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レジストリー研究の研究計画書ーハンチントン病レジストリーを題材に

レジストリー研究は今後の治験あるいは臨床試験の在り方を大きく変える鍵を担うと考えられます。

レジストリーはなぜ魅力的なのか

理由はいくつかありますが、

  • 必要なデータを計画的かつ長期にわたって収集できる
  • 研究利用することに関して同意が得られたデータが集まる

の2点がレジストリーを魅力ある手法に押し上げているとも言えます。

実際の臨床現場では研究目的を前提にとした記録は行われていませんし、データを研究利用して欲しくないという人のデータも混じっているからです。

レジストリー研究の研究計画書はどんなものか

レジストリー研究は、観察研究に分類されます。

研究というからには、研究計画書が作成されます。

「ただデータを集めるだけなんだから簡単だろう」というのはもちろん大きな誤りです。

実際の研究計画書を見た方が話が早いですから、1つ、ハンチントン病のレジストリー研究の研究計画書を見てみましょう。

REGISTRY – an observational study of the European Huntington-Disease Network (EHDN)

この研究の計画書はウェブ上で公開されています。

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研究の目的(objective)

研究の目的(objective)には、4つが列挙されていますが、最初の2つが研究の土台となる考え方で、後の2つは将来的な利用シーンを書いているものです。

エッセンスだけを抜き取るなら「HD patients の natural history data を得る」「表現型の特徴と、遺伝的要因やウェット/ドライバイオマーカーとの間の関連を調べる」になるでしょうか。

natural history data の場合、どんなデータで natural history を描くのかというところまで詰められればなお明確な objective となります。

phenotypical characteristics と バイオマーカーや遺伝的要因の相関を調べる場合も、特に注目する指標があるならそこまで掘り下げておくとより焦点の定まった objective になります。

  • to obtain natural history data on a wide spectrum of HD patients, HD mutation carriers and individuals who are part of an HD family
  • to relate phenotypical characteristics
    • with genetic factors (‘genetic modifiers’)
    • with data derived from the study of body fluids (blood, urine – ‘wet biomarker’)
    • imaging data (‘dry biomarker’)
  • to expedite identification and recruitment of participants for clinical trials
  • to plan for future research studies (observational and interventional trials aimed at better symptom control or aimed at slowing or postponing the onset and progression of HD).

研究の対象集団(population)

この研究の対象集団としては、大きく次の3つのいずれかに該当する人、と定められています。

  • ハンチントン病の徴候や症状を持っている
  • ハンチントン病患者さんの家族の一員である
  • ハンチントン病の突然変異を持っていることがわかっている

サンプルサイズ(sample size consideration)

レジストリー研究の場合、治験や臨床試験と異なり、何かと何かを比較したいというよりは、現状を出来るだけ正確に記述したいという目的が強くなります。

目的(objective)は「HD patients の natural history data を得る」「表現型の特徴と、遺伝的要因やウェット/ドライバイオマーカーとの間の関連を調べる」とされていますが、何か明確な「絶対にこの指標で記述する。相関を見る時にも、その精度が何らかの基準を下回ると全く意味がない」という類のものではありません。

そのため研究計画書のサンプルサイズに関する部分では "power analysis" についても触れられています。

データ解析(Data Analysis)

データ解析に関しては別途定義する、ということでほとんど触れられていません。

モニタリングとデータハンドリング(Monitoring and Data Handling)

実際のCRFの見本も公開されていますから興味があれば見てみてください。

以前より用いられている、臨床試験と同様にCRF (Case Report Form、症例報告書) に必要事項を入力し、EDC (Electric Data Capture) システムを用いてデータベースに入力するという手法が書かれています。

現在は最初からeCRFとして入力してもらうのが標準になっていますが、手法自体は治験や臨床試験とほぼ同じです。モニタリングも同様ですね。

データセキュリティ(Data security)

生年月日、氏名、出生地、母親の旧姓から unique pseudonym(固有の仮名)として 344-259-192 のような数値を生成してから、その仮名データに紐づける形で種々の研究データを入力していく、という方法でプライバシー保護を行うとされています。

データベースの構築段階から、個人情報としては集めないという方法でデータセキュリティを高めるという方針ですね。

まとめ

レジストリー研究といっても、その中身は様々です。

レジストリー研究で集めたデータを使ってみようと考えた時には、まずはそのレジストリー研究の研究計画書やCRFなどを見てみましょう。

それで色々なことが見えてきます。

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