも5年以内に Beyond 5G ready な環境づくりに向けた成功のモデルケースを多数創出する。その際、我が国のみにしか通用せず世界市場の成長を取り込むことができないものとならないよう、また、世界の叡智を我が国に呼び込めるよう、双方向性を持ったグローバル戦略に基づくこととする。

また、こうした先行的取組の成果については、2025 年に開催される大阪・関西万博の機会を活用して、「Beyond 5G ready ショーケース」として世界に示し、その後の「取組の加速化フェーズ」におけるグローバル展開の加速化に資するようにする。

1.2030 年代に期待される社会像

2030 年に向け、今後、フィジカル空間とサイバー空間との間での情報のやりとりが飛躍的に増大することが見込まれる。サイバー空間とフィジカル空間の一体化(CPS: Cyber Physical Systems)が進展し、フィジカル空間における物理的なやりとりが、サイバー空間においてデジタルデータの形で再現されるようになっていく。こうした膨大なデジタルデータを AI 等の活用により解析することにより、フィジカル空間の状況の把握が随時可能となるだけでなく、その情報を基にフィジカル空間における次の行動の判断を行うことが可能となる。

我が国が、CPS を社会経済活動に最大限活用する「データ主導社会」に移行すれば、蓄積された大量のデータから新たな価値創造が行われ、暗黙知の形式知化や、過去の解析から将来の予測への移行、部分最適から全体最適への転換も可能となる。別の角度から見れば、必要なモノ・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供することができるようになるということである。これこそ、様々な社会的損失や課題の解決と経済成長とを両立できる「Society 5.0」が実現するということでもある。

CPS は、高速性に加え低遅延や多数接続といった特長を備える 5G の導入により進展することが見込まれるが、2030 年代には、サイバー空間においてフィジカル空間がより速く、より詳細に再現されるようになると考えられる。その結果、フィジカル空間の機能がサイバー空間により拡張されるだけでなく、フィジカル空間で不測の事態が生じた場合でも、サイバー空間を通じて国民生活や経済活動が円滑に維持されるといった、強靭で活力のある社会が実現する。

このことは、我が国における一層の社会課題解決と経済成長を実現するだけでなく、人類の共通基盤として、「持続可能な開発目標」(SDGs)において示されている「誰一人取り残さない持続可能で多様性と包摂性のある社会」や「地球(環境)の維持」等の理念の実現にも大きく貢献するものと期待できる。

こうした 2030 年代に期待される強靭で活力のある社会の具体的イメージとして、次の3つのようなものが考えられる。

  1. 一つめは、「誰もが活躍できる社会(Inclusive)」、すなわち、都市部と地方、国境等の地理的な障壁に加え、年齢、障碍の有無といった様々な差異も取り除かれることで、誰もが活躍できる社会である。
    こうした社会の実現には、例えば、自宅に居ながらにして、アバターやロボット等を介して地球上のどこにでもリアルな体感でアクセス可能となる「超テレプレゼンス技術」や、ウェアラブル端末等を通じて人の思考や行動がサイバー空間からリアルタイムな支援を受けられるようになることで身体能力や認知能力を拡張する「超サイバネティクス技術」等が必要となる。
  2. 二つめは、「持続的に成長する社会(Sustainable)」、すなわち、現実世界を再現したサイバー空間で最適化を行い、現実世界へフィードバックすることで、社会的にロスのない、便利で持続的に成長できる社会である。
    例えば、モノ同士が互いに制御し合うことで信号待ちや渋滞が発生しない交通システム等を実現する「超相互制御型ネットワーク技術」や、AI 技術による高精度の需要予測とリアルタイムの多地点間マッチングにより食品等の廃棄がゼロになる「超リアルタイム最適化技術」等により、このような社会が実現すると考えられる。
  3. 三つめは、「安心して活動できる社会(Dependable)」、すなわち、社会基盤である通信網の安全性と安定性が自律的に確保されることにより、誰もが安心して活動できるという、信頼の絆が揺るがない人間中心の社会である。

こうした社会は、例えば、AI 技術による自動検知・自動防御・自動修復等によりユーザが意識せずともセキュリティやプライバシーが確保される「超自律型セキュリティ技術」や、ネットワーク構成や電力消費量/供給方法を柔軟かつ自律的に変えることで災害時等でも通信が途絶えない「超フェイルセーフ・ネットワーク技術」等を確立することにより実現される。

2.目指すべき Beyond 5G の姿

2030 年代に期待される、誰もが活躍でき(Inclusive)、持続的に成長し(Sustainable)、安心して活動できる(Dependable)社会の実現に向け、「Society 5.0」を支える「データ主導社会」に移行するためには、地上、海、空、宇宙などフィジカル空間のあらゆる場所において生ずる様々な事象について、各種センサーなどを用いて最新のデータをできる限り多く収集することが必要となる。そうして収集されたデータはサイバー空間に蓄積され、過去のデータや他のセンサーなどから得られたデータとともに解析される。その解析結果をフィジカル空間に反映させることでより効率的、効果的な将来を選択できる場合には、フィジカル空間へのフィードバックが行われ、実体としてのヒト・モノに伝えられる。

こうした両空間を跨る極めて高度なデータの同期をあらゆる場所において安全・確実に実現するためには、5Gよりも高度な通信インフラとして Beyond 5G が必要となる。その際、全国を網羅するデータの神経網として、Beyond 5G を支える高度な光ネットワークの整備も必要である。

他方、こうした通信インフラ上で極めて大量のデータが流通することにより、エネルギー消費も拡大することが予想される。このため、地球環境への負荷を抑えつつデータの安全な流通を促進する観点から、目指すべき Beyond 5G には「データの地産地消」の考え方を取り入れることが必要となる。また、地域によって抱える課題は様々であり、必要とされるサービスも異なることから、それを支えるインフラは、例えばソフトウェアにより、課題解決の目的に応じて柔軟に機能や構成を変更できる可用性の高いものであることも必要になる。従来の通信インフラでは、こうした様々な要求に対して十分に応えることは難しいことから、いわば通信インフラの構造改革が求められる。

目指すべき Beyond 5G の姿を考えるに当たっては、想定される技術動向も考慮する必要がある。従来の通信インフラでノードとなる機器は、高速な処理が求められることから専用のハードウェアにより実現されるケースが殆どである。しかし、昨今のマイクロプロセッサの性能向上等により、汎用機器(ホワイトボックス)をソフトウェアで制御して従来の専用機器に比べて同等かそれ以上の処理を行うことが可能となり、専用機器を代替するのみならず、ソフトウェアの更新によってバグの修正や新機能の追加が可能となり、開発の迅速化や柔軟な運用等が可能となってきている。

携帯電話網も、2030 年頃には基地局のアクセス網部分も含めてほぼ完全に仮想化され、サービスやアプリケーション毎のスライス化が進展するとともに、汎用機器の余剰能力は共通のコンピューティングリソースとしてネットワーク上に遍在するようになる。AI 技術等を活用することで、こうしたリソースを柔軟かつ自律的に管理・制御できるようになり、また、コンピューティングリソースを分散活用することで、利用者に近い末端部分(エッジ)において膨大な数のデバイスやセンサー等のデータ処理を迅速に行う分散処理も可能となる。さらに、これが、異なる通信事業者の間でも融通されるクラウドネイティブな環境が実現し、API(Application Programming Interface)等を通じた通信ネットワークの機能の外部開放も進展することが予想される。これにより、自らのユースケースに最適となるよう、利用者が通信条件をアレンジすることも可能となる。

以上を踏まえると、目指すべき Beyond 5G には、5G の特徴的機能の更なる高度化に加え、新たに 4 つの機能の具備が必要となる。

① 5G の特徴的機能の更なる高度化

まず、5G の特徴的機能を更に高度化させ、「超高速・大容量」、「超低遅延」、「超多数同時接続」といった機能を具備することで、あらゆる場所からの膨大なデータを瞬時に正確に処理できるようになる。

具体的には、2030 年代に想定されるデータ通信量や通信機器数を踏まえると、アクセス通信速度と同時接続数は 5G の 10 倍、コア通信速度は現在の 100 倍が目標となる。また、上記の CPS の高精度な同期を実現するためには、5G の 1/10 の低遅延とそれを補完するネットワークの高度な同期が必要と考えられる。

② 求められる新たな機能

また、こうした 5G からの連続的な進化に加えて、Beyond 5G では次のような新たな機能が具備されるべきである。

    • 「自律性」: AI 技術等を活かし、人手を介さず(ゼロタッチ)、あらゆる機器が自律的に連携し、有線・無線を意識せず即座に利用者のニーズに合わせて最適なネットワークを構築する機能。
    • 「拡張性」: 端末や基地局が、衛星や HAPS(High Altitude Platform Station)等の異なる通信システムとシームレスに繋がり、また、端末や窓など様々なものも基地局とすること(ユビキタス基地局)で、至る所にある機器が相互に連動しつつ、海、空、宇宙を含むあらゆる場所で通信を利用可能とする機能。
    • 「超安全・信頼性」: 利用者が意識しなくてもセキュリティやプライバシーが常に確保され、災害や障害の発生時でもサービスが途絶えず、瞬時に復旧する機能。
    • 「超低消費電力」: 低消費電力化の技術開発がなされない場合、2030 年の IT 関連の電力消費量は 2016 年の 36 倍(現在の総電力消費量の 1.5 倍)となると考えられる。こうした電力消費量の大幅な増加に余裕を持って対応するため、現在の 1/100 程度の消費電力に抑えることを検討する必要がある。

3.Beyond 5G の実現に向けた課題と戦略的取組の必要性

我が国として目指すべき Beyond 5G を実現するには、その優れた機能の中核となる先端的な要素技術の研究開発を強力に推進する必要がある。

ネットワーク設計にあたっても、例えば、集積回路の内部まで光で信号処理を行ったり、情報の分散処理を前提とするなど、従来とは異なる飛躍的な発想も取り入れる必要がある。また、CPS の進展に伴いフィジカル空間とサイバー空間のより高精度な同期が求められるようになると、最適解を導出するだけの AI では、フィジカル空間で適正な判断を実行する上で十分とは言えず、AI のアカウンタビリティ(説明責任)の確保が重要となる。加えて、現在でも、AI を用いて本物そっくりな動画像を駆使したフェイクニュース(ディープフェイク)も出現するに至っており、今後ますます、サイバー空間における情報の信頼性の確保といった新しい社会課題が顕在化してくるものと考えられる。

これらの新しい課題に対しては、民間の叡智を結集して対処していく必要があるが、こうした民間の取組を効果的に加速させるためには、国による積極的な支援も不可欠である。Beyond 5G は、5G 以上に国民生活や経済活動を支える社会基盤として、あらゆる組織や産業において活用されるのみならず、社会経済システムの神経系として我が国の安全保障にも深く関与するものとなるであろうことを踏まえると、Beyond5G の早期かつ円滑な導入を図るためには、省庁の枠を超えた取組が必須と言える。

また、Beyond 5G の実現までに乗り越えなければならないハードルやコスト、5Gに先進的に取り組んでいる他国の動向等を考慮すれば、我が国が一国のみで Beyond5G を実現していくのは不可能と言える。このため、早い段階から、信頼でき、また、シナジー効果も期待できる外国政府や外国企業等の戦略的パートナーとの国際連携体制を確立し、Beyond 5G の実現に必要な先端的な要素技術の共同研究開発や国際標準化等に取り組むことが必要である。

このように、我が国が目指すべき Beyond 5G を実現するためには、政府と民間とが一丸となり、国際連携の下で戦略的に取り組むことが重要である。

4.Beyond 5G 推進戦略

4-1. 基本方針

本戦略の目的は、2030 年代に強靭で活力のある社会を実現するため、その実現に不可欠な基盤となる Beyond 5G を早期かつ円滑に導入することである。また、当該基盤が将来にわたり信頼され、安全かつ安定的に活用されるためには、あわせて、Beyond 5G における我が国の国際競争力の強化を図る必要もある。具体的には、Beyond 5G のインフラを構成するハードウェア及びソフトウェアの世界市場において、我が国の企業が強みを活かしてパートナー企業とともに市場シェアの3割程度を獲得することや、機器を構成するデバイスの分野、Beyond 5G をプラットフォームとして利活用する様々なソリューションの分野においても、我が国の企業が強みを活かしてパートナー企業とともに一定のプレゼンスを持続的に確保することを目指す。

この2つの目的を達成するためには、我が国がグローバル市場において Beyond 5Gの開発・利用に関するオープンイノベーションのエコシステムの一角を担う存在となることが重要である。この点を踏まえ、「グローバル・ファースト」、「イノベーションを生み出すエコシステムの構築」及び「リソースの集中的投入」という3つの観点を本戦略の基本方針とする。

① グローバル・ファースト

Beyond 5G の研究開発や利活用促進などの各種活動においては、5G 以上に国境を越えた動きが加速することを認識する必要がある。その上で、我が国のポジショニング、例えば、我が国が、戦略的パートナーとの国際連携を進めることや先進国と途上国との間の「架け橋」となること等に留意しつつ、常にグローバルな視点を持つことが必要である。

このため、従来の「まず国内を固め、その後に海外へ」という発想から脱却し、国内市場をグローバル市場の一部と捉え、最初から世界で活用されることを前提とした取組を行うこととする。これと同時に、我が国が Beyond 5G の研究開発や実証の魅力的な拠点となり世界中から人材やアイデアが集まるようになるといった双方向性の実現を目指す。

② イノベーションを生むエコシステムの構築

技術革新のスピードが極めて速いこの分野では、迅速な立ち上げを可能とし、リスクを許容しつつイノベーションを生むエコシステムを構築することが極めて重要な意味を持つ。また、我が国が Beyond 5G の研究開発や実証の魅力的な拠点となり世界中から人材やアイデアが集まるようになることが重要である。このため、Beyond 5G の研究開発などにおいて、可能な限り制約を最小化するなど、多様なプレイヤーによる自由でアジャイルな取組を積極的に促す制度設計を基本とする。

③ リソースの集中的投入

グローバルな協働は、各プレイヤーが互いに「強み」を持ち寄って行われるという前提の下、我が国のプレイヤーがその協働に効果的に参画できるようにすることが重要となる。Beyond 5G の取組の推進に当たっては、この観点から、国が取り組む必要性の高い施策に絞り、一定期間集中的にリソースを投入することとする。

以上の基本方針を踏まえ、政府は、Beyond 5G の早期かつ円滑な導入及び国際競争力の強化に向けて「研究開発戦略」、「知財・標準化戦略」及び「展開戦略」を実行する。

4-2. 研究開発戦略

(1) 基本的な考え方

超高速・大容量といった 5G が有する特長の更なる高度化に加えて、自律性や拡張性といった新たな機能を実現するには、テラヘルツ波や光・量子、AI 等の非連続な飛躍的進化を可能とする先端技術を含む無線技術、ネットワーク技術、省エネ技術、セキュリティ技術、そして、これらの基盤となるソフトウェア関連技術等の開発・高度化・標準化が不可欠である。また、これらの技術の開発等に際しては、価格競争力の獲得にも留意する必要がある。

しかし、世界的にみると、米国、欧州、中国等においても、こうした技術の研究開発が進んでいる。我が国としても、可能な限り多くの技術分野において諸外国に比肩、或いは優越する「強み」を持てるようにするには、我が国に優位性のある分野を見極め、当該分野の研究開発力を更に伸ばす(「強みがある技術」の確立)とともに、多岐にわたる Beyond 5G 関連技術に関する我が国の研究開発力全体の底上げ(「持つことが不可欠な技術」の獲得)を図る必要がある。

すなわち、Beyond 5G における将来の国際競争力を確保するためには、我が国に「強みがある技術」と我が国として「持つことが不可欠な技術」の研究開発力を重点的に強化する必要があり、戦略的に重要な当該技術に限定して、各国による本格的な開発競争が起こる前の「つぼみ」の基礎・基盤的な研究開発段階から、国費による集中的な支援を実施することが必要である。また、その際には戦略的パートナーとの連携による先端的な要素技術の国際共同研究開発プロジェクトを推進することが重要である。

また、先端技術分野における「つぼみ」の技術を育成し、世界に先駆け実用化するためには、ベンチャーや他分野も含め多種多様な人材を呼び込み、自由に研究開発できる環境の整備や担い手の育成が極めて重要となる。

その際、「技術で勝てても市場では必ずしも勝てなかった」過去の事例も踏まえ、「グローバル・ファースト」の方針の下、開発した要素技術が民間企業によって製品化され、競争力のある形で実装されることを見据えた取組を行う必要がある。このため、特に国による研究開発については、知財や国内外の市場の獲得に向けた体制や計画・戦略を定め、それを踏まえて推進していくことが必要である。

また、国による研究開発プロジェクトの実施に当たっては、より戦略的かつ柔軟に実施できるよう、その運用の改善(プロジェクトの大括り化、執行の柔軟化(柔軟な計画変更、予算繰越し等)、知財・国際標準化戦略に沿った取組に対する支援の強化等)に向けた検討とその反映が必要である。

(2) 目標

Beyond 5G の実現に必要かつ戦略的に重要な先端技術への集中的な投資と電波関連規制の緩和等により、世界最高レベルの Beyond 5G 研究開発環境を実現する。これを通じて世界の叡智を我が国に呼び込み、研究開発・製造基盤を強化することで、2025 年頃から順次要素技術を確立し、3GPP 等での国際標準に反映する。このような取組を通じ、開発された技術が競争力のある形で実装されることを目指す。

(3) 具体的な施策

重点的に取り組むべき分野としては、Beyond 5G が具備すべき機能である①超高速・大容量、②超低遅延、③超多数同時接続、④自律性、⑤拡張性、⑥超安全・信頼性、⑦超低消費電力を実現する上で中核となり得る技術を対象として検討することが適当である。

我が国が強みを持つ、又は積極的に研究開発等に取り組んでいる技術が含まれる分野の例や、それらに関連する技術、その中でも産学官の別なく、特に重点的に研究開発等を進めるべきと考えられる技術の例は図表4のとおりである。

図表4に掲げる Beyond 5G の中核技術のうち、我が国として重点的に取り組むべき戦略的に重要な要素技術の研究開発を、期間を限り、関係府省が連携して集中的に推進することが適当である。その際、先端的な要素技術の研究開発を効果的に推進するため、学術情報ネットワーク(SINET)やスーパーコンピュータ「富岳」等の研究基盤や若手研究者に対するファンディングプログラム5等との連携も図るとともに、「Beyond 5G 研究開発プラットフォーム」を NICT 等に構築し、電波エミュレータ等のテストベッドを含む高度な研究環境を国内外の多様なプレイヤーに提供することで、これらの環境を活かした共同研究等を推進する。【2021~2026 年度にかけて構築・運用】

Beyond 5G において我が国の技術が優位性を持つとともに、機器やデバイスのサプライチェーンリスクを軽減するためには、5G の段階から我が国における開発・製造基盤を維持・強化する必要がある。

このため、5G の機能強化に対応した情報通信システムの中核となる技術を開発することにより、その開発・製造基盤強化に取り組む。【2019 年度より実施】

あわせて、安全性、信頼性及びオープン性を兼ね備えた機器やデバイスの安定的供給を促進するため、これらの要件を適切に満たす機器等の開発及び供給について国が認定する制度を導入する。【2020 年制度整備】

(研究開発税制による支援)

国の研究開発及び研究開発支援に加えて、民間による研究開発を強力に後押しするよう、研究開発税制において、デジタル関連の研究開発が十分に支援できているかを検証し、必要な改正を実施する。【2021 年度以降実施】

(電波の開放)

Beyond 5G においては、テラヘルツ波(概ね 100GHz 以上の周波数帯域)といった、現在 5G に割り当てられている周波数帯域よりも更に高い周波数帯域の活用が見込まれている。このため、当該帯域を利用する技術の開発を強力に推進する必要がある。他方、これらの高周波数帯域の電波は現在利用が進んでおらず、また、低周波数帯域の電波と比較して直進性が強く、距離による減衰も大きいことから、他の無線局に重大な悪影響を与える可能性が比較的小さいと考えられる。これらの点を踏まえ、当該帯域については、Beyond 5G 等の実運用が開始されるまでの一定期間、簡素な手続により原則として自由に使用できる仕組みを整備する。【2022 年中を目途に制度整備】

また、Beyond 5G に向けた技術開発を促進するためには、高周波数帯域以外の帯域においても、他の無線局への著しい妨害等が発生しない範囲で、免許人が研究開発や実験用の無線局を柔軟に開設・変更できるようにする必要がある。このため、実験の規模、無線局の出力、無線設備の設置場所、使用する周波数帯域、管理体制等に関して一定の条件を満たして行う実験等について、実験等無線局免許の取得・変更手続を大幅に緩和する。【速やかに見直し、可能なものから順次措置】

(破壊的イノベーションの創出と人材育成)

上記の重点的に取り組むべき技術や非連続で飛躍的進化を可能とする先端技術の開発競争を優位に進めていくためには、Beyond 5G の更に先も見据えた破壊的イノベーションを起こし得るアイデアや人材を発掘・育成していくことが急務である。このため、電波エミュレータ等の高度な研究環境を広く開放して、懸賞金やアワード型研究開発等の強力なインセンティブが付与される課題解決型の公募研究「無線チャレンジ(仮称)」等を行い、斬新な発想に基づくイノベーティブな技術の発掘や、その製品化・市場化に向けた取組を重点的に支援することにより、我が国にとって「強みがある技術」、「持つことが不可欠な技術」の開発強化や、これらを効果的かつ迅速に産業化させる破壊的イノベーションの創出を後押しする。なお、これらの取組の実施に当たっては、話題性を持たせ、大学や高等専門学校等の若手ワイヤレス人材を広く巻き込むことで、Beyond 5G の研究開発に関する裾野の拡大を図るとともに、Beyond5G の将来の発展を支え、世界で活躍できる人材の育成・輩出を目指す。【2021 年度より実施】

4-3. 知財・標準化戦略

(1) 基本的な考え方

知財・標準化や、その後の国内外の市場シェアの獲得を目指す取組は、直接の裨益者である民間企業の自助努力が基本である。しかし、Beyond 5G は国民生活や経済活動を支える社会基盤であることに加え、知財・標準化が自企業を超えた広範な波及効果を生むことを踏まえ、我が国が目指す Beyond 5G の実現に必要な技術要件が国際標準となり、かつ、我が国の安全保障や産業の発展にとって好ましいものとなるようにするという観点から、政府としても民間部門と連携しつつ積極的にその役割を果たす必要がある。

国際標準化については、①オール光ネットワークの実現、②オープン・アーキテクチャの採用、③ソフトウェアによる最大限の仮想化、④上空・海洋など地上以外への拡張、⑤セキュリティの抜本的強化を重視する。

標準化や実装に向けた取組は、戦略的パートナーとの緊密な連携の下で実施する。

その際、我が国の影響力を確保するためには、優れた技術を開発するだけでは足りず、標準化作業への我が国関係者の関与の拡大や関連する知財の確保等が必須であることから、関係府省が連携して、これまでの知財・標準化戦略を抜本的に見直すことが必要である。

(2) 目標

Beyond 5G 市場におけるサプライチェーンリスクの軽減と市場参入機会の創出に向け、研究開発成果等を踏まえた技術要件を 2025 年頃から順次 3GPP や ITU 等での国際標準に反映させる。このため、早期に戦略的パートナーとの連携体制を構築するとともに、2030 年時点における Beyond 5G の必須特許数シェアについて、国際的な競争力・交渉力の確保に活用できる形で 5G 必須特許の世界トップシェアと同水準の 10%以上を獲得することを目指し、併せて関連する周辺特許の取得も促進する。

(3) 具体的な施策

(戦略的な知財化・標準化の見極めとオープン化・デファクト化の推進)

我が国に「強み」がある技術については、思い切った技術のオープン化・モジュール化が他者との新たな連携を促進し、個者では想定し得ない市場を創出・獲得するという「オープンイノベーション」の視点にも留意しつつ、関連の製品開発・市場動向を踏まえて、標準化や知財獲得の必要性を戦略的に見極める必要がある。このため、特に国による研究開発プロジェクトにおいて、これまでの標準化実績を重要視して評価してきた傾向を改め、より戦略的な目標設定を検討する。【2021 年度より順次実施 】

また、Beyond 5G 市場におけるオープン化やデファクト化に向けた機器開発に係る時間的・資金的負担を軽減することで、その標準化や実装を促進することが重要である。このため、異ベンダー機器間の相互接続・相互運用テストベッドやフィジカル空間をサイバー空間上に再現するエミュレータを国が整備し、内外の民間企業へ開放する。【2021 年度~2026 年度にかけて構築・運用】

さらに、政府間協議や国際機関の場等を通じ、Beyond 5G に向けたオープン化や仮想化、オール光ネットワーク等の実装・標準化を推進する民間部門のグローバルな展開(O-RAN アライアンス、IOWN グローバルフォーラム、HAPS アライアンス等)を支援する。【2020 年度より順次実施】

(戦略的パートナーとの連携体制の構築)

国際標準化に向けた強固な国際連携を図るため、研究開発段階から、有志国の企業等との国際共同研究を拡充する。また、その成果やユースケースを新興国に展開し、課題解決に貢献するため、その標準化プロセスに新興国の参加を促すといったブリッジング機能を果たす。【2021 年度より順次実施】

さらに、標準化での EU や米国等との連携強化のため、ETSI や NIST/IEEE 等の実装に有力な標準化機関と国内の民間標準化機関(ARIB、TTC 等)との連携体制を強化する。【2020 年度より順次実施】

加えて、国際的に調和のとれた世界無線会議(WRC)における周波数の国際分配(特定)及び ITU-R(無線通信部門)勧告の策定を実現するため、産学官が一体となり関係国との協調作業を推進する。【2021 年度より順次実施】

(標準化拠点の活用と戦略的な知財・標準化活動の促進)

産学官の主要プレイヤーが参加し、戦略的に標準化等に取り組めるよう「Beyond5G 知財・標準化戦略センター(仮称)」を設置し、同センターを核に以下の取組を推進する。【2020 年設置、2021 年度より本格稼働】

  • 知財を含む標準化戦略等の司令塔機能を果たすための議論の場の提供。
  • 知財・標準化戦略の立案と進捗状況の把握(評価・改善等を含む)。
  • 企業経営のための知財戦略に資する効果的な IP(Intellectual Property)ランドスケープ(知財マップに各国の市場動向や研究開発動向を加味したもの)の作成・提供。
  • 国際標準化団体における議論をリードできるようにするための、技術や事業の専門家と議長職経験者など外交・調整力に優れた内外の人材を含むチームによる標準化活動の促進と、標準化活動を支援可能な人材の確保・維持。
  • 情報通信分野を専門とする知財・法務や事業戦略の企画等に関する専門人材の効果的な活用やその中長期的な育成方策の検討。
  • Beyond 5G の主要ユーザとなり得る企業や OTT ベンチャーといった新たなプレイヤーの標準化活動への参画、新たなフォーラムの組成、国際的な議論の場の形成等の促進。
  • 「Beyond 5G 研究開発プラットフォーム」への民間企業の参画の促進。

また、研究開発プロジェクトの採択や通信事業者への新たな電波の割当(例:特定基地局の開設計画の認定等)等の際に、オープン化された規格に基づく通信機器の採用等を条件とするとともに、国際標準化への貢献や知財の戦略的な取得・利活用(標準必須特許・知財ポートフォリオ形成に向けた取組等)を条件とすることを検討する。【2021 年度より順次実施】

4-4.展開戦略

(1) 基本的な考え方

Beyond 5G の早期かつ円滑な導入の実現には、5G があらゆる分野や地域において浸透し、徹底的に使いこなされている「Beyond 5G ready」な環境を早期に実現することが必要である。

Beyond 5G は、5G と同様に、①携帯電話事業者による全国的な商業ネットワーク、②地域や産業の個別のニーズに応じて地域の企業や自治体等の様々な主体が柔軟に構築・運用するローカルなネットワークに加え、③複数のローカルなネットワークが相互に連携して活用される中規模ネットワークなど、多様なネットワークの形態が想定される。

Beyond 5G 時代の様々な社会課題等を解決していくためには、これらのネットワーク形態の多様性も踏まえたユースケース(利活用モデル)の創出が必要であることから、5G の普及・拡大フェーズに際しても、将来を見据えてネットワークの面的拡大(供給側)と産業利用・公的利用に係るユースケースの構築・拡大(需要側)を一体的に図ることが重要である。

その際、各国・地域が抱える様々な課題を解決するグローバルな利活用を当初から念頭に置くとともに、セキュリティ・バイ・デザインやプライバシー・バイ・デザイン、ユニバーサルデザインに基づいたものとすること等に留意しつつ、大学・企業等の能力の最大限の活用することが必要である。

(2) 目標

2030 年までに「Beyond 5G ready」な環境を実現するため、5G・光ファイバ網の社会全体への展開を早急に進めるとともに、課題解決に資するユースケースの構築・拡大に必要な環境整備を集中的に実施し、インパクトのあるユーザオリエンテッドな(利用者視点に基づく)国内外のユースケースを確立・浸透させる。これにより、2030 年度に 44 兆円の付加価値を創出する。

(3) 具体的な施策

(5G・光ファイバ網の社会全体への展開)

5G 投資促進税制や 5G エリア整備支援制度、技術基準等の制度整備などの政策手段を最大限活用し、全市町村における早期のエリア展開を目指し、当初整備計画の3倍となる約 21 万局以上の 5G 基地局の整備を図ることにより、「Beyond 5G ready」な環境を支える 5G ネットワークの面的展開を強力に推進する。【2023 年度末を目処に整備】

具体的には、以下の取組により、全国における 5G サービスの立ち上げを加速させる。

  • 5G 投資促進税制による 5G 基地局の前倒し整備支援【2020 年度より実施】
  • 携帯電話事業者による自主整備が遅れがちな条件不利地域における 5G エリアの整備を促進するための財政支援【2020 年度より実施】
  • 市町村が希望する全ての地域における 5G 等を支える光ファイバの整備を促進するための財政支援【2019 年度より実施】
  • 5G を活用した様々な高度なサービスを実現するために必要不可欠となる新たな5G 用周波数の確保【早ければ 2021 年度制度整備】
  • 現在 4G で使用している周波数を 5G で利用可能とすることによる 5G の広域なカバーの実現【2020 年度制度整備、順次基地局展開】

また、ローカル 5G についても、以下の取組により、様々な場所・用途での導入を促進する。

  • 5G 投資促進税制によるローカル 5G の整備支援【2020 年度より実施】
  • ローカル 5G 用周波数帯の拡充【2020 年制度整備】
  • 個別のユースケースに応じた柔軟なローカル 5G の技術仕様や運用を可能とする制度整備【2021 年度以降順次制度整備】

さらに、地方も含む日本全国での 5G エリアの面的整備を促進するため、「移動通信分野におけるインフラシェアリングに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」(平成 30 年 12 月策定)を踏まえ、基地局設備等のネットワーク設備を複数事業者が共同で整備するインフラシェアリングを推進する。そのため、5G基地局の無線設備の共用技術の研究開発を 2020 年度より実施するとともに、設置場所に物理的制約のある信号機等への基地局の設置や、トンネル等の遮蔽対策における民間シェアリング事業者の活用を推進する。また、個人の端末や自動車、スマートポール、看板、マンホール等も基地局として活用できるようにするための制度整備等を実施する。【2020 年度以降順次実施】

あわせて、地方において増大するデータの地産地消を促進し、高品質なサービスが安定して提供されるようにするため、地方に分散しているデータセンターをセキュリティを担保しつつ仮想的な巨大クラウドとして一体的に運用する技術を開発する。【2020 年度より実施】

(サイバーセキュリティ常時確保機能の実現)

CPS の進展に伴い、サイバー空間とフィジカル空間を境界の無い連続的なものとして捉え、サイバーセキュリティを検討する必要が生じている。また、ネットワークに関しても、クラウドからエッジ・端末に至るまで、境界なく連続的にセキュリティを確保し続ける機能が求められることとなる。こうした観点で 5G・Beyond 5G のサイバーセキュリティの確保を進めていく。

5G・Beyond 5G について、サイバーセキュリティの確保のため、ユースケースや個人情報の漏えい防止等を含むリスクに応じた適切なサイバーセキュリティ対策の考え方を示すガイドラインを定めるとともに、通信ネットワークに係る技術的要件を新たに策定する際には、多様な通信サービスを安全かつ安定的に信頼して利用できるよう、セキュリティ・バイ・デザインやプライバシー・バイ・デザインの考え方に充分配慮した検討を行う。【2025 年以降、Beyond 5G の導入時期を踏まえて検討】

2030 年代の高度な ICT の実装環境を踏まえ、セキュリティ・バイ・デザインやプライバシー・バイ・デザインの考え方に充分配慮しつつ、現在のインターネット・プロトコル(TCP/IP)を基礎に、オープンで、相互運用性があり、信頼ができ、安全なインターネットについての在り方や、それを実現するアーキテクチャについて、幅広い関係者との検討を進める。検討結果については、IETF 等へ提案することを念頭に置き、関係者と連携して、国際的に活躍できる人材の支援や関係技術や規格等の実装の促進等を図る。【2020 年度以降随時実施】

また、年々高度化するサイバー攻撃に確実に対処していく必要があることから、リアルタイムの改ざんの検知や脆弱性の検出、サイバー攻撃の検知・解析・防御等を AIにより自動的に行うために必要となる技術の開発を行う。さらに、安全・信頼性確保のため、サイバーセキュリティ情報を大規模に集約し、横断的分析を行う産学官による知的基盤の構築を推進する。【2020 年度以降随時実施】

加えて、量子コンピュータ時代の堅牢な耐量子計算機暗号等の開発及び実証を進め、CRYPTREC 暗号リスト(電子政府推奨暗号リスト)の見直しにあわせて耐量子計算機暗号等に関するガイドラインを策定するとともに、量子暗号装置の普及等により量子暗号システムの社会実装を推進する。【耐量子計算機暗号等に関するガイドラインについては 2022 年度策定、量子暗号システムについては 2025 年度以降を目途に社会実装を推進】

さらに、超安全・信頼性の確保を優先する用途向けに、サイバー攻撃や災害等があっても継続的に利用可能な通信サービスが提供されるよう、必要な技術や規格等の通信分野への実装を促進していく。【2025 年以降、Beyond 5G の導入時期を踏まえて検討】

(課題解決に資するユースケースの構築・拡大)
<多様なユースケースの構築>

5G があらゆる分野や地域において浸透し、徹底的に使いこなされている「Beyond 5G ready」な環境の実現を目指し、我が国社会の課題解決に真に資するようユースケース(そのユースケースを展開する前提としてのビジネスモデルを含む。)を構築・拡大していくため、多様性を確保したユーザオリエンテッドな形による 5G 等を活用した課題解決型実証プロジェクトを実施し、多様なユースケースを構築する。【2020 年度より実施】

また、構築したユースケースについては、中堅・中小企業や地方公共団体等による利用開始のハードルを大幅に引き下げることによりその横展開を促進し、地域産業等のデジタル化(デジタル・トランスフォーメーション)を図る必要がある。このため、データ利活用型スマートシティの各種機能等のモジュール化を進め、スマートシティの都市間連携・全国展開を推進することと併せ、エッジと連携したクラウド型(SaaS)の共通プラットフォームによりこれらのビジネスモデルやユースケースをソリューションモデルとして低廉かつ容易に利用できるよう、イノベーションハブとしての機能を持つ「5G ソリューション提供センター(仮称)」の仕組みを構築する。【2020 年度より実施】

あわせて、地方・中小の企業におけるクラウドの利活用を推進するための技術要件等の環境整備や、クラウドサービスのセキュリティの確保や災害発生時のサービス安定運用等に関する研究開発等についても推進する。【2020 年度以降順次実施】

リビング・テストベッドの活用推進>

5G 等により収集・蓄積したデータをセキュリティ・バイ・デザインプライバシー・バイ・デザインに基づき流通・活用するため、企業や地方公共団体と共に、一つの街全体をリビング・テストベッドとして、スマートシティ及びスーパーシティの枠組みも活用しつつ、ICT に知見のある大学等の協力も得ながら、データを流通・活用した Beyond 5G に向けた大胆な実証を自由かつ柔軟に実施できる環境整備を推進していくことが必要である。このため、5G 等により収集・蓄積したデータを活用した「データ主導社会」実現のための地域プロジェクトの開発・展開やこれを支える若手・創造人材の育成に向け、地域の大学等、地元経済界や行政と連携しつつ地域一体型の社会課題解決を図る体制整備を推進する。【2021 年度より検討を行い、速やかに実施】

<5G インフラ・ソリューションのグローバル展開>

5G により一層高い品質で提供できる可能性のある IoT、農業 ICT、遠隔医療等のソリューションは、インフラ整備途上のエマージング・エコノミーを含め、経済成長の実現と社会課題の解決の両面から、世界各地でニーズが大きいと考えられる。このため、上記の国内展開と併せ、5G の前提となるインフラ整備状況等を踏まえ、当面の働きかけの対象国・地域を選定し、当該対象国・地域の官民や国内の取組と歩調を合わせつつ、ファイナンス支援機関とも連携して、価格・機能の両面を含め現地ニーズに合致すると考えられるソリューションの調査実証(必要な場合のインフラ整備に関する支援を含む。)を3年程度集中的に実施する。また、成功事例や展開可能性のある事例については、これをリファレンス・モデルとして、国内を含めた各国(地域)等での活用の可能性を追求する。【2020 年度着手】

5G や将来の Beyond 5G を用いたインフラ・ソリューションの展開において展開対象国・地域との協働を適切に推進し、対象国・地域での調査実証や協力関係の構築維持を効果的に行うには、対象国・地域の事情に精通し、ニーズにマッチしたインフラ・ソリューションを提案できる人材が不可欠である。そのため、海外展開の推進を目的とする官民関係者による協議体「デジタル海外展開官民協議会(仮称)」に多様な関係者の参画を勧奨し、海外事業に助言等を行うアドバイザーを登録することなどにより、人材の確保・育成に取り組む。【2020 年度着手】

また、良好なインフラ・ソリューションは大手 ICT 企業によって提供されるとは限らず、海外向けの BOP ビジネスやビジネスイノベーションを創出する有望なスタートアップ等の中小 ICT 企業等を発見し、連携していくことが重要である。そのため、研究開発分野で実績のある「異能 vation」や競争的資金等の例を参照しつつ、公募を通じて海外でのアイデアの実装や事業化を支援する仕組みを新たに設ける。【2021 年度以降着手】

<緊急事態においても国民生活や経済活動が維持される社会の構築>

緊急事態においても 5G/Beyond 5G を含む ICT により、国民生活や経済活動が円滑に維持される社会を実現することが必要である。例えば、今般の COVID-19 の感染拡大の防止のために「人との接触」を最小限にすることが求められ、オンライン診療の見直しなど、緊急避難的に各種の対面での行為を前提としていた規制が見直されるとともに、在宅等で業務を遂行可能なテレワークの活用が進展した。

引き続き、フィジカル空間で不測の事態が生じた場合でも、サイバー空間を通じて国民生活や経済活動が円滑に維持されるよう、遠隔会議システムにおけるセキュリティ対策、システム負荷の軽減、なりすましやデータの改ざん防止等の仕組みであるトラストサービスの実証及び速やかな制度整備、企業や地方公共団体等のテレワークの導入に向けた体制整備に係る支援や業務ルール・業務慣行等の仕組みの見直し等に関係府省が連携して取り組み、社会全体のデジタル化の推進を図る。【2020 年度より実施】

<ICT 機器・サービスを誰もが使いこなせる環境の整備>

COVID-19 の感染拡大に伴う外出制限等により、ICT に依存せざるを得ない状況下において、ICT の必要性とともに、ICT 機器・サービスを使いこなすことができる環境構築の必要性が改めて認識された。Beyond 5G に向けては、国民全体が、ICT 機器、サービスを使いこなし、COVID-19 の感染拡大対策等の緊急事態への対応のみならず、Society 5.0 の恩恵を感じられるようにしていくことが不可欠である。

そのためには、ICT 機器・サービス自体が利用者にとって使いやすいものである必要があり、それらの開発者・提供者においてヒューマン・インターフェースの一層の向上を意識して取り組むとともに、ユニバーサルデザインの確保につながるよう、情報バリアフリーに資する ICT 機器・サービスの開発・提供への支援や、公的機関のウェブサイト等を誰もが利用しやすくする取組を引き続き行う。

これに加え、ICT 機器・サービスを使いこなす上で特にハードルを感じる者が多い高齢者等を中心に、今後一層普及が見込まれるデジタル行政手続等を自ら行えることも含め、ICT 機器・サービスを活用した新たな社会・生活様式に円滑に入っていくことができるよう、身近に ICT 機器・サービスの利用を学び、相談できるような環境の構築に取り組み、必要となる制度整備について検討する。【2020 年度より検討を行い、速やかに実施】

5.戦略の推進方針

本戦略を産学官の連携により強力かつ積極的に推進するための母体として、「Beyond 5G 推進コンソーシアム(仮称)」を設置する。同コンソーシアムにおいて、各戦略に基づき実施される具体的な取組を産学官で共有するとともに、国内外の企業や大学等による新規の実証プロジェクトの立ち上げ支援等を実施する。また、Beyond5G 推進に向けた産学官の取組の加速化と国際連携の促進を図るため、同コンソーシアムが主体となって毎年「Beyond 5G 国際カンファレンス(仮称)」を開催する。この会合については、研究開発等に関する最新の国際動向の情報を共有し、また、我が国における Beyond 5G に関する取組状況を国際的に発信する仕組みとしても活用する。

同コンソーシアムの活動を支えるため、総務省内に部局横断的な「Beyond 5G 推進タスクフォース(仮称)」を設置する。同タスクフォースは、同コンソーシアムの活動の支援のほか、総合科学技術・イノベーション会議、IT 総合戦略本部、サイバーセキュリティ戦略本部と連携しつつ、本戦略の推進ロードマップの進捗を管理する。その状況については、毎年プログレスレポートを取りまとめ、公表する。また、これに基づき、必要に応じて戦略の改定等を実施する。

参照

総務省トップ > 広報・報道 > 報道資料一覧 > 「Beyond 5G推進戦略 -6Gへのロードマップ-」の公表

https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban09_02000364.html

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