オンライン診療を行う際には、医師と患者は次の3つについて年頭に置く必要があるとされます。
- 患者の日常生活の情報も得ることにより、医療の質のさらなる向上に結び付けていく
- 医療を必要とする患者に対して、医療に対するアクセシビリティ(アクセスの容易性)を確保し、よりよい医療を得られる機会を増やす
- 患者が治療に能動的に参画することにより、治療の効果を最大化する
なお、医療法第1条には次のようにあります。
医療を受ける者の利益の保護及び良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図り、もつて国民の健康の保持に寄与する
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6つの基本理念
オンライン診療には、6つの基本理念が設定されています。
- 医師ー患者関係と守秘義務
- 医師の責任
- 医療の質の確認及び患者安全の確保
- オンライン診療の限界などの正確な情報の提供
- 安全性や有効性のエビデンスに基づいた医療
- 患者の求めに基づく提供の徹底
1つずつ順番に見ていきましょう。
理念1 医師ー患者関係と守秘義務
医師ー患者間の関係において、診療に当たり、医師が患者から必要な情報の提供を求めたり、患者が医師の治療方針へ合意したりする際には、相互の信頼が必要となる。
このため、日頃より直接の対面診療を重ねている等、オンライン診療は医師と患者に直接的な関係が既に存在する場合に限って利用されることが基本であり、原則として初診は対面診療で行い、その後も同一の医師による対面診療を適切に組み合わせて行うことが求められる。
理念2 医師の責任
オンライン診療により医師が行う診療行為の責任については、原則として当該医師が責任を負う。
このため、医師はオンライン診療で十分な情報を得られているか、その情報で適切な診断ができるか等について、慎重に判断し、オンライン診療による診療が適切でない場合には、速やかにオンライン診療を中断し、対面による診療に切り替えることが求められる。
また、医師は患者の医療情報が漏洩することや改ざんされることのないよう、情報通信および患者の医療情報の保管について、十分な情報セキュリティ対策が講じられていることを確認しなければならない。
理念3 医療の質の確認及び患者安全の確保
オンライン診療により行われる診療行為が安全で最善のものとなるよう、医師は自らが行った診療について、治療成績等の有効性の評価を定期的に行わなければならない。
また、患者の急変などの緊急時等で、オンライン診療の実施が適切でない状況になった場合においても、患者の安全が確保されるよう、医師は、必要な体制を確保しなければならない。
理念4 オンライン診療の限界などの正確な情報の提供
オンライン診療においては、対面診療に比べて得られる患者の心身の状態に関する情報が限定される。
医師は、こうしたオンライン診療による診療行為の限界等を正しく理解したうえで、患者及びその家族等に対して、オンライン診療の利点やこれにより生ずるおそれのある不利益等について、事前に説明を行わなければならない。
オンライン診療を行う前に、オンライン診療の良いところと悪いところを事前に説明することが求められています。
これも広い意味では「インフォームド・コンセント」と言えるものです。
例えば、オンライン診療用のアカウントを開設する時に、「同意説明のための文章が表示され、同意しますというチェックボックスにチェックしないと先に進めない」というようなプロセスを挟むことになります。
理念5 安全性や有効性のエビデンスに基づいた医療
適切なオンライン診療の普及のためには、その医療上の安全性・必要性・有効性が担保される必要があり、医師は安全性や有効性についてのエビデンスに基づいた医療を行うことが求められる。
また、オンライン診療は、対面診療に比べて、得られる情報が少なくなってしまうことから、治験や臨床試験等を経ていない安全性の確立されていない医療を提供するべきではない。
理念6 患者の求めに基づく提供の徹底
オンライン診療は、患者がその利点及び生ずるおそれのある不利益等について理解した上で、患者がその実施を求める場合に実施されるべきものであり、研究を主目的としたり医師側の都合でのみ行ったりしてはならない。