ビジネス全般

医療分野研究開発推進計画(令和2年3月27日)

目次

1.はじめに

1.1 医療分野研究開発推進計画の位置づけ

今回定める「医療分野研究開発推進計画」(以下、「本計画」という。)は、政府が講ずべき医療分野の研究開発並びにその環境の整備及び成果の普及に関する施策(以下「医療分野研究開発等施策」という。)の集中的かつ計画的な推進を図るため、内閣総理大臣を本部長とする健康・医療戦略推進本部(以下、「推進本部」という。)が、健康・医療戦略推進法第 18 条に基づき、健康・医療戦略(2020 年3月 27日閣議決定)に即して策定する計画である。また、同法第 19 条に基づき、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下「AMED」という。)が、研究機関の能力を活用して行う医療分野の研究開発及びその環境の整備並びに研究機関における医療分野の研究開発及びその環境の整備の助成において中核的な役割を担うよう作成する計画である。

第1期の計画は、2019 年度までを対象期間として、推進本部において 2014 年7月に決定し、2017 年2月に一部変更を行った。

第2期に当たる本計画は、2040 年頃までを視野に入れ、2020 年度から 2024 年度までの5年間を対象とし、2024 年度末までに全体の見直しを行うこととする。なお、対象期間内においても、フォローアップの結果等を踏まえ、必要に応じて見直しを行う。

1.2 現状認識

我が国の疾病構造を見ると、感染症や遺伝性疾患等の単一標的型の疾患のみならず、いわゆる生活習慣病や老化に伴う疾患といった多因子疾患が国民に大きな影響を与えるようになっている。

平均寿命が延びている中で、健康寿命をさらに延ばしていくためには、こうした疾患への対応が課題となる中、診断・治療に加えて予防の重要性が増すと同時に、罹患しても日常生活に出来るだけ制限を受けずに生活していく、すなわち、疾病と共生していくための取組を車の両輪として講じていくことが望まれている。予防については、二次予防(疾病の早期発見、早期治療)、三次予防(疾病が発症した後、必要な治療を受け、機能の維持・回復を図るとともに再発・合併症を予防すること) に留まらず、一次予防(生活習慣を改善して健康を増進し、生活習慣病等を予防すること)も合わせて取り組むべきであることが指摘されている。

また、総人口が減少する中で高齢化率は今後も上昇が見込まれ、2040 年には現役世代 1.5 人で 65 歳以上の者 1 人を支えることになると予想される。こうした状況下においても、国民に十分な医療や介護を提供していくためには、医療介護分野の担い手不足への対応や生産性向上のための取組も求められている。

他方で、世界的に医療分野や生命科学分野で研究開発が加速しているとともに、第 4 次産業革命のただ中にあり、AI、ロボット、ビッグデータなどのデジタル技術とデータの利活用が、産業構造や経済社会システム全体に大きな影響を及ぼしつつある。

今後、こうした分野でのイノベーションが加速し、疾患メカニズムの解明や新たな診断・治療方法の開発、AI やビッグデータ等の利活用による創薬等の研究開発、個人の状態に合わせた個別化医療・精密医療等が進展していくことが見込まれている。

1.3 第1期の計画の成果と課題

2015 年4月に AMED を設立し、従来、厚生労働省、文部科学省及び経済産業省が各省それぞれに運用していた医療分野の研究開発予算を一元化して9つの統合プロジェクトを編成するとともに、プログラムディレクター(PD)等の配置による研究マネジメント体制を整備するなど、基礎から実用化まで一貫した研究開発を推進する体制を構築した。これにより、第1期の KPI の達成状況に見られるように、アカデミアのシーズが実用化に至るなど優れた研究開発成果が多数創出された。

他方で、統合プロジェクトについては、下記のような課題が挙げられる。

・ 統合プロジェクトを構成する各省庁の予算について、継続的かつ統一的なエビデンスに基づいた戦略的かつ効果的な配分を行っているとは言えない。

・ 個々の予算や研究課題について、予防/診断/治療/予後・QOL(生活の質)といった開発目的が必ずしも明確になっていない。

・ データの基盤構築・利活用、ゲノム・遺伝子医療、中・高分子医薬やドラッグ・デリバリー・システム(DDS)等本来、疾患横断的に活用しうるモダリティ(技術・手法)等の開発が、疾患別の統合プロジェクトで特定の疾患に分断されている。

また、疾患別の統合プロジェクトが特定疾患への展開にとどまっている。

第2期の本計画においては、こうした第1期の成果と課題も踏まえ、モダリティ等を軸とした6つの統合プロジェクトに見直すこととした。

2.医療分野研究開発等施策についての基本的な方針

基礎から実用化までの一貫した研究開発

  • 引き続き、AMED による支援を中核とした産学官連携による基礎から実用化まで一貫した研究開発の推進と成果の実用化を図る。

モダリティ等を軸とした統合プロジェクトの推進

  • 関係府省や機関が持つエビデンス(研究者等への調査、論文調査、海外動向等)を分析した上で、重点化する領域等を抽出する。
  • 疾患を限定しないモダリティ等の統合プロジェクトに集約することにより、AI などデジタル技術の活用を図りつつ、新たな医療技術等を様々な疾患に効果的に展開する。
  • 疾患領域に関連した研究開発は、モダリティ等の統合プロジェクトの中で推進するが、プロジェクト間の連携を常時十分に確保し、特定の疾患ごとに柔軟にマネジメントできるようにする。
  • 開発目的(予防/診断/治療/予後・QOL)にも着目した、健康長寿社会の形成に向けた健康寿命延伸という目標のために最適なアプローチを選択する。

最先端の研究開発を支える環境の整備

  • 産業界も含めた研究開発促進のため、臨床研究拠点病院等の研究基盤、イノベーション・エコシステム、データ基盤、人材育成、研究開発成果実用化のための審査体制の整備等の環境整備を推進する。
  • 特に、研究開発に資するデータの連携基盤を構築するとともに、利活用しやすい環境を整備する。
  • また、統合イノベーション戦略推進会議で策定した「AI 戦略 2019」、「バイオ戦略 2019」、「量子技術イノベーション戦略」等の戦略や、「科学技術基本計画」と引き続き整合性を取りつつ、本戦略を推進する。

3.集中的かつ計画的に講ずべき医療分野研究開発等施策

3.1 世界最高水準の医療の提供に資する医療分野の研究開発

(1) 医療分野の研究開発の一体的推進(◎戦略室、総、文、厚、経)

他の資金配分機関、インハウス研究機関、民間企業とも連携しつつ、AMED による支援を中核として、医療分野の基礎から実用化まで一貫した研究開発を一体的に推進する。

具体的には、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)では、科学研究費助成事業により研究者の自由な発想に基づく研究を推進する。

AMED は、資金配分機関として、国が定めた戦略に基づき、科学研究費助成事業等で生まれたシーズも活用しつつ、医療分野の実用化のための研究開発を基礎段階から一貫して推進する。

また、他の資金配分機関として、例えば、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)ではライフサイエンス分野等の基礎的・基盤的な研究開発を推進し、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では工学分野等の産業技術の研究開発を推進しているところである。これらの機関の研究開発は、医療分野の研究開発につながり得るもの、あるいはそれを支えるものであることから、医療分野との融合領域等について、AMED は他の資源配分機関とも適切に連携・分担を図る。

さらに、各インハウス研究機関においても医療分野の研究開発を行っているところであり、AMED の研究開発支援とも適切に連携・分担を図りつつ、全体として戦略的・体系的な研究開発を推進していく。

特に、AMED 及びインハウス研究機関が推進する医療分野の研究開発については、国の方針・戦略を踏まえて推進するものであることから、統合プロジェクト以外の予算も含め関連予算を戦略的・重点的に配分するため、推進本部において、有識者の意見も踏まえつつ、関係府省・機関に対して、一元的な予算要求配分調整を実施する。

また、医療分野の研究開発に関連する他の資金配分機関、インハウス研究機関及び AMED の間で情報共有・連携を十分に確保できる仕組みを構築する。

(2) インハウス研究開発(◎戦略室、文、厚、経)

関係府省が所管するインハウス研究機関が行っている医療分野のインハウス研究開発については、推進本部の事務局、関係府省、インハウス研究機関及びAMED の間で情報共有・連携を恒常的に確保できる仕組みを構築するとともに、推進本部の有識者会議や AMED 等の有識者の意見を伺いつつ、インハウス研究機関との連携の下、研究開発の進捗状況の把握や資源配分の方向性の取りまとめなど、一元的な予算配分要求調整を推進本部において実施する。

この枠組みを用いて、医療分野のインハウス研究開発の今後の方向性について、各機関の特性を踏まえつつ、以下のような点をはじめとして検討し、2020年度中に取りまとめる。

  • 各インハウス研究機関が今後重点的に取り組む医療分野の研究開発のテーマ、研究課題の設定方法
  • 各インハウス研究機関における医療分野の研究開発の評価の在り方
  • AMED とインハウス研究開発機関の連携や役割分担の在り方。例えば、
    • インハウス研究開発の成果の AMED が支援する研究開発での活用
    • AMED が支援する研究開発に資する基盤的な研究開発をインハウス研究機関で推進

(3) 6つの統合プロジェクト

第1期においては、横断型のプロジェクトと疾患別のプロジェクトを合わせて9つの統合プロジェクトを推進してきたところである。それぞれの統合プロジェクトにおいて成果が創出された一方で、

  • 横断型のプロジェクトと疾患別のプロジェクトとの間で、類似の研究課題の重複やプロジェクト間の情報共有が十分でない場合がある
  • 横断的に活用し得るモダリティが、疾患別のプロジェクトの中で特定疾患への展開にとどまる恐れがある
  • 疾患別のプロジェクトの設定が一部の疾患領域にとどまっている

などの課題もあった。

このため、第2期となる本計画では、モダリティ等を軸とした統合プロジェクトに再編し、横断的な技術や新たな技術を、多様な疾患領域に効果的・効率的に展開する。

また、疾患領域に関連した研究開発については、多様な疾患への対応や感染症等への機動的な対応が必要であることから、モダリティ等の統合プロジェクトを横断する形で、特定の疾患ごとに柔軟にマネジメントできるように推進する。

統合プロジェクトとして重点化する領域等については、下記のような方法でエビデンスを分析した。

  • 医療関係の主な学会や産業団体等にアンケート調査を行い、2040 年頃を視野に入れて、我が国の健康寿命の延伸に貢献するとともに、我が国に強みがある(他国と比較して科学的知見が高い、技術的に優れている等)領域を分析。
  • 近年の論文分布調査から、我が国に強みがある領域を分析。
  • JST 研究開発戦略センターの俯瞰報告書から、国内外の研究動向を分析。

こうしたエビデンスを踏まえ、今後取り組むべきモダリティとして、医薬品、医療機器・ヘルスケア、再生・細胞医療・遺伝子治療、ゲノム・データ基盤の4つの領域が挙げられる。さらに、研究を支える基盤的な事業を行っていくことが必要である。

以上を踏まえ、本計画では、統合プロジェクトを以下①~⑥のとおり定め、AMED による支援を中核として研究開発を推進する。

① 医薬品プロジェクト
② 医療機器・ヘルスケアプロジェクト
③ 再生・細胞医療・遺伝子治療プロジェクト
④ ゲノム・データ基盤プロジェクト
⑤ 疾患基礎研究プロジェクト
⑥ シーズ開発・研究基盤プロジェクト

各統合プロジェクトにおいては、「予防/診断/治療/予後・QOL」といった開発目的を明確にした技術アプローチを行う。これにより、ライフステージを 俯瞰した健康寿命延伸を意識した取組とする。

また、アカデミアによる医療への出口を見据えたシーズ研究を行うとともに、こうしたシーズも活かしつつ産学連携による実用化研究・臨床研究を行うほか、臨床上の課題を基礎研究にフィードバックするリバース・トランスレーショナル・リサーチ(rTR)を行う。さらに、研究開発に対する相談・助言等の伴走支援を行うことで、基礎から実用化まで一貫した研究開発や循環型の研究開発の推進と成果の実用化を図る。

さらに、各統合プロジェクトの中における個々の事業・研究課題の間の連携はもちろんのこと、各統合プロジェクト間の連携も十分に確保する。特に、④ゲノム・データ基盤プロジェクト、⑤疾患基礎研究プロジェクト及び⑥シーズ開発・研究基盤プロジェクトについては、他の研究の基礎・基盤となる性格のプロジェクトであることから、情報の共有や研究成果の他の研究への展開を図る。また、疾患領域に関連した研究開発は上記の統合プロジェクトの中で実施するが、現在及び将来の我が国において社会課題となる疾患分野について、具体的な疾患に関するプロジェクト間の連携を常時十分に確保する。

① 医薬品プロジェクト(科技、文、◎厚、経)

医療現場のニーズに応える医薬品の実用化を推進するため、創薬標的の探索から臨床研究に至るまで、モダリティの特徴や性質を考慮した研究開発を行う。

このため、新たなモダリティの創出から各モダリティのデザイン、最適化、活性評価、有効性・安全性評価手法や製造技術等の研究開発まで、モダリティに関する基盤的な研究開発を行う。さらに、様々なモダリティに関する技術・知見等を疾患横断的に活用して新薬創出を目指す。また、創薬デザイン技術や化合物ライブラリー、解析機器の共用など創薬研究開発に必要な支援基盤の構築に取り組む。

特に、以下のようなテーマの研究開発に重点的に取り組む。

  • 疾患メカニズムに関するタンパク質間相互作用等に着目した創薬標的の探索
  • 化合物の構造解析技術や計算科学を活用した創薬デザイン
  • 抗体医薬の高機能化・低分子量化や、核酸・中分子医薬のデザイン・合成・評価など、新たなモダリティに関する基盤的な技術
  • 新規ドラッグ・デリバリー・システムや、新たなモダリティの活性・物性等評価技術などの周辺技術
  • DNA ワクチン等の予防・治療用ワクチン、アジュバント技術
  • バイオ医薬品の連続生産技術などの医薬品製造技術
  • 免疫チェックポイント阻害剤等の患者層別化に資する、免疫細胞解析とパスウェイ解析等との統合解析による新規バイオマーカー探索技術
② 医療機器・ヘルスケアプロジェクト(総、文、厚、◎経)

AI・IoT 技術や計測技術、ロボティクス技術等を融合的に活用し、診断・治療の高度化のための医療機器・システム、医療現場のニーズが大きい医療機器や、予防・高齢者の QOL 向上に資する医療機器・ヘルスケアに関する研究開発を行う。また、医療分野以外の研究者や企業も含め適切に研究開発を行うことができるよう、必要な支援に取り組む。

特に、以下のようなテーマの研究開発に重点的に取り組む。

  • 計測、微細加工、生体親和性の高い素材等、医療分野への応用を目指した要素技術
  • 検査・診断の簡易化や、精度向上・常時計測等の早期化に関する技術
  • 診断・治療の高度化や一体化のための、デジタル化・データ利活用や複数機器・システムの統合化等に関する技術
  • 生活習慣病等の予防のための行動変容を促すデバイス・ソフトウェア
  • 高齢化により衰える機能の補完や QOL 向上のための機器
③ 再生・細胞医療・遺伝子治療プロジェクト(科技、◎文、厚、経)

再生・細胞医療の実用化に向け、細胞培養・分化誘導等に関する基礎研究、疾患・組織別の非臨床・臨床研究や製造基盤技術の開発、疾患特異的 iPS 細胞等を活用した難病等の病態解明・創薬研究及び必要な基盤構築を行う。また、遺伝子治療について、遺伝子導入技術や遺伝子編集技術に関する研究開発を行う。さらに、これらの分野融合的な研究開発を推進する。

特に、以下のようなテーマの研究開発に重点的に取り組む。

  • 再生医療技術の研究段階から臨床実装への一層の推進
  • 幹細胞の特性に応じた細胞株の樹立、培養、分化誘導等に関する基礎的な技術
  • 疾患特異的 iPS 細胞の適応拡大に資する研究開発、灌流培養を用いた臓器チップの開発、及びこれらを応用した難病等の病態解明・創薬研究や薬剤代謝等の前臨床試験
  • 再生・細胞医療や創薬研究等に用いる細胞原料を含む生体材料や研究資源の品質管理・供給基盤構築
  • 細胞組織の三次元化等の臓器再生に関する技術
  • 遺伝子治療に関する安全で高生産かつ安価な国産ホスト細胞樹立及び標準的なウイルスベクターの構築
  • オフターゲットでの変異発現等の既存の技術課題への対応可能な遺伝子編集技術、及び免疫細胞機能の強化や幹細胞を経ない分化誘導等の、再生・細胞医療と遺伝子治療の融合研究を進めるための基礎的な技術
  • 大量培養や精製、品質評価・管理手法等の製造関連技術
④ ゲノム・データ基盤プロジェクト(科技、総、文、◎厚、経)

健常人及び疾患のバイオバンク・コホート等の情報に加え、臨床研究等を行う際のコホート・レジストリ、臨床情報等を統合し、研究開発を推進するために必要なデータ基盤を構築する。また、一人ひとりの治療精度を格段に向上させ、治療法のない患者に新たな治療を提供するといったがんや難病等の医療の発展や、個別化医療の推進など、がんや難病等患者のより良い医療の推進のため全ゲノム解析等実行計画を実施する。特にがんの全ゲノム解析は、臨床実装を見据え、がんの再発分野等の課題を明確に設定した上で推進する。また、細胞のがん化過程をシームレスに追跡できるよう健常人コホートからがん患者の発生を追跡できる研究について検討する。

その際、詳細で正確な臨床情報等が得られる検体を重点的に解析するとともに、個人情報等に配慮しつつ研究開発や創薬等に活用できるデータシェアリングを進め、特に、AMED で行う研究開発については、研究成果として得られたデータを共有する。

ゲノム・データ基盤の整備を推進するとともに、全ゲノム解析等実行計画等の実行により得られるデータの利活用を促進することで、ライフステージを 俯瞰して遺伝子変異・多型と疾患の発症との関連等から疾患の発症・重症化予防、診断、治療等に資する研究開発を推進し、病態解明を含めたゲノム医療、個別化医療の実現を目指す。

また、レジストリ等の医療データを活用した新たな診断・介入法の実装に向けた研究、無形の医療技術やそれに関連するシステムの改善、改良を目指したデータ収集等の研究を行う。

特に、以下のようなテーマの研究開発に重点的に取り組む。

  • 全ゲノム解析を活用したがんの新規原因遺伝子等の探索や、さらにオミックス解析も活用した難病等の新規原因遺伝子等の探索による、病態解明、早期診断に資する研究
  • ゲノム解析等を活用した糖尿病、認知症等の多因子疾患に関する予防、早期診断、治療最適化に資する研究
⑤ 疾患基礎研究プロジェクト(◎文、厚)

医療分野の研究開発への応用を目指し、脳機能、免疫、老化等の生命現象の機能解明や、様々な疾患を対象にした疾患メカニズムの解明等のための基礎的な研究開発を行う。

これらの研究開発成果を臨床研究開発や他の統合プロジェクトにおける研究開発に結び付けるとともに、臨床上の課題を取り込んだ研究開発を行うことにより、基礎から実用化まで一貫した循環型の研究を支える基盤を構築する。

⑥ シーズ開発・研究基盤プロジェクト(◎文、厚、経)

アカデミアの組織・分野の枠を超えた研究体制を構築し、新規モダリティの創
出に向けた画期的なシーズの創出・育成等の基礎的研究を行うとともに、国際
共同研究を実施し、臨床研究開発や他の統合プロジェクトにおける研究開発に
結び付ける。

また、橋渡し研究支援拠点や臨床研究中核病院において、シーズの発掘・移
転や質の高い臨床研究・治験の実施のための体制や仕組みを整備するとともに、
rTR、実証研究基盤の構築を推進し、基礎研究から臨床研究まで一貫した循環
型の研究支援体制や研究基盤を整備する。

特に、異分野・モダリティ融合的なシーズの研究開発や、上記①~④のプロジ
ェクトに将来的に繋がりうるシーズの継続的発掘、育成に取り組む。

(4) ムーンショット型の研究開発(◎AMED 室、科技、文、厚、経)

100 歳まで健康不安なく人生を楽しめる社会の実現など目指すべき未来像を展望し、困難だが実現すれば大きなインパクトが期待される社会課題に対して、健康・医療分野においても貢献すべく、野心的な目標に基づくムーンショット型の研究開発を、戦略協議会等を通じて総合科学技術・イノベーション会議で定める目標とも十分に連携しつつ、関係府省が連携して行う。

(5) 疾患領域に関連した研究開発(◎戦略室、総、文、厚、経)

3.1(3)で述べた6つの統合プロジェクトの中で、疾患領域に関連した研究開発も行う。

その際、多様な疾患への対応が必要であること、感染症対策など機動的な対応が必要であることから、統合プロジェクトの中で行われる研究開発を特定の疾患ごとに柔軟にマネジメントできるように推進する。

特に、2040年の人口動態を見据え、現在及び将来の我が国において社会課題となる疾患分野については、戦略的・体系的な研究開発が推進されるよう、具体的な疾患に関するプロジェクト間の連携を常時十分に確保するとともに、研究開発の状況を適切に把握する。

具体的には、

  • 3.1(3)で述べた医療関係の主な学会や産業団体等へのアンケート調査から、我が国の健康寿命の延伸に貢献するとともに我が国に技術的強みがあると考えられる疾患領域
  • 疾病の負荷(死亡と障害の程度の双方を考慮した負荷)が高い疾患領域
  • 社会的な対応の必要性が高い疾患領域

の観点から、がん、生活習慣病(循環器、糖尿病等)、精神・神経疾患、老年医学・認知症、難病、成育、感染症(薬剤耐性(AMR)含む)等を対象とし、これら具体的な疾患領域に関して、各プロジェクトにまたがる研究課題間の連携が常時十分に確保されるように運用するとともに、AMED における研究課題採択後に予算規模や研究状況等を把握・検証し、対外的に明らかにするほか、関係府省において事業の検討等の参考にする。

このため、AMED において、統合プロジェクト横断的に対応できる体制の下で、特定疾患ごとのマネジメントを行う。特に、現在及び将来の我が国において社会課題となる上記の疾患分野については、それぞれの疾患領域に豊富な知見を有するコーディネーターの下で、疾患ごとのマネジメントを行う。その際、難病やがん等の疾患領域については、病態解明等の基礎的な研究から医薬品等の実用化まで一貫した研究開発が推進されるよう、十分に留意する。

特に、難病については、その種類が多い一方で症例数が少ないという制約の中で病態解明や治療法の開発を行うという特性を踏まえる必要がある。厚生労働科学研究における難病の実態把握、診断基準・診療ガイドライン等の作成等に資する調査及び研究から、AMED における実用化を目指した基礎的な研究、診断法、医薬品等の研究開発まで、切れ目なく実臨床につながる研究開発が行われるよう、厚生労働省と AMED は、患者の実態とニーズを十分に把握し、相互に連携して対応する。

現在及び将来の我が国において社会課題となる上記の疾患分野については、以下のようなテーマをはじめとして研究開発を推進する。

がん
  • がんの生物学的本態解明に迫る研究開発や、患者のがんゲノム情報等の臨床データに基づいた研究開発
  • 個別化治療に資する診断薬・治療薬の開発や免疫療法や遺伝子治療等をはじめとする新しい治療法の開発
生活習慣病
  • 個人に最適な糖尿病等の生活習慣病の重症化予防方法及び重症化後の予後改善、QOL 向上等に資する研究開発。AI 等を利用した生活習慣病の発症を予防する新たな健康づくりの方法の確立
  • 循環器病の病態解明や革新的な予防、診断、治療、リハビリテーション等に関する方法に資する研究開発
  • 慢性腎臓病の診断薬や医薬品シーズの探索及び腎疾患の病態解明や診療エビデンスの創出に資する研究開発
  • 免疫アレルギー疾患の病態解明や予防、診断、治療法に資する研究開発
精神・神経疾患
  • 可視化技術導入等による慢性疼痛の機序解明、QOL の向上に資する治療法や、画期的な治療法開発に向けた慢性疼痛の定量的評価の確立に資する研究開発
  • 精神・神経疾患の克服に向けて、国際連携を通じ治療・診断の標的となり得る分子などの探索及び霊長類の高次脳機能を担う脳の神経回路レベルでの動作原理等の解明
  • 精神疾患の客観的診断法・障害(disability)評価法や精神疾患の適正な治療法の確立並びに発症予防に資する研究開発
老年医学・認知症
  • モデル生物を用いた老化制御メカニズム及び臓器連関による臓器・個体老化の基本メカニズム等の解明
  • 認知症に関する薬剤治験対応コホート構築やゲノム情報等の集積及びこれらを活用したバイオマーカー研究や病態解明等
  • 認知症に関する非薬物療法の確立及び官民連携による認知症予防・進行抑制の基盤整備
難病
  • 様々な個別の難病に関する実用化を目指した病因・病態解明、画期的な診断・治療・予防法の開発に資するエビデンス創出のためのゲノムや臨床データ等の集積、共有化
  • 上記の取組による病態メカニズム理解に基づく再生・細胞医療、遺伝子治療、核酸医薬などの新規モダリティ等を含む治療法の研究開発
成育
  • 周産期・小児期から生殖期に至るまでの心身の健康や疾患に関する予防・診断、早期介入、治療方法の研究開発
  • 月経関連疾患、更年期障害等の女性ホルモンに関連する疾患に関する研究開発や疾患性差・至適薬物療法など性差にかかわる研究開発
感染症
  • ゲノム情報を含む国内外の様々な病原体に関する情報共有や感染症に対する国際的なリスクアセスメントの推進、新型コロナウイルスなどの新型ウイルス等を含む感染症に対する診断薬・治療薬・ワクチン等の研究開発及び新興感染症流行に即刻対応出来る研究開発プラットフォームの構築
  • BSL4 施設を中核とした感染症研究拠点に対する研究支援や、感染症流行地の研究拠点における疫学研究及び創薬標的の探索等、予防・診断・治療に資する基礎的研究、将来のアウトブレークに備えた臨床・疫学等のデータの蓄積・利活用

3.2 AMED の果たすべき役割

基礎から実用化までの研究開発を効果的・効率的に推進する上で、AMED は、JSPS、JST、NEDO 等の他の資金配分機関、インハウス研究機関の取組と効果的な連携等を取りつつ、以下の役割を果たす。

医療に関する研究開発のマネジメント(◎AMED 室、文、厚、経)

  • 世界の最新の情勢を把握した PD、PS、PO等が研究の実施、研究動向の把握・調査、シーズの探査・育成研究の強化(スクリーニングや最適化研究)や優れた基礎研究成果を臨床研究及び治験、産業化へつなげる一貫したマネジメント(研究の進捗管理・助言、規制対応等)及び適切な研究実施のための監視・管理機能など、研究開発の開始、推進、監視・管理、さらには、方針の転換に至るまで一元的かつ一貫したプロジェクトマネジメント機能を果たす。
  • 患者や医療現場、研究者、産業界等からのニーズを把握しつつ、AMEDManagement System (AMS)の活用、トランスレーショナル・リサーチ(TR)やrTR による基礎と実用化の橋渡し、研究成果の有効活用や他領域への展開のためのデータシェアの促進等、事業間の連携及び研究開発のマネジメントを適切に行うとともに、事業間連携を推進する。
  • 個別研究課題の選定においてピア・レビューを行うための評価委員会を設置し、評価の質及び公正性・透明性の一層の向上を図り、将来的な成果につながるシーズの育成や人材育成等の視点にも留意しつつ、成果が見込まれる研究課題を選定する。
  • さらに、ピア・レビューの方法等について、国内外の知見の収集を行い、これまで各分野で異なっていた評価システムの共通化・最適化を進める。
  • 学会、産業界、他の政府機関等の外部の知見も活用し、国内外の技術開発動向の把握など、シンクタンク機能を果たす。

研究不正防止の取組の推進(◎AMED 室、文、厚、経)

  • 基礎研究及び臨床研究における不正防止の取組を推進するため、AMED は、専門の部署を置き、自らが配分する研究費により実施される研究に対して、公正かつ適正な実施の確保を図る。他の関係機関と連携を図りながら、業務を通じた医療分野の研究開発に関する研究不正への対応に関するノウハウの蓄積及び専門的な人材の育成等に努める。

研究データマネジメント(◎AMED 室、文、厚、経)

  • AMED が推進する研究については、研究の進捗状況の把握、研究データの管理(データ入力、集計、解析)、研究成果や知的財産の管理等の研究マネジメントを効率的に実施する。
  • AMED が実施した研究開発から得られたデータが持続的に共有されるよう、研究データ基盤のクラウド化を推進する。また、研究開発から得られたデータの共有を図るべく、まずは「ゲノム・データ基盤プロジェクト」においてデータシェアリングを推進し、その実施状況を踏まえつつ他の統合プロジェクトにおいてもデータシェアリングの実施を検討する。

実用化に向けた支援(◎AMED 室、文、厚、経)

  • 研究成果の実用化に向け、戦略的な知財管理を行うとともに、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)や官民の支援機関等とも連携して、インキュベーション機能や産学官連携のマッチング機能を果たす。

国際戦略の推進(◎AMED 室、文、厚、経)

  • 研究開発の推進に当たっては、海外の主要なファンディング機関等の関係機関や専門人材とのネットワーキングを活用するなど、適切な国際連携を図る。
  • 国際的な貢献も果たすため、グローバルなデータシェアリングへの戦略的な対応を行う。
  • 我が国の医療に係る研究能力を活用して国際的に貢献しつつ、世界の知を取り込み、国民への世界最高水準の医療提供に資するため、海外事務所も活用しつつ共同研究の推進・調整や情報収集・発信等を行う。

基金等を活用した産学連携等への支援(◎AMED 室、文、厚、経)

  • 基金や政府出資を活用して中長期の研究開発を推進する。

3.3 研究開発の環境の整備

研究基盤の整備

  • 医療法(昭和 23 年法律第 205 号)上に位置付けられた国際水準の臨床研究や医師主導治験の中心的役割を担う臨床研究中核病院の機能を強化するとともに、臨床研究中核病院による質の高い臨床研究や医師主導治験の実施、他施設への支援等を促進する。(◎厚)
  • アカデミアの優れた研究成果に基づくシーズを切れ目なく実用化するため、基礎研究段階から臨床試験段階まで一貫した研究開発支援を行う拠点となる橋渡し研究支援拠点や臨床研究中核病院を整備するとともに、機械工学、情報工学等の関連分野及び拠点外の大学等との更なる連携強化やシーズ発掘・評価機能の向上を行う。(文、◎厚)
  • これまでの検討で整理された課題を踏まえ、我が国における臨床研究拠点としての国立高度専門医療研究センターの組織の在り方について早急に検討する。(戦略室、◎厚)
  • 統合プロジェクトによって整備する研究基盤と、放射光施設、クライオ電子顕微鏡、スーパーコンピュータなどの既存の大規模先端研究基盤や先端的な計測分析機器等を備えた小規模施設との連携及び機器の共同利用等が可能となる体制を実現し、科学技術共通の基盤施設をより使いやすくし、医療分野の研究開発の更なる促進に活用する。(◎文、厚)
  • 研究で得られたデータが産業利用を含めて有効かつ継続的に活用されるよう、IT 基盤を含む個人の同意取得(E-consent)や倫理審査の円滑化、国際連携対応を想定した取得データの標準化等データ連携のための取組を進める。また、様々なデータ基盤に関する情報を見える化し、体系的な取組となるよう関係者間で連携を図る。(総、文、◎厚、経)
  • バイオバンクについて、精密医療・個別化医療等への活用や研究開発成果の世界市場への展開を目指し、海外の取組も参考にしつつ、バイオバンクの構成や、試料・検体の種類の選択等を含め、戦略的に構築を進める。また、健康・医療・介護情報等とも連携して、臨床や社会実装に向けた研究基盤として、将来の民間の利活用も含め、関係者が活用出来る体制を産学官が連携して整備する(◎文、◎厚、経)
  • 我が国のこれまでの IHCCにおけるゲノムコホート研究での貢献を基礎に、ゲノムコホートの国際連携における我が国の連携統合窓口を創設する。また、ゲノム医療の実装段階への国際連携を視野に入れた IHCC、G2MC の活動に参加し、国際連携活動を強化する。(文、◎厚、経)
  • 臨床研究・治験をはじめとする医薬品等の開発を効率的に行うため、クリニカル・イノベーション・ネットワーク構想において、疾患登録システムの利活用等を進めるとともに、リアルワールドデータを活用した効率的な臨床研究・治験を推進するため、国内外の連携を想定しつつ、医薬品・医療機器の研究開発拠点である臨床研究中核病院における診療情報の品質管理・標準化、ならびに連結を進める。さらに、ヘルスケアサービスや各種バイオバンクとの連携により、健康から医療まで切れ目のない情報の連結を図りつつ、リアルワールドデータを蓄積する。また、国内外の連携を図りつつ、リアルワールドデータからリアルワールドエビデンスを抽出する際の我が国としてのフレームワークを検討し、薬事承認申請のエビデンスとして活用するためのルールの整備を行い、効率的な臨床研究・治験を推進する。(◎厚、経)
  • 国内の研究機関における感染症に係る基礎研究能力の向上及び病原体等の取扱いに精通した人材の育成・確保等を図るため、BSL4 施設の整備等について、必要な支援を行うとともに国、大学及び自治体の地方衛生研究所等との連携を強化する。また、パンデミック対策のみならずバイオセキュリティ強化のため、米国 CDC等も参考にしつつ我が国の危機管理対応能力の強化を図っていくとともに、緊急時の課題解決のための迅速な研究開発体制を整備する。(◎国際感染症室、新型インフル室、文、◎厚)

先端的研究開発の推進のために必要な人材の育成・確保

  • 医療分野の先端的研究開発推進に必要な人材については、国内での育成のみならず、高度外国人材を含めて海外での経験を有する人材の確保も図る。特に、多様な分野の経験を有するバイオインフォマティシャン等、国内での育成のみでは十分な確保が難しい人材については、海外での経験を有する人材の確保を図る。(総、◎文、厚、経)
  • 基礎から臨床研究及び治験の各フェーズ、様々なモダリティ等や疾患領域、さらにはそれらの横断領域等の研究の担い手となる優れた研究者を、若手や女性を含めて育成・確保する。(◎文、厚、経)
  • 臨床研究及び治験の効率的・効果的な推進のため以下の人材を育成・確保する。また、この際、医学部における臨床研究分野の教育の充実、そのほか教育訓練や e-learning の更なる整備等、臨床研究及び治験関連業務に従事する者に対する臨床研究及び治験に係る教育の機会の確保・増大を図る。(文、◎厚)
    1. 臨床研究及び治験において主導的な役割を果たす専門的な医師等
    2. 臨床研究及び治験関連業務を支援又は当該業務に従事する人材(臨床研究コーディネーター(CRC)、データマネージャー、治験・倫理審査委員会委員等)
  • 基礎研究段階から臨床試験段階まで一貫して効率的にシーズ研究開発を行うため、大学等の現場において、研究者・企業等との協力の下で医薬品・医療機器等の開発戦略・計画の策定・管理や薬事・特許等の総合調整、及び開発の go/no-go 判断を行うスキルを有する人材の育成と確保を推進する。(◎文、経)
  • 爆発的に増加している医療関係データや情報等を効果的に活用し、解析数の増大が見込まれるゲノム解析など今後のライフサイエンス分野の研究開発を発展させる上で必要不可欠なバイオインフォマティクス人材、医療分野における AI の研究開発・活用を進めるための医療従事者等の人材、データの連携のためサイバーセキュリティ人材の育成と確保を推進する。(◎文、厚)
  • 生物統計家などの専門人材及びレギュラトリーサイエンスの専門家の育成・確保等を推進するとともに、研究者に対してレギュラトリーサイエンスや知財等の実用化に必要な教育を推進する。(文、◎厚、経)
  • 再生医療の基盤を整備することで、単独での臨床研究を実施できない研究機関や医療機関、ベンチャー企業等に対しての技術的支援、人材交流等により、人材の育成・確保を推進する。また、再生医療の事業化に必要な細胞の品質管理、大量培養、運搬技術等の開発を担う人材の育成・確保を強化する。(文、◎厚、◎経)

3.4 研究開発の公正かつ適正な実施の確保

研究の公正性・適正性の確保、法令等の遵守のための環境整備

  • 我が国の臨床研究に対する国民の信頼の更なる向上と研究の推進を図るため、臨床研究法(平成 29 年法律第 16 号)を適切に運用し、その施行状況等を踏まえ、通常の診療で用いられるが薬事承認外である医薬品等の用法・用量等を用いる研究の特定臨床研究の該当性等も含め、必要に応じて見直しを行う。なお、十分な科学的知見が得られていない医療行為に対する措置については、個別の医療技術や具体的な医療行為の性質に応じた検討を行う。(◎厚)
  • 臨床研究法に基づき認定された臨床研究審査委員会における審査能力のさらなる向上を図る(文、◎厚)
  • 多施設共同研究における倫理審査の適正かつ円滑な実施を図るため、中央倫理・治験審査委員会の設置・運用を推進する。(文、◎厚)
  • 基礎研究及び臨床研究における不正防止の取組を推進するため、AMED は、専門の部署を置き、自らが配分する研究費により実施される研究開発に対して、公正かつ適正な実施の確保を図る。他の関係機関と連携を図りながら、業務を通じた医療分野の研究開発に関する研究不正への対応に関するノウハウの蓄積及び専門的な人材の育成等に努める。(◎AMED 室、文、厚、経)
  • 動物実験等についての基本指針等に則り、適正な動物実験等の実施を確保する。(食品、警、総、文、厚、農、経、国、◎環)

倫理的・法的・社会的課題への対応

  • 社会の理解を得つつ実用化を進めることが必要な研究開発テーマについて、患者・国民の研究への参画の観点も加えながら、研究開発を推進するとともに、ELSI研究を推進する。(◎文、厚)
  • ゲノム編集技術等を用いたヒト受精胚等の臨床利用に関する規制の在り方について、法制化も含めて検討する。(科技、文、◎厚)

3.5 研究開発成果の実用化のための審査体制の整備等

〇薬事規制の適切な運用等

  • 「先駆け審査指定制度」、「条件付き早期承認制度」の法制化等を含む医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第 63 号、2019 年 11 月 27 日成立、同年 12 月4日公布)の円滑な施行に向け、政省令の整備等に着実に取り組む。(◎厚)
  • 研究開発成果を効率的に薬事承認に繋げられるように、PMDA のレギュラトリーサイエンス戦略相談制度や優先的な治験相談制度等の必要な運用改善を行い、革新的な医薬品等の迅速な実用化を図る。また、PMDA の国際的な規制調和に向けた海外当局との協力関係を強化しつつ、海外の規制動向に関する情報を相談者にも可能な限り提供する体制を推進する(◎厚)
  • 再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成 25 年法律第 85 号)の施行状況等を踏まえ、in vivo 遺伝子治療 に対する法的枠組み、提供された再生医療等の科学的妥当性(有効性を含む)、認定再生医療等委員会の質の担保等について、見直しも含めて検討を行う。(◎厚)
  • 我が国の遺伝子治療の開発等の推進を図るため、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成 15 年法律第 97号)の運用等について、必要に応じて見直しを検討する。(財、文、◎厚、農、経、環)
  • 健康関連の製品やサービス等について、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和 35 年法律第 145 号)や医師法(昭和 23 年法律第 201 号)等の規制の適用の有無の範囲を明確化するため、ガイドライン等の策定等を推進する。(◎厚、農、経)
  • AI 等の先端技術を利用した医療機器プログラム等については、審査時の評価の考え方を含めた薬事規制の在り方や薬事該当性の明確化の検討を引き続き推進する。(総、文、◎厚、経)
  • デジタルヘルス機器等を用いて収集したものを含め、蓄積されたリアルワールドデータを、医薬品、医療機器等の臨床研究・治験や薬事承認申請のエビデンスとして活用するためのルールを整備する。(◎厚)

〇レギュラトリーサイエンスの推進

  • 国際的な規制調和を前提とした医薬品等の品質、有効性及び安全性に関する研究の支援、審査ガイドラインの整備、審査員に対する専門的知識(新たなモダリティとしてのデジタルセラピューティクス 分野とデータ連携に必要な法、技術、倫理及びサイバーセキュリティの知見を含む)の向上等を通じて、研究開発におけるレギュラトリーサイエンスを普及・充実させる。(◎厚)
  • このうち、PMDA は、レギュラトリーサイエンスセンターにおいて、国内各種レジストリやそれに附帯するバイオバンクを有するアカデミア等との連携、臨床試験成績等のビッグデータを活用し、品目横断的な情報の統合等により、審査・相談の高度化や医薬品等の開発に資するガイドラインの策定等の取組を推進する。その際、国際的な規制調和の動向を適宜反映するよう努める。(◎厚)

4.医療分野研究開発等施策を集中的かつ計画的に推進するために必要な事項

4.1 医療分野の研究開発に関する成果目標(KPI)

本計画の推進により本計画の対象期間(2024 年度末まで)に達成を目指す成果目標(KPI)を統合プロジェクト毎に以下のとおり設定する。

① 医薬品プロジェクト

<アウトプット>
  • シーズ研究に関する指標
    • 非臨床 POCの取得件数 25 件
    • 創薬支援ネットワークの活動による有望創薬シーズの企業導出件数 10 件
  • 実用化に関する指標
    • 臨床 POC の取得件数 5件
  • 新たなモダリティや先進的な創薬手法に関する指標
    • 新モダリティ・先進手法に関する採択課題の割合 75%
(その他管理指標)
  • シーズ研究に関する指標
    • 創薬支援ネットワークの活動状況
      • 3独法(国立研究開発法人理化学研究所/国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所/国立研究開発法人産業技術総合研究所)による支援の状況
      • 支援継続/終了の状況
  • 新たなモダリティや先進的な創薬手法に関する指標
    • 創薬等の効率化に資する先進手法の開発状況
<アウトカム>
  • 実用化に関する指標
    • シーズの企業への導出件数 60 件
    • 薬事承認件数(新薬、適応拡大) 10 件
  • 新たなモダリティや先進的な創薬手法に関する指標
    • 創薬等の効率化に資する先進手法の企業導出件数 120 件
(その他管理指標)
  • 実用化に関する指標
    • 研究成果を活用した臨床試験・治験への移行状況

② 医療機器・ヘルスケアプロジェクト

<アウトプット>
  • シーズ研究に関する指標
    • 非臨床 POC の取得件数 25 件
  • 医療機器の開発に関する指標
    • クラスⅢ・Ⅳ医療機器の開発を計画する採択課題の割合 25%
  • ヘルスケア関連機器等の開発に関する指標
    • ヘルスケア関連機器等の実証完了件数 35 件
<アウトカム>
  • シーズ研究に関する指標
    • シーズの他事業や企業等への導出件数 15 件
  • 医療機器の開発に関する指標
    • クラスⅢ・Ⅳ医療機器の薬事承認件数 20 件
  • ヘルスケア関連機器等の開発に関する指標
    • ヘルスケア関連機器等の上市等の件数 10 件
(その他管理指標)
  • 医療機器の開発に関する指標
    • 研究成果を活用した臨床試験・治験への移行状況

③ 再生・細胞医療・遺伝子治療プロジェクト

<アウトプット>
  • シーズ研究に関する指標
    • 非臨床 POC の取得件数 25 件(うち遺伝子治療 5件)
    • 研究成果の科学誌(インパクトファクター5以上)への論文掲載件数 400 件
  • 実用化に関する指標
    • 治験に移行した研究課題数 20 件(うち遺伝子治療 2件)
(その他管理指標)
  • シーズ研究に関する指標
    • 研究成果の科学誌(インパクトファクター5未満等の他の科学誌)への論文掲載状況
  • 実用化に関する指標
    • 臨床研究に移行した研究課題数(うち遺伝子治療の研究課題数)
<アウトカム>
  • シーズ研究に関する指標
    • シーズの他事業への導出件数 30 件
  • 実用化に関する指標
    • 企業へ導出される段階に至った研究課題数 10 件(うち遺伝子治療 2件) (うち企業へ導出された件数 2件)
    • 薬事承認件数(新薬、適応拡大) 2件以上
(その他管理指標)
  • シーズ研究に関する指標
    • 関連する国際的なガイドライン等策定への参画状況
  • 実用化に関する指標
    • 研究成果を活用した臨床試験・治験への移行状況
    • 遺伝子治療の製造に関する要素技術の研究開発の進展状況

④ ゲノム・データ基盤プロジェクト

<アウトプット>
  • データ基盤を活用した研究に関する指標
    • 非臨床 POC の取得件数 5件
    • 臨床 POC の取得件数 10 件
    • 研究成果の科学誌(インパクトファクター5以上)への論文掲載件数 900 件
    • 新たな疾患発症メカニズム解明件数 10 件
    • 新たな疾患関連遺伝子・薬剤関連遺伝子の同定数 25 件
(その他管理指標)
  • データ基盤構築・活用に関する指標
    • データ基盤構築の状況(連携、解析体制を含む)
    • アカデミア、企業によるデータ基盤の利活用実績
  • データ基盤を活用した研究に関する指標
    • 研究成果の科学誌(インパクトファクター5未満等の他の科学誌)への論文掲載状況
<アウトカム>
  • データ基盤を活用した研究に関する指標
    • シーズの他の統合プロジェクトや企業等への導出件数 25 件
    • 臨床的に実用可能なバイオマーカー等の開発件数 15 件
    • 疾患の原因となる遺伝子変異に基づく新規の診断・治療法の開発件数 5件

⑤ 疾患基礎研究プロジェクト

<アウトプット>
  • シーズ研究に関する指標
    • 研究成果の科学誌(インパクトファクター5以上)への論文掲載件数 400 件
(その他管理指標)
  • シーズ研究に関する指標
    • 研究成果の科学誌(インパクトファクター5未満等の他の科学誌)への論文掲載状況
<アウトカム>
  • シーズ研究に関する指標
    • シーズの他の統合プロジェクトや企業等への導出件数 10 件

⑥ シーズ開発・研究基盤プロジェクト

<アウトプット>
  • シーズ研究に関する指標
    • 研究成果の科学誌(インパクトファクター5以上)への論文掲載件数 550 件
  • 研究基盤に関する指標
    • 医師主導治験届の提出件数(体外診断用医薬品については臨床性能試験の申請件数) 170 件
(その他管理指標)
  • シーズ研究に関する指標
    • 研究成果の科学誌(インパクトファクター5未満等の他の科学誌)への論文掲載状況
<アウトカム>
  • シーズ研究に関する指標
    • シーズの他の統合プロジェクトや企業等への導出件数 125 件
  • 研究基盤に関する指標
    • 医薬品等の薬事承認申請の件数 30 件

4.2 フォローアップ

推進本部の下で、内閣官房は関係府省とともに PDCA サイクルを回していく。具体的には、本計画に掲げた具体的施策(Plan)を関係府省の連携の下で実施し(Do)、定期的に進捗状況をフォローアップにより把握・検証し(Check)、その検証結果に基づき、必要に応じて施策の実施内容を見直すとともに予算への反映等の必要な措置を講じる(Action)。

参照

-ビジネス全般

© 2024 RWE