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心理社会的介入とは?英語ではpsychosocial intervention

疫学が発展するにつれて、経済的要因、社会的要因、心理的要因といった人々の実生活に寄り添った要素への注目度が高まっています。

臨床的な要素、すなわち、血液検査や身体測定等で「数値として測れる身体の情報」だけではなく、「数値として測るのが困難な心身の情報」や、その人が「社会の中でどんな生活を日々送っているのか」といった要素への注目度が高まっているということですね。

強めに表現するなら、「いままでは"外側の事象"として無視されていた要素」まで考慮する必要がある、という風潮が高まっているとも言えるかもしれません。

今回は、その「かつて外側の事象とされていた要素」のうち、psychosocial factorsとして注目されている要素と、psychosocial interventionとはいったいどんなものなのかの概観を記してみます。

心理社会的要因 psychosocial factors

心理社会的要因とは、例えば次のようなものが挙げられます。

  • 婚姻状況
  • 就労状況
  • 就労している場合は、職業性ストレス
  • 家族構成
  • 社会的孤立度合
  • 生活環境
  • 自己効力感
  • 周囲の圧力
  • 文化的規範
  • 喫煙行動
  • 飲酒行動

最後の喫煙や飲酒は、それ単体でも健康に影響を及ぼしますが、生活の一部に組み込まれることで心理社会的要因にもなります。

飲酒による影響ではなく、飲酒行動による影響、ということですね。アルコールによる生物学的影響ではなく、飲酒行動による心理社会的影響を見ているということです。

もう一歩踏み込むなら、「飲み会参加」「晩酌や寝酒」「キッチンドリンカー」といった行動や習慣がどんな影響を及ぼしているのかを調べるという具合ですね。

心理社会的介入 psychosocial intervention

心理社会的介入とは、心理社会的要因の有無であったり程度を調整するような介入を指します。

喫煙や飲酒をやめさせるような行動変容から、ソーシャルサポートを高めるもの、患者のストレスや心理的苦痛を和らげるもの、自己効力感(自分は役割を果たせるんだという感覚)を育むもの、集団や地域レベルでの介入を行うものなど、心理社会的介入の種類は多種多様です。

一つずつ見ていきましょう。

行動変容を働きかける介入

その人の行動様式を変えようとする介入がこれです。ライフスタイルに口を挟む、とも言ってもいいでしょう。

今では誰もが体に良いとわかっているので、わざわざコストをかけて介入する必要はないでしょうが、一昔前であれば「適度な運動」「バランスのとれた食事」「十分な睡眠」「禁煙」を実践する群と、そうではない群に分けて比較するといった社会心理学介入研究も、価値があったことでしょう。

ただし、一昔前であっても、社会全体で健康意識が高まりつつある状況下で実践しようとすると、対照群に割り当てられた人も徐々に健康意識が高まっていってしまうことで、介入群と対照群の間の差が付きにくくなってしまう可能性もあります。

行動変容を働きかけるような介入の場合、社会全体でどんな風潮があるのかを把握しておかないと、コストをかけて介入しても効果を検証できない可能性があります。

ソーシャルサポートを高める介入

社会の仕組みの中で、その人を支援する力を高めようとする介入です。周囲からの支援ですね。

ソーシャルワーカーや心理士による訪問支援、家族からの支援、友人からの支援、同じ地域に住む人達からの支援、職場の同僚からの支援など、サポート提供者は多種多様です。

家族、友人、職場等の場合、その人との関係性によってはサポートを受けるには不適切な場合もあるため、どのソーシャルサポートを高めると良いかは人によって異なります。

職業や立場によっては、ソーシャルワーカーや心理士、地域住民からの支援の利用も難しい場合がありますから、「その人」個人に合ったソーシャルサポートを見つける必要があります。

患者のストレスや心理的苦痛を和らげる介入

疾病によらず、診断結果を知ること自体であったり、症状、治療によってストレスや心理的苦痛を受けることは珍しくありません。

そのため、ストレスや心理的苦痛を和らげるような介入も重要になってきます。

ソーシャルサポートの項と重なりますが、ストレスや心理的苦痛を和らげるための方法としては、ソーシャルサポートの活用や認知行動療法が有効です。

ただし、繰り返しになりますが、ソーシャルサポートの向き・不向きは人それぞれであり、かつこれまでの人間関係に大きく左右されます。

そのため、分析時には「ソーシャルサポート」と一括りにせず、その人の社会的特性に応じて層別に見ていくなどの工夫が効いてきます。

自己効力感(自分は役割を果たせるんだという感覚)を育む介入

「自分は役割を果たせるんだ」という感覚を育むのは、健康状態を向上させるためにも有効です。

自己効力感を育む介入とは、「日々の生活の中で、コントロールと役割責任を感じられるようになる」ことを目的としています。

自ら選択する機会を意図的に設けることにより、「自分の行動は自分で決めている」といった感覚を徐々に養っていきます。

理想的には、健康状態に影響を及ぼす因子についても、自ら適切に判断し選択できる状態がありますが、そこまで達することがなくても、日々の生活がいきいきとものになるという効果も期待できます。

集団や地域レベルでの介入

すでに新型コロナウイルスを通じて、各国の集団や地域レベルでの介入が見られています。

緊急事態宣言や自粛要請といった施策は、感染拡大防止を目的とした、集団や地域レベルでの介入に他なりません。

職場におけるヘルスプロモーション対策や、メンタルヘルス対策も集団や地域レベルでの介入の一つです。

健康経営の一環として実施されている、適切な生活習慣の推進やメンタルヘルス面の予防的対応など、利用可能なデータが集まれば貴重な社会心理学研究の情報源となるでしょう。

まとめと課題

社会心理的要因や社会心理的介入については、その重要性や価値の浸透にはまだまだ余地が残されていると言えるでしょう。

大切なのは、社会心理的要因を臨床的要因とうまく連携させつつ分析し、臨床は臨床、社会心理は社会心理と分断されないようにすることです。

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