臨床試験

ICH E8 (R1) 臨床試験の一般指針 ガイドライン(案)

ICH プロセスのステップ2 における意見募集のための公開版(2019 年5 月8 日版)

目次

1 本指針の目的

医学的介入としての臨床試験は、試験に参加する被験者を保護しながら、最終的には患者に対して意味のある影響を持つ安全かつ有効な医薬品へのアクセスを改善するための情報を提供するために実施される。本指針では、薬事規制やその他の健康政策における意思決定を支援するために用いられる臨床試験デザイン及びデータソースの多様性を考慮して、臨床試験における質の設計に焦点を当てている。

ICH文書である「臨床試験の一般指針」は、以下を目的としている。

  1. 規制当局によるデータと結果の受け入れを促進する、臨床試験のデザインと実施に関する国際的に受け入れられる原則と具体的なあり方を記述すること
  2. 試験の計画段階での試験の質に関する重要な因子の同定と、試験実施中のそれら因子に対するリスクの管理を含む、医薬品(product)のライフサイクルを通じた臨床試験のデザインと実施に関する質の検討に関する指針を提供すること
  3. 医薬品のライフサイクルを通して実施される臨床試験の種類の概要を提供し、それら臨床試験について、試験の被験者の保護、データの完全性(integrity)、結果の信頼性及び試験の目的を達成するための能力を保証するためには質に関するどの因子が重要であるかの決定を支援するための側面を記述すること
  4. 有効性に関する ICHガイドラインへの利用者のアクセスを促進するため、ガイドを提供すること(補遺 2及び補遺 3参照)

臨床試験デザインの一般的原則は本文書の2 項に記載され、3項の臨床試験における質の設計に関する議論に続く。臨床開発プログラムの計画の概要、開発プログラムの異なる時点で重要となる試験の種類と試験の目的、そして試験依頼者、試験担当医師、規制当局及び患者の視点からの試験の実施可能性の課題が、4 項に示される。5項では、試験デザインを構成する要素が記述される。6 項では、試験の実施、被験者の安全性の確保及び試験の報告について記述される。試験の質に関する重要な要因(critical to quality factors)の特定に関する一般的な議論は7 項に示される。

本文書において、「臨床試験」は医薬品のライフサイクルのあらゆる時点で実施されるヒトでの試験を表す。「Drug」(医薬品)という用語は、「medicinal products(治験薬、場合により被験薬)」と同義と考え、ワクチンや生物学的製剤を含む。「(医薬品)承認」という用語は、医薬品の販売承認を得ることを意味する。

2 一般的原則

2.1 被験者の保護

臨床試験の倫理的な実施と特殊集団を含む被験者の保護の重要な原則は、他の ICH ガイドライン(ICH E6「医薬品の臨床試験の実施の基準」、ICH E7「高齢者に使用される医薬品の臨床評価法に関するガイドライン」、ICH E11「小児集団における医薬品の臨床試験に関するガイダンス」及び ICH E18「ゲノム試料の収集及びゲノムデータの取扱いに関するガイドライン」)に述べられている。

これらの原則はヘルシンキ宣言を起源としており、ヒトを対象とする全ての医薬品の臨床試験を実施するにあたって遵守されなければならない。試験担当医師と試験依頼者は、被験者の保護について責任を治験審査委員会(Institutional Review Board)/独立倫理委員会(Independent Ethics Committee)と共に責任を負う。

被験者の特定が可能な情報の機密性は、適用される規制及び法的要件に従って保護されなければならない。

臨床試験の開始前に、計画するヒトに対する試験でその医薬品が許容可能な程度に安全であることを保証するために、十分な情報が入手されているべきである。新たに得られる臨床及び非臨床データは、それらが新たに得られるごとに、被験者の安全性への潜在的な影響を評価するため、十分な適格性を有する専門家により、検討され評価されるべきである。新たに得られた知見を考慮し、試験の被験者を保護するため、実施中及び将来的に実施される試験は必要に応じて適切に調整されるべきである。

2.2 臨床試験のデザイン、実施及び解析への科学的なアプローチ

臨床試験は、その目的を達成するために、科学的な原則に従ってデザインされ、実施され、解析されるべきである。さらに試験終了後には、その試験結果は適切に報告されるべきである。臨床研究の本質は、重要な問いを提起し、適切な試験によってその問いに答えることである。いずれの試験においても主要な目的は明確にされ、明記されるべきである。

臨床試験における質を、本指針では目的への適合性(fitness for purpose)と考える。臨床試験の目的は、被験者を保護しながら、重要な問い(key question)に答えるために信頼できる情報を生成し、意思決定を支援することである。よって、生成される情報の質は良い意思決定を支援するのに十分なものであるべきである。

臨床試験のクオリティ・バイ・デザインは、試験の質を試験実施計画書及び実施手順の中に設計することにより、試験の質の積極的な向上を確実にすることを目指すものである。これには、試験実施計画書と手順のデザインの質を促進するための前向きで多分野にわたる手法の活用と、これがどのように達成されるかの明確なコミュニケーションが含まれる。

医薬品のライフサイクルを通して、様々な種類の試験が異なる目的とデザインで実施される。試験の目的及び全体の開発計画での試験の位置付けに応じて、データソースも多様となる可能性がある。本指針の目的のため、開発計画とは医薬品のライフサイクル全体を扱うものとし、非臨床試験、臨床試験及び承認後の試験を含む(4 項参照)。補遺 1 では医薬品開発の様々な段階の目的毎に、試験の種類の広範な分類を示す。

順序立てて実施される試験の背景にある基本的な論理は、先行する試験の結果が後の試験の計画に情報を与えるべきであるということである。新たに得られたデータはしばしば開発戦略の変更を促すであろう。例えば、検証的試験の結果は、追加の臨床薬理試験の必要性を示唆する可能性がある。

2.3 患者からの情報の試験デザインへの反映

臨床試験のデザイン、計画及び実施に際して患者及び/又は患者団体からの助言を受けることは、全ての視点をとらえることを確実にすることに役立つ。患者の意見は医薬品開発の全ての相で求めることができる。試験デザインの早期の段階に患者が関与することは、試験の信用を高め、組み入れを容易にし、試験の期間中継続しなければならない遵守を促進する可能性がある。また、患者は、特定の症状を持って生活しているという彼らの視点を提供し、それは患者にとって意味のあるエンドポイントの決定、適切な対象集団の選択、試験期間、適切な比較対照の選択に貢献する。これは最終的には、患者の必要性に、より適合させた医薬品の開発を支援する。

3. 臨床試験における質の設計

臨床試験に対するクオリティ・バイ・デザインの方法(3.1項参照)は、被験者の保護と信頼性の高い意味のある結果を得ることを担保するための質に関する重要な要因と、それら要因に対するリスクの管理(3.2 項参照)に焦点を当てることを含む。このアプローチは、質に関する重要な要因の特定とレビューのための適切な枠組みの確立により支えられる。

3.1 臨床試験のクオリティ・バイ・デザイン

臨床試験における質は、デザイン、計画、実施、解析の主要な考慮すべき事項であり、臨床開発プログラムに必要な要素である。臨床試験が、重大な誤りを防止しながら、信頼できる方法で提示された、意思決定者や患者に意味のある課題に答えられる可能性は、試験実施計画書、実施手順及び関連する実施計画の全ての構成要素のデザインに前向きに注意をはらうことにより、飛躍的に改善される。

臨床試験における質は、適切なデザインとその遂行に依拠すべきであり、後方視的な文書チェック、モニタリング及び監査や査察に過度に依存するべきではない。それらの活動は、質の保証のプロセスの重要な一部であるが、臨床試験における質の保証には十分ではない。

臨床試験の適切な計画と実施は、以下に示すような被験者の権利、安全性及び福利と、科学的な基準を含む、臨床試験の確立された原則に留意することから導かれる。

  • 主要な科学的疑問に答えるための、明確な事前に定義される試験の目的の必要性
  • 対象疾患や状態又は分子/遺伝的プロファイルを持つ適切な被験者の選択
  • ランダム化、盲検化又はマスク化及び/又は交絡の制御といった偏り(バイアス)を最小化する方法の使用
  • 適切に定義され測定可能なエンドポイントと、最小限の報告バイアス又は測定バイアスで実施可能であり正確なそれらエンドポイントの評価の方法

試験の実施可能性の明確な理解、適切な試験実施施設の選定、特殊な分析及び試験の設備と手順の質及びデータの完全性を保証するプロセスといった、運用基準もまた重要である。

3.2 質に関する重要な要因

試験の質の保証に結びつく基本的な一連の要因は、試験ごとに特定されるべきである。試験の質にとって重要である要因は強調されるべきである。これら質に関する重要な要因は、試験の属性であり、試験の完全性は、被験者の保護、試験結果の信頼性と解釈可能性及び試験結果に基づく意思決定の根本となる試験の特性となる。これらの質に関する要因は、その完全性が試験デザイン又は実施上の誤りにより損なわれた場合に、意思決定の信頼性あるいは意思決定の倫理性もまた損なわれることから、重要であると考えられる。

臨床試験のデザインは、治療、診断又は予防されるべき病態、根底にある(病態及び治療の両方に関する)生物学的機序、医薬品の対象として意図されている集団に関しての、その医薬品の既知の知見と経験を反映するべきである。医薬品の研究が進むにつれて、知見は増加し、医薬品に関する安全性及び有効性に関する不確実性は減少する。

既知の知見は、臨床試験の承認、監督及び実施に適用される規制上及び倫理上の管理に明確な影響を及ぼす。したがって、開発のある時点で臨床試験のデザイン又は再検討を行う時点でのその時点での医薬品に関する知見は、質に関する重要な要因の特定及びそれらを管理するプロセスのために情報を与える。

臨床試験における質を設計する試験依頼者及び他の関係者は、質に関する重要な要因を特定すべきである。当該要因を特定したら、その完全性を脅かすリスク、リスクの可能性と影響を判断し、リスクが受け入れ可能か又は軽減されるべきかどうかを決定することが重要である。リスクが軽減されるべきであると判断された場合には、必要な管理のプロセスを整備して伝え、リスク軽減のために必要な行動をとるべきである。ここでは、リスクという用語は、臨床試験のあらゆる要因に対する一般的なリスク管理の方法論と関連して使用されている。

質に関する重要な要因についての積極的なコミュニケーションとリスク軽減のための行動は、試験依頼者及び試験実施施設にとっての優先課題とリソース配分の理解を助ける。積極的な支援(例:全ての関連する施設の職員への広範な訓練及び試験実施計画書や症例報告書での記載)は、試験実施計画書、手順及び関連する実施計画とプロセスの設計の正しい実装を強化する。

活動の全ての側面を完全にすることは、ほとんど達成できない又は得られる恩恵に見合わない資源を投入しなければ達成されない。質に関する要因は、試験をデザインする時点で、試験にとって重要であるものを特定するために優先順位付けされるべきであり、試験手順は試験に内在するリスク及び得られる情報の重要性と釣り合いの取れたものにされるべきである。質に関する重要な要因は、明確である必要があり、かつ些細な問題(例:様々な二次的目的、被験者の適切な保護及び/又は試験の主要な目的に関連しないプロセス/データ収集)に混乱させられるべきではない。

3.3 質に関する重要な要因を特定するアプローチ

試験デザインを質の面から検討する際に重要なことは、試験によって扱われている目的が明確で理路整然としているか、この試験が取り組むべきニーズを満たすようにデザインされているか、これらのニーズが患者にとって意味があるか、そして試験の仮説が具体的かつタイムリーで科学的に妥当であるかを問うことである。このアプローチでは、選択したデザインとデータソースが、これらの目的を十分かつ最も効率的に達成できるかを検討する必要がある。試験デザインは、試験が遂行可能なものとすべきであり、不必要な複雑さや不必要なデータ収集は回避すべきである。試験をデザインする早い段階において、患者の意見を聴取することは、これらの要因の特定に繋がり、試験実施計画書の改訂を減らす可能性がある。試験実施計画書と症例報告書/データ収集の方法は、試験がデザインどおりに実施されるよう作成されなければならない。

以下に述べる要素を含むアプローチにより、試験の質に関する重要な要因の特定が向上する。

3.3.1 開かれた対話を支える文化の形成

批判的思考や試験の質に関する率直な対話を尊重し讃える文化を形成し、ツールやチェックリストに画一的に依存することのないようにする。

デザインへの積極的なアプローチに合致するような試験の質を測る手立てと、試験の実施に関する指標を選択する。例えば、最初に患者登録されるまでの時間を最短にすることに重点を置き過ぎることは、注意深いデザインを通して重要な誤りを同定し防止するための時間を十分に確保できないことがある。

特定の試験あるいは開発プログラムの質に関する重要な要因や、必要に応じて質を保証するための革新的な方法を開発することについて、積極的な対話を奨励する。

実施しようとする試験において、質を効果的かつ効率的に支援することを目的とする特定の戦略及び行動の創出を害するような、柔軟性を欠く画一的アプローチの使用を勧めない。透明性のある方法でエビデンスの収集と統合を行い、得られたデータと既存かつ既知の競合するデータとの間の違いに注意を払い、そうした違いや競合が発生する可能性を見越す。

3.3.2 試験における重要な活動への集中

患者にとって試験結果が信頼でき意義があること、かつ被験者に対し安全で倫理的な試験を実施することのために重要な活動に集中する。試験の実施を単純化し、効率を改善し、重要なことに資源を注ぐために、不要な活動を試験から排除できるかどうかを検討する。

計画された活動と収集されるデータの選択が不可欠であることを確認するために、試験デザインを綿密に評価する。

重要な誤りの識別、その予防又は管理のためのリソースを配置する。

3.3.3 ステークホルダーの試験デザインへの関与の促進

患者や実際の診療に携わる医師を含む幅広いステークホルダーからのアドバイスは、臨床試験デザインに最も良く情報を与える。試験依頼者自身の組織のみならず、外部の専門家やステークホルダーからの意見も謙虚に聴取するべきである。

試験担当医師、試験コーディネーター及び他の現場スタッフ、並びに患者/患者団体等、試験の成功に直接影響する人々の参画は、試験に質を組込むプロセスに良い情報をもたらす。試験担当医師及び被験者の候補である患者は、提案された適格基準を満たす被験者を登録できる可能性や、試験の来院スケジュールや311 手順が過度な負担となり早期脱落を生じ易いかといった組入れの実施可能性について、あるいはまた試験エンドポイントや試験の設定の、対象となる患者集団における一般的な妥当性に関して価値ある識見を有する(4.4 項参照)。彼らはまた、倫理的課題、文化、地域、人口統計及び対象となる患者集団内の部分集団等の観点から、治療の有用性についての洞察も提供する可能性がある。

試験に、質に関して重要と考えられる新規の要素(例:患者集団、手順又はエンドポイントの定義)がある場合、早い段階から規制当局の関与を得ることを考慮すべきである。

3.3.4 質に関する重要な要因の確認

試験開始後には新たな又は予期せぬ問題が発生する可能性があることから、試験上のリスクの管理のための体制を調整する必要について判断するため、蓄積された経験と知見に基づいて、質に関する重要な要因を定期的に見直す。

試験中の試験計画の改訂及び/又は中間的な意思決定時点を含む試験デザインについては、特に注意を払う。このような試験では、質に関する重要な要因の事前の計画、継続的な見直し及び調整と、リスク管理を必要とする。

4 医薬品開発計画

この項では、医薬品開発プログラムを計画する際に考慮すべき一般的原則を説明する。効率的な医薬品開発は通常、早期から承認後の試験を含む後期までの計画に関し、開発全体を通じて規制当局との適切に計画された議論を必要とする。このことは、国際共同試験においては、試験デザインが地域の規制要件と一致していることを確認するために特に重要である。

医薬品開発計画は、目標とする医薬品プロファイルの設定から承認後の活動まで、医薬品開発のあらゆる側面を記述する。計画は通常、予め作成され、開発が進み新しい情報が利用可能になるにつれて更新される。この計画には通常、製剤開発に関する規定、臨床試験に用いるための評価や医薬品の承認を得るために必要な非臨床試験、目的とする患者集団における有効性と安全性を示すための臨床試験、特殊集団(例:小児集団)の試験や、地域での販売に際しての検討(例:医療技術評価)並びに承認後の試験等が含まれる。

医薬品のライフサイクル全体を通しての医薬品の開発と評価に関するステークホルダーの経験、視点、ニーズ、優先順位を確実に把握し、開発プログラムに有意義に組み入れることが重要である。

医薬品開発プログラムの国際化が進むにつれて、試験が複数の地域で実施される場合に、試験実施計画書の質に影響を与える要因を考慮する必要がある(ICH-E17「国際共同治験の計画及びデザインに関する一般原則に関するガイドライン」参照)。地域の要件を理解するための規制当局との早期の関わりが奨励され、それにより試験実施計画書の中に質を設計することが容易になる。臨床試験の結果はしばしば複数の地域において承認申請に用いられ、デザインについてはその試験が実施された地域以外の地域に対する試験結果の妥当性も考慮する必要がある。

臨床開発プログラムではまた、バリデートされたバイオマーカー、診断のための検査や医薬品の安全で効果的な使用を容易にする機器等を併せて開発することも要件となる場合がある。開発プログラムに用いられる可能性がある試験の種類の概要については、補遺 1 の表に示す。

4.1 非臨床試験

開発計画を作成する際には、その医薬品に必要な非臨床の情報を収集する必要がある。非臨床の情報には、臨床試験の実施を支持する毒性、発がん性、薬理学及び薬物動態学(例:ICH安全性(S)ガイドラインや M3「臨床試験のための非臨床試験の実施時期」)が含まれる。必要な非臨床試験を決定するための重要な検討事項及び臨床試験の実施に関わるタイミングは、薬剤の生理学的及び毒性学的特性によって異なる。これらの特性には、薬剤の化学的又は分子的特性(例:低分子、生物学的/細胞内/遺伝子治療、複合製品、ワクチン)、主作用の薬理学的背景(作用機序)、投与経路、吸収、分布、代謝及び排泄(ADME)、臓器系への生理学的作用、用量/濃度-反応関係、半減期、作用期間及び適応症が含まれる。特殊集団(例:妊娠中又は授乳中の女性、子供、高齢者)での医薬品の使用は、追加の毒物学的評価を必要とする場合がある。

ヒトでの試験実施前には、ヒトでの初期用量と安全な曝露期間の設定のため、また薬剤の生理学的及び毒性学的作用の予備的評価の提供のために十分な情報収集が必要である。

4.2 治験薬の品質と製剤

治験薬の品質は医薬品開発プログラムを計画する際の重要な考慮事項であり、ICH 品質ガイドラインで取り上げられている。非臨床試験から臨床試験に移行する際に特に重要なのは、臨床開発で用いる医薬品製剤の品質である。製剤は、バイオアベイラビリティに関する情報を含め、医薬品開発計画において十分に特徴付けされるべきである。製剤は、医薬品開発の段階に適切に対応しているべきである。理想的には、製剤の供給は用量範囲の検討を行う一連の試験を可能にするのに十分なものであるべきである。医薬品開発中には、医薬品の様々な製剤が試行される場合がある。生物学的同等性試験又は他の手段によって確立された製剤間の関連は、開発プログラム全体にわたる臨床試験結果を解釈する上で重要である。小児集団での臨床試験が予定される場合には、年齢に応じた製剤開発が検討事項となる(ICH E11 参照)。

4.3 臨床試験

ヒトにおける医薬品の検討として定義される医薬品の臨床開発は、それまでに実施された試験から蓄積した知見に応じた開発相において順次に実施される。医薬品の臨床開発は四つの相(第 1 相-第 4 相)から成り立つと言われることがあるが、開発相の概念は説明する上で用いるものであって、必要条件として提示しているものではないことを理解することは重要である。試験は、試験目的等の他のデザイン要素によってよりよく分類されるかも知れない(補遺1 及び5項参照)。開発の相が試験の順序の固定化を意味するものではないことを理解することも重要である。医薬品開発は理想的には論理的で段階的な一連の過程であり、そこでは小規模な初期の試験からの情報が後のより大規模でより確度の高い情報をもたらす試験を支援し計画するために用いられる。新しい医薬品を効率的に開発するためには、開発の初期の段階で治験薬の特性を明らかにし、そのプロファイルに基づいて適切な開発を計画することが不可欠である。

初期の試験は短期間の安全性と忍容性に関する早い段階での評価を提供し、初期の探索的試験のための適切な用量範囲及び投与スケジュールを選択するために必要な薬力学的及び薬物動態学的情報の提供を可能とする。後の検証的試験は一般に大規模かつ長期のもので、より多様な対象集団を含む。用量反応に関する情報は、早期の忍容性を確認する試験から短期の薬力学的効果の試験、大規模な有効性試験まで、開発のあらゆる段階で得る可能性がある(ICH E4「新医薬品の承認に必要な用量-反応関係の検討のための指針」参照)。開発を通して、新たに得られたデータは、追加試験の必要性を示すことがある。

4.3.1 臨床薬理(通常、第 1 相という)

臨床開発は、臨床薬理試験から始まり、これにはヒトへの治験薬の最初の投与が含まれる。この開発段階における試験は、薬剤の特性及び開発プログラムの目的に応じて、健康な志願者又は症状/疾患を有する患者から選択された一部の集団を対象に実施される。

試験では通常、以下に掲げる側面のうちのひとつ又は組み合わせを扱う。

4.3.1.1 初期試験における安全性と忍容性の推定

ヒトへの治験薬の初回及びその後の投与は通常、後の臨床試験で検討されると予想される用量範囲の忍容性を決定し、予期される副作用の性質を判断することを目的としている。これらの試験は通常、単回投与及び反復投与の両方を含む。

4.3.1.2 薬物動態

薬物の吸収、分布、代謝及び排泄を明らかにすることは開発計画を通して継続するが、予備的な特徴付けはしばしば第 1 相試験の目的となる。薬物動態試験では、薬物のクリアランスを評価し、未変化体又は代謝物の蓄積の可能性及び薬物相互作用の可能性を予期することが特に重要である。より専門的な疑問に答えるために、いくつかの薬物動態学的試験が一般的に後に続く相で行われる。経口投与される多くの医薬品、特に薬物放出が制御されるべく設計された製剤については、バイオアベイラビリティに対する食事の影響を検討する試験が重要である。薬物の排泄障害(腎障害又は肝障害)のある患者、高齢者、小児及び民族による部分集団における薬物動態学的な情報を得ることも検討すべきである(ICH E5「外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要因についての指針」、E7、E11参照)。薬物間相互作用の可能性が代謝プロファイル、非臨床試験の結果又は類似の医薬品に関する情報によって示唆される場合、特に同時投与されることが多い医薬品については、安全な使用及び添付文書での情報提供のため、臨床開発中の薬物相互作用に関する試験が強く推奨され、時に要求されることがある。これは、他の薬物の吸収や代謝を変えることが知られている医薬品、あるいは他の医薬品の作用によって代謝や排泄が変わることがある医薬品に特に当てはまる。薬物間相互作用試験は一般に開発の後期の段階で行われるが、代謝及び潜在的な相互作用の動物試験並びに in vitro 試験は、初期段階での試験の必要性を示すことがある。

4.3.1.3 薬力学と薬物活性の早期測定

医薬品及びエンドポイントによっては、薬力学試験及び薬物の濃度と反応に関する試験(PK/PD試験)が、健康な志願者又は目標とする疾患を有する患者を対象として行われる。適切な指標がある場合には、薬力学的データから薬効及び予想される有効性の初期の推測が可能である。これらの薬力学的データは後の試験における用法・用量の設定に役立つことがある。

薬効又は見込まれる治療上の利益の予備的検討が、副次的な目的として、第 1 相試験で行われることがある。一般的にはこのような試験はより後の相で行われるが、この早期段階に患者に短期間治験薬を投与することにより薬効が容易に測れる場合には、この相での実施が適切なこともあろう。

4.3.2 探索的及び検証的試験(通常、第 2相、第3 相という)

探索的試験(第 2相)は、その医薬品を使用しようとしている症状や疾患を有する患者から選択された集団におけるその医薬品についての臨床的な開発コンセプトの実証(proof of concept)を裏付ける。データが有望であるならば、開発早期の結果を検証するために更なる臨床評価が続く。これらの評価は、その後の試験の有効用量と具体的な治療計画(併用薬を含む)を精緻なものとすること、標的集団の定義を明らかにすること、更なる試験のために薬剤に対するより強固な安全性プロファイルを提供することを目的とし、更なる試験のためのエンドポイントの評価を含むであろう。初期の探索的試験は、同時対照、ベースライン状態との比較及び適応的用量探索を含んだ様々な試験デザインを使用し得る。他の試験は、その後のより大規模な検証的試験のデザインに情報を与えるべく、早期あるいは中間時点での転帰データをモデル化して臨床的な転帰を予測することを伴うことがある。

検証的試験(第 3相)は、医薬品の意図された適応並びに対象集団での使用が安全かつ有効であるという、それまでの段階で蓄積された予備的な証拠を検証するためにデザインされる。これらの試験は、承認のための適切な根拠となるデータを提供し、医薬品の使用のための適切な指示と当局の医薬品情報を裏付けることを目的とする。それらは、症状や疾患を有する又はリスクを有する患者のより大きな集団で医薬品を評価することを目指している。

これらの被験者(集団)は、承認後に医薬品を投与される患者の集団をより正確に代表するものであり、頻繁に発生又は潜在的に関連する合併症(例:心血管疾患、糖尿病、肝障害及び腎障害)を有する患者の部分集団を、該当する基礎病態を有する患者での安全性かつ有効な医薬品の使用を特徴付けるために含み得る。

検証的試験では、用量反応関係の更なる探索、あるいは重症度の異なる病態での医薬品の使用の検討又は1つもしくは複数の医薬品と組み合わせた医薬品の使用について検討することができる。長期投与を意図した医薬品では、その医薬品への長期暴露を含む試験を実施するべきである(ICH E1「致命的でない疾患に対し長期間の投与が想定される新医薬品の治験段階において安全性を評価するために必要な症例数と投与期間」参照)。投与期間とは関係なく、医薬品の効果の持続に関する情報は、通常、長期的効果を理解する必要性、すなわち試験における追跡期間の設定に役立つ。

検証的試験は、しばしばランダム化並行群間比較デザインを用いる。試験中のデータ蓄積に伴い、効率化を実現するあるいは仮説を検定するために、複雑な適応的又は革新的なデザインを用いる場合がある。

4.3.3 承認後の試験(通常、第 4 相という)

承認後の試験は、医薬品の承認後に実施される試験である。これらは、医薬品の有効性、安全性及び使用に関する追加情報を提供する等、様々な理由で実施される可能性がある。例えば、特定の状況では、臨床転帰を予測する可能性が高い代替エンドポイントに基づいて医薬品が承認される場合がある。そのような承認の後に、臨床評価項目への影響を実証するために研究が行われることがある。小児及び高齢者集団等の特殊集団における試験は、これらの集団における医薬品の影響を理解するために実施され得る。潜在的なリスクの理解を深めるために、承認後に安全性の試験を実施することがある。長期の追跡調査又は承認された薬物間の比較を伴う研究は、安全性及び有効性に関する重要な情報を医学的なコミュニティに提供する可能性がある。承認後の試験には、様々なデザインとデータソースが含まれる(5項参照)。

4.3.4 追加の開発

最初の承認後も、新効能若しくは効能の変更、新用法・用量、新投与経路又は追加の患者集団の試験を行い、開発が続く場合がある。新用量、新剤型、新配合を試験する場合、追加の非臨床及び/又は臨床薬理試験が求められることがある。それまでの試験や既承認薬による臨床経験は、これらの開発計画に情報をもたらすことがある。

4.3.5 特殊集団における検討

一般的な集団の中の一部グループでは、医薬品開発中に検討すべき特有のリスク/ベネフィットに対応するため、医薬品の用法・用量の変更の必要性が予期されるため、特別な試験を必要とすることがある。ICH E5 は、民族的要因が薬剤の効果に与える影響を評価するためのフレームワークを提供している。特殊集団における臨床試験を支援するための非臨床安全性試験が必要となることがある(例、ICH S5生殖発生毒性試験、S11小児用医薬品開発の非臨床試験及びM3参照)。以下に、開発計画中に考慮されるべき特殊集団の例を示す。

妊婦における検討

妊婦が臨床試験に参加している場合又は臨床試験に参加している間に女性が妊娠する場合、妊娠、胎児及び子供の評価及び全ての結果の総括報告書への記載がしばしば必要となる。同様のことは、妊娠中に使用される医薬品の、妊婦を含む臨床試験においても当てはまる。

授乳婦における検討

薬剤又はその代謝物の乳汁への排泄が生じ、その検討が可能な場合は、当該検討を行うべきである。授乳中の母親が臨床試験に登録される際には、通常、児に対する薬の影響についても観察する。

小児における検討

ICH E11 は、小児用医薬品開発において着目すべき課題の概要と、小児集団における医薬品の安全で効率的かつ倫理的な試験へのアプローチを提供している。

高齢者における検討

ICH E7 は、高齢者向け医薬品の開発における着目すべき課題の概要と、高齢者向け医薬品の安全で効率的かつ倫理的な試験へのアプローチを提供している。

腎機能及び肝機能障害集団における検討

腎臓及び肝臓の機能障害を有する患者における薬物動態学的試験は、潜在的に変化した薬物代謝又は排泄の影響を評価するために重要である。

脆弱な集団におけるインフォームド・コンセントに関連する倫理的考慮事項に特に注意を払うべきである(ICH E6 及び E11 参照)。

4.4 実施可能性

医薬品開発中には、個々の試験の実施可能性を検討する必要がある。試験が成功する礎には、科学的に健全であり、なおかつ運用上実施可能である試験実施計画書がある。詳細な実施可能性の検討には、臨床開発プログラム又は試験を成功させ完了させることに影響を及ぼし得る特定の地理的な地域における運用上の観点からの試験デザイン及び実施に関わる因子の検討が含まれる。

試験の実施可能性に関連する、質に関する重要な要因を考慮することは、試験デザインに情報を与え、試験実施の質を高める。実施可能性の検討事項には、臨床試験の実施経験のある適格性を有する試験担当医師/現場要員の確保状況が含まれるが、それに限定されるものではない。また、臨床試験を成功裡に実施するために必要な機器及び設備の確保、望ましい患者集団の確保、試験の検出力の解析に基づき決定された十分な数の参加者を登録できること、さらにはインフォームド・コンセント、保護者/介護者の同意及び小児試験での患者のアセントを含む、倫理的及び規制上の考慮すべき事項、あるいは地域の標準治療が含まれる。

試験の実施可能性の重要な側面は、試験への登録又は参加継続する意思に影響を与える可能性のある試験実施計画書の要素について、潜在的な被験者の考えを理解することである(例:試験手順の影響、試験目的/結果の意義)。被験者の試験の継続及び治療を中止した場合の追跡調査は、質に関する重要な要因として極めて重要である。適切かつ早い時期の患者の意見聴取を過小評価しないことが重要である。それは試験の実施可能性及び試験実施計画書への遵守状況へと繋がり、より本質的には、試験から蓄積された知見と経験に基づいた医薬品承認の患者にとっての妥当性(又は適切性)に繋がる。

5 臨床試験デザインの構成要素

試験の目的は試験デザインとデータソースの選択に影響を及ぼし、さらには規制上の意思決定や実際の診療を支援する試験の強さに影響を与える。本項では、臨床試験のデザインを定義する重要な要素を紹介する。それはまた、試験の目的と被験者保護を達成するのに必要な質に関する重要な要因の同定を支援することを意図すると共に、試験デザインが柔軟性を持てるようにし、試験実施の効率性を促すことにも繋がる。本文書は、医薬品のライフサイクルに含まれ得る全ての種類の試験について説明するものではない。ここで概説する要素は、現在臨床試験として使用されているか、将来的に開発される可能性のある試験の種類とデータソースに関連付けられることが期待されている。

明確な目的は試験デザインの決定を助け、そして逆に、デザインを特定するプロセスは目的をさらに明確にするのを助けるであろう。実務上考慮すべき事項や制限が明らかになった場合には、目的の変更が必要となることがある。

5.1 試験デザイン

臨床試験の基本的なデザイン要素には、対象集団、介入、対照群、反応変数、偏りを低減する又は評価する方法及び統計的方法が含まれる。試験実施計画書は、これらの要素を試験の目的、試験の種類及びデータソースと共にまとめたものであり(5.2 項参照)、試験の開始前に確定されるべきである(ICH E6 参照)。

5.1.1 対象集団

試験の対象集団は、試験目的に対応するように選択されるべきであり、試験の選択/除外基準として定義される。実際には、試験対象集団は、参加可能な対象及び同意が得られる対象に限定される(ICH E6 参照)。試験の被験者集団が、計画された対象集団を反映するものとなるように、募集の努力を行うべきである。仮に、目的に特定の部分集団に関する情報を入手することが含まれるならば、それらの部分集団を適切に代表させるような努力がなされるべきである。

試験対象集団は、不均一性を減らし、特定の効果を検出するための試験の感度を最大にするために、狭く定義される可能性がある。逆に、医薬品が使用される集団により近いものとするために、広く定義されることもある。一般に、開発プログラムの初期段階で実施する試験では、薬剤の安全性についてほとんど知られていない場合、試験対象集団の定義においてより均質である傾向があり、医薬品開発の後期又は承認後の試験ではより不均一となる傾向がある。個別化医療の試験における被験者募集は、例えば、排他的な選択又はエンリッチメント試験デザインを通して、特定の表現型又は遺伝子型を有する罹患患者の部分集団を標的とし得る。試験対象集団の選択は試験目的に依存し、試験が期待する集団の募集そして登録に成功する程度は、試験が目的を達成するかどうかを左右する。

例として、実臨床を代表する対象集団は、既存のヘルスケアシステム内で実施される実践的試験(pragmatic trials)で対象とされることがある。そのような試験では、被験者募集手順は他の種類の試験とは異なり、選択/除外基準は既存の診療録に基づいて評価されるであろう。

試験の目的のため又は実施可能性もしくは効率のために、対象集団の単位が個人ではなく被験者の集団(クラスターとして知られる)である状況があり得る。例えば、いくつかのワクチン試験は、地域におけるそれらの予防効果を測定するためにクラスターランダム化を利用している。クラスターユニットの使用は、複数のデザイン要素及び質に関する要因(例:介入、解析、同意取得)に影響を与える。

試験は、一定の精度を保つ又は誤った結論を下す確率を制御することにより、得られた知見に基づいて統計学的結論を下すのに十分な数の被験者を含むように計画すべきである(ICH E9「臨床試験のための統計的原則」参照)。医薬品の安全性を確認するには、より大きなデータベースが必要になることがある(ICH E1参照)

5.1.2 介入

試験の重要な区別は、治験薬の選択と被験者の医学的管理が(ヒト/被験者の保護と規制要件を適切に考慮して)規定された試験であるのか、単に観察のみが行われる試験であるのかということである。前者は介入試験と呼ばれ、後者は観察研究と呼ばれる。

介入試験はしばしば観察研究よりも偏りを制御できる可能性がある(5.1.5項参照)。試験の目的、実施可能性、データソース、予想される偏り、不確実性等の要因が、介入試験と観察研究の選択において重要な役割を果たす。観察研究は、通常、承認後に行われる。

介入試験と観察研究の間には連続性がある。例えば、実践的試験は、介入が試験によって制御されるということと医学的管理の制御の程度が他のタイプの試験と比較してより低いということから、2 つのタイプの混合である。

5.1.3 対照群

検討すべき医薬品の効果は、医薬品が投与されていないことと比較した効果又は他の治療を受けていることと比較した効果であるだろう。例えば、プラセボ、無治療、実薬対照又は探索中の医薬品の異なる用量と比較することができる。これらの比較を導き出すために、通常、医薬品が投与されていない又は他の治療を受けている群の被験者に関する情報が必要とされる。この群は、対照群として知られている(ICH E10 参照)。対照群の選択は、試験目的、倫理的配慮及び試験の実施可能性によって影響を受けることがある。

対照群データのソースは、試験の内部又は外部であり得る。内部対照群を設定する場合、試験における全ての被験者は同じプロセスによって選択され、被験者間で観察し得る唯一の違いが受ける治療によるものであるという意図の下で、試験データは同時に同じ手順によって取得される。外部対照群の使用では、被験者は外部ソースから選択され、対照群の被験者はより早い時期(ヒストリカル対照群)又は同時並行ではあるが、実施中の試験の被験者とは異なる設定で治療され得る。

外部対照被験者は、追跡調査、試験のアウトカムの測定及び他のデータ要素に関して、試験に参加している被験者とは異なるであろう。さらに、これらの外部対照被験者は、何らかの人口統計学的及び患者背景の特性(例:病歴、合併症)に関して、試験内の被験者と異なることから、多少とも異なる患者集団を代表する可能性があり、試験のデザインと解析において考慮されるべきである。

単一の臨床試験で、内部対照被験者と外部対照被験者の両方を使用することは可能であるかもしれない。例えば、試験の実施は、内部対照群に外部対照群に関する追加のデータを補完することによって促進され得る。

ある状況では、別の群の対照被験者を使用するのではなく、被験者が異なる時点に被験薬及び対照薬を投与されることで自身の対照として機能し得る。介入試験と非介入試験の両方で、そのようなアプローチを利用する可能性がある。このアプローチの例には、介入試験のためのクロスオーバーデザイン及び非介入試験のためのケースクロスオーバーデザインが含まれる。

対照群の選択及び使用に関連した質に関する重要な要因が存在し、これには試験の目的、対照のデータの入手可能性とその質、試験の実施可能性、倫理的考察、治療群と対照群の比較可能性及び結果の比較可能性が含まれる。

外部対照群を選択する場合には、被験者レベルのデータが利用できないことがあり得るが、外部ソースから要約指標が入手可能であれば、治療効果の推定及び仮説の検定を行うため、治療を受けた被験者との比較の基礎を構成することができるであろう。しかしながら、この場合、治療群間の比較可能性に関する質に関する重要な要因に、被験者レベルの共変量の調整で対処することは不可能である。

比較の実施に十分であると考えられる対照データが入手できない場合、試験で観察された治療に対する反応は、関連する正当化された対照となる反応率の値と比較することができるであろう(例:腫瘍領域における腫瘍縮小率;抗感染症薬の治癒率)。比較可能な対照データが利用可能である場合でも、外部の目標値は試験で観察された反応率を評価するのに有用であり得る。

5.1.4 反応変数

反応変数は、医薬品によって影響を受けるであろう被験者レベルの関心の対象の属性である。反応変数は、薬物動態学、薬力学、有効性、安全性又はリスク最小化策の遵守を含む医薬品の承認後の使用に関連し得る。試験のエンドポイントは、医薬品の効果を評価するために選択される反応変数である。

主要評価項目/エンドポイントの選択は、試験の質にとって重要である。主要評価項目は、実施可能性も考慮して、臨床的に最も関連性があり説得力のある、試験の主要目的に直接関連するエビデンスをもたらす変数とすべきである(ICH E9 参照)。副次変数は、主要な目的に関連する補助的な指標、又は副次的な目的に関連する効果の指標のいずれかである。エンドポイントの選択は、企図する集団にとって意義があり、そして患者の視点も考慮して決められるべきである。

試験の各エンドポイントの定義は具体的であるべきである。その特定には、それがどのように確認され、被験者の医薬品の治療コース及び追跡期間のどの時点でそれが確認されるかを含める必要がある。エンドポイントの確認のために使用される方法は、十分な正確性、精度、応答性(変化に対する感度)、再現性、信頼性及び妥当性があるべきである。

前述(5.1.1 項参照)のように、実践的試験では、ヘルスケアデータを使用して試験対象集団を選択する方法と同様に、試験ごとのデータ収集ではなく、ヘルスケアシステムからの既存のデータを使用して反応変数を取得できるかもしれない。

医薬品に関する知見、臨床的背景及び特定の試験の目的は、どのような反応変数を収集するべきかに影響する。例えば、proof-of-concept試験では、客観的な臨床転帰ではなく短期間で評価可能な代替エンドポイントを採用することがある。臨床転帰はその後に、大規模な検証的試験で臨床的に意義のある効果を確認するために用いられる。他の事例として、例えば、医薬品の安全性プロフィールが十分に特徴付けられている承認後の試験では、安全性データ収集の範囲は試験の目的に合わせて調整されるだろう。

5.1.5 偏りを低減又は評価する手法

試験デザインは、結果の信頼性を損なう可能性がある偏りの原因に対処する必要がある。様々な種類の試験が様々な偏りの原因に曝されているが、この項ではより一般的な原因について説明する。ICH E9では、主に介入試験の文脈で、偏りを管理及び低減するための原則について議論している。

比較試験を実施する際には、群間の比較可能性を担保し、それによって治療の割付における偏りの可能性を最小限に抑えるためのランダム割付が好ましい手段である。

ランダム化は、ランダム化時点での群間の違いに対処するが、ランダム化後に生じる違いを防ぐことはできない。ランダム化後の事象(中間事象)も群間の比較可能性に影響を与える可能性がある。例えば、有害事象又は有効性の欠如のために 1 つのグループの対象が試験から除外される等、群間で追跡パターンに違いが生じうる。中間事象の潜在的な影響を慎重に検討することは、脱落例の防止、脱落例に関するデータ収集、脱落がある場合の治療効果の定義といった質に関する重要な要因の特定に役立つ。

治療の割付を知られないようにすること(盲検化又はマスク化)は、治療の過程、モニタリング、エンドポイントの確認及び被験者の反応に影響を及ぼす可能性がある臨床試験の実施及び解釈における意識的又は無意識的な偏りの発生を抑える。治療の割付が被験者に知られていない試験は、単盲検試験と呼ばれる。被験者の治療又は臨床評価に関与している試験担当医師及び試験依頼者側のスタッフも治療の割付を知らない場合、試験は二重盲検となる。中間試験結果の機密性を維持することもまた、偏りを減らすのに役立ち得る。

オープンラベル試験(単群又は非盲検比較)では、治療の割付、被験者の管理、安全性報告及び反応変数の確認等の試験実施の側面において、事前に定めた意思決定ルールを用いることによって、盲検化の欠如により生じる影響を減らすことができるであろう。

観察研究は偏りの制御に特有の課題を持つ。これらの課題に取り組むために、以下に関連する偏りに対処する方法を含む複数のデザイン要素がしばしば必要となる。(1)対象の選択、(2)治療の選択に関連した予後因子の違い(交絡)、(3)反応変数及び他の重要な試験の変数の確認。

5.1.6 統計解析

試験の統計解析は、試験目的を達成するために必要で重要な要素を網羅している。試験実施計画書には、目的と試験デザインに適した統計的方法の項を含めるべきである(ICH E6、E9参照)。実施に必要な詳細を示すために、別に統計解析計画書を使用することができる。試験実施計画書は試験実施前に確定する必要があり、統計解析計画書は試験データの盲検化を解除する前又は非盲検試験の場合には試験実施前に確定する必要がある。これらのステップは、解析計画の重要な側面が、試験におけるデータの蓄積や外部データの不適切な使用に基づいていないという信頼性を高めることに繋がる。これらは両方とも、試験結果の信頼性に悪影響を及ぼす可能性がある。例えば、ランダム化臨床試験における解析方法の選択は、盲検されていない試験データを検討した後には変更すべきでなく、外部対照被験者は治療を受けた被験者の比較解析に使用される結果に基づいて選択されるべきではない。

有効性と安全性の両方に関して、研究の目的を達成するための主要及び副次評価項目の統計解析並びに全ての中間解析及び/又は計画されたデザインの改訂について記述されるべきである(E9 参照)。解析計画は、医薬品の効果に関する推定と仮説検定のための解析方法、治療の割付への対処、反応変数の測定方法、解析対象集団、その他、試験デザインに対して適切に計画された解析戦略に関連する質に関する重要な要因を記述すべきである。その計画は、治療の中止、救済治療の使用、未受診、その他の試験実施計画書からの逸脱等の中間事象の取扱いに対応する必要がある。

統計解析計画書は、個々の試験デザイン及びデータソースとの関連(context)において、上記の様々な偏りの原因にどのように対処するかを記述すべきである(5.1.5 項参照)。事前規定は、特に一次データ収集(5.2項参照)をせずに既存のデータソースを利用する試験にとって、試験のために計画された統計解析だけでなく、既存のデータの適用可能性を評価するためのどのような実施可能性分析にとっても重要である。例えば、外部対照を用いた単群の介入試験では、試験の介入的な面の実施の前に外部対照の詳細を規定すべきである。試験の計画前のデータのあらゆる検討が試験の完全性を脅かすことのないよう、保証と手順を整備する必要がある。

主要解析の仮定の試験結果への影響を確認するために感度分析を計画する必要がある。例えば、主要解析がデータの欠測の理由に関する特定の仮定に依存している場合、感度分析は試験結果に対するこれらの仮定の影響を評価するために計画されるべきである。観察研究の例としては、追加の交絡因子の検討がある。

5.2 試験データ

試験データには、試験の実施、モニタリング、解析に必要な情報が確実に含まれている必要がある。試験データは、紙ベースの方法、電子的収集を含む様々な方法によって取得することができる。技術(例えば、デジタルヘルスツール)や、電子的な診療録データベース及び患者レジストリを用いたデータは、新たな治験薬の開発又は承認された薬の更なる評価のために貢献し得る。

試験データは以下の大きく 2 つのタイプに分類することができる。(1)本試験のために特別に生成されたデータと(2)本試験の外部の情報源から得られたデータ。2 つのタイプの違いは必ずしも明確ではない。例えば、臨床試験データは、既存の診療録から得られた情報も含みながら、症例報告書、検査室での測定値及び他のメカニズムを介して計画された来院時点で収集され得る。この場合、両方の種類のデータソースからのデータが臨床データベースを構成する。

一次データ収集という用語は、十分なレベルの質を保証するプロセスを用いて試験目的のために収集されたデータを指す。二次データ使用という用語は、他の目的のために収集され、その試験のためだけに集められたものではないデータの使用を指す。二次データ自体には、取得時に慎重な質管理プロセスが実施されている可能性があるが、それらのプロセスは本試験の目的を念頭に置いてデザインされたものではない。臨床試験で使用される二次データソースの例には、全国死亡データベース、疾病や薬剤のレジストリ、診療報酬データ、並びに日常診療からの診療録及び行政記録が含まれるであろう。

二次データの使用では、利用可能なデータの適切性を考慮する必要がある。例えば、一次データの収集を通してではなく、既存の電子診療データを使用して試験のエンドポイントを確認する場合、結果を得るための診療録の情報は、試験のエンドポイントに変換する必要がある。記録内の結果の感度、特異性及びタイミングを考慮する必要がある。場合によっては、二次データの使用は研究のすべての局面にとって十分ではない可能性があり、一次データで補足する必要があるかもしれない。

二次データを使用する場合、いくつかの追加で考慮すべき事項がある。データの測定及び記録において医薬品名を隠すことは、通常、典型的には二次データの使用では存在しない。ある状態又はイベントが存在するという情報がないことは、そうした状態が存在しないことを意味するとは限らない。例えば、診療録に喫煙状態がないことは、患者が喫煙者ではないことを意味するものではない。イベントと既存のデータソース内でのその存在の間にも遅延が生じる可能性がある。

試験データの用語、保存、交換及びアクセスにデータ標準を用いることは、データの信頼性と適切な解釈を促進する。また、データ標準はデータ解析の容易さと正確さを促進する。試験データの多くのソースについて、国際的なデータ標準が存在する。データ標準は試験データの新たなソースのために開発されるべきである。

すべてのデータソースについて、個人データの機密性を確保するための手順を実施する必要がある。試験デザインは、個人データの保護に明確に取り組むべきである。参加者のデータのプライバシーに関しては、地域の規制に従う必要がある。

6 実施と報告

6.1 試験の実施

クオリティ・バイ・デザインを含め、本指針に記載されている原則とアプローチは、臨床試験の実施と報告及び質に関する重要な要因の完全性を確実にするために行う、管理のための対策の均整を取ることに適切な情報となるべきである。試験は、本指針に記載されている原則に従って、またICH E6及び他の関連するICHガイドラインで概説されている関連要素に従って実施される必要がある(補遺 2及び3参照)。

6.1.1 試験実施計画書の遵守

試験実施計画書の遵守は不可欠であり、遵守は様々な面から、試験の質に関する重要な要因の中で検討されなければならない。試験実施計画書の改訂が必要になった際には、その改訂根拠の明確な説明を試験実施計画書改訂で提供すべきである(ICH E6参照)。

6.1.2 トレーニング

試験手順の遵守の重要性の強化のため並びに試験中に生じる質に関する重要な要因に関連する状況に適切に対応するため、試験依頼者、試験担当医師、コーディネーター、その他の現場スタッフ、サイトモニター、評価者(adjudicators)とデータモニタリング委員会の委員、試験に関わるその他の外部事業者(例:中央検査、中央画像読影担当者)等のステークホルダーは、最初の被験者の登録前に充分なトレーニングを受けるべきである。また試験実施中に更新されたトレーニングも実施されるべきである。

6.1.3 データマネジメント

ICH E6で論じているように、試験データの収集及び管理の方法とそのスケジュールは、全体的な試験の質を左右する重要な因子である。試験実施上のチェックと統計的なサーベイランス(statistical surveillance)は、是正措置が実施可能になった時点で、データの質に関する重要な課題を特定する。データマネジメントの手順は、臨床試験に使用されているデータソースの多様性を考慮に入れるべきである(5.2 項参照)。

6.1.4 中間データへのアクセス

試験実施中のデータへの不適切なアクセスは、試験の完全性を損なう可能性がある。計画された中間解析を用いた試験では、誰がデータと結果にアクセスできるかに特に注意を払うべきである。計画された中間解析のない試験であっても、不適切なアクセスを避けるために、あらゆる継続的なデータのモニタリングに特別な注意を払うべきである。

6.2 被験者の安全性

臨床試験の倫理的な実施及び被験者の保護の重要な規範は2.1 項に記載されている。この項では、試験実施中の安全性に関して考慮すべき点を記す。

6.2.1 安全性モニタリング

安全性モニタリングの目的は、試験の被験者を保護し、医薬品の安全性プロファイルを特徴付けることである。試験中の報告のタイミングを含む、安全上の懸念の特定、監視、報告のための手順とシステムは明確に規定されるべきである。このアプローチは、試験の被験者へのリスク及び医薬品と試験の対象集団について既知の事項を反映すべきである。適切な規制当局への安全性データの迅速な報告及び安全性報告の内容に関してはガイドラインが示されている[ICH E2(A、B、D)臨床上の安全性及びICH E6 参照]。

6.2.2 中止基準

被験者保護を確実にするために、試験治療の中止については試験への継続参加か、試験からの脱落かに関して明確な基準が必要であるが、可能であれば重要なデータの減失を最小限に抑えながら、被験者の安全性と権利を保護する方法について考慮する。

6.2.3 データモニタリング委員会

多くの臨床試験において、安全性モニタリングの重要な要素として、データモニタリング委員会(DMC)の設置がある。DMCは、試験継続や計画の変更、あるいは試験終了の可否を判断する目的で、試験実施中に集積されたデータを監視する。

開発プログラムを計画する際には、開発プログラムに含まれる複数の試験を通して安全性データを監視するための外部安全性モニタリング委員会の必要性も評価されることがある。個々の試験又は開発プログラム全体のいずれにデータモニタリング委員会が必要な場合でも、その運営管理の手順、特に試験の完全性を保ちながら盲検化されていないデータを確認する手順(ICH E9 参照)を確立しておく必要がある。

6.3 試験の報告

臨床試験の総括報告書は、他の ICHガイドラインに概説されている手順に従って適切に文書化されるべきである。ICH E3 は、介入的な臨床試験の報告形式に特に焦点を当てている。他の種類の試験(例:観察研究)では、試験の種類及び報告される情報に適した報告形式を使用すべきである。

医薬品開発における臨床試験の透明性には、広くアクセス可能かつ認知されたデータベースへの臨床試験の登録及び臨床試験結果の公開が含まれる。観察研究にそのような実践を適用することはまた、透明性を促進する。客観的で偏りのない情報を公に利用可能にすることは、臨床研究の役割を高め、不必要な臨床試験を減らし、実臨床における意思決定に情報提供することを通して、一般の公衆衛生だけでなく個々の患者集団にも役立つ。

7 質に関する重要な要因を同定するための留意事項

質に関する重要な要因は、3 項で示したように、試験の計画時点で積極的で枠組にとらわれない議論と意思決定によって支援されるべきである。異なった種類の試験においては様々な要因が重要であり、これは4 項から6 項に示されている。

試験のデザインに際しては、質に関する重要な要因の特定の支援をするために、以下のような視点を検討すべきである。

  • 患者を含むすべての関連する利害関係者の関与は、試験の計画及びデザイン中に考慮される。
  • 事前に実施すべき非臨床試験、該当する場合は臨床試験が完了し、計画中の試験の裏付けとして十分であること。
  • 試験目的としては、医薬品に関してそれまでに蓄積された知見を考慮した上で、開発プログラムの中での当該試験の役割に適した科学的な疑問を設定すること。
  • 臨床試験のデザインが、選択された内部又は外部対照群と比較したときの医薬品の効果に関する意義のある比較に役立つこと。
  • 被験者の権利、安全性及び福祉を保護するために適切な対策を用いること(インフォームド・コンセントのプロセス、治験審査委員会/倫理委員会の審査、試験担当医師及び臨床試験施設の訓練、仮名化等)。
  • 実施可能性の調査は、試験を運用する上で実施可能であることを確実にするために行われる。
  • 被験者数、試験期間や試験の来院頻度が、試験の目的を裏付けるのに十分であること。
    適格基準は、試験目的を反映したものであるべきであり、試験実施計画書に十分に文書化されているべきである。
  • 医薬品のベネフィット/リスクを理解するために重要となる可能性がある被験者に関する情報(例:年齢、体重、性別、併存疾患、併用療法)が、試験のデザイン、実施及び解析において、適切に、試験実施計画書に記載され、収集され、組み込まれていること。
  • 反応変数の選択とそれらを評価する方法を明確に定義し、医薬品の効果の評価を助けること。
    臨床試験の手順には、偏りを最小限に抑えるための適切な措置(例:ランダム化、盲検化)が含まれること。
  • 統計解析計画を予め規定し、エンドポイント及び関心のある集団に適した解析方法を定義すること。
  • 重要な試験データの完全性を確保するためのシステムとプロセスを整備すること。
  • 試験のモニタリングの範囲と性質は、個別の試験デザインと目的及び被験者の安全性を保証する必要性に合わせて調整する。
  • データモニタリング委員会の必要性を評価する。

これらの考察は網羅的なものではなく、全ての試験に当てはまるものではない。個々の試験
ごとに質に関する重要な要因を特定するために、別の視点から考慮する必要があるかもし
れない。

補遺 1:試験の種類

医薬品開発は理想的には論理的で段階的な一連の過程であり、初期の小規模な試験からの情報が、後のより大規模でより決定的な試験を支持し計画するために使用される。以下の表では、試験の種類は目的別に分類される。実例を示すが、これは網羅的であることを意図していない。ある種類として示された例は、別の種類にも属することがある。

試験の種類 試験の目的 試験の例
臨床試験を支持し補うための非臨床試験
  • 非臨床PK/PDの評価
  • 毒性の評価
  • 発生毒性の評価
  • 変異原性、発がん性の評価
  • 免疫原性と交差反応性の評価
  • 目標と作用メカニズム(MOA)の理解
  • AMESテスト
  • ADME試験
  • 動物の発がん性
  • 動物疾患モデルにおけるMechanism of action 調査(作用機序検討)
  • 動物毒性
  • 動物PK/PD
臨床薬理
  • 忍容性と安全性の評価
  • 臨床PK 及びPD の定義/記述
  • 薬物代謝と薬物相互作用の探索
  • (薬理)活性、免疫原性の推定
  • 腎臓/肝臓における忍容性評価
  • 心毒性の評価
  • 絶食/摂餌条件下でのバイオアベイラビリティ/生物学的同等性の試験
  • 用量忍容性試験
  • 単回投与及び複数回投与のPK 及び/又はPD 試験
  • 薬物間相互作用に関する試験
  • QT 延長試験
探索的治療
  • 標的となる適応での使用の探索
  • 以降の試験のための用量/投与計画の推定
  • 用量反応/曝露反応関係の探索
  • 検証的試験のデザインの基礎の提供(例 臨床的エンドポイント、患者報告アウトカムの指標、効果の修飾因子、標的集団等)
  • 代替又は薬理学的エンドポイント若しくは臨床的指標を用いて明確に定義された限られた患者集団で実施する比較的短期間のランダム化比較臨床試験
  • 用量探索試験
  • バイオマーカー探索試験
  • 患者報告アウトカムのバリデーション
検証的治療
  • 有効性の証明/検証
  • 大規模かつより代表的な患者集団における安全性プロファイルの確立
  • 薬事承認を支援するためのベネフィット/リスクの関係を評価するための適切な基盤を提供
  • 用量反応/曝露反応関係の確立
  • 特殊集団(例 小児、高齢者)における安全性プロファイルの確立と有効性の検証
  • 有効性の確立を目的とした大規模かつより代表的な患者集団におけるランダム化比較試験、一般的に臨床的エンドポイントを用いるが、代理エンドポイントまたは薬理学的エンドポイントを用いることもある
  • 用量設定試験
  • 臨床安全性試験
  • 死亡率/罹患率を指標とした試験
  • 特殊集団を対象とした試験
承認後
  • 一般的な集団や特殊集団におけるベネフィット/リスクの関係の理解を深めること
  • 必ずしも一般的でない副作用の特定
  • 推奨用量の調整
  • 有効性比較試験
  • 長期フォローアップ試験
  • 付加的なエンドポイントの試験
  • 大規模でシンプルな試験
  • 医薬品の経済性評価
  • 実践的試験
  • 医療経済学的試験
  • 観察研究

補遺 2: ICH 有効性ガイドライン群

ICH有効性ガイドラインは、臨床試験のデザイン、実施、解析及び報告を網羅した一連のガイドラインである。ICH E8は、臨床開発臨床試験の質の設計及び試験の質に関する重要な因子に焦点を当てることへの全般的な指針を示している。これらのガイドラインは、その一つ二つのガイドラインやその部分的な記載に焦点を当てるのではなく、統合された総合的な方法で検討して使用する必要がある。

デザインと分析

  • E4 用量-反応関係の検討
  • E9 臨床試験のための統計的原則
  • E10 対照群の選択
  • E17 国際共同治験

実施と報告

  • E3 総括報告書
  • E6 医薬品の臨床試験の実施基準

安全性報告

  • E1 長期投与医薬品の安全性評価
  • E2A-E2F ファーマコビジランス/医薬品安全性監視
  • E14 QT の臨床評価
  • E19 安全性データ収集

対象集団

  • E5 民族的要因
  • E7 高齢者
  • E11–E11A 小児集団
  • E12 薬効群別の臨床評価

遺伝子/ゲノム

  • E15 ゲノム薬理学用語集
  • E17 ゲノムバイオマーカーの適格性確認
  • E18 ゲノム試料収集

参照

-臨床試験

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