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令和2年度診療報酬改定の基本方針

令和元年12月10日
社会保障審議会医療保険部会
社会保障審議会医療部会

1.改定に当たっての基本認識

健康寿命の延伸、人生100 年時代に向けた「全世代型社会保障」の実現

  • 我が国は、国民皆保険や優れた保健・医療システムの成果により、世界最高水準の平均寿命を達成し、人生100 年時代を迎えようとしている。人口構成の変化を見ると、2025 年にはいわゆる団塊の世代が全て後期高齢者となり、2040 年頃にはいわゆる団塊ジュニア世代が65 歳以上の高齢者となって高齢者人口がピークを迎えるとともに現役世代(生産年齢人口)が急激に減少していく。
  • このような中、社会の活力を維持・向上していくためには、健康寿命の延伸により高齢者をはじめとする意欲のある方々が役割を持ち活躍のできる社会の実現と「全世代型社会保障」を構築していくことが急務の課題である。
  • 我が国の医療制度は、人口減少が進展する中で、地域医療の確保、少子化への対応といった様々な課題にも直面している。これらの課題に総合的に対応しながら、世界に冠たる国民皆保険を堅持し、あらゆる世代の国民一人一人が安全・安心で効率的・効果的な質の高い医療を受けられるようにすることが必要不可欠である。また、医療を取り巻く環境の変化や多様な国民のニーズに柔軟に対応することが重要である。
  • そのためには、来る人口減少社会に備えた将来の医療体制の展望を見据え、国民一人一人の予防・健康づくりに関する意識を涵養し、健康寿命の延伸により長寿を実現しながら、患者・国民にとって身近でわかりやすい医療を実現するとともに、医師等の働き方改革を推進することが必要である。その際、高齢化や技術進歩、高額な医薬品の開発等により医療費が増大していくことが見込まれる中、効率化・適正化を進め、制度の安定性・持続性を確保しつつ経済・財政との調和を図る観点も重要である。

患者・国民に身近な医療の実現

  • 患者にとって身近でわかりやすい医療の実現のためには、地域の実情に応じて、可能な限り住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、地域包括ケアシステムを構築するとともに、かかりつけ医機能や患者への情報提供や相談・支援を充実することが必要である。
  • また、疾病構造やニーズの変化・多様化、医療需要が増える中での働き手の減少、厳しい財政状況など、医療を取り巻く社会経済状況を踏まえると、我が国の医療制度に関わる全ての関係者(住民、医療提供者、保険者、民間企業、行政等)が、医療のかかり方の観点も含め、それぞれの担う役割を実現することが必要である。また、診療報酬制度の基本的仕組みやそこから見える医療の方向性について、住民に丁寧に理解を広めていく必要がある。

どこに住んでいても適切な医療を安心して受けられる社会の実現、医師等の働き方改革の推進

  • 2040 年の医療提供体制の展望を見据え、地域医療構想の実現に向けた取組、実効性のある医師偏在対策、医師等の働き方改革を推進し、総合的な医療提供体制改革を実施していくことが求められている。
  • その中で、医師等の働き方改革については、将来の医療ニーズの変化や現役世代の減少、医療技術の進歩等も踏まえつつ、 医療の安全や地域医療の確保、患者や保険者の視点にも留意しながら、医師等の負担軽減等を図ることが重要である。

社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和

  • 制度の安定性・持続可能性を確保しつつ国民皆保険を堅持するためには、国民各層の制度に対する納得感を高めることが不可欠であるとともに、医療政策においても経済・財政との調和を図っていくことが重要である。
  • そのためには、「経済財政運営と改革の基本方針2019」や「成長戦略実行計画・成長戦略フォローアップ・令和元年度革新的事業活動に関する実行計画」等を踏まえつつ、保険料などの国民負担、物価・賃金の動向、医療機関の収入や経営状況、保険財政や国の財政に係る状況等を踏まえるとともに、無駄の排除、医療資源の効率的な配分、医療分野におけるイノベーションの評価等を通じた経済成長への貢献を図ることが必要である。

2.改定の基本的視点と具体的方向性

  • 平成30 年度診療報酬改定については、6年に一度の診療報酬と介護報酬の同時改定であり、団塊の世代が全て75 歳以上の高齢者となる2025 年に向けた道筋を示す実質的に最後の同時改定でもあったことから、医療機能の分化・強化、連携や、医療と介護の役割分担と切れ目のない連携を着実に進める改定を行った。
  • 令和2年度診療報酬改定に当たっては、これらの取組が更に推進されるよう、引き続き適切な評価に取り組むとともに、医師等の働き方改革の推進や、患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療を実現するための取組を進めつつ、効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上を図ることが重要である。

(1)医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進

【重点課題】

(基本的視点)

  • 2040 年の医療提供体制の展望を見据え、地域医療構想の実現に向けた取組、実効性のある医師偏在対策、医師・医療従事者の働き方改革を推進し、総合的医療提供体制改革を実施していくことが求められている。
  • 医師等の働き方改革に関しては、2024 年(令和6年)4月から、医師につ
    いて時間外労働の上限規制が適用される予定であり、各医療機関は自らの状況を適切に分析し、労働時間短縮に計画的に取り組むことが必要となる。
  • 診療報酬においてはこれまで、タスク・シェアリング/タスク・シフティングやチーム医療の推進等、医療機関における勤務環境改善に資する取組を評価してきた。時間外労働の上限規制の適用が開始される2024 年4月を見据え、今後、総合的な医療提供体制改革の進展の状況、医療の安全や地域医療の確保、患者や保険者の視点等を踏まえながら、適切な評価の在り方について検討する必要がある。

(具体的方向性の例)

  • 医師等の長時間労働などの厳しい勤務環境を改善する取組の評価
    • 医療機関内における労務管理や労働環境の改善のためのマネジメントシステムの実践に資する取組を推進。
    • タスク・シェアリング/タスク・シフティング、チーム医療を推進。
    • 届出・報告の簡素化、人員配置の合理化を推進。
  • 地域医療の確保を図る観点から早急に対応が必要な救急医療体制等の評価
  • 業務の効率化に資するICT の利活用の推進
    • ICT を活用した医療連携の取組を推進。

(2)患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現

(基本的視点)

  • 患者の安心・安全を確保しつつ、医療技術の進展や疾病構造の変化等を踏まえ、第三者による評価やアウトカム評価など客観的な評価を進めながら、新たなニーズ等に対応できる医療の実現に資する取組の評価を進める。
  • また、患者自身が納得して医療を受けられるよう、患者にとって身近で分かりやすい医療を実現していくことが重要である。

(具体的方向性の例)

  • かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師・薬局の機能の評価
    • 複数の慢性疾患を有する患者に対し、療養上の指導、服薬管理、健康管理等の対応を継続的に実施するなど、個別の疾患だけでなく、患者の療養環境や希望に応じた診療が行われるよう、かかりつけ医機能を評価。また、患者にとって、かかりつけ医機能を有する医療機関等が分かる仕組み等を検討。
    • 歯科医療機関を受診する患者像が多様化する中、地域の関係者との連携体制を確保しつつ、口腔疾患の重症化予防や口腔機能の維持・向上のため、継続的な口腔管理・指導が行われるよう、かかりつけ歯科医の機能を評価。
    • 患者に対する薬物療法の有効性・安全性を確保するため、服薬情報の一元的・継続的な把握とそれに基づく薬学的管理・指導が行われるよう、かかりつけ薬剤師・薬局の評価を推進。その際、薬剤調製などの対物業務から、薬学的管理などの対人業務への構造的な転換を推進するための所要の重点化と適正化を行う。
  • 患者にとって必要な情報提供、相談支援等の評価
    • 患者が安心して医療を受けられ、それぞれの実情に応じて住み慣れた地域で継続して生活できるよう、適切な情報提供や相談への幅広い対応に資する取組、生活習慣病の増加等に対応する効果的・効率的な重症化予防の取組、治療と仕事の両立に資する取組等を推進。
    • 受けた医療を分かりやすくする明細書無料発行の取組等を推進。
  • アウトカムにも着目した評価の推進
    • 質の高いリハビリテーションの評価など、アウトカムにも着目した評価を推進。
  • 重点的な対応が求められる分野について、国民の安心・安全を確保する観点からの適切な評価
    • 質の高いがん医療の評価
    • 認知症の者に対する適切な医療の評価
    • 地域移行・地域生活支援の充実を含む質の高い精神医療の評価
    • 難病患者に対する適切な医療の評価
    • 小児医療、周産期医療、救急医療の充実
    • 医薬品、医療機器、検査等におけるイノベーションを含む先進的な医療技術の適切な評価
  • 口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応の充実、生活の質に配慮した歯科医療の推進
    • 歯科医療機関を受診する患者像が多様化する中、地域の関係者との連携体制を確保しつつ、口腔疾患の重症化予防や口腔機能の維持・向上のため、継続的な口腔管理・指導が行われるよう、かかりつけ歯科医の機能を評価。(再掲)
    • 歯科診療所と病院歯科の機能分化・連携を強化。
  • 薬局の地域におけるかかりつけ機能に応じた適切な評価、対物業務から対人業務への構造的な転換を推進するための所要の評価の重点化と適正化、院内薬剤師業務の評価
    • 患者に対する薬物療法の有効性・安全性を確保するため、服薬情報の一元的・継続的な把握とそれに基づく薬学的管理・指導が行われるよう、かかりつけ薬剤師・薬局の評価を推進。その際、薬剤調製などの対物業務から、薬学的管理などの対人業務への構造的な転換を推進するための所要の重点化と適正化を行う。(再掲)
    • 院内薬剤師業務を適切に評価。
  • 医療におけるICT の利活用
    • 離島・へき地等の医療資源が少ない地域におけるニーズや、医療の質にかかるエビデンス等を踏まえ、医療におけるICT の利活用を適切に評価。
    • ICT を活用した医療連携の取組を推進。(再掲)

(3)医療機能の分化・強化、連携と地域包括ケアシステムの推進

(基本的視点)

  • 急性期、回復期、慢性期など患者の状態等に応じて質の高い医療が適切に受けられるよう、切れ目ない医療の提供体制が確保されることが重要である。
  • このためには、医療機能の分化・強化、連携を進めるとともに、在宅復帰等につながるよう、質の高い在宅医療・訪問看護の確保や、他の医療機関等との連携、介護サービスとの連携・協働等が必要である。

(具体的方向性の例)

  • 医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価
    • 患者の状態に応じて適切に医療資源が投入され、地域で必要な入院医療が効果的・効率的に提供されるよう、医療機能や患者の状態に応じた評価を行い、医療機能の分化・強化、連携を推進。
  • 外来医療の機能分化
    • 大病院受診時定額負担制度の見直しを含め、大病院と中小病院・診療所の機能分化を推進。
  • 質の高い在宅医療・訪問看護の確保
    • 患者の状態や、医療の内容、住まいの状況等を考慮し、効果的・効率的で質の高い訪問診療、訪問看護、歯科訪問診療、訪問薬剤管理等の提供体制を確保。
  • 地域包括ケアシステムの推進のための取組
    • 医療機関間や医療機関と薬局等との連携、医科歯科連携、医療介護連携、栄養指導など、地域包括ケアシステムの推進のための医師、歯科医師、薬剤師、看護師、管理栄養士等による多職種連携・協働の取組等を推進。
    • 患者が安心・納得して退院し、早期に住み慣れた地域で療養や生活を継続できるための取組を推進。

(4)効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上

(基本的視点)

  • 高齢化や技術進歩、高額な医薬品の開発等により医療費が増大していくことが見込まれる中、国民皆保険を維持するため、制度の安定性・持続可能性を高める不断の取組が必要である。医療関係者が共同して、医療サービスの維持・向上とともに、効率化・適正化を図ることが求められる。

(具体的方向性の例)

  • 後発医薬品やバイオ後続品の使用促進
    • 後発品の使用促進について、「2020 年9月までに後発品医薬品の使用割合を80%とし、できる限り早期に達成する」という目標を実現するための取組を推進。また、バイオ後続品の使用促進の方策等について検討。
  • 費用対効果評価制度の活用
    • 革新性が高く市場規模が大きい、又は著しく単価が高い医薬品・医療機器について、費用対効果評価制度を活用し、適正な価格設定を行う。
  • 市場実勢価格を踏まえた適正な評価等
    • 医薬品、医療機器、検査等について、市場実勢価格を踏まえた適正な評価を行うとともに、効率的かつ有効・安全な利用体制を確保。
    • エビデンスや相対的な臨床的有用性を踏まえた医療技術等の適正な評価を行う。
  • 医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価
    • 患者の状態に応じて適切に医療資源が投入され、地域で必要な入院医療が効果的・効率的に提供されるよう、医療機能や患者の状態に応じた評価を行い、医療機能の分化・強化、連携を推進。(再掲)
  • 外来医療の機能分化、重症化予防の取組の推進
    • 大病院受診時定額負担制度の見直しを含め、大病院と中小病院・診療所の機能分化を推進。(再掲)
    • 重症化予防の取組を推進。(再掲)
  • 医師・院内薬剤師と薬局薬剤師の協働の取組による医薬品の適正使用の推進
    • 重複投薬、ポリファーマシー、残薬、薬剤耐性(AMR)や、適正使用のための長期処方の在り方への対応等、医薬品の効率的かつ安全で有効な使用を推進。
    • 医学的妥当性や経済性の視点も踏まえた処方を推進。

3.将来を見据えた課題

  • 団塊の世代が全て後期高齢者となる2025 年、団塊ジュニア世代が65 歳以上の高齢者となる2040 年と、高齢化の進展に併せて、サービスの担い手(生産年齢人口)が減少する超高齢化・人口減少社会が到来している。また、地域に生きる一人一人が尊重され、その可能性が最大限に発揮できる「地域共生社会」の実現に資する取組が求められている。このような中、我が国の医療制度が直面する様々な課題に対応し、「全世代型社会保障」を実現するためには、診療報酬のみならず、医療法、医療保険各法等の制度的枠組みや、補助金等の予算措置など、総合的な政策の構築が不可欠である。
  • 国民一人一人の生活が多様化する中、患者・国民にとって身近で安心・安全な医療を実現していくためには、診療報酬制度を分かりやすくするための取組を継続していくことが求められる。あわせて医療に係る財源は、保険料、公費及び患者負担等によってまかなわれていることに鑑み、医療機関等の経営に携わる者は、社会に対する説明責任を果たしていくことが求められる。
  • 加えて、住民、医療提供者、保険者、民間企業、行政等の関係者がそれぞれの役割を自覚しながら保健・医療に関わることが重要であり、国民全体の医療制度に対する理解を深めていくための普及啓発も含め、国民に対して丁寧に説明していくことが求められている。
  • 予防・健康づくりやセルフケア等の推進が図られるよう、住民、医療提供者、保険者、民間企業、行政等の全ての関係者が協力・連携して国民一人一人を支援するとともに、国はこうした取組に向けた環境整備を行うことが必要であ
    る。

参照

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