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「健康は自己責任」は間違い?社会が作る"健康格差"の正体

2025年8月14日

「健康の社会的決定要因、Social Determinant of Health(SDOH)」という言葉を、これまでに耳にしたことのある方は、おそらく非常に限られていることでしょう。しかし、この言葉が指し示す考え方の根本は、むしろ私たちの誰もが日々の生活の中で直感的に感じている事柄にほかなりません。

例えば、多くの資産を持つ人と、ほとんど資産を持たない人とでは、どちらがより健康的な生活を送れそうでしょうか。多くの場合、経済的に余裕のある人の方が、栄養バランスの取れた新鮮な食材を手に入れたり、定期的に運動するための施設を利用したり、あるいは心身に過度な負担をかけない労働環境を選んだりする機会に恵まれやすいのではないかと考えるのが自然です。これは、お金が直接的に病気を治すわけではないものの、健康的な選択肢を手に入れやすくするための強力な手段として機能することを示唆しています 1

私たちの健康状態は、個人の遺伝的な要因や、病気になったときに受ける医療サービスの質だけで決まるものではありません。むしろ、そうした要因以上に大きな影響を与えているのが、私たちがどのような環境で生まれ、育ち、学び、働き、そして歳を重ねていくのかという、一連の社会的・経済的な条件なのです。この考え方こそが、「健康の社会的決定要因(SDOH)」の中核をなすものです。

世界保健機関(WHO)や米国疾病予防管理センター(CDC)は、このSDOHを「人々が生まれ、成長し、生活し、働き、老いる状況であり、また、日々の生活のあり方を形成する、より広範な力とシステム」と定義しています 3。ここで言う「より広範な力とシステム」とは、国の経済政策や開発計画、社会に根付いた規範、社会政策、そして政治の仕組みといった、私たちの生活を根底から形作る大きな構造を指します 3。つまり、私たちの健康は、個人の意思や努力だけで完結するものではなく、社会全体のあり方によって大きく左右される、ということです。

このSDOHという視点がなぜこれほどまでに重要視されるのでしょうか。それは、数多くの研究が、遺伝的要因や医療へのアクセスといった要素よりも、社会的な要因の方が人々の健康に与える影響がはるかに大きいことを示しているからです 3。これは、公衆衛生の考え方に根本的な転換を促すものです。病気になってから治療するという「下流」での対応ももちろん重要ですが、それだけでは限界があります。病気の根本的な原因、すなわち人々を不健康にする社会的な環境そのものに働きかける「上流」でのアプローチが不可欠なのです 8

この考え方は、健康に対する「責任」の所在を問い直すことにもつながります。従来、健康は個人の生活習慣、例えば食事や運動、喫煙といった行動の結果であり、その責任は個人にあると見なされがちでした。しかし、SDOHの視点に立てば、その「個人の選択」がいかに社会的な制約を受けているかが見えてきます。例えば、健康的な食事を選ばないという行動の背景には、近所に新鮮な食材を適正な価格で販売する店がなかったり、あるいは経済的な余裕のなさから安価で栄養価の低い食品を選ばざるを得なかったりする状況が存在するかもしれません 2。このように、個人の行動は、社会によって与えられた選択肢の範囲内でしか行えません。したがって、健康問題を個人の努力不足や道徳的な失敗として非難するのではなく、社会構造の問題として捉え直し、誰もが健康的な選択をできる環境を整えることが、政策の重要な目標となります。

このSDOHというレンズを通して社会を見渡すと、人々の間に存在する健康状態の差、すなわち「健康格差」が浮かび上がってきます。この格差は、単なる偶然や個人の運不運の結果ではありません。それは、社会的な状況の違いによって生み出される、不公平で、本来は避けうるはずの差異です 6。本記事では、この健康格差がなぜ、そしてどのようにして生まれるのか、そのメカニズムを深く探求し、すべての人が健やかに生きられる社会を実現するための道筋を考えていきます。

社会はいかにして私たちの健康を形作るか

健康格差の設計図:構造的決定要因と中間的決定要因

健康の社会的決定要因(SDOH)が、どのようにして私たちの健康に影響を及ぼし、人々の間に「健康格差」という不平等を生み出すのか。その複雑なプロセスを理解するために、世界保健機関(WHO)は非常に有用な分析の枠組みを提唱しています。この枠組みは、健康に影響を与える無数の要因を整理し、それらがどのような因果関係で結びついているのかを可視化する、いわば健康格差の「設計図」のようなものです。この枠組みは、要因を大きく二つのカテゴリーに分類します。一つは「構造的決定要因」、もう一つは「中間的決定要因」です 5

まず、「構造的決定要因(Structural Determinants)」について見ていきましょう。これは、社会の最も根幹をなす、非常にマクロなレベルの要因を指します。具体的には、その国や地域の統治のあり方、マクロ経済政策、教育や労働、福祉といった社会政策、そして人種やジェンダー、宗教などに関する社会的な価値観や規範などが含まれます 3。これらの構造的要因は、社会における権力、富、そして教育機会といった貴重な資源が、人々の間でどのように分配されるかを決定づけます。この不平等な分配の結果として、個々人の社会経済的な地位、すなわち学歴や職業、所得の水準が決まってくるのです。この意味で、構造的決定要因は、健康問題の直接的な原因の、さらにその奥にある「原因の原因」と位置づけられています 5

次に、「中間的決定要因(Intermediary Determinants)」です。これは、先ほどの構造的決定要因によって形作られた、私たちの日常生活により直接的に関わる具体的な要因群を指します。これには、いくつかの側面が含まれます。第一に、住居の質や衛生環境、食料へのアクセス、安全な労働環境といった「物質的な生活環境」です。第二に、ストレスの多い出来事や、友人や家族からの支援の有無といった「心理社会的な状況」です。第三に、喫煙や食生活、運動習慣といった「行動科学的・生物学的要因」が挙げられます。そして最後に、医療サービスへのアクセスのしやすさや、その質といった「保健医療システム」自体も、この中間的決定要因に含まれます 5。これらの要因は、私たちの身体や心に直接作用し、健康状態を左右します。

この二つの決定要因の関係性は、一連の因果の連鎖として理解することができます。例えば、ある国が教育への公的支出を削減するという政策(構造的決定要因)を決定したとします。その結果、質の高い教育を受けられる機会が減少し、人々の最終学歴に差が生まれます。この学歴の差は、就ける職業の選択肢や得られる所得の水準(社会経済的地位)に影響を与えます。そして、所得が低い人々は、質の悪い住宅に住み、栄養価の低い食事をとり、ストレスの多い労働環境で働くことを余儀なくされるかもしれません(中間的決定要因)。こうした日々の生活の積み重ねが、最終的に病気の発症率や平均寿命といった健康状態の差(健康格差)となって現れるのです 10

このフレームワークは、健康格差が個人の不運や偶然の結果ではなく、社会の仕組み、すなわち政策や経済システムによって体系的に、いわば「設計」されて生み出されているという事実を明らかにします。一見すると個人的な問題に見える病気も、その原因をこのフレームワークに沿って上流へと遡っていくと、政治的・経済的な意思決定に行き着くことがあります。例えば、ある地域で心臓病による死亡率が高いという事象があったとします。その直接の原因は、住民の食生活の乱れや運動不足(中間的決定要因)かもしれません。しかし、なぜそうなってしまったのかをさらに探ると、その地域の失業率の高さや低所得(社会経済的地位)という問題が見えてきます。そして、その背景には、特定の産業を衰退させた経済政策や、労働者を保護しない規制緩和(構造的決定要因)が存在しているかもしれないのです。

このように、WHOのフレームワークは、健康問題を個人のレベルから社会構造のレベルへと引き上げて分析することを可能にします。そして、この理解は、健康格差を本気で是正するためには、医療サービスを充実させるといった中間的要因への介入だけでは不十分であり、より根源的な原因である社会政策や経済システムのあり方そのものを見直す必要がある、という重要な結論へと私たちを導くのです。なお、地域社会のつながりの強さを示す「社会的結束(ソーシャル・コヒージョン)」や、信頼と規範のネットワークである「社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)」は、こうした構造的要因と中間的要因とを橋渡しする、重要な役割を果たす概念として注目されています 10

私たちの人生における中核的決定要因

生涯にわたる影:幼少期はいかにして成人後の健康を形作るか

「三つ子の魂百まで」ということわざが示すように、人生の非常に早い段階での経験が、その後の人格形成や人生の歩みに大きな影響を与えることは、古くから知られてきました。近年の公衆衛生学の研究は、この経験則が、私たちの「健康」という側面においても極めて重大な真実であることを、科学的な証拠をもって明らかにしつつあります。ここでは、人生の初期段階、特に幼少期が、成人後の、そして生涯にわたる健康をいかにして形作るのか、その深遠なメカニズムを探求します。

この問題を考える上で中心となるのが、「ライフコース・アプローチ」という視点です。これは、人の健康状態が、ある一時点の状況だけで決まるのではなく、胎児期に始まり、幼少期、思春期、成人期、そして老年期に至るまでの一生を通じて経験する、様々な物理的・社会的要因が蓄積した結果として形成されると捉える考え方です 14。人生は一本の連続した道筋であり、過去の経験が現在の、そして未来の健康への道を形作っていくのです。

ライフコースの中でも、特に決定的な重要性を持つのが幼少期です。この時期の脳や身体は驚異的なスピードで発達しており、外部からの刺激に対して非常に敏感です。この時期にどのような栄養を摂取し、どのような教育を受け、どのような家庭環境で過ごしたかが、その後の学力や認知能力、さらにはストレスへの対処能力といった、人生を生き抜く上での基礎的な力を育みます。そして、その力は、将来の学歴や職業、所得といった社会経済的地位を左右し、ひいては成人後の健康状態にまで、長期にわたって影響を及ぼし続けるのです 9

この幼少期の影響を具体的に解明する上で、極めて重要な概念が「小児期逆境体験(Adverse Childhood Experiences: ACEs)」です。これは、18歳までの子ども時代に経験する、深刻なストレスを伴う出来事を指します。具体的には、親からの身体的・精神的な虐待や育児放棄(ネグレクト)、家庭内での暴力の目撃、同居家族の精神疾患やアルコール・薬物依存、あるいは親の離婚や死別といった、子どもの力ではどうすることもできない逆境的な体験が含まれます 20

ACEsに関する大規模な研究は、私たちに衝撃的な事実を突きつけました。それは、子ども時代に経験したACEsの数が多いほど、成人してから様々な健康問題に見舞われるリスクが劇的に高まるという、強い量的な関係です。例えば、複数のACEsを経験した人は、そうでない人と比べて、がんや心臓病、脳卒中といった身体的な疾患だけでなく、うつ病や不安障害といった精神的な疾患を発症する確率が著しく高くなることが示されています 20。さらにその影響は、失業や貧困、社会的孤立といった社会的な困難にまで及ぶことも分かっています 22。この背景には、幼少期の強烈なストレスが、発達途上にある子どもの脳や内分泌系、免疫系に生物学的な変化を刻み込み、ストレスに対して脆弱な身体を作り上げてしまうというメカニズムがあると考えられています。

しかし、この話は、幼少期の環境がその後の人生をすべて決定してしまうという、暗い運命論で終わるわけではありません。最新の研究は、逆境の闇の中に差し込む、一条の希望の光を明らかにしています。それが、「肯定的体験(Positive Childhood Experiences: PCEs)」の存在です。ACEsが健康への「リスク要因」であるとすれば、PCEsはそれを打ち消し、子どもたちの回復力(レジリエンス)を育む「保護要因」として機能します。特に注目されているのが、家庭の外で得られる肯定的体験、すなわちコミュニティにおける肯定的体験です。例えば、家族以外に心から信頼し、相談できる大人がいたこと、困難な時に支えになってくれる友人がいたこと、学校に自分の居場所があると感じられたこと、地域の伝統行事やお祭りに参加した経験などが、ACEsの長期的な悪影響を和らげる強力な力を持つことが分かってきたのです 25

この点に関して、日本で行われた注目すべき研究があります。この研究では、ACEsを経験した人々であっても、先述のような地域や学校での肯定的体験を3つ以上持っていた場合、そうでない人々に比べて、成人後の脳卒中や重度のうつ・不安障害、狭心症・心筋梗塞といった深刻な病気のリスクが、約半分にまで劇的に低下することが示されました 25。この結果は、家庭というミクロな環境が困難な状況にあったとしても、学校や地域社会という、より広いコミュニティが「第二の家庭」のような保護的な役割を果たすことで、健康格差の世代を超えた連鎖を断ち切れる可能性を示唆しています。

したがって、幼少期の経験は、その後の健康を一方的に決定づけるものではありません。それは、リスク要因であるACEsと、保護要因であるPCEsとの間の、生涯にわたるダイナミックな相互作用の結果なのです。この事実は、社会の政策にとって極めて重要な示唆を与えます。問題を抱える家庭への個別的な支援はもちろん重要ですが、それと同時に、すべての子どもたちがアクセスできる、質の高い学校教育、安全な遊び場、そして豊かな地域活動といった、普遍的で保護的な環境を社会全体で整備していくことが、未来の世代の健康を守り、健康格差を是正するための、最も効果的な投資の一つであると言えるでしょう。

経済という土台:所得、教育、職業が健康を左右するメカニズム

私たちの健康状態が、所得や学歴、どのような仕事に就いているかといった社会経済的な地位(Socioeconomic Status: SES)によって大きく影響を受けることは、これまでの議論で繰り返し触れてきました。ここでは、この社会経済的地位を構成する三つの主要な要素、すなわち「所得」「教育」「職業」が、それぞれ具体的にどのような経路をたどって、私たちの心身の健康に影響を及ぼすのか、その複雑で多岐にわたるメカニズムを一つひとつ解き明かしていきます。

まず理解しておくべきは、所得、教育、職業という三つの要素は、それぞれ独立しているのではなく、互いに密接に絡み合っているという点です。一般的に、高い水準の教育を受けることは、より専門的で安定した職業に就く機会を増やし、それが結果として高い所得につながるという、強い関連性が見られます 7。この三位一体の要素が、私たちの生涯にわたる健康の土台を形作っているのです。

それでは、まず「所得」が健康に与える影響から見ていきましょう。所得が多いことの利点は、単に高価な医療サービスを受けられるという点に留まりません。むしろ、より広範な意味での「健康への投資」を可能にすることに、その本質があります。例えば、経済的な余裕があれば、栄養価の高い新鮮な食品を日常的に購入したり、犯罪率が低く衛生的な、安全な地域に住居を構えたり、あるいはスポーツジムに入会して定期的に運動したりすることが容易になります 1。これらはすべて、病気を未然に防ぎ、健康を維持するための重要な物質的基盤です。一方で、所得が低い場合、こうした健康的な選択肢は著しく制限されます。さらに、所得の低さは、家賃や光熱費の支払い、子どもの教育費といった日々の金銭的な心配事を絶えず生み出します。このような慢性的な経済的ストレスは、私たちの身体に直接的な影響を及ぼし、ストレスホルモンの分泌を促し、高血圧や心疾患、免疫機能の低下といった生理学的な問題を引き起こすリスクを高めることが知られています 2

次に、「教育」が持つ力について考えてみましょう。教育の役割は、単に知識を授けるだけではありません。それは、健康に関する情報を正しく理解し、それを自らの生活に効果的に応用するための能力、すなわち「ヘルスリテラシー」を育む上で決定的に重要です 8。教育水準が高い人ほど、健康診断の重要性を理解して定期的に受診したり、病気の兆候に早く気づいて医療機関を訪れたり、あるいは医師の説明を深く理解して治療に積極的に参加したりする傾向が強いことが、多くの研究で示されています。また、教育は、複雑な問題を分析し、論理的に解決策を導き出す能力や、短期的な欲求をコントロールして長期的な視点で物事を考える力を養います。こうした能力は、ストレスフルな状況に直面した際に冷静に対処したり、健康に悪い習慣を断ち切ったりする上で、大きな助けとなります 27

最後に、「職業と社会的地位」の影響です。職業は、私たちに所得をもたらすだけでなく、社会における自らの立ち位置を規定し、自尊心や自己肯定感の源ともなります。社会的に評価の低い職業に就いている、あるいは自分の社会的地位が低いと感じること自体が、慢性的な心理的ストレスとなり、精神的な健康を損なう可能性があります 19。また、社会的地位は、私たちが利用できる公的なサービスや、社会から受けられる支援の質と量にも影響を及ぼします。例えば、生活保護を受給している人々は、自動車の所有が認められないといった物質的な制約だけでなく、社会からの偏見やスティグマという、目に見えない精神的な負荷をも背負わされることが少なくありません 4

これらの所得、教育、職業という要因は、相互に影響し合いながら、私たちの健康に複合的な効果を及ぼします。そして、その結果として、社会全体に「健康の社会的勾配(Social Gradient)」と呼ばれる現象が生み出されます。これは、社会経済的な階層の最も豊かな層から最も貧しい層まで、地位が一段下がるごとに、平均的な健康状態が少しずつ悪化していくという、驚くほど一貫したパターンのことです 6。この社会的勾配の存在は、健康格差が一部の貧困層だけの問題ではなく、社会全体にわたる構造的な課題であることを明確に示しています。

この格差が生じるメカニズムをさらに深く考察すると、二つの異なる経路が見えてきます。一つは、これまで述べてきたような、所得の低さによって健康に必要な物やサービスが手に入らないという「絶対的剥奪」の経路です 2。もう一つは、より心理社会的な「相対的剥奪」の経路です 28。これは、自分自身の絶対的な生活水準がどうであれ、社会の他の人々と比較して自分が劣っている、あるいは不利益を被っていると感じること自体が、憤りやストレス、無力感を生み出し、健康を害するという考え方です。この相対的剥奪という概念は、なぜ豊かな先進国においても、深刻な健康格差が依然として存在し続けるのかを説明する上で非常に重要です。たとえ国全体が豊かになり、絶対的な貧困が減少したとしても、国内の経済的な格差が拡大すれば、人々の相対的な剥奪感は強まり、社会全体の健康水準が停滞、あるいは悪化する可能性すらあるのです。このことは、単に貧困層に給付を行うだけでなく、税制や社会保障を通じて所得の再分配を強化し、社会全体の格差そのものを縮小させることが、国民のストレスを軽減し、病気を減らすための極めて有効な公衆衛生政策となりうることを示唆しています。

働くということ:労働環境、ストレス、そしてウェルビーイング

成人期の私たちの人生において、睡眠時間を除けば最も多くの時間を費やす場所、それが「職場」です。働くことは、生計を立てるための収入を得るという経済的な側面に加え、社会に貢献しているという実感や、自己実現の喜び、同僚との人間関係といった、人生を豊かにする多くの側面を持っています 29。しかしその一方で、職場は私たちの心身の健康を脅かす、深刻なストレスの源泉ともなり得ます。ここでは、この「働く」という行為が、私たちの健康、すなわちウェルビーイングにどのような影響を与えるのかを、雇用の安定性や労働環境の質、そして職場におけるストレスの観点から多角的に分析します。

まず、最も基本的な問題として、雇用の有無が挙げられます。失業している状態は、単に収入が途絶えるという経済的な困難だけをもたらすわけではありません。社会的な役割を失ったという感覚、将来への漠然とした、しかし根強い不安は、人の自尊心を深く傷つけ、精神的な健康を著しく損ないます。多くの研究が、長期にわたる失業状態が、うつ病などの精神疾患のリスクを高めるだけでなく、心臓病やその他の身体的な疾患による死亡率をも上昇させることを明らかにしています 18。特に、会社の倒産やリストラといった、本人の意思や能力とは無関係な理由による非自発的な失業は、個人に与える衝撃が大きく、健康への悪影響もより深刻になる傾向があります 30

しかし、仕事に就いてさえいれば安心、というわけではありません。現代の職場においてより重要なのは、その仕事の「質」です。この仕事の質と健康の関係を説明する上で、世界的に広く用いられている理論モデルが、「仕事の要求度-コントロール-支援モデル(Job Demand-Control-Support Model)」です 31。このモデルは、職場のストレスを三つの要素の組み合わせで考えます。

第一の要素は、「仕事の要求度(Demand)」です。これは、こなさなければならない仕事の量、作業のペース、そして時間的なプレッシャーの厳しさなどを指します。第二の要素は、「仕事の裁量権(Control)」です。これは、仕事の進め方や順序、ペース配分などを、どれだけ自分の意思で決定できるかという度合いを意味します。そして第三の要素が、「職場の支援(Support)」であり、困った時に助けてくれる上司や、気軽に相談できる同僚がどれだけいるか、という人間関係の側面を指します。

このモデルによれば、心身の健康に対するリスクが最も高くなるのは、これら三つの要素が最悪の形で組み合わさった時、すなわち「仕事の要求度は非常に高い」にもかかわらず、「仕事の裁量権はほとんどなく」、かつ「上司や同僚からの支援も乏しい」という状況です。このような職場は「高ストレイン職(High-strain jobs)」と呼ばれ、ここで働く人々は、燃え尽き症候群やうつ病、さらには高血圧や心血管疾患といった深刻な健康障害を発症するリスクが極めて高いことが、数多くの疫学研究によって証明されています 19

この理論モデルを日本の労働市場の現状に当てはめてみると、重要な問題が浮かび上がってきます。それは、近年増加の一途をたどる非正規雇用の問題です 34。パートタイマーや契約社員、派遣社員といった非正規雇用で働く人々は、多くの場合、正規雇用の労働者に比べて賃金が低いという経済的な格差に直面しています。しかし、問題はそれだけではありません。彼らは同時に、いつ契約を打ち切られるか分からないという雇用の不安定さ、キャリアアップの機会の乏しさ、そして病気になった際の所得保障や健康保険といった福利厚生へのアクセスの困難さといった、複数の不利な条件に同時にさらされています 34。さらに、非正規の仕事は、定型的で裁量権の低い業務であることが多く、まさに「高ストレイン」な労働環境に陥りやすいのです。こうした複合的な要因が、正規雇用者と非正規雇用者の間に、看過できない健康格差を生み出す一因となっていると考えられます。

この分析から導かれる重要な結論は、職場の健康問題を考える際に、単に労働時間の長さだけに着目していては本質を見誤るということです。もちろん、過労死につながるような極端な長時間労働は論外です。しかし、同じ時間働くのであっても、その仕事にやりがいを感じ、自分のペースで進めることができ、困った時には仲間が助けてくれる環境であれば、それは「健康的な挑戦(アクティブ職)」となり、むしろ人の成長を促すことさえあります。逆に、労働時間はそれほど長くなくても、常に上からの指示に縛られ、自分の意見も言えず、孤立した環境で働くのであれば、それは心身を蝕む有害なストレス(パッシブ職)となるのです。

したがって、真の「働き方改革」とは、単に残業時間を規制して「早く帰す」ことだけを目指すものではありません。それは、労働者一人ひとりに権限を委譲し、自律性を尊重し、そして互いに支援し合えるような風通しの良い職場文化を醸成するという、仕事の「質」そのものを変革していく試みでなければならないのです。健康経営とは、人事制度や組織文化のあり方と分かちがたく結びついている、経営そのものの課題であると言えるでしょう。

つながりの力:社会的支援と孤立の危険

人間は、一人では生きていけない社会的な生き物です。私たちは、家族や友人、地域社会といった他者との関わりの中で生まれ、育ち、そして生きていきます。この「つながり」は、単に私たちの人生に彩りを与えるだけでなく、心身の健康を維持し、困難を乗り越えるための、極めて重要な資源となります。ここでは、この「つながりの力」が健康にもたらす恩恵と、逆につながりを失った「社会的孤立」がもたらす深刻な危険性について、科学的な知見に基づいて探求します。

まず、この「つながりの力」を学術的に捉えた概念が、「ソーシャルサポート(社会的支援)」です。これは、他者との社会的な関係性の中で、授受される有益な支援全般を指し、大きく二つの種類に分類することができます 38。一つは、「道具的サポート(あるいは手段的サポート)」です。これは、具体的な問題解決に役立つ物理的な手助けや、有益な情報提供、経済的な援助などを指します。例えば、病気で寝込んでいる友人のために食事を作って届けたり、就職活動中の知人に関連する求人情報を教えたりすることがこれにあたります。

もう一つは、「情緒的サポート」です。これは、共感や愛情、尊敬、励ましといった、人の心に働きかける精神的な支えを意味します。仕事で失敗して落ち込んでいる同僚の話を親身に聞いてあげたり、大きな挑戦を前にした家族を「君ならできる」と勇気づけたりすることが、この情緒的サポートの典型例です。

では、こうしたソーシャルサポートは、具体的にどのようなメカニズムで私たちの健康に良い影響を与えるのでしょうか。研究では、主に二つの経路が考えられています。それは、「直接効果」と「緩衝効果(バッファリング効果)」です 39

「直接効果」とは、ソーシャルサポートが豊かであること自体が、ストレスの有無とは関係なく、私たちの心身の健康を直接的に向上させるという働きです。信頼できる人々との安定した関係性は、私たちに安心感や所属感、そして自分は価値のある存在だという自己肯定感を与えてくれます。こうしたポジティブな感情は、それ自体が精神的な健康の基盤となり、また、より健康的な行動(例えば、定期的な運動やバランスの取れた食事)を促すことにもつながります。

一方、「緩衝効果」とは、私たちがストレスの多い出来事や困難な状況に直面した際に、ソーシャルサポートがその精神的な衝撃を和らげ、健康への悪影響を軽減する、いわば「クッション」や「緩衝材」のような役割を果たすというものです。例えば、職場で厳しい要求にさらされても、家に帰れば悩みを打ち明けられる家族がいる、あるいは親しい友人に相談して的確なアドバイスをもらえるといった状況があれば、ストレスが深刻な健康問題に発展するのを防ぐことができるのです。

このソーシャルサポートという光の側面とは対照的に、現代社会が抱える深刻な問題として、「社会的孤立」と「孤独」という闇の側面が存在します。この二つの言葉はしばしば混同されますが、厳密には異なる概念です。「社会的孤立」とは、家族や友人、地域社会との接触が客観的に見て乏しい状態を指します。一方で、「孤独」とは、本人が望むような質の高い人間関係が欠如していると感じる、主観的な苦痛を伴う感情です。

近年の数多くの大規模な研究は、この社会的孤立と孤独が、私たちの健康にとって極めて深刻なリスク要因であることを明らかにしています。ある研究では、社会的孤立の状態にある人は、そうでない人に比べて、あらゆる原因による死亡リスクが有意に高まることが示されています。そのリスクは、心血管疾患やがんによる死亡においても同様に上昇します 41。驚くべきことに、社会的孤立が健康に与える悪影響の大きさは、1日にタバコを15本吸うことに匹敵するとも言われており、肥満や運動不足といった、これまでよく知られてきた健康リスク要因を超える可能性すら指摘されています。

そして、この問題はもはや高齢者だけのものではありません。日本の研究においても、社会的孤立は若者や中年層を含む全ての世代の精神的健康に悪影響を及ぼすことが確認されています 44。さらに興味深いことに、「自分は一人が好きだ」と考えている人であっても、客観的に孤立した状態にある場合、その健康への悪影響はほとんど軽減されないという研究結果もあります 45。これは、人とのつながりが、個人の好みや性格を超えた、生物学的なレベルでの基本的なニーズであることを示唆しています。孤立が健康を害するメカニズムとしては、ストレスホルモンの慢性的な上昇、免疫機能の低下、脳内の炎症反応の促進といった生理学的な経路や、不健康な生活習慣に陥りやすく、病気の兆候に気づきにくいといった行動的な経路が考えられています 46

これらの科学的知見は、私たちに一つの重要な結論を突きつけます。それは、人間が生物学的に深く「社会的な存在」としてプログラムされており、他者との安定したつながりは、食料や水、安全な住処と同じくらい、私たちの生存にとって不可欠な基本的要件であるということです。

したがって、社会的孤立は、単なる「寂しさ」という心理的な問題として片付けるべきではありません。それは、私たちの生命維持システムそのものを脅かす、深刻な「生理学的脅威」として認識し、社会全体で取り組むべき公衆衛生上の最重要課題の一つなのです。地域における交流の場を創出したり、人々が自然と顔を合わせるような都市を設計したりすることは、住民の生活の質を高めるだけでなく、医療費を抑制し、社会全体の生命力を高めるための、極めて重要な「社会インフラ」への投資であると言えるでしょう。

文化と環境:私たちが住む場所、信じること

私たちの健康は、個人の資質や社会経済的な地位だけで決まるわけではありません。私たちが日々どのような物理的な空間で生活し、どのような文化的な価値観の中で思考し、行動しているのかという「コンテクスト(文脈)」もまた、健康を形作る上で極めて重要な役割を果たします。ここでは、健康の社会的決定要因(SDOH)の主要な領域の一つである「近隣と建成環境」、そして私たちの行動様式を深く規定する「文化」という二つの側面から、健康への影響を考察します。

まず、「物理的環境(Neighborhood and Built Environment)」が健康に与える影響について見ていきましょう 3。これは、私たちが住んでいる地域、もっと言えば「郵便番号」が健康を左右しうるという、衝撃的とも言える事実を指し示します。例えば、街灯が整備され、安全で見通しの良い歩道や、気軽に立ち寄れる公園が近所にあれば、住民は自然と歩く機会が増え、身体活動が促進されます。逆に、道路は危険で、夜道は暗く、安心して過ごせる緑地もないような環境では、人々は家に閉じこもりがちになり、運動不足やそれに伴う健康問題のリスクが高まります 1

また、大気汚染を引き起こす工場の近くや、交通量の多い幹線道路沿いに住んでいる人々は、そうでない地域の人々に比べて、呼吸器系の疾患にかかるリスクが高くなります。きれいな空気や安全な水といった、生命の基本的な要素へのアクセスもまた、住む場所によって不平等に分配されているのです 4。さらに、近隣に手頃な価格で栄養価の高い生鮮食品を販売するスーパーマーケットがあるか(フードアクセス)、質の高い医療機関や学校、公共交通機関へのアクセスは容易かといった点も、住民の健康と生活の質に直接的に結びついています 2

次に、「文化的背景」が健康に与える影響を考えてみましょう。文化とは、ある社会集団が共有する価値観、信念、行動様式の総体であり、私たちの健康に対する考え方、病気になった時の対処法、食事の習慣、そして医療サービスの利用の仕方(受療行動)に至るまで、あらゆる側面に深く浸透しています。

極端な例を挙げれば、近代的な西洋医学に基づく治療を信頼する文化圏の人々と、伝統的な信仰や儀式に基づく処置を重んじる文化圏の人々とでは、同じ病気にかかったとしても、その後の経過は大きく異なってくるでしょう。しかし、文化の影響は、もっと日常的で、より微細なレベルで私たちの健康に関わっています。

その具体的な例として、日本で生活する外国人の方々が医療機関を受診する際の経験を見てみましょう。彼らが直面する困難は、しばしば「言葉の壁」という一言で片付けられがちですが、問題はそれほど単純ではありません。多くの外国人は、日本の医療システムそのものに戸惑いを感じます。例えば、最初に地域の診療所に行かずに、いきなり大病院を受診することの難しさや、紹介状の必要性といった仕組みは、自国のシステムとは大きく異なる場合があります 47。また、イスラム教徒の患者にとってのハラール食への対応や、女性患者が女性医師による診察を希望するといった、宗教的・文化的な配慮が十分に尊重されないことへの不安も報告されています 47

さらに深刻なのは、日本の文化に深く根ざした、特有のコミュニケーションスタイルが引き起こす障壁です。日本では、言葉で直接的に表現するよりも、相手の意図を察し、場の空気を読むことが重視される傾向があります。このような「暗黙の了解」や「以心伝心」といった非言語的なコミュニケーションは、同じ文化を共有する者同士では円滑に機能するかもしれませんが、異なる文化的背景を持つ人々にとっては、意図が伝わらないことによる大きな不安や不信感の原因となり得ます 48。ある研究では、医療従事者が、患者が外国人であるという外見から「どうせ言葉が通じないだろう」「説明しても理解できないだろう」という先入観を抱いてしまい、丁寧な説明や対話を避けてしまうという「先入観の壁」の存在が指摘されています 47。これは、言葉の問題というよりも、文化的なステレオタイプに基づく差別の一形態と言えるかもしれません。

この「文化」という概念を深く考察すると、それが単に個々人の価値観やライフスタイルの集合体なのではなく、医療制度を含む社会システム全体の、いわば「OS(オペレーティングシステム)」として機能していることが見えてきます。日本の医療システムは、多くの日本人が無意識に共有している文化的価値観、例えば「和を以て貴しとなす」という調和を重んじる心性や、権威者(この場合は医師)の言うことには素直に従うといった行動規範を前提として、設計・運用されている側面があります 49。この「日本文化OS」の上では、患者は多くを語らずとも医師の意図を察し、医師もまた患者の心情を汲み取ってくれることが期待されます。

しかし、異なる「文化的OS」を持つ人々がこのシステムを利用しようとすると、深刻な非互換性(インコンパチビリティ)が生じます。彼らは、明確な言葉による説明、インフォームド・コンセント(十分な説明と同意)に基づく自己決定権の行使を求めますが、システムがその要求に十分に応えられない場合、「面倒な患者」と見なされ、結果として質の高い医療へのアクセスが阻害されてしまうのです。したがって、多文化共生社会における健康格差を是正するためには、単に多言語対応の通訳を配置するといった対症療法だけでは不十分です。医療システム自体が、特定の文化を前提としない、より普遍的で、より明示的なコミュニケーションを基本とするように「OSをアップデート」していく必要があるのです。そして、それは結果的に、日本人患者にとっても、より分かりやすく、より満足度の高い医療の実現につながる、普遍的な質の向上をもたらすに違いありません。

すべての人々が健康な社会を目指して

健康格差に取り組むための政策

これまで、健康の社会的決定要因(SDOH)が、いかにして私たちの健康を形成し、社会の中に不公平な健康格差を生み出しているのか、その複雑なメカニズムを解き明かしてきました。しかし、問題を理解するだけでは十分ではありません。重要なのは、その知見を基に、より健康で、より公平な社会を築くために、私たちはいかなる行動を起こすべきかという問いです。ここでは、世界保健機関(WHO)の提言を中心に、健康格差という深刻な社会問題に取り組むための具体的な政策の方向性を示します。

WHOに設置された「健康の社会的決定要因に関する委員会(Commission on Social Determinants of Health)」は、世界中のエビデンスを体系的にレビューし、健康格差を是正するために世界が取り組むべき行動として、大きく三つの包括的な勧告を打ち出しました 6。これらは、私たちが目指すべき政策の羅針盤となるものです。

第一の勧告は、「日常生活の環境条件を改善する(Improve daily living conditions)」ことです。これは、人々が生まれ、育ち、生活し、働き、そして老いていくという、日々の暮らしの舞台そのものを、より健康的なものに変えていこうというアプローチです。具体的には、すべての子どもたちが健やかに成長できるよう、質の高い幼児教育や保育サービスへのアクセスを保障すること、安全な水や衛生施設を整備すること、そして、人々が安全に歩き、運動できるような公園や公共空間を備えた、健康的なまちづくり(都市計画)を推進することが含まれます。また、成人期においては、すべての労働者が、安全で、安定し、公正な報酬を得られる「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」を確保することも、この勧告の重要な柱です 9

第二の勧告は、「権力、お金、資源の不公平な分配に取り組む(Tackle the inequitable distribution of power, money, and resources)」ことです。これは、第一の勧告で挙げられた日常生活の不平等の、さらに根源にある構造的な問題にメスを入れることを目指すものです。社会における富の極端な偏りを是正するために、公正な税制や所得移転を伴う社会保障制度を構築し、所得の再分配を強化することが求められます。また、ジェンダーや人種、民族、障害の有無などに基づくあらゆる差別を撤廃し、すべての人が平等な機会を得られる社会制度を確立することも不可欠です。さらに、こうした政策が、一部の専門家やエリートだけで決められるのではなく、一般の市民、特に社会的に弱い立場にある人々が、自らの生活に影響を与える政策決定のプロセスに実質的に参加できるような、開かれたガバナンスを確保することも、この勧告の核心的な要素です 9

第三の勧告は、「問題を測定・理解し、行動の影響を評価する(Measure and understand the problem and assess the impact of action)」ことです。これは、政策立案が、単なる思いつきや政治的な意図ではなく、客観的な証拠(エビデンス)に基づいて行われるべきであるという、極めて重要な原則を示しています。まず、自国や地域社会において、どのような健康格差が、どの社会集団の間で、どの程度の規模で存在しているのかを、データを用いて正確に測定し、「見える化」する必要があります。その上で、格差を是正するために導入された政策やプログラムが、実際にどの程度の効果を上げたのかを継続的に監視・評価し、その結果に基づいて、より効果的なアプローチへと改善していくという、PDCAサイクルを回していくことが不可欠です 4

これらの壮大な目標を達成するためには、一つの省庁や組織の努力だけでは到底不可能です。例えば、子どもの教育の問題は文部科学省、雇用の問題は厚生労働省、まちづくりは国土交通省といった、従来の縦割り行政の壁を越えなければなりません。健康格差の是正という共通の目標に向かって、教育、労働、環境、都市計画、財務といった、あらゆる政府部門が緊密に連携して取り組む「セクター横断的アプローチ(Intersectoral Action)」が、成功のための絶対的な鍵となります 5。そして、そのプロセスには、政府だけでなく、企業、NPO、そして地域社会で生活する市民一人ひとりが、当事者として積極的に参加していくことが求められるのです 3

SDOHという視点から政策を捉え直すと、従来の「費用対効果」の考え方そのものが大きく拡張されます。通常、医療政策の費用対効果は、ある治療法や医薬品が、どれだけ医療費を削減したかという、比較的短期的な指標で評価されがちです。しかし、SDOHとライフコースの視点を取り入れると、全く異なる景色が見えてきます。

例えば、質の高い幼児教育をすべての子どもに無償で提供する政策を考えます。短期的には、これは莫大な財政的コストを伴う「教育政策」です。しかし、この投資が、子どもたちのその後の学歴を向上させ、より良い職業に就くことを可能にし、健康に関する知識(ヘルスリテラシー)を高めるとしたらどうでしょうか。その結果、数十年後に、彼らが生活習慣病にかかる確率が大幅に低下し、社会全体で支払う将来の医療費が劇的に削減されるかもしれません。この長期的な視点に立てば、幼児教育への投資は、最も効果的な「健康政策」の一つであり、極めてリターンの大きい「健康への投資」と見なすことができるのです 9。同様に、最低賃金の引き上げという「経済政策」も、低所得層の経済的ストレスを緩和し、うつ病や心疾患の発症を減らすという、測定可能な「健康上の便益」を生み出します。

このように、SDOHへの介入は、社会政策を単なる「コスト」としてではなく、国民の健康という、国にとって最も重要な資本を育むための「投資」として捉え直すことを促します。そしてそれは、省庁間の壁を乗り越え、長期的な視点で社会全体の便益を統合的に評価する、新しい政策決定のあり方を私たちに要請しているのです。

日本の挑戦:健康格差の縮小に向けた取り組みと課題

これまで見てきた健康の社会的決定要因(SDOH)というグローバルな概念は、ここ日本において、どのように受け止められ、具体的な政策や実践に結びついているのでしょうか。ここでは、日本の国家レベルの健康政策から、地域社会に根差した草の根の活動まで、健康格差の縮小に向けた様々な挑戦を紹介し、その成果と今後の課題について考察します。

まず、日本の健康政策の根幹をなすのが、厚生労働省が推進する国民健康づくり運動「健康日本21」です。2013年度から始まったその第二次計画において、国は主要な目標の一つとして「健康格差の縮小」を明確に掲げました 51。これは、SDOHの考え方が、日本の国家政策レベルで公式に認識され、取り組むべき重要課題として位置づけられたことを示す、画期的な出来事でした。

具体的には、「健康日本21(第二次)」では、健康寿命、すなわち日常生活に制限なく自立して生活できる期間の平均について、都道府県間の格差を縮小するという具体的な数値目標を設定しました 51。令和元年のデータでは、男性の健康寿命は最も長い県と短い県で2.33年、女性では実に3.90年もの差が存在しており、この格差をいかに埋めていくかが大きな課題となっています 55。また、高血圧や喫煙といった生活習慣病の主要なリスク因子の保有率にも地域差があり、こうした危険因子の管理状況の格差を是正することが、結果として健康寿命の格差縮小に効果的であるという、科学的知見に基づいたアプローチも進められています 52

国の大きな方針だけでなく、より住民の生活に近い地方自治体のレベルでも、SDOHの理念に基づいた独創的で意欲的な取り組みが全国各地で展開されています。ここでは、そのいくつかの事例を紹介しましょう。

一つは、住民全体の健康意識と行動を底上げする「ポピュレーションアプローチ」の実践です。例えば、山形県が推進する「やまがた健康マイレージ事業」では、住民が健康診断を受診したり、ウォーキング教室に参加したりといった健康的な活動を行うとポイントが貯まり、そのポイントを地域の協力店で使える商品券などと交換できる仕組みを導入しています。これにより、健康への関心が低かった層も含めて、楽しみながら自然と健康づくりに参加することを促しています 56

二つ目は、個人の努力だけに頼るのではなく、人々が日常的に利用する「食環境」そのものを健康的に変えていく取り組みです。奈良県では、地域のスーパーマーケットと連携し、「やさしおベジ増しプロジェクト」を展開しています。これは、スーパーで販売される弁当や惣菜の塩分を減らし、使用する野菜の量を増やすというもので、住民が意識せずとも、より健康的な食事を選択できる環境を整える試みです 56

三つ目は、健康にとって不可欠な「社会的なつながり」を創出する活動です。高齢化が進む地域において、社会的孤立は深刻な健康リスクとなります。愛知県武豊町では、高齢者が誰でも気軽に集い、交流できる「サロン(通いの場)」を、地域の中に計画的に増やしていくという戦略的な介護予防事業を展開しています。この取り組みの優れた点は、単にサロンの数を増やすだけでなく、地域の地図上に既存のサロンの位置をプロットして「見える化」し、どこにサロンが不足しているかを客観的に把握した上で、新たな拠点を戦略的に整備していることです 57

四つ目は、地域内の健康格差そのものを「見える化」し、対策に活かすアプローチです。熊本県御船町では、自治体が保有する健康データを分析し、どの地区の、どのような社会経済的背景を持つ人々の間に、どのような健康課題が存在するのかを詳細に明らかにしました。このように格差の所在を具体的に特定することで、限られた保健医療資源を、本当に支援を必要としている人々や地域に集中的に投下することが可能となり、より効果的で効率的な対策が実現できるのです 58

これらの先進的な取り組みは、日本の公衆衛生が新たなステージへと進みつつあることを示しています。しかし、その一方で、日本の社会構造が抱える大きな課題も、このSDOHというレンズを通して見ると、より鮮明に浮かび上がってきます。日本は、世界に誇る国民皆保険制度を半世紀以上にわたって維持し、誰もが比較的安価で質の高い医療にアクセスできる環境を保障してきました 26。この優れた制度が、欧米諸国と比較して日本の健康格差を比較的小さなものに留めてきた大きな要因であることは間違いありません。

しかし、この強固なはずの土台が、近年の経済社会の構造変化によって、静かに、しかし確実に侵食されつつあります。バブル経済の崩壊後、日本の労働市場では非正規雇用が著しく増加し、今や全労働者の4割近くを占めるに至っています 34。非正規雇用は、低所得や雇用の不安定さといった経済的な問題だけでなく、企業の健康保険に加入できず、国民健康保険料の支払いが困難になるといった形で、国民皆保険というセーフティネットからこぼれ落ちやすいという脆弱性を抱えています 37

これは、日本の健康格差対策が、大きな矛盾に直面していることを意味します。一方で、自治体の現場では、生活習慣の改善や社会参加の促進といった「中間的決定要因」に働きかける、きめ細やかで優れた取り組みが数多く行われています。しかしその背景では、雇用の不安定化や所得格差の拡大といった、より根源的な「構造的決定要因」が悪化し続けており、現場の努力の効果を相殺しかねない状況が生まれているのです。

したがって、今後の日本のSDOH政策が真に問われるのは、既存の優れた保健活動をさらに発展させると同時に、その土台を蝕む経済や労働のあり方という、より大きな構造問題に、保健医療セクターの壁を越えていかに向き合っていくか、という点にあると言えるでしょう。

おわりに ― 私たちの健康に対する共同責任

本記事を通じて、私たちは「健康の社会的決定要因(SDOH)」という視点から、人々の健康と、その背景にある社会の姿を眺めてきました。改めてお伝えしたいのは、私たちの健康が、単に個人の遺伝的な素質や、日々の生活習慣、あるいは受ける医療の質だけで決まるものではないということです。

むしろ、私たちの健康は、私たちがどのような社会経済的な条件、物理的な環境、そして文化的な背景の中で生まれ、育ち、働き、そして老いていくかによって、大きく、そして体系的に決定されているのです 3

所得や教育、職業といった社会経済的地位、人生の出発点となる幼少期の経験、日々の大半を過ごす労働環境の質、そして私たちを支え、時には傷つける人間関係、さらには私たちが住む街の安全性や利便性。これら無数の要因が、あたかも複雑な織物のように絡み合いながら、人々の間に、本来であれば不公平で避けうるはずの「健康格差」という模様を織りなしているのです 2

この事実は、健康を個人の「自己責任」として、その重荷を個人の肩だけに負わせようとする考え方が、限界に満ちたものであることを示しています。「健康のために、もっと運動しなさい」「バランスの取れた食事をとりなさい」と呼びかけることは簡単です。しかし、そもそも安全に運動できる公園が近所になかったり、新鮮な野菜を買う経済的な余裕がなかったりする人々にとって、その呼びかけは空虚に響くだけかもしれません。健康的な選択をするためには、まずその「選択肢」が、すべての人に公平に与えられていなければならないのです。

したがって、社会に暮らすすべての人々が、自らの内に秘めた健康の可能性を最大限に花開かせることができるような社会を築き上げていくことは、私たち一人ひとりが共有する「共同責任」であると言えます。それは、医師や看護師、保健師といった医療の専門家や、政策を立案する行政官だけの課題ではありません。

子どもたちの未来を育む教育者、従業員のウェルビーイングに配慮する企業経営者、人々が健やかに暮らせる街を設計する都市計画家、そして、一人の市民として、私たちはそれぞれの持ち場で、より公平で、より支援的な環境を創造するために貢献することができます。例えば、自らの職場で、困っている同僚に声をかけ、支援し合う文化を育むこと。地域のボランティア活動や自治会に参加し、社会的なつながりを豊かにすること。そして、健康格差という社会問題に対して関心を持ち、その解決を求める声を上げること。こうした一つひとつの行動が、社会を少しずつ変えていく力となります 60

SDOHという視点から社会を深く見つめ直すことは、より良い民主主義の実践そのものであるとも言えます。なぜなら、健康格差の最も根源にある問題の一つは、しばしば「声の格差」だからです。社会経済的に不利な立場に置かれた人々は、日々の生活を乗り切ることに精一杯で、自らの困難やニーズを政治の場に届けるための時間的、経済的、そして心理的な余裕を持てないことが少なくありません。その結果、彼らの健康をさらに損なうような政策が見過ごされ、あるいは推進されてしまうという悪循環が生まれます。

この悪循環を断ち切るためには、専門家が優れた政策を立案するだけでなく、これまで声が届かなかったコミュニティや人々のエンパワーメントを促し、彼ら自身が政策決定のテーブルにつき、当事者として議論に参加できるような仕組みを整えることが不可欠です 5。社会の最も弱い立場にある人々の声に真摯に耳を傾け、それを政策に反映させていくプロセスこそが、健康格差を是正する上での王道であり、また、それこそが民主主義社会の本来あるべき姿なのです。

健康は、すべての人間が生まれながらにして持つべき基本的な権利です。そして、その権利を社会の隅々にまで行き渡らせるための努力は、あらゆる政策の中心に据えられるべき普遍的な価値です。すべての人々が健やかで心豊かに生活できる、公正で持続可能な社会。その実現に向けた歩みこそが、私たち全員に課せられた、未来への責任ともいえるでしょう 5

引用文献

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  4. Social Determinants of Health | Public Health Gateway - CDC, https://www.cdc.gov/public-health-gateway/php/about/social-determinants-of-health.html
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