エビデンス全般

日本の「国の借金」1311兆円の実態:財政破綻リスクと経済成長、再建への道

直接の回答
主なポイント
  • 日本の国の借金は2024年6月時点で1,311兆421億円と非常に高く、GDP比で236.66%と世界2位です。
  • 少子高齢化や経済低迷が主な原因で、財政再建は進んでいません。
  • 専門家は財政破綻リスクは低いと見る一方、経済成長への影響が懸念されています。
現在の状況
日本の国の借金は、2024年6月30日時点で1,311兆421億円に達し、過去最高を更新しました。これは国債、政府短期証券、金融機関からの借入金を含み、国民1人あたり約1,085万円に相当します。GDP比236.66%は世界で2番目に高く、特にG7諸国の中では最も高い水準です。ただし、純債務(債務から資産を引いたもの)はGDP比18%と比較的低く、財政破綻リスクは低いとされる場合もあります。
歴史的背景
1990年代以降、借金は急速に増え、1990年の291.7兆円から2024年には1,442.3兆円(予測)に達する見込みです。バブル崩壊後の経済低迷や社会保障費の増大が主な要因です。
経済への影響
高い借金は、将来の世代に負担を先送りし、経済成長を制約する可能性があります。金利上昇リスクも指摘されていますが、円建て債務のため通貨危機のリスクは低いとされます。
政府の対策
政府はプライマリーバランスの黒字化や消費税増税、歳出見直しを通じて財政再建を目指していますが、進展は限定的です。

詳細な調査ノート
はじめに
日本の国の借金は、国内外で大きな関心を集めています。特に、GDPに対する借金の比率が非常に高く、世界でもトップクラスであることから、財政の持続可能性や経済成長への影響が懸念されています。この調査ノートでは、日本の現在の国の借金の状況、歴史的背景、他の国との比較、借金が高水準にある理由、経済への影響、そして政府が講じている対策について詳しく説明します。
現在の国の借金
2024年6月30日時点で、日本の国の借金は1,311兆421億円に達し、過去最高を更新しました。この数字は、財務省が発表したもので、国債1,160兆1,357億円、政府短期証券104兆4,991億円、金融機関からの借入金46兆4,073億円を合計したものです。人口で割ると、国民1人あたりの借金は約1,085万円となります。
GDPに対する借金の比率(債務残高対GDP比)は236.66%で、世界で2番目に高い水準です(1位はスーダン)。G7諸国の中でも、最も高い比率であり、イタリア(158%)、フランス(123%)、アメリカ(105%)を大きく上回っています。ただし、純債務(債務から金融資産を差し引いたもの)を考慮すると、GDP比18%とG7平均(22%)を下回り、ドイツ(-3%)やイタリア(78%)と比較しても低い水準です。これは、日本が大量の金融資産(例: 外貨準備や年金基金)を保有していることを示しています。
歴史的背景
日本の国の借金は、1980年代から増加を始め、1990年代以降急速に拡大しました。以下は、1980年から2025年(予測)までの政府総債務残高の推移を示す表です(単位: 10億円):
1980
12,234.19
1990
29,168.92
2000
72,607.26
1985
23,252.35
1995
48,262.60
2005
92,974.40
1990
29,168.92
2000
72,607.26
2010
104,078.28
2015
122,821.16
2020
139,427.75
2024
144,228.03
2025
146,666.95
-
-
-
-
同様に、GDP比も以下の通り変化しています:
比率 (%)
比率 (%)
比率 (%)
1980
47.78
1990
63.23
2000
135.61
1985
68.31
1995
92.53
2005
174.60
2010
205.88
2015
228.28
2020
258.37
2024
236.66
2025
234.86
-
-
この急激な増加は、1990年代初頭のバブル崩壊以降の経済低迷、少子高齢化による社会保障費の増大、そして景気刺激策としての財政出動が主な要因です。特に、2001年から2015年までの債務増加率はG7の中で最も低く(163%、基準100)、イギリス(429%)やアメリカ(338%)と比較しても低いですが、絶対額では依然として膨大です。
他の国との比較
日本の債務残高対GDP比236.66%は、世界で2番目に高く、GLOBAL NOTEのデータ(世界の政府債務残高対GDP比 国別ランキング・推移)によれば、スーダン(271.98%)に次ぐ水準です。G7諸国では、イタリア(158%)、フランス(123%)、アメリカ(105%)、カナダ(97%)、イギリス(79%)、ドイツ(76%)と比較しても突出しています。
しかし、純債務比率を考慮すると、日本の状況は改善されます。2018年のIMFデータでは、日本の資産比率は221%で、フランス(100%)、アメリカ(99%)、カナダ(99%)、ドイツ(79%)、イタリア(79%)、イギリス(47%)を上回ります。結果、純債務比率は18%とG7平均(22%)を下回り、財政破綻リスクが低いとされる場合もあります。
借金が高水準にある理由
日本の国の借金が高水準にある主な理由は以下の通りです:
  1. 少子高齢化と社会保障費の増大
    日本は世界で最も高齢化が進んでいる国の一つであり、年金、医療、介護費用が急増しています。財務省のデータ(財政に関する資料)によれば、社会保障関係費は一般会計歳出の55.7%を占め、2040年には現在の130兆円から約190兆円に増えると試算されています。
  2. 経済成長の低迷
    1990年代以降の「失われた10年」やその後の低成長期により、税収の増加が限定的でした。税収は2026年度予算で69.6兆円と見込まれ、総支出の約2/3しかカバーできず、残りは借金で賄われています。
  3. 財政刺激策の繰り返し
    リーマン・ショックやCOVID-19パンデミックなどの経済危機に対応するため、政府は大規模な財政出動を行い、借金が増加しました。
  4. 低金利環境
    日本銀行の長期間にわたるゼロ金利政策や量的緩和により、借金のコストが低く抑えられてきました。これが、借金依存型の財政運営を助長してきました。
経済への影響
日本の高水準の借金は、経済に以下のような影響を及ぼしています:
  • 経済成長の制約
    高い借金は、財政政策の柔軟性を制限し、景気刺激策の余地を狭めます。1990年代以降の緊縮財政政策は、経済成長の停滞や賃金の低迷を招き、国内需要の減少を招いたと批判されています(ダイヤモンド・オンライン)。
  • 金利上昇リスク
    現在は低金利環境ですが、金利が上昇すれば、借金のコスト(利払い費用)が増大し、財政を圧迫する可能性があります。JRIのレポート(財政健全化に向けた提言)では、「金利のある世界」に備える必要性が強調されています。
  • 通貨とインフレーション
    借金が円建てであるため、通貨危機のリスクは低いですが、デフレや低インフレーションが続くと、実質的な借金の負担が重くなります。一方で、専門家は日本が自国通貨で借金をしていることや、国内で借金が保有されていることを指摘し、財政破綻のリスクは低いとしています(ダイヤモンド・オンライン)。
政府の財政再建計画
日本の政府は、長年にわたり財政再建を目指してきましたが、進展は遅れています。以下は、現在の政府の取り組みです:
  1. プライマリーバランス(PB)の黒字化
    政府は、利払いを除く収支(PB)を黒字化することで、債務残高対GDP比を安定的に減少させることを目標としています。JRIのレポート(財政健全化に向けた提言)では、具体的な数値目標と改革期間を設定する長期計画の必要性が指摘されています。
  2. 消費税の引き上げ
    2012年に消費税率が5%から8%に引き上げられ、2014年には10%に引き上げられました。今後も、税収の確保のための税制改革が検討されています。
  3. 歳出の見直し
    社会保障費の増大に対応するため、効率化や構造改革が求められています。例えば、医療や介護の提供方法の見直し、年金制度の改革などが議論されています。
  4. 財政規律の強化
    補正予算や予備費の使用ルールを設け、財政規律を強化する動きもあります。EBPM(エビデンスベースド・ポリシーメイキング)を活用し、成長分野への優先的な投資も提案されています。
しかし、これらの計画は、少子高齢化や経済成長の低迷といった構造的な課題に直面しており、実行が難しい状況です。内閣府のレポート(経済成長と財政健全化)では、経済再生と財政健全化の好循環を実現することが重要とされています。
結論
日本の国の借金は、GDP比で236.66%と非常に高水準にあり、世界でもトップクラスです。少子高齢化による社会保障費の増大、経済成長の低迷、そして長期的な低金利環境が、この状況を生み出してきました。ただし、純債務比率が低いことや、借金が国内で保有されていることから、財政破綻のリスクは低いとされています。
それでも、高水準の借金は経済成長の制約となり、将来の世代に負担を強いる可能性があります。政府は、プライマリーバランスの黒字化、税制改革、歳出の効率化を通じて財政再建を進める必要がありますが、これまでの進展は限定的です。長期的な視点に立った構造改革と、持続可能な財政運営が求められています。

主要引用文献

-エビデンス全般

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