Table of Contents
経済産業省におけるヘルスケア分野でのPFS/SIB 導入促進に向けた取組
- 日本において本格的なSIBの導入・普及はこれから。
- 経済産業省においては、意欲ある自治体に対しヘルスケア分野でのSIB導入案件組成を支援。平成28年度から継続的に多様なモデル事業を創出している。
平成29年度から事業着手した事業の進捗(神戸市・八王子市)
- 平成28年度に案件形成を支援した神戸市及び八王子市において、平成29年度から糖尿病性腎症重症化予防と大腸がん検診受診勧奨事業を実施。
- 両事業ともに中間成果評価を行い、目標を上回る成果が確認され、初回の成果連動型支払いを実行。
兵庫県神戸市 | 東京都八王子市 | |
実施期間 | 2017年7月~2020年3月 | 2017年5月~2019年8月 |
事業内容 | 食事療法等の保健指導を行い、 対象者の生活習慣の改善を通じて 、 ステージの進行 人工透析への移行を予防する 。 | 対象者の過去の検診・検査情報と人工知能を活用し、オーダーメイドの受診勧奨を行い、大腸がん早期発見者数を増やす 。 |
サービス対象者 | 神戸市国保加入者のうち、糖尿病性腎症者 | 八王子市国保加入者のうち、前年度大腸がん検診未受診者 |
サービス提供者 | 保健指導事業者 (㈱ DPP ヘルスパートナーズ) |
受診勧奨事業者(㈱キャンサースキャン) |
資金提供者 | ㈱三井住友銀行、(一財)社会的投資推進財団、個人投資家 | ㈱デジサーチアンドアドバタイジング、(一財)社会的投資推進財団(㈱みずほ銀行の資金拠出含む) |
案件組成支援 | 公益財団法人日本財団 | ケイスリー株式会社 |
中間成果指標 | ①保健指導 プログラム修了率
②生活習慣改善率(食事、運動、セルフモニタリング、服薬) |
①大腸がん検診受診率 |
参考:SIB導入による成果(途中経過)
- 平成 30 年 10 月、平成 29 年度に事業を開始した神戸市糖尿病性腎症重症化予防事業、八王子市大腸がん検診受診率精密検査受診率向上事業それぞれの中間成果が測定された。
- 両事業とも目標を上回る成果を達成。
神戸市糖尿病性腎症重症化予防事業 | 八王子市大腸がん検診受診率精密検査受診率向上事業 | |
成果達成状況 | 成果指標①プログラム修了率
成果指標②生活習慣改善率
|
成果指標①大腸がん検診受診率
|
資金提供者への支払 | 中間成果指標を達成したことで、神戸市がサービス提供者に初回の成果連動型支払いを実施。 | 中間成果指標を達成したことで、八王子市がサービス提供者 に初回の 成果連動型支払いを実施。 |
出所:社会的投資推進財団プレスリリース、キャンサースキャン・ケイスリー・社会的投資推進財団・デジサーチアドバタイジング・みずほ銀行連名プレスリリース
広域連携モデルによる案件形成事例
- 平成29年度は、経済産業省において、広島県内で県と複数市が連携したモデルの案件形成を支援し、平成30年度から事業開始(事業者と自治体で契約締結済)。
- また、事業者・自治体主導で、県域を越えた市町連携での広域連携モデルの案件形成が進められている。
広島県+県内6市
(竹原市、尾道市、福山市、府中市、三次市、庄原市) |
兵庫県川西市・新潟県見附市・千葉県白子町 | |
実施期間 | 3年間(評価期間2年含む) | 5年間(評価期間2年含む) |
事業内容 | 対象者の過去の検診・ 検査情報を人工知能を活用して分析 。 オーダーメイドの受診勧奨を行い 、 大腸がん早期発見者数の増加を図る 。 | 健康無関心層を行動変容させるヘルスケア事業(健幸ポイントプログラム 、 生活習慣病予防プログラム等)を行い 、 健康づくりを促進する 。 |
サービス対象者 | 各市町国保加入者 | 各市町の成人(約1割の参加を目標) |
サービス提供者 | 株式会社キャンサースキャン | 株式会社タニタヘルスリンク、株式会社つくばウェルネスリサーチ |
資金提供者 | 広島銀行、 みずほ銀行 、 社会的投資推進財団 、 個人投資家 ミュージックセキュリティーズ㈱仲介によるクラウドファンディング | 常陽銀行、機関投資家、市民・地元企業等 |
案件組成支援 | ケイスリー株式会社 | 株式会社つくばウエルネスリサーチ 筑波大学 |
経済産業省ヘルスケア産業課の今後の取組
1. ヘルスケア分野における案件形成支援を通じたモデル事業の創出
- 特にこれまでPFS/SIBによる課題解決の実績がなく、且つ高い社会的インパクトが見込まれるテーマ(社会課題)を対象に、案件形成の支援を実施する。
- 直近では主に「一次予防」および「介護の生産性向上」に関わる案件形成支援を行う。
想定されるテーマ① 一次予防
- フレイルや認知症、生活習慣病等に対する一次予防のニーズは大きいが、エビデンスが十分ではないため、社会課題となっている。
- 健康インフラや共生社会等のテーマと組み合わせる等、新規性の高い PFS/SIB 案件形成を目指す。
想定されるテーマ② 介護の生産性向上
- 介護現場における生産性の向上(供給増)は、介護予防(需要減)と同様に喫緊の課題であり、民間活用が求められる。
- 介護人材確保や介護サービス向上等をテーマとした新規性の高いPFS/SIB案件形成 を目指す。
2. PFS/SIB推進に関わるヘルスケア分野のエビデンス整備
- 国の支援を受けた事業等の先進事例をもとに参考となる情報(テーマ毎の具体的な成果指標や支払い条件、分野の特性を踏まえた評価方法等)を整理し、地方公共団体や民間事業者等に提供する。例えば、 PFS/SIB 導入のノウハウ集の更新等を実施する。
3.PFS/SIB の 普及 啓発
- 地方公共 団体や民間事業者等に対し、セミナーや個別テーマに特化したワークショップ、各地域における講演、等を実施する。
参考
予防の重要性 /P4 Medicine
- 生活習慣病や老化に伴う疾患に対応するため、全世代において、1次予防(健康づくり)、2次予防(重症化予防)、3予防(再発予防等)が重要。
- また、医療の質を上げるには、 P 4 Medicine Prediction (予見 ), Prevention (予防)、 Personalization (個別化)、 Participation (参加)が重要。
予防の投資効果(医療費・介護費、労働力、消費)について(試算結果概要)
- 国民の健康状態が動態的に変化する(例:X歳のがん発生率:a%(2000年 )→b%(2020年)ことを前提とした新たな分析(内閣府 ImPACTプロジェクト東京 大学橋本英樹教授)を活用。各疾患分野における予防対策を行った場合の60歳以上の医療費・介護費を試算(下記) 。
- これに加えて、高齢者の健康度が向上すれば、間接的なインパクトとして、労働力と消費の拡大が見込まれる。(最大840万人、1.8 兆円/年(2025年)拡大)(粗試算)※1 。
予防を行った場合の2034年の60歳以上の医療費・介護費※2へ の影響
試算結果 | |
生活習慣病(一次予防) | 130億円 ↓(医療費) |
生活習慣病(二次・三次予防) | 620億円 ↓(医療費) |
がん(一次予防) | 360億円 ↑(医療費)※3 |
フレイル・認知症(一次予防) | 320億円 ↓(医療費) + 3.2 兆円 ↓(介護費) |
※1 労働力 ・消費の出典:「経済産業省平成 27 年政策評価事業(日本経済の中長期な変革とリスクに関する調査)」65-74歳の高齢者が現役世代並みに働け、75歳以上の高齢者が65-74歳並みに働けると仮定した場合
※2 介護費については、フレイル・認知症の一次予防を行った場合について、試算を実施
※3 がん一次 予防は 2034 年でがん患者を約 4 万人程度 減少させるが、その他疾患 に関連した医療費が増加するため、全体として は増加
(参考)現状維持した際の60歳以上の医療費・介護費の推計結果
- 医療費:2013年:約19.5兆 円 → 2022年:約20.8兆円 → 2034年:約21.5兆円 → 2046年:約20.0兆円
- 介護費:2013年:約9.6兆円 → 2022年:約12.5兆円 → 2034年:約14.5兆円 → 2046年:約13.8兆 円
- 医療費・介護費の将来推計は、インフレや技術高度化による増加要因(医療費では過去年 1~3 %程度で推移)は含まない前提。仮に年率2%で増加した場合、20年後には約1.5倍に増加。
参照
経済産業省トップ > 政策について > 政策一覧 > ものづくり/情報/流通・サービス > ヘルスケア産業 > ヘルスケア分野における成果連動型民間委託契約方式(PFS/SIB)