人を対象とする生命科学や医学系の研究は、国民の健康の保持増進や、病に苦しむ人々の傷病からの回復、そして生活の質の向上に繋がる新しい知識を得ることを目指す、社会にとって極めて重要な活動です 1。しかし、その目的も、研究に参加してくださる方々の人権と尊厳を絶対的に尊重するという基盤の上に成り立っていなければなりません。日本の研究倫理指針が第一に掲げる目的は、まさにこの点にあります。すなわち、人を対象とする研究に携わる全ての関係者が守るべき事項を定めることで、人間の尊厳及び人権が守られ、研究が適正に推進されるようにすることです 2。
この倫理の根幹をなすのが、研究者等が研究対象者の生命、健康、そして人権を何よりも尊重して研究を実施しなければならないという基本的な責務です 3。この責務を具体的な手続きとして形にしたものが、「インフォームド・コンセント」と呼ばれる原則です。インフォームド・コンセントとは、単に同意書に署名をもらうという形式的な行為ではありません。研究者が、研究に参加する可能性のある方に対して、その研究の目的、方法、予測される利益とリスク、個人情報の取り扱いなど、あらゆる情報を十分に、そして分かりやすく説明した上で、その方が自らの自由な意思によって研究への参加に同意すること、という一連のプロセス全体を指します 4。
このインフォームド・コンセントという原則がなぜこれほどまでに重要視されるのかというと、それは個人の「自己決定権」を尊重するという、近代社会における基本的な価値観に基づいているからです 5。自己決定権とは、同意する能力が認められる限り、また、他者や社会に危害を及ぼさない限りにおいて、自分自身の身体や健康、ひいては人生に関わる決定は、他者から強制されることなく自らが下す権利がある、という考え方です。医療や研究の文脈においては、どのような行為を受け入れるか、あるいは受け入れないかを最終的に決めるのは、その人自身でなければならないのです。この自己決定権の尊重は、研究倫理における揺るぎない大前提であり、有効な同意なく行われた医療行為は、たとえその行為自体に技術的な過失がなかったとしても、法的な責任を問われうるほどに重い意味を持っています 6。
したがって、研究倫理の体系は、まず「研究対象者本人からインフォームド・コンセントを得ること」を絶対的な原則としています 7。これから詳しく見ていく、本人の代わりに別の方が同意を与える「代諾」という手続きは、この大原則に対する例外的な措置として位置づけられています。つまり、研究倫理の出発点は、全ての人は自律的な意思決定の主体であるという強い信頼の上にあり、本人から直接同意を得られない状況においては、なぜそれが不可能なのかを慎重に判断し、極めて厳格な手続きを踏むことが求められるのです。代諾は、安易な代替手段ではなく、本人の意思を最大限に尊重するための、細心の注意を要する手続きです。
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インフォームド・コンセントが本人から得られない場合:代諾者の役割
研究におけるインフォームド・コンセントは、研究対象者本人の自己決定権を保障するための根幹的な手続きです。しかし、研究の対象となる方の中には、年齢や健康上の理由から、研究内容を十分に理解し、自らの意思で同意を与えることが客観的に困難な場合があります 8。例えば、まだ物事を判断する能力が発達していない幼い子どもや、認知症や意識障害などによって判断能力が著しく低下している成人が考えられます。このような方々を対象としなければ解明できない病気や状態も数多く存在するため、研究倫理の指針は、こうした方々の人権を保護しつつ、必要な研究を進めるための特別な手続きを定めています。それが「代諾」という制度です。
まず、「代諾者」とはどのような人を指すのかを正確に理解することが重要です。指針によれば、代諾者とは、生存している研究対象者の意思及び利益を代弁できると考えられる者であって、当該研究対象者がインフォームド・コンセントを与える能力を欠くと客観的に判断される場合に、その研究対象者の代わりにインフォームド・コンセントを与えることができる人と定義されています。ここで重要なのは、単に法的な親族であるということだけではなく、「意思及び利益を代弁できると考えられる」という点です。これは、代諾者には、本人の価値観やこれまでの生き方を深く理解し、もし本人が判断できる状態であったなら、どのような決断をしたであろうかということを真摯に推し量り、本人の最善の利益となるように行動するという、重い倫理的な責任が課せられていることを示しています。
この代諾という手続きが必要となるのは、研究対象者が主に三つのケースのいずれかに該当する場合です。一つ目は、研究対象者が「未成年者」である場合です。未成年者は、心身の発達の途上にあり、複雑な研究内容の利益とリスクを十分に理解して判断する能力がまだ完全ではないと考えられるため、原則としてその親権者などが代諾者となります。
二つ目は、研究対象者が「成年であって、インフォームド・コンセントを与える能力を欠くと客観的に判断される者」である場合です。同意能力があるかどうかは、単に病名で決まるものではなく、個々の状況に応じて判断されます。具体的には、研究者が提供する情報を理解し、自分自身の状況を正しく認識した上で、自らの価値観に照らしてその情報の意味を評価し、合理的な決定を下すことができるか、といった要素から総合的に判断されます 5。このような能力を欠くと客観的に判断される場合、その方の意思と利益を最もよく代弁できる方が代諾者として選ばれます。
三つ目は、研究対象者が「死者」である場合です。亡くなった方の試料や情報を用いる研究も、医学の進歩には不可欠です。この場合、その方の遺族などが代諾者となり、インフォームド・コンセントを与えることができます。ただし、ここには極めて重要な条件があります。それは、研究に利用されることが、その方が生前に明確に示していた意思に反する場合には、研究を実施してはならないという点です。これは、臓器提供において本人が拒否の意思表示をしていた場合には提供が行われないのと同様に 8、亡くなった後もその人の自己決定の意思は最大限に尊重されなければならないという倫理観の表れです。
このように、代諾者には生存している方を対象とする場合と、亡くなった方を対象とする場合があるため、指針ではこれらを包括して「代諾者等」という言葉を用いています。この制度は、自己決定が困難な方々を研究から排除するのではなく、その方々の尊厳と利益を守るための代理人を立てることで、倫理的な保護のもとで研究への参加の道を開くための、慎重に設計された仕組みなのです。
代諾者からインフォームド・コンセントを得るための手続き
代諾者からインフォームド・コンセントを得るという手続きは、本人から直接同意を得るという原則の例外であるため、そのプロセスは極めて慎重かつ厳格に定められています。研究者がその場の判断で安易に代諾を求めることは決して許されず、研究が始まるずっと前の段階から、周到な準備と計画、そして第三者による客観的な審査が不可欠となります。この手続きの中心的な役割を担うのが、「研究計画書」と「倫理審査委員会」です。
まず、研究者は、代諾者等からインフォームド・コンセントを受ける可能性がある研究を実施しようとする場合、あらかじめ「研究計画書」に二つの重要な事項を具体的に記載し、それが承認されていなければなりません。一つ目は、「代諾者等の選定方針」です。これは、どのような基準で、誰を代諾者として選ぶのかという方針を明確に定めておくことを意味します。例えば、配偶者、成人の子、父母、兄弟姉妹といった親族関係の優先順位や、複数の同順位の親族がいる場合の合意形成の方法、あるいは親族がいない場合にどのような方を代諾者候補とするかなど、想定される状況に応じた具体的で倫理的に妥当な方針を、事前に文書化しておく必要があります。これは、前章で述べたように、代諾者が単なる近親者ではなく「本人の意思と利益を代弁する」という倫理的役割を担うことから、その選定プロセス自体が透明で公正でなければならないからです。
二つ目は、「代諾者等への説明事項」です。研究者は、代諾者等に対して、研究の目的や方法、リスクといった通常のインフォームド・コンセントで説明すべき事項に加えて、特別な説明を行わなければなりません。その最も重要なものが、「当該者を研究対象者とすることが必要な理由」です。つまり、なぜ判断能力のある成人ではなく、未成年者や判断能力を欠く成人を、この研究の対象としなければならないのか、その科学的・倫理的な必然性を、代諾者等が納得できるように説明する義務があるのです。この要件は、研究の都合や利便性のために、社会的に弱い立場にある人々が安易に研究対象とされることを防ぐための、極めて重要な倫理的なフィルターとして機能します。研究者は、この研究で解明したい問いは、まさにこの集団を対象としなければ答えが得られないのだということを、説得力をもって示さなければなりません。
これらの事項が記載された研究計画書は、次に「倫理審査委員会」による審査を受けます。倫理審査委員会は、医学や自然科学の専門家だけでなく、倫理学や法律学といった人文・社会科学の専門家、さらには研究対象者の視点も踏まえて意見を述べることができる一般の立場の人など、多様な背景を持つ委員で構成される独立した組織です 9。この委員会の役割は、研究計画が科学的に合理的であるか、研究対象者の人権や安全、福祉が最大限に保護されているか、リスクと利益のバランスは適切かといった点を、多角的かつ公正な視点から厳しく審査することです 9。
倫理審査委員会は、研究計画書に記載された代諾者の選定方針が倫理的に妥当であるか、そして、判断能力のない方を研究対象とすることの必要性の説明が十分に説得力を持つものであるかを精査します。委員会がこれらの計画を承認して初めて、研究機関の長は研究の実施を許可することができ、研究者はその承認された計画に従って、代諾者の選定とインフォームド・コンセントの取得という手続きに進むことができるのです。このように、代諾という手続きは、研究者個人の判断に委ねられるのではなく、研究計画の段階から文書化され、独立した第三者機関による厳格な審査を経て承認されるという、二重三重の安全装置によって支えられているのです。
特別な配慮が必要な研究対象者:未成年者をめぐる手続き
研究倫理において、未成年者は特に手厚い保護を必要とする対象者として位置づけられています。心身ともに発達の途上にある彼らの権利を守るため、インフォームド・コンセントに関する手続きは、他のケースに比べてさらに多層的で、細やかな配慮に基づいたものとなっています。これは、未成年者を一律に「判断能力のない者」として扱うのではなく、その年齢や成熟度、そして研究がもたらす影響の大きさに応じて、彼ら自身の意思を最大限に尊重しようとする姿勢の表れです。
まず基本となる原則は、研究対象者が未成年者である場合、その親権者や未成年後見人といった代諾者からインフォームド・コンセントを得る、というものです。これは、未成年者の利益を守る責任を負う保護者の判断を介在させることで、安全を確保するという考え方に基づいています 5。しかし、倫理指針はここで留まりません。子どもの成長に伴う自己決定能力の発達を認め、特定の条件下では、未成年者本人の意思決定をより中心に据える手続きを設けています。
その代表的なものが、中学校等の課程を修了している、または16歳以上の未成年者を対象とする場合の特別なルールです。もし研究者が、この年齢に達した未成年者が研究に参加することについて十分な判断能力を有すると判断した場合、代諾者からの同意に代えて、その未成年者本人から直接インフォームド・コンセントを受けることができます。ただし、これにはいくつかの厳格な条件が全て満たされなければなりません。
第一の条件は、その研究が「侵襲を伴わない」ものであることです。ここでいう「侵襲」とは、研究目的で行われる行為によって、研究対象者の身体または精神に傷害や負担が生じることを指します 11。例えば、研究のために行う切開や薬物投与、放射線照射などが典型的な侵襲にあたります。これには、災害や虐待といった過去のつらい体験について質問するなど、心に負担をかける行為も含まれます 12。一方で、通常の健康診断で行われる程度の少量の採血や、造影剤を使わない短時間のMRI撮影などは「軽微な侵襲」とされ、侵襲とは区別されます 13。そして、アンケート調査や、体に貼り付けるだけの心電図測定のように、身体や精神への負担が極めて小さいものは「侵襲を伴わない」と判断されます 12。16歳以上の未成年者が自らの同意のみで参加できるのは、この「侵襲を伴わない」安全性の高い研究に限られるのです。
第二の条件は、研究者が研究に関する情報を公開し、その未成年者の親権者等が、自分の子どもが研究に参加することを拒否できる機会を保障することです。これは、未成年者本人の意思を尊重しつつも、保護者としての監督責任や配慮の機会を確保するための、バランスの取れた仕組みと言えます。そして第三に、これらの手続き全体が研究計画書に明記され、倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長から許可を得ていることが必須となります。
さらに、未成年者をめぐる手続きにはもう一つの重要な層が存在します。それは「二重の同意」とも呼べるルールです。たとえ研究に侵襲を伴うため、まず代諾者である親権者等からインフォームド・コンセントを得た場合であっても、もし研究対象者である未成年者が中学校等の課程を修了している、または16歳以上であり、かつ十分な判断能力を有すると判断されるときには、研究者は代諾者からの同意に加えて、その未成年者本人からもインフォームド・コンセントを受けなければならない、と定められています 8。これは、リスクを伴う可能性のある研究においては、保護者の同意という安全網を確保した上で、さらに成長した未成年者自身の明確な同意も得ることで、本人と保護者の両方の意思を確認し、二重の保護を図るという考え方です。
このように、未成年者に関する同意の手続きは、単一のルールではなく、対象者の年齢や成熟度、そして研究のリスク(侵襲の程度)という複数の要素を掛け合わせて判断される、動的な仕組みになっています。それは、子どもを一人の人間として尊重し、その発達段階に応じて可能な限り自己決定の機会を与えながら、同時に彼らを不利益から守るという、深い倫理的配慮に基づいた精緻な制度設計の表れなのです。
本人の意思を尊重する努力:インフォームド・アセントの倫理
研究倫理が追求するのは、法的な手続きを遵守することだけではありません。その根底には、たとえ法的な同意能力が完全には認められない人であっても、一人の人間としてその意思や感情を最大限に尊重しようとする深い倫理観があります。この精神を具現化したものが、「インフォームド・アセント」という考え方と手続きです。
インフォームド・アセントとは、インフォームド・コンセントを与える能力を欠くと客観的に判断される研究対象者が、実施されようとする研究に関して、その人の理解力に応じた分かりやすい言葉で説明を受け、研究に参加することを理解し、賛意を表すこと、と定義されています 14。これは、法的な「同意(コンセント)」とは区別されますが、倫理的には極めて重要なプロセスです。対象となるのは、例えば、まだ幼い子どもや、知的障害や認知症などを持つ成人で、インフォームド・コンセントの複雑な内容を法的に有効なレベルで理解することはできなくても、これから自分に何が行われるのかを簡単な言葉で説明されれば、それに対して「やりたい」「いやだ」といった自分の気持ちを表すことができる方々です。
倫理指針は、研究者が代諾者からインフォームド・コンセントを受けた場合であって、研究対象者本人が自らの意向を表すことができると判断されるときには、インフォームド・アセントを得るよう「努めなければならない」と定めています。この「努めなければならない」という言葉は、単なる推奨ではなく、研究者が実践すべき倫理的な義務であることを示しています。研究者は、対象者の年齢や発達段階、認知の状態に合わせて、絵を使ったり、平易な言葉を選んだりしながら、研究がどのようなもので、何のために行われるのかを丁寧に説明し、本人の賛意、つまり前向きな気持ちでの参加の意思を確認する努力をしなければなりません。このアセントを得るための具体的な説明方法なども、事前に研究計画書に記載し、倫理審査委員会の承認を得ておく必要があります。
インフォームド・アセントの倫理が最も力強く表れるのは、本人が拒否の意向を示した場合の対応です。指針では、アセントを得る手続きの中で、研究対象者が研究の全部または一部に対して拒否の意向を表した場合には、研究者はその意向を「尊重するよう努めなければならない」と明確に定めています。たとえ代諾者である親が研究参加に同意していたとしても、子ども本人が「いやだ」と強く言ったなら、その気持ちを無視して研究を強行することは原則として許されないのです。
この原則には、一つだけ非常に限定的な例外が設けられています。それは、その研究を実施することが、研究対象者本人に直接の健康上の利益をもたらすと期待され、かつ、代諾者がそれに同意している場合です。例えば、他に有効な治療法がなく、研究的な治療を受けることによってのみ本人の生命が救われる可能性があるといった、切迫した状況がこれに該当し得ます。しかし、このような極めて特殊なケースを除いては、本人が示した拒否の意思は重く受け止められなければなりません。
このインフォームド・アセントの考え方は、これまで「保護されるべき弱い立場」と見なされがちだった人々を、単なる受動的な存在から、研究における倫理的な対話に参加する能動的な主体へと捉え直すものです。法的な同意能力の有無にかかわらず、その人の感情や意思には価値があり、尊重されるべきであるというメッセージが込められています。特に、本人の「いやだ」という気持ちに強い保護を与えることで、インフォームド・アセントは、自己決定が困難な人々の人間としての尊厳を守るための、最後の、そして最も重要な砦として機能するのです。
まとめ
本記事では、人を対象とする生命科学・医学系研究において、研究対象者本人からインフォームド・コンセントを得ることが困難な場合に、代諾者等から同意を得るための手続きについて、その詳細と倫理的な背景を解説してきました。一連の規定を統合的に理解すると、そこには一貫した倫理哲学が流れていることが明らかになります。
その出発点は、個人の「自己決定権」の絶対的な尊重です 5。研究は、参加する個人の自由な意思による同意があって初めて成り立つという大原則から、倫理の体系は構築されています。代諾やインフォームド・アセントといった手続きは、この原則を形骸化させるための抜け道ではなく、むしろ、自己決定が困難な状況にある人々の尊厳と権利をいかにして守り、その人々の意思を最大限に汲み取るかという、より困難な課題に応えるために設計された、精緻な仕組みなのです。
未成年者に対する多層的な同意手続きは、年齢や成熟度に応じて本人の関与を高め、リスクの大きさに応じて保護のレベルを調整するという、柔軟かつ慎重な配慮を示しています。また、インフォームド・アセントの義務化は、法的な同意能力の有無という線引きを超えて、すべての研究対象者が持つ内面的な意思や感情を尊重しようとする、人間中心の倫理観を反映しています。特に、本人が示した拒否の意向を原則として受け入れるという規定は、この倫理観の核心部分をなすものです。
これらの複雑で厳格な手続きは、決して研究の遂行を妨げるための官僚的な障壁ではありません。むしろ、二つの重要な目的を両立させるための、社会的な知恵の結晶と捉えるべきです。一つは、科学的な合理性に基づき、社会にとって有益な研究を適正に推進すること 1。そしてもう一つは、その過程で、研究に参加するいかなる個人の人権と尊厳も決して損なわれてはならないという、絶対的な要請です 3。
この繊細なバランスを保つ上で、決定的に重要な役割を果たしているのが「倫理審査委員会」の存在です 9。代諾者の選定方針が妥当か、判断能力のない方を対象とすることが真に必要か、未成年者への配慮は十分か、アセントを得る方法は適切かといった、一つひとつの倫理的な判断は、研究者個人の裁量に委ねられることはありません。全ての計画は、医学、法律、倫理の専門家、そして一般の立場を代表する人々から成る独立した委員会によって、多角的に審査されます 9。この第三者による厳格な審査プロセスこそが、倫理指針に定められたルールが公正に適用され、研究対象者の保護という至上の目的が常に最優先されることを保証する、システム全体の要石なのです。
結論として、代諾者等からインフォームド・コンセントを得るための一連の手続きは、単なる規則の集合体ではなく、研究倫理の進化の証です。それは、同意という概念を法的な形式論から解き放ち、対象者一人ひとりの状況や能力に応じた、より人間的で、より深い敬意に基づいた実践へと高めようとする、絶え間ない努力の表れであると言えるでしょう。
引用文献
- 人を対象とする生命科学・医学系研究に関する 倫理指針 ガイダンス 令和3年4月 16 日, https://www.mext.go.jp/content/20240408-ope_dev01-000034640_1.pdf
- 人を対象とする生命科学・医学系研究に関する 倫 理 指 ... - 厚生労働省, https://www.mhlw.go.jp/content/001077424.pdf
- 人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針について (策定経緯及び医学系指針及, https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shomu_ryutsu/bio/kojin_iden/life_science/pdf/001_03_01.pdf
- 治験用語集|秋田大学未来研究統括機構 臨床研究支援オフィス, https://www2.hos.akita-u.ac.jp/chiken/patient/p_6.html
- インフォームド・コンセントとその要件 - Kobe University, https://www2.kobe-u.ac.jp/~emaruyam/medical/Lecture/slides/170304yokohama.pdf
- インフォームド・コンセント の誕生と成長 - 日本医師会, https://www.med.or.jp/dl-med/doctor/member/kiso/b02.pdf
- インフォームド・コンセント, https://amedproject.sfc.keio.ac.jp/190201wasedaB.pdf
- インフォームドアセント - 厚生労働省, https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000359ny-att/2r985200000359y7_1.pdf
- JACCRO 臨床研究 Q&A, http://www.jaccro.com/wp/wp-content/uploads/media/activities/clinical_qa/513_clinical_qa.pdf
- 研究倫理審査委員会の概要 - 国立がん研究センター, https://www.ncc.go.jp/jp/about/research_promotion/committee/shinsa/shinsa-gaiyou/about.html
- 介入研究と観察研究との違いについて, https://www.aro.med.kyushu-u.ac.jp/wp-content/uploads/2023/07/documenttm20220614-2.pdf
- 侵襲とは 介入とは, https://icrek.w3.kanazawa-u.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2023/03/example.pdf
- 臨床研究推進センター - 神戸大学医学部附属病院, https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/ctrc/researcher2/erb_bunrui.html
- 医学研究に参加する子どものインフォームド・アセント, https://tokoha-u.repo.nii.ac.jp/record/1452/files/3%E7%9F%B3%E5%B1%B1%E3%82%90%E3%81%A5%E7%BE%8E.pdf
- 日本における倫理審査委員会制度改革の動向 ―研究倫理指針から臨床研究法へ―, https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/life/haihu117/sanko1.pdf