ビジネス全般

障害者政策総合研究事業(令和4年度厚生労働科学研究)

1.研究事業の目的・目標

【背景】

わが国の障害者数は人口の約 7.6%に相当するとされており、障害者数全体は増加傾向にある。また、在宅・通所の障害者が増加し、障害者の高齢化も進んでいる。

その現状を鑑み、平成 25 年に施行された障害者総合支援法の理念を踏まえ、障害者がその障害種別を問わず、地域社会で共生できることを目的として実施されている多様な障害福祉施策について、エビデンスを踏まえた立案や実施ができるよう研究事業を実施する。具体的には、障害者に対する適切な施策立案のための基礎データの整備、地域においてきめ細やかな居宅・施設サービス等を提供できる体制づくり、障害の正しい理解と社会参加の促進方策、関係職種への教育内容の確立による障害サービスの質の向上等に関する研究を実施する。

【事業目標】

身体・知的障害分野においては、3年に一度実施される報酬改定における算定基準等の検討に資する基礎資料の作成、補装具の構造・機能要件の策定、支援機器開発等に当たっての指針の作成、福祉分野における強度行動障害支援の人材養成のためのプログラムの開発等に活用できる成果を得ることを目指す。

精神障害分野においては、精神障害者が、地域の一員として安心して自分らしい暮らしをすることができるよう、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築が必要である。また、統合失調症、うつ病・躁うつ病、児童・思春期精神疾患、依存症などの多様な精神疾患等に対応できる医療連携体制の構築に向けて、多様な精神疾患等ごとに医療機関の役割分担・連携を推進するとともに、患者本位の医療を実現していけるよう、各医療機関の医療機能を明確化する必要がある。これらの検討のための研究を実施することで、特定の地域資源等によらない汎用性のある支援手法を確立することを目指す。

【研究のスコープ】

身体、知的、感覚器障害等分野

身体障害者認定基準や療育手帳の判定基準等の障害認定に関わる研究や聴覚障害児の療育手法、手話によるコミュニケーションについての研究を行う。

障害者自立支援分野

身体障害者補助犬、補装具の構造・機能要件の策定等、障害者の自立と社会参加を促進する方策についての研究を行う。

障害福祉分野

障害児者の支援方法及び評価方法についての研究を行う。また、障害福祉サービス等報酬改定における算定基準等の検討に資する基礎資料を得るための研究を行う。

精神障害分野

精神障害にも対応した地域包括ケアシステムにおける重層的な連携による支援体制の構築を推進するための研究、地域包括ケアシステムの構築と地域精神保健医療福祉体制の機能強化のための政策研究、多様な精神疾患等に対応できる医療連携体制の構築を推進するための研究、及び医療計画等に関するデータの利活用と体制構築の推進のための研究を行う。

【期待されるアウトプット】

診療報酬改定及び障害報酬改定並びに医療計画及び障害福祉計画の見直しのための基礎資料や補装具の構造・機能要件の策定等や療育手帳の統一基準、難聴児・者への施策の更なる推進を行うための基礎資料として活用する。

身体・知的障害分野での具体例として、

  • 一般就労中の就労継続支援等利用希望者に対する標準的なサービス利用や効果的なアセスメント・支援方法等のガイドライン作成
  • 地域で暮らす障害者の効果的な支援方法を評価する指標の開発
  • 療育手帳の統一的な判定方法と有効な障害者福祉支援ニーズ把握手法の開発
  • 難聴対策としての言語聴覚士による遠隔医療に資するエビデンスの創出

精神障害分野での具体例としては、

  • 入院中から退院後の外来において行われる治療プログラム(認知行動療法、SST、個別作業療法等、多職種による支援)の効果を検証し、診療報酬における当該プログラムの評価や人員の配置基準の見直しに活用する。
  • 入院中から退院後の外来にて行われる治療プログラムと並行して行われる障害福祉サービスの支援内容、医療との連携状況を調査し、障害福祉サービス等報酬の評価を検討する際に活用する。
  • 包括的ケアマネジメントシステムによる支援(精神科退院時共同指導料等の算定要件)、医療費への効果を検証することにより、診療報酬での評価や要件の検討に活用する。

などが挙げられる。

【期待されるアウトカム】

障害者に対する適切なサービス等の提供、自立・共生へ向けた施策について推進することが可能になる。具体例として、補装具では、次回の補装具費支給制度の告示改正において、補装具の構造・機能要件の見直しの検討に参考となる情報が集積される。また、障害者総合支援法の見直しを踏まえた令和6 年度障害福祉サービス報酬改定の検討あたり、

  • 一般就労中の者に対する就労継続支援等のアセスメントや支援手法に関する情報
  • 地域で暮らす障害者を効果的に支援するための人員体制や対象者設定、効果等の情報

が期待される。

また、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築と多様な精神疾患等に対応できる医療連携体制の構築が推進されることで、地域で暮らす精神障害をもつ人が様々な保健医療福祉サービスをニーズに応じて適切に利用することが可能となり、地域への定着が促進される。

具体例として、

  • 地方公共団体による精神障害者の退院後支援に関するガイドラインによる退院支援の実施及び課題の検証、ガイドラインの改正等を通じた自治体における退院支援の促進
  • 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築の自治体向けガイドラインの実施状況、課題の抽出、ガイドラインの更なる普及や必要な改正などを通じた自治体のシステム構築の取組の促進

などが期待される。

2.これまでの研究成果の概要

  • 障害者ピアサポートの専門性を高めるための講師を担える人材の養成及び普及のための研究(令和2年度)
    令和3年度障害福祉サービス等報酬改定にて創設したピアサポート体制加算の要件となる障害者ピアサポート研修事業の講師養成カリキュラムが開発された。
  • 地域精神保健医療福祉体制の機能強化を推進する政策研究(令和元年度~令和3年度)
    地域精神保健医療福祉制度の充実を図るにあたり、精神障害者が地域で安心して自分らしく生活できるようにするため、精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築の好事例について自治体や医療機関へのヒアリングを実施し、好事例分析に基づき、包括ケア構築のための手引きの改訂作業を行った。
  • 身体障害者補助犬の質の確保と受け入れを促進するための研究(令和元年度~令和2年度)
    補助犬の質を確保し社会での受け入れを一層進めるため、補助犬使用者及び訓練事業者のための補助犬衛生管理の手引き、ならびに補助犬ユーザー受け入れガイドブックを作成した。

3.令和4年度に継続課題として優先的に推進するもの

技術革新を視野に入れた補装具の構造・機能要件策定のための研究

補装具費支給基準見直しのため、特に、義肢、装具、座位保持装置について、先行研究や海外の事例を参考により現実的な「機能区分」や対応する障害の状態像の分類を試行し、分類の有効性を検証する必要がある。また、高額高機能部品や新しい製作技術による義肢装具の製作価格を調査し体系化を図る。

身体障害者補助犬使用希望者の訓練の効果測定のための研究

身体障害者補助犬法等の運用見直しに向け、補助犬使用者の実態調査による適性や効果、現状の課題やニーズを整理し、使用者のニーズや適性を評価するための基準をとりまとめる必要があるが、この実態調査にあたっては盲導犬、聴導犬、介助犬の三種について、統計解析に必要な数の回答者を得るため、関係団体の呼びかけ、紙媒体とオンラインの両方で可能な調査設計、調査協力の広報等、幅広く実施する必要がある。あわせて、ガイドブックや基準について知見の普及方法を検討し、訓練事業者・指定法人、都道府県を対象とした普及説明会を実施する必要がある。

リハビリテーション関連職等が支援機器の適切な選定・導入運用時に用いるガイドラインの開発

国内外で統一された ICF および ISO9999 を用いたガイドラインが提示されることで、リハビリテーション関連職等の人材育成に資する提言の一助となる。また、国外との共通言語である ICF 及び ISO9999 を用いており、国際競争力の視点からも有意義である。

この実現のため、令和4年度にガイドライン案をもとに関係者によるワークショップの開催を計画している。このワークショップはガイドラインを現場でより有効に使用できるものとして完成させるためにガイドライン利用者として想定している現場の課題を抽出することを目的に実施するものである。

4.令和4年度に新規研究課題として優先的に推進するもの

  • 療育手帳の統一的な判定方法と有効な障害者福祉支援ニーズ把握手法の開発
    • 療育手帳の判定基準の不統一による問題が指摘されており、療育手帳判定の方法と基準の統一を図ることが重要である。更に療育手帳判定の基準となるアセスメントツールの実施に時間がかかりすぎることやツールの価格が高額という問題もある。また、療育手帳の取得者数は増え続けており、そのため検査業務等を外部機関に委託するなど、児童相談所等における療育手帳判定に係る業務の負担軽減が必要とされる。このため、先行研究で作成される療育手帳の統一判定基準とともに、児童相談所や知的障害者更生相談所において、療育手帳判定に開発されたツールを無償で公的な判定業務に利用することを推進する。
  • 福祉分野における強度行動障害支援の中核的人材養成のための専門研修プログラムの開発および強度行動障害の地域支援体制の構築のための研究
    • 福祉分野において支援が難しい強度行動障害者への対応について、高度な専門性が求められることから、強度行動障害支援における指導的立場を担う中核的人材の養成が必要である。開発された専門研修プログラムを通して、強度行動障害の中核的人材の養成と確保を行い、その人材が地域の事業所等への間接支援に従事することで強度行動障害支援の現場の支援力向上を図る。
  • 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムにおける重層的な連携による支援体制の構築を推進するための研究
    • 精神障害者の障害福祉サービス等の適切な活用に向けた保健・医療・福祉等の効果的な連携体制や、障害福祉サービス等利用者の地域における生活機能や精神症状等の変化について検証し、その課題や効果的な活用に向けた方策を明らかにする。
  • 多様な精神疾患等に対応した医療連携体制の構築及び質の高い精神科医療等を推進するための研究
    • 精神領域毎の診療状況の把握と支援策等の検討や災害時の精神保健体制等に係る実態把握調査、公認心理師における精神障害者やその家族等に対する心理的支援に関する効果検証及び要因分析等を行う。
  • 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築と地域精神保健医療福祉体制の機能強化のための政策研究
    • 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムに関する施策、ガイドライン等の実施状況及び効果の検証を行い、課題を整理する。
  • 精神保健医療福祉領域における医療計画等に関するデータの利活用と体制構築の推進のための研究
    • NDB や精神保健福祉資料のデータベース作成にあたり、特に自治体の行政関係者が利用しやすいデータの提示・集計等の検討と、医療計画や障害福祉計画の次期計画策定に向けた指標の検証・分析及び新たな指標例の検討を行う。
  • 障害者の支援機器開発における開発支援体制ネットワークモデルの構築
    • 過去の調査研究等の成果を参考に、各開発プロセスにおける支援に活用できる人、ツール、場所を含めた社会資源の情報を収集・整理し、その結果を踏まえ、一連の開発プロセスで支援ができるネットワークモデルを構築するために必要な調査及びヒアリング等を実施し、モデルを構築する。
  • 新技術を利用した支援機器の開発および選定・導入時の指針作成のための調査研究
    • 新技術を用いて開発された既存の支援機器の基準・指標及び有効性等の情報を収集・整理し、類似の基準・指標等との比較分析を行う。その結果から、新技術を用いて支援機器を開発する際に配慮すべき事項を整理する。

5.令和4年度の研究課題(継続及び新規)に期待される研究成果の政策等への活用又は実用化に向けた取組

  • 療育手帳の統一的な判定方法と有効な障害者福祉支援ニーズ把握手法の開発
    • 現在、療育手帳判定は自治体によって異なっており、公平性を欠く懸念がある。先行研究で作成される療育手帳の統一判定基準とともに、療育手帳判定に開発されたツールを無償で公的な判定業務に活用することで、判定基準を明確化し、療育手帳判定に係る検査の信頼性と妥当性を向上させ、かつ判定業務を外部機関に委託する等、療育手帳判定に係る業務負担の軽減を促進する。
  • 福祉分野における強度行動障害支援の中核的人材養成のための専門研修プログラムの開発および強度行動障害の地域支援体制の構築のための研究
    • 強度行動障害の中核的人材の養成と確保を行い、その人材が地域の事業所等への間接支援に従事することで強度行動障害支援の現場の支援力向上が図れるように、今後の報酬改定において検討する。
  • 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムにおける重層的な連携による支援体制の構築を推進するための研究
    • 長期在院者等の退院に向けた保健・医療・福祉等による支援内容及び体制等の明確化や障害福祉サービス等利用者の精神症状及び生活機能等の評価と分析並びに良好な予後につながる支援開始時期や内容の分析を行い、診療報酬改定及び障害福祉サービス等報酬改定に向けた基礎資料としての活用並びに第6期障害福祉計画の成果目標達成への自治体の取組を促進する。
  • 多様な精神疾患等に対応した医療連携体制の構築及び質の高い精神科医療等を推進するための研究
    • 精神領域毎の診療状況及び地域間格差の整理や治療方法等のエビデンスを蓄積し、医療計画等の各計画の見直しに向けた基礎資料及び診療報酬改定に向けた基礎資料として活用する。
  • 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築と地域精神保健医療福祉体制の機能強化のための政策研究
    • 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムに関する各種ガイドライン及び事業等の調査、評価並びに課題抽出等を行い、各課題における問題の明確化及び方向性の提示を行うことで、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築を更に推進するための施策の検討や診療報酬・障害福祉サービス等報酬改定の根拠資料として活用する。
  • 精神保健医療福祉領域における医療計画等に関するデータの利活用と体制構築の推進のための研究
    • 医療計画や障害福祉計画の数値等の指標の見直し及び新規指標の見直しに資する基礎資料を提示し、次期医療計画や障害福祉計画及び診療報酬・障害福祉サービス等報酬改定に資する基礎資料として活用する。
  • 障害者の支援機器開発における開発支援体制ネットワークモデルの構築
    • 個別特異性が高く、少量多品種となり事業化が極めて困難な障害者の支援機器を開発する企業等の開発成功率向上と、それにより障害当事者に持続的に支援機器が普及されるべく国・自治体及び開発企業等が各々の社会資源を活用しエコシステムを構築するための資料として活用する。
  • 新技術を利用した支援機器の開発および選定・導入時の指針作成のための調査研究
    • 障害者の支援機器を開発する企業の新技術を用いた開発が円滑に進むよう指針を示すとともに、支援機器の普及に関わる人材に有効性等を示すことで、社会における技術変革とともに変化する障害当事者のニーズに対応した開発及び普及を促進するための資料として活用する。

参照

令和4年度厚生労働科学研究の概要

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