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コロナ克服・新時代開拓のための経済対策(令和3年11月19日閣議決定)第1&2章

第1章 はじめに

我が国経済の状況をみると、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあり、感染の拡大が想定より長く続いたことから、各機関による今年度の経済成長率の見通しは下方修正が相次いでいる。

他方、新型コロナウイルス感染症については、8月下旬以降減少傾向に転じた新規感染者数は、足元では昨夏以降で最も低い水準となっており、本年9月末をもって、全国の緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置は全て解除され、行動制限も段階的に緩和している。

この状況を楽観することなく、感染拡大の可能性に備えて、危機管理に万全を期すとともに、この機を捉え、ウィズコロナの下で、一日も早く通常に近い社会経済活動の再開を図る。世界経済が回復に向かうとみられる中、本経済対策を契機として、我が国も先進国の中で遜色のない成長を実現し、本格的なジャンプスタートを切っていく。

コロナ下では、これまで進んでこなかったデジタル化が急速に進むなど、社会の変化の兆しが表れている。また、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、積極的な温暖化対策を通じて、産業構造や社会構造の変革をもたらし、大きな成長につなげていくことは喫緊の課題である。こうしたデジタル、クリーンエネルギーに加え、人工知能、量子、バイオ、宇宙等の先端技術やイノベーションに関わる投資、さらには、「人」への思い切った投資を行うことにより、生産性を引き上げていくことが「成長と分配の好循環」を実現する上で必要不可欠である。

こうした成長に向けた機運を途切れさせないためにも、我が国を取り巻くリスクに十分に備える必要がある。新型コロナウイルス感染症への対応については、現時点では、感染者数が再拡大に向かうリスクを排除することはできず、今後の新たな変異株の発生などあらゆる事態に対応できる体制整備が必要であり、最悪の事態を想定した「次の感染拡大に向けた安心確保のための取組の全体像」(以下「全体像」という。)を確実に実行するなど、今後の対策に万全を期していくことが必要である。

また、経済状況についてみると、世界的な供給制約や資源価格上昇による所得の流出などが顕在化してきている中で、それらの影響による景気下振れリスクに十分注意する必要がある。さらには、昨年度は新型コロナウイルス感染症に対する機動的な対応として、累次の経済対策及び補正予算により財政面から経済を下支えしてきたが、追加的な対応なくしては、来年度にかけて公的支出が相当程度減少することが見込まれる。現下の状況に鑑みれば、足元の経済の下支えを図るとともに、感染が再拡大した場合にも国民の暮らし、雇用や事業を守り抜き、経済の底割れを断固として防いでいく必要がある。

こうしたリスクを防ぎ、直面する危機を国民の皆様と共に乗り越え、「成長と分配の好循環」を実現する。このため、まずは、経済社会全体の豊かさを高め、そして、その果実をしっかり分配する。「新しい資本主義」を起動し、「成長か、分配か」ではなく、「成長も、分配も」実現し、経済を自律的な成長軌道に乗せることで、経済対策の暖かい風を、全国津々浦々まで行き渡らせていく。

第2章 本経済対策のねらい

国民の声に寄り添い、その多様な声を真摯に受け止め、かたちにする。岸田内閣の基本である国民との丁寧な対話を踏まえ、本経済対策は目の前の新型コロナウイルス感染症の困難を乗り越え、ポストコロナの未来を切り拓くことで、国民の皆様に安心と希望をお届けするものとする。

このため、前章で示した認識の下、政府としては、新型コロナウイルス感染症対応に万全を期すとともに、「新しい資本主義」を起動させ、「成長と分配の好循環」を実現するため、以下の4つを柱とする総合的な経済対策を策定するとともに、その裏付けとなる令和3年度補正予算を編成する。

本経済対策の柱の第一は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止である。感染が再拡大するのではないか、十分な医療は提供されるのか。こうした国民の皆様の不安に応えるため、「全体像」に基づき、ワクチン、検査、治療薬等の普及による予防、発見から早期治療までの流れをさらに強化する。このため、今後、感染力が2倍になった場合にも対応可能な医療提供体制の確保、ワクチン接種の促進、治療薬の確保を進める。あわせて、来年春までの見通しが持てるよう、人流抑制等の影響を受ける方々の事業や生活・暮らし、とりわけ、非正規、子育て世帯などお困りの方々の状況に寄り添い、その支援に万全を期すとともに、供給制約や資源価格高騰等の景気下振れリスクにも適切に対応する。その際、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の枠組みを活用し、地方の実情に合わせた取組を支援する。

第二は、ウィズコロナ下での社会経済活動の再開と危機管理の徹底である。社会経済活動の再開を待つ皆様の声を踏まえ、ワクチン・検査パッケージ等を活用し、感染拡大リスクを適切に管理しながら、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた分野における需要喚起の取組等を行い、一日も早く通常に近い社会経済活動の回復を図る。あわせて、ワクチン・治療薬の研究開発や生産体制の強化、新型コロナウイルス感染症の収束と社会経済活動の再開に向けた国際協力を通じて、感染症有事対応の抜本的強化を図る。

第三は、未来社会を切り拓く「新しい資本主義」の起動である。経済を成長させ、その果実を原資として分配に取り組むことで、国民の皆様の所得を幅広く引き上げ、更なる成長につなげていく。こうした「成長と分配の好循環」の実現に向けて、「科学技術立国の実現」、「デジタル田園都市国家構想」、「経済安全保障」の3つの柱における大胆な投資により、ポストコロナ社会を見据えた成長戦略を推進するとともに、「民間部門における分配強化に向けた強力な支援」と「公的部門における分配機能の強化」による分配戦略を実行へと移す。

具体的には、成長戦略として、「科学技術立国の実現」により、イノベーション力を抜本的に強化することで、コロナ後の新しい社会における成長を牽けん引するとともに、クリーンエネルギーの推進により、経済と環境の好循環を実現する。また、地方を活性化し、世界とつながる「デジタル田園都市国家構想」の推進により、デジタル技術を活用し、地方から変革の波を起こすとともに、地域経済の基盤となる農林水産業、観光業等の活性化や中小企業の事業再構築・生産性向上を図り、地方と都市の差を縮めていく。さらに、「経済安全保障」の抜本的強化により、安全保障と経済を横断する領域で様々な課題が顕在化する中で、我が国の自律性、優位性、ひいては不可欠性を獲得し、自律的な経済構造を実現する。あわせて、分配戦略として、安心と成長を呼ぶ「人」への投資を強化する。賃上げへの支援、人的資本への投資や働き方改革、非正規雇用労働者等への分配強化、公的価格の在り方の見直しや子供・子育て支援等により、誰一人取り残されることなく、国民全員が参加・活躍できる社会、頑張った人が報われる、正しい活躍が正しく評価される社会を創り、働く人やこれまで成長の恩恵を受けられていない方々への分配機能を強化する。

第四は、国民の安全・安心の確保である。気候変動の影響により激甚化・頻発化する風水害や切迫する大規模地震・津波等の被害から国民の生命と財産を守るため、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」に基づく取組を推進するとともに、東日本大震災等からの復興、本年7月及び8月に発生した大雨等の自然災害からの復旧・復興に引き続き全力で取り組む。また、我が国を取り巻く安全保障環境が激変する中、国民の命や平和な暮らし、領土、領海、領空を断固として守り抜く。

これらの4つの柱に基づく本経済対策の裏付けとなる令和3年度補正予算については、いわゆる「16か月予算」の考え方により、令和4年度当初予算と一体的に編成し、切れ目なく万全の財政政策を実行する。その際、足元のコロナ禍で傷ついた我が国経済を立て直し、自律的な経済成長を実現するために十分な効果を発揮できる規模を確保し、その可能な限り迅速な執行を図るとともに、感染再拡大時にも、必要な対策を躊躇なく機動的に講じることが可能になるよう十分な備えを整える。さらに、現下の低金利状況を活かし、財政投融資の手法を積極的に活用するとともに、規制・制度改革、税制改正といったあらゆる政策手段を活用した総合的な対策とする。あわせて、財政の単年度主義の弊害是正にも配意する。

本経済対策に盛り込まれた施策を含め、新型コロナウイルス感染症に関する政府の取組や状況について、国民に分かりやすくかつ正確な形で伝わるよう、効果的な情報発信・広報を実施するとともに、本経済対策で多年度にわたって取り組む施策については、KPIを設定し、PDCAの取組を特に推進する。

日本銀行においては、企業等の資金繰り支援に万全を期すとともに、金融市場の安定を維持する観点から、金融緩和を強化する措置がとられている。引き続き、政府は、日本銀行と強い緊張感を共有し、財政政策と金融政策の適切なポリシーミックスの下で緊密に連携する。日本銀行には、新型コロナウイルス感染症の経済への影響や金融資本市場の変動の影響を十分に注視しつつ、適切な金融政策運営を行うことを期待する。

参照

コロナ克服・新時代開拓のための経済対策(令和3年11月19日閣議決定)

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