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審議結果報告書
令 和 2 年 5 月 7 日
医薬・生活衛生局医薬品審査管理課
[販 売 名]
① ベクルリー点滴静注液 100 mg
② ベクルリー点滴静注用 100 mg
[一般名]
レムデシビル
[申請者]
ギリアド・サイエンシズ株式会社
[申請年月日]
令和2年5月4日
[審議結果]
本品目は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症が世界的に流行している昨今の状況において、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和 35 年法律第 145 号。以下「医薬品医療機器等法」という。)第 14 条の3第1項に基づく承認に該当することが見込まれるとして、承認申請があったものである。
本品目については、令和2年5月7日に開催された医薬品第二部会において、医薬品医療機器等法第 14 条の3第1項の規定による特例承認の可否について審議された。その結果、現時点において得られている情報は限定的であり、SARS-CoV-2 による感染症に対する本品目の有効性及び安全性を明確に結論付けることは困難であるものの、非臨床での検討において SARS-CoV-2 に対する抗ウイルス活性が報告されていること、SARS-CoV-2 による感染症患者を対象にプラセボ対照試験として実施された国際共同第Ⅲ相試験の速報値において、SARS-CoV-2 による感染症に対する治療効果が示唆されていること、臨床試験等における安全性は許容可能と考えられたこと等を踏まえれば、健康危機管理上の観点から本品目を緊急に使用する一定の意義はあると判断され、下記の承認条件が付されることを前提として、承認して差し支えないものとされた。
本品目は生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、再審査期間は8年、原体は劇薬に該当するとされた。
記
[承認条件]
- 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
- 本剤は、医薬品医療機器等法第 14 条の3第1項の規定に基づき承認された特例承認品目であり、現時点での使用経験が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、可能な限り本剤が投与された全症例について副作用情報等の本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。また、得られた情報を定期的に報告すること。
- 本剤の安全性に関する追加的に実施された評価に基づき、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。
- 本剤の有効性及び安全性に係る最新の情報を、医療従事者が容易に入手可能となるよう必要な措置を講じること。
- 本剤の投与が適切と判断される症例のみを対象に、あらかじめ患者又は代諾者に有効性及び安全性に関する情報が文書をもって説明され、文書による同意を得てから初めて投与されるよう、医師に対して要請すること。
- 医薬品医療機器等法施行規則(昭和 36 年厚生省令第 1 号)第 41 条に基づく資料の提出の猶予期間は、承認取得から起算して 9 カ月とする。なお、現在実施中の臨床試験の成績が得られた際には速やかに当該成績を提出することとし、その他の資料についても遅くとも承認取得後 9 カ月までには独立行政法人医薬品医療機器総合機構に提出すること。また、提出された資料等により、承認事項を変更する必要が認められた場合には、薬機法第 74 条の 2 第 3 項に基づき承認事項の変更を命ずることがあること。
特例承認に係る報告書
令和 2 年 5 月 5 日
独立行政法人医薬品医療機器総合機構
承認申請のあった下記の医薬品について、医薬品医療機器総合機構で作成した資料の概要は以下のとおりである。
記
販売名 | ①ベクルリー点滴静注液 100 mg ②ベクルリー点滴静注用 100 mg |
一般名 | レムデシビル |
申請者 | ギリアド・サイエンシズ株式会社 |
申請年月日 | 令和2年5月4日 |
剤形・含量 | ①1 バイアル(20 mL)中にレムデシビル 100 mg を含有する注射剤 ②1 バイアル中にレムデシビル 105 mg を含有する用時溶解注射剤(表示量の 5%が過量充てん量として含まれる) |
申請区分 | 医療用医薬品(1)新有効成分含有医薬品 |
特記事項 | 本品目は、医薬品医療機器等法第 14 条の 3 第 1 項に基づく第 14 条第 1 項の承認に該当する品目として取り扱われ、医薬品医療機器等法施行規則第 41 条により、申請にあたり添付すべき資料として、臨床試験等の試験成績に関する資料のみが提出された。したがって、品質、非臨床試験成績等に関する資料は提出されていない。本報告書は、提出された資料について取りまとめたものであって、審査の結果をまとめた審査報告書とは異なる。
本報告書は、医薬品審査管理課長通知(令和 2 年 4 月 23 日付け薬生薬審発 0423第 9 号)に基づき作成されたものである。 |
担当部 | 新薬審査第四部 |
別 紙:特例承認に係る報告
令和 2 年 5 月 5 日
I. 申請品目
[販 売 名]
①ベクルリー点滴静注液 100 mg
②ベクルリー点滴静注用 100 mg
[一 般 名]
レムデシビル
[申 請 者]
ギリアド・サイエンシズ株式会社
[申請年月日]
令和 2 年 5 月 4 日
[剤形・含量]
①1 バイアル(20 mL)中にレムデシビル 100 mg を含有する注射剤
②1 バイアル中にレムデシビル 105 mgを含有する用時溶解注射剤(表示量の 5%が過量充てん量として含まれる)
[申請時の効能・効果]
SARS-CoV-2 による感染症
[申請時の用法・用量]
通常、成人及び体重 40 kg 以上の小児にはレムデシビルとして、投与初日に 200 mg を、投与 2 日目以降は 100 mg を 1 日 1 回点滴静注する。通常、体重 40 kg 未満の小児にはレムデシビルとして、投与初日に 5 mg/kg を、投与 2 日目以降は 2.5 mg/kg を 1 日 1 回点滴静注する。総投与期間は 10 日までとする。
[特記事項]
本品目は、医薬品医療機器等法第 14 条の 3 第 1 項に基づく第 14 条第 1 項の承認に該当する品目として取り扱われ、医薬品医療機器等法施行規則第41 条により添付すべき資料の提出を相当の期間猶予することができる見込みのものであるとして、本申請に際しては、臨床試験等の試験成績に関する限られた資料のみが提出された。また、品質、非臨床試験成績等に関する資料は提出されていない。
II. 提出された資料の概略
米国 Gilead Sciences, Inc は、本剤に関し、米国における Emergency Use Authorization に係る申請を行い、当該申請は、米国で 2020 年 5 月 1 日付けで認められている。これを受けて申請者は本邦において、医薬品医療機器等法第 14 条の 3 第 1 項の規定による同法第 14 条第 1 項の特例承認を取得するための申請を行った。本申請に際して、米国 FDA に対する Emergency Use Authorization に係る申請時提出資料、米国 FDA の Emergency Use Authorization を受けた際に作成された FACT SHEET FOR HEALTH CARE PROVIDERS)、人道的見地から行われた本剤の投与に関する中間報告書、治験薬概要書、添付文書案が提出された。
1. 起原又は発見の経緯及び外国における使用状況
コロナウイルスはコロナウイルス科に分類される RNA ウイルスであり、ヒトに感染するコロナウイルスとして、ヒトに日常的に感染する 4 種類のコロナウイルス、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)及び中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)が知られている。本申請の対象とされるコロナウイルスについては、2019 年 12 月 31 日、武漢において発生した原因不明の肺炎が WHO に報告され、2020 年 1 月 12 日、WHO は当該肺炎が新型コロナウイルスによるものであると発表した)。その後、2020 年 1 月 30 日、WHO は武漢における新型コロナウイルス関連肺炎の発生状況が、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(Public Health Emergency of International Concern)に該当すると発表し、2020 年 2 月 11 日、新型コロナウイルスを severe acute respiratory syndrome coronavirus 2(SARSCoV-2)、SARS-CoV-2 による疾患を coronavirus disease(COVID-19)と命名した。
本邦においては、2020 年 1 月 15 日に新型コロナウイルスに感染した 1 例目の患者が確認され、2020年 2 月 1 日、新型コロナウイルス感染症が感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)に基づく指定感染症及び検疫法に基づく検疫感染症に指定された。また、2020 年 4月 7 日に改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が行われた。
なお、2020 年 5 月 5 日現在、世界において、新型コロナウイルス感染者は 3,489,053 例、うち死亡例は 241,559 例と報告されている。また、2020 年 5 月 4 日現在、本邦における感染者数は、15,069 例[患者 9,007 例、無症状病原体保有者 961 例、陽性確定例(症状有無確認中)5,101 例]、これに加え、チャーター便による海外からの帰国者において、患者 11 例、無症状病原体保有者 4 例、空港検疫において患者 35 例、無症状病原体保有者 112 例が確認されており、合計すると感染者数 15,231 例、うち死亡者 521 例と報告されている。
新型コロナウイルス感染症について、以下のような報告があるが、当該感染症の実態については未だ不明な点が多い。
中国において、感染者の年齢分布は、10 歳未満が 1%、10~19 歳が 1%、20~29 歳が 8%、30~79 歳が 87%、80 歳以上が 3%であったと報告されている。また、81%は軽症(肺炎に至っていない又は軽症の肺炎)、14%は重症(呼吸困難、呼吸回数 30 回/分以上、血中酸素飽和度 93%以下、動脈血酸素分圧/吸入気酸素濃度比(P/F 比)300 未満、又は 24~48 時間以内の 50%超の肺浸潤影)、5%は最重症(呼吸不全、敗血症性ショック又は多臓器不全)であり、2.3%が死亡し、80 歳以上では 14.8%、70~79 歳では8.0%、最重症例では 49.0%が死亡したと報告されている(JAMA 2020; 323: 1239-42)。
本邦の感染症発生動向調査及び積極的疫学調査で報告された新型コロナウイルス感染症確定症例(PCR 検査陽性)516 例の内訳は以下のとおりであった[2020 年 3 月 23 日現在、国立感染症研究所、https://www.niid.go.jp/niid/ja/covid-19/9533-covid19-14-200323.html(最終確認日:2020 年 5 月 5 日)]。
<性別>
男性 285 例、女性 231 例 <年齢(中央値[範囲])> 60[1, 97]歳 年齢区分別の分布:10 歳未満 6 例(1.2%)、10 代 3 例(0.6%)、20 代 46 例(8.9%)、30 代 52 例(10.1%)、40 代 59 例(11.4%)、50 代 87 例(16.9%)、60 代 98 例(19.0%)、70 代 124 例(24.0%)、80 代 39 例(7.6%)、90 歳以上 2 例(0.4%) <主な症状(情報無し・不明であった場合、分母から除いて集計)> 発熱 375/475 例(79%)、咳 353/465 例(76%)、肺炎 245/387 例(63%)、全身倦怠感 182/389 例(47%)、咽頭痛 115/393 例(29%)、鼻汁・鼻閉 79/321 例(25%)、頭痛 71/301 例(24%)、下痢 65/336 例(19%)、関節・筋肉痛 42/310 例(14%)、嘔気・嘔吐 20/318例(6%)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)10/277 例(4%)、結膜充血 6/283 例(2%) <医療的介入(情報無し・不明であった場合、分母から除いて集計)> ICU 入室 35/323 例(11%)、侵襲的換気(気管内挿管等)49/347 例(14%) <その他の介入> 体外式膜型人工肺(ECMO)使用 18 例(40 代 2 例、60 代 5 例、70 代 9 例、80 代 2 例) |
本薬は、生体内で加水分解等の代謝を経て生成するアデノシン三リン酸類似体が、RNA ウイルスの複製に必要な RNA ポリメラーゼを阻害することで抗ウイルス活性を示す。本薬は in vitro 試験においてSARS-CoV-2 に対する抗ウイルス活性が示されており(3.2 参照)、国内外において、新型コロナウイルス感染症に対する複数の臨床試験が実施中である。
2020 年 5 月 5 日時点で、本剤は本邦及び海外において承認されていないが、2020 年 5 月 1 日、米国において Emergency Use Authorization を得ている。
今般、申請者は、米国 FDA による Emergency Use Authorization が得られたことを受けて、本剤は医薬品医療機器等法第 14 条の 3 第 1 項の規定に基づく第 14 条第 1 項の承認に該当するとして、特例承認に係る承認申請を行った。本報告書は、医薬品審査管理課長通知(令和 2 年 4 月 23 日付け薬生薬審発 0423第 9 号)に基づき提出された資料に基づき迅速に取りまとめを行ったものである。
2. 主な臨床試験等の試験成績
本申請に際し、主な臨床試験等の試験成績として、SARS-CoV-2 による感染症患者を対象とした臨床試験 2 試験の速報値及び人道的見地から行われた本剤の投与経験に関する情報が提出された。
2.1 国際共同第Ⅲ相試験(ACTT 試験、NCT04280705、速報値<2020 年 2 月~継続中>)
18 歳以上の SARS-CoV-2 による感染症患者[目標例数 400 例(各群 200 例)]を対象に、本剤の有効性及び安全性を検討することを目的として、プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験が、米国、デンマーク、ドイツ、ギリシャ、日本、韓国、メキシコ、スペイン、英国、シンガポールの 10 カ国 69施設で実施されている。本試験の主な選択・除外基準は表 1 のとおりである。
表 1 主な選択・除外基準
選択基準 |
|
除外基準 |
|
用法・用量は、投与初日に本剤 200 mg 又はプラセボを、2~10 日目に本剤 100 mg 又はプラセボを 1日 1 回静脈内投与することとされた。なお、退院した場合は投与を中止することとされた。
有効性について、主要評価項目は、無作為化後 28 日目までにおける、回復までの時間とされた。1,063 例が 1:1 の割合で本剤群又はプラセボ群に割り付けられ、606 例の回復例が得られた時点で実施された主要評価項目等に関する予備的解析の結果は表 2 のとおりであった。
2.2 国際共同第Ⅲ相試験(GS-US-540-5773 試験、NCT04292899、速報値<2020 年 3 月~継続中>)
12 歳以上 18 歳未満かつ体重 40 kg 以上、及び 18 歳以上の SARS-CoV-2 による重症感染症患者[目標例数約 2,400 例(パート A:400 例(各群 200 例)、パート B:2,000 例)]を対象に、本剤の有効性及び安全性を検討することを目的として、無作為化非盲検並行群間比較パート(パート A)及び非盲検パート(パート B)からなる臨床試験が、米国、中国、フランス、ドイツ、香港、イタリア、日本、韓国、オランダ、シンガポール、スペイン、スウェーデン、スイス、台湾、英国の 15 カ国又は地域 181 施設で実施されている。現在、パート A の速報値のみが得られている。パート Aの主な選択・除外基準は表 3 のとおりである。
被験者は、本剤を最長 5 日間投与する群(5 日間投与群)又は最長 10 日間投与する群(10 日間投与群)に無作為に割り付けられた。
用法・用量は、5 日間投与群では、投与初日に本剤 200 mg を、2~5 日目に 100 mg を 1 日 1 回静脈内投与、10 日間投与群では、投与初日に本剤 200 mg を、2~10 日目に 100 mg を 1 日 1 回静脈内投与することとされた。なお、退院した場合は投与を中止することとされた。
無作為化され、治験薬が 1 回以上投与された 397 例(5 日間投与群:200 例、10 日間投与群:197 例)が有効性解析対象集団及び安全性解析対象集団とされた。
有効性について、主要評価項目は、7 点順序尺度(表 4)で評価した、無作為化後 14 日目の臨床状態とされた。その結果、臨床状態の改善について、5 日間投与群に対する 10 日間投与群のオッズ比は 0.76[95%信頼区間 0.51, 1.13]であった。
表 4 7 点順序尺度
スコア | 尺度 |
1 | 死亡 |
2 | 入院かつ侵襲的人工呼吸器又は ECMO による管理 |
3 | 入院かつ非侵襲的換気又は高流量酸素による管理 |
4 | 入院かつ低流量酸素による管理 |
5 | 入院しており、酸素吸入を要しないが SARS-CoV2 による感染症に関わらず継続的な治療を要する |
6 | 入院しており、酸素吸入及び、本剤投与以外の継続的な治療は要しない |
7 | 退院 |
また、5 日間投与群及び 10 日間投与群でそれぞれ、50%の患者が退院するまでの時間は 10 日及び 11日、14 日目において、臨床状態の改善が認められた患者の割合は 65%(129/200 例)及び 54%(107/197例)、回復が認められた患者の割合は 70%(140/200 例)及び 59%(116/197 例)、死亡の割合は 8%(16/200 例)及び 11%(21/197 例)であった。
安全性について、5 日間投与群及び 10 日間投与群でそれぞれ、有害事象は 71%(141/200 例)及び74%(145/197 例)、本剤との因果関係がありと判断された重篤な有害事象は2%(3/200 例)及び 2%(4/197 例)、本剤との因果関係がありと判断されたグレード 3 以上の有害事象は 4%(8/200 例)及び5%(10/197 例)に認められた。有害事象により投与中止に至った症例は、5 日間投与群で 5%(9/200 例)、10 日間投与群で 10%(20/197 例)に認められた。
2.3 人道的見地から行われた本剤の投与経験(Compassionate Use)(2020 年 1 月 25 日~継続中、データカットオフ 2020 年■月■日)
2020 年 1 月 25 日から 2020 年 月 日までに少なくとも本剤が 1 回以上投与された SARS-CoV-2 による感染症患者 163 例のデータが取りまとめられた。本剤が投与された国別の患者数は、イタリア 84例、米国 46 例、日本 9 例、フランス 5 例、スイス 4 例、オーストリア、英国各 3 例、ドイツ、アイルランド、スペイン各 2 例、カナダ、ギリシャ、オランダ各 1 例であった。
用法・用量は、投与初日に本剤 200 mg を、投与 2~10 日目に 100 mg を 1 日 1 回静脈内投与することとされた。医師の裁量で標準療法の実施が可能とされた。
163 例のうち、116 例が 10 日間の投与を完了し、残る患者における本剤の投与期間は 32 例が 5~9 日間、15 例が 4 日間以下であった。フォローアップ期間は 4 日間以下が 2 例、5~9 日間が 21 例、10~15日が 64 例、16 日以上が 76 例であった。
患者の選択・除外基準は表 5 のとおり、本剤の限られた供給量に対する投与希望例の増加に伴い、より厳しい基準へと変更された。また、中止基準は、ALT が基準値上限の 5 倍以上又は、Cockcroft-Gault式により推定したクレアチニンクリアランスが 30 mL/min 未満とされた。
有効性について、本剤の投与前後における酸素療法の状態は表 6 のとおりであり、47.2%(77/163例)の患者において酸素療法の状態の 1 段階以上の改善が認められた。死亡は、20.2%(33 例)に認められた。
本邦において本剤が投与された 9 例(侵襲的換気 8 例、低流量酸素療法 1 例)について、酸素療法の状態の 1 段階以上の改善が 6 例で認められた。死亡は 1 例に認められた。
安全性について、有害事象は 50.3%(82/163 例)、重篤な有害事象は 23.3%(38/163 例)に認められ、主な事象名は表 7 及び表 8 のとおりであった。投与中止に至った有害事象は、13 例[腎不全 3 例、ALT 上昇 2 例、急性腎障害 2 例、多臓器機能不全症候群 2 例、肝炎、肝機能検査値上昇、腎尿細管壊死、収縮機能障害、呼吸窮迫、斑状丘疹状皮疹、発疹、AST 増加、腎クレアチニン・クリアランス異常及び低血圧各 1 例(重複あり)]に認められ、肝炎、肝機能検査値上昇、急性腎障害、発疹及び低血圧各 1 例は本剤との因果関係はありとされた。
本邦において本剤が投与された 9 例 26)について、有害事象は 5 例(腎機能障害、低血圧/心房細動/腎機能障害/高ナトリウム血症/肝酵素上昇/播種性血管内凝固/出血/血中ビリルビン増加/喀血/気胸、ALT 増加/AST 増加/アミラーゼ増加、高ナトリウム血症/肝酵素上昇/腎機能障害/ミオクローヌス/下痢/深部静脈血栓症/心停止、そう痒症)に認められた。また、重篤な有害事象は 2 例(低血圧/播種性血管内凝固/出血/気胸、心停止)に認められ、いずれも本剤との因果関係は否定された。
なお、人道的見地から行われた本剤の投与経験のうち、2020 年 3 月 7 日までに本剤が投与された 53 例のデータが文献(N Engl J Med 2020 Apr 10, doi:10.1056/NEJMoa2007016)に取りまとめられている。
3. 提出された資料を踏まえた現時点のまとめ
提出された資料から、現時点において得られている情報は限定的であり、本剤の品質、有効性及び安全性について明確に結論付けることは困難である。現在、臨床試験が実施中であることから、当該臨床試験成績を含め、本申請において提出が猶予された資料が提出され次第、改めて本剤の品質、有効性及び安全性について検討する必要がある。
しかしながら、本邦において SARS-CoV-2 による感染症に対して製造販売承認された医薬品はなく、緊急事態宣言が行われる等、緊迫した状況にある中、以下の点を考慮すると、Emergency Use Authorizationの際に作成された FACT SHEET FOR HEALTH CARE PROVIDERS に記載されている使用上の留意点が守られること等を前提として、本剤を本邦において特例承認により使用可能な状況とすることには一定の意義があると考える。
- 本薬は in vitro 試験及び感染動物モデルによる非臨床試験において、SARS-CoV-2 に対する抗ウイルス活性が示されていること(3.2 参照)。
- SARS-CoV-2 による感染症患者を対象にプラセボ対照試験として実施された国際共同第Ⅲ相試験(ACTT 試験)の速報値(2.1 参照)において、SARS-CoV-2 による感染症に対する治療効果が示唆されていること。
- 健康成人(3.1 参照)及びエボラウイルスによる感染症患者(3.1 参照)を含めた投与経験により一定の忍容性が示唆されていること。
- 米国 FDA において Emergency Use Authorization が得られていること。
なお、本剤の臨床における投与経験は非常に限られていること、今後、本剤の有効性及び安全性に係る知見が増えることが想定されることから、本剤の投与を検討する場合には、その時点で得られている最新の情報も踏まえて、本剤投与によるベネフィット・リスクバランスを慎重に判断する必要がある。したがって、申請者はこれらの情報について、医療従事者が容易に把握可能となるよう、必要な措置を講ずる必要がある。
3.1 米国 FDA の Emergency Use Authorization について
米国 FDA は、国際共同第Ⅲ相試験[ACTT 試験(NCT04280705、2.1 参照)及び GS-US-540-5773 試験(NCT04292899、2.2 参照)]の速報値を評価し、SARS-CoV-2 による感染症により入院中の重症患者における本剤の既知及び潜在的な有効性に対し本剤の既知及び潜在的なリスクは許容できると判断している[https://www.fda.gov/media/137564/download(最終確認日:2020 年 5 月 5 日)]。また、Emergency Use Authorization を受けた品目に対して作成される FACT SHEET FOR HEALTH CARE PROVIDERS [https://www.fda.gov/media/137566/download(最終確認日:2020 年 5 月 5 日)]において、Emergency Use Authorization を支持するその他のものとして以下の情報が記載されている。
- 人道的見地から行われた本剤の投与経験(Compassionate Use)(2.3 参照)
- 健康成人を対象とした海外第Ⅰ相試験(GS-US-399-1812 試験、GS-US-399-1954 試験、GS-US-399-4231 試験及び GS-US-399-5505 試験)
- ・ 138 例に本薬が投与され、1 日 1 回反復投与時に一時的な AST 及び ALT の上昇が認められた。
- エボラウイルスによる感染症患者を対象とした海外第Ⅱ/Ⅲ相試験(PALM 試験、N Engl J Med 2019; 381: 2293-303、NCT03719586)
- 無作為化非盲検並行群間比較試験
- 175 例が本剤群に無作為に割り付けられた。
- 本剤群の 9 例において、試験実施施設の責任医師等により原疾患に起因しないと判断された重篤な有害事象が認められた。このうち、初回用量(200 mg 又は 5 mg/kg)投与中に発現し、致死的な心停止に至った低血圧は本剤との因果関係がありと判断された。独立安全性管理委員会は、当該死亡例について、原疾患である劇症型のエボラウイルスによる感染症に起因するものか本剤によるものか簡単に判断することはできないと言及している。
3.2 有効性について
本薬は、in vitro 試験において、ヒト初代培養気道上皮細胞で SARS-CoV-2 臨床分離株に対して抗ウイルス活性が示されている(EC50:9.9 nmol/L)。また、SARS-CoV-2 感染アカゲザルにおいて、呼吸器系疾患の臨床徴候の改善、肺中のウイルス RNA 量減少等が示されており、非臨床的には SARS-CoV-2 に対する効果が示されている。
また、国際共同第Ⅲ相試験(GS-US-540-5773 試験、NCT04292899)の速報値(2.2 参照)についてはプラセボ等の比較対照が設定されておらず解釈に限界があるものの、プラセボ対照試験として実施された国際共同第Ⅲ相試験(ACTT 試験、NCT04280705)の速報値(2.1 参照)において、回復までの時間(中央値)が本剤群で 11 日、プラセボ群で 15 日(ハザード比:1.31[95%信頼区間 1.12, 1.54, p<0.001])、死亡割合は本剤群で 8.0%、プラセボ群で 11.6%であった(p = 0.059)との報告があることを踏まえれば、臨床的にも本剤の有効性が示唆されている。一方で、ACTT 試験と同様にプラセボ対照試験として中国で実施された臨床試験(NCT04257656、Lancet 2020 Apr 29 https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)31022-9)において、無作為化後 28 日目までにおける臨床状態の改善までの時間(中央値[第一四分位、第三四分位])は本剤群で 21[13.0, 28.0]日、プラセボ群で 23[15.0, 28.0]日、ハザード比は 1.23[95%信頼区間 0.87, 1.75]であったとの報告もある。なお、本試験は治験環境の変化により、目標被験者数の組み入れを達成できず、試験を中止したものであり、著者らは本試験結果から本剤の有用性を適切に評価できなかった可能性があると述べている(Lancet 2020 April 29 https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)31023-0))。以上を踏まえると、本剤の有効性について現時点で明確に結論付けることは困難であり、実施中の臨床試験成績も踏まえて、改めて評価する必要がある。したがって、申請者は、今後得られる臨床試験の結果等、有効性に関する新たな情報が得られた場合には、速やかに提出すると共に、本剤の適正使用に必要な情報を速やかに医療現場に提供する必要がある。
なお、in vitro 試験において本薬に対する SARS-CoV-2 耐性発現試験は実施されておらず、本薬に対して感受性低下を示す SARS-CoV-2 薬剤耐性株の発現に関する臨床情報も現時点では得られていない。一方で、げっ歯類コロナウイルスのマウス肝炎ウイルスを用いた本薬の in vitro 耐性発現試験において、RNA 依存性 RNA ポリメラーゼにアミノ酸変異が確認され、本薬に対して感受性の低下を示したことから、SARS-CoV-2 においても、ポリメラーゼ領域に同様の変異が起こり、本薬に対して感受性の変化が起こる可能性がある。耐性変異の発現の有無は本剤の有効性に関する重要な情報となり得る可能性があることから、本剤に対する耐性に関する情報は、公表文献も含めて製造販売後も引き続き収集し、新たな知見が得られた場合には、速やかに医療現場に情報提供することが重要である。
3.3 安全性について
本剤の安全性に関する情報は極めて限られており、日本人における安全性を含めた本剤の安全性プロファイルについて現時点で結論付けることは困難である。Emergency Use Authorization の際に作成されたFACT SHEET FOR HEALTH CARE PROVIDERS に記載されている使用上の留意点が守られることに加えて、少なくとも以下の点について適切に注意喚起を行う必要がある。また、申請者は、製造販売後において、引き続き、本剤の安全性について情報収集を行い、新たな情報が得られた場合には迅速かつ適切に医療現場に情報提供する必要がある。
3.3.1 肝障害及び肝機能障害を有する患者への投与について
健康成人を対象とした海外第Ⅰ相試験(GS-US-399-1954 試験及び GS-US-399-5505 試験)においてグレード 1 及び 2 の AST、ALT 上昇が認められ、いずれも投与中止後に回復した。また、国際共同第Ⅲ相試験(GS-US-540-5773 試験)において認められたグレード 3 以上の肝機能検査値異常は表 9のとおりであった。グレード 3 以上の肝機能障害関連事象は認められなかった。
エボラウイルスによる感染症患者を対象とした海外第Ⅱ/Ⅲ相試験(PALM 試験、NCT03719586)において本剤群に割り付けられた 175 例について、重篤な肝機能検査値異常及び肝機能に関連する事象は報告されていない。
人道的見地から行われた本剤の投与経験(Compassionate Use、2.3 参照)において、肝機能検査値異常が 11.7%(19/163 例)に認められた。初回投与から発現までの時間は 1~16 日であった。このうち 4 例は、投与開始 5 日目に肝機能検査値異常のため、事前の規定に従い本剤投与が中止された。また、重篤な肝機能障害関連の有害事象が 7 例に認められた。敗血症性ショック及び多臓器不全を併発した重篤患者において重篤な血中ビリルビン増加が認められた。その他の患者においては、高ビリルビン血症や肝機能障害の症状を示唆する有害事象は報告されなかった。
また、臨床試験等の除外基準において、AST 又は ALT が基準値の 5 倍超の患者が設定されている。以上より、本剤投与により肝障害が発現する可能性がある。これらの状況を踏まえると、肝障害及び肝機能障害を有する患者への本剤の投与について注意喚起を行う必要がある。
3.3.2 腎障害及び腎機能障害を有する患者への投与について
本薬は、ラット及びアカゲザルへの反復投与では臨床曝露量未満で腎尿細管に変性・壊死が認められたものの、カニクイザルへの反復投与では当該所見は認められず、更に健康成人を対象とした臨床試験(本剤 225 mg までを単回静脈内投与した臨床試験、本剤 150 mg を 1 日 1 回最長 14 日間反復静脈内投与した臨床試験等)では、腎臓に関連した有害事象は認められていない。臨床におけるヒトの安全性上の知見に乏しいこともあり、ラットで認められた腎毒性のヒトへの外挿性は不明であるが、人道的見地から行われた本剤の投与においては、腎機能に係る除外基準が設定された条件下で、腎機能障害、急性腎障害及び腎不全等の腎障害が報告され、本剤投与中止に至った例も報告されていることから、本剤投与により重篤な腎障害が発現する可能性がある。また、添加剤 SBECD は腎尿細管に対して毒性を有し、腎機能低下を示す患者への安全性は確立されていない。以上より、腎障害及び腎機能障害を有する患者への本剤の投与について注意喚起を行う必要がある。
3.3.3 小児への投与について
非臨床試験において小児に特有の懸念されるような所見は認められていない。しかしながら、小児では腎機能が未発達であり、非臨床試験において腎毒性が認められていること(3.3.2 参照)、添加剤 SBECDについて 2 歳未満の小児での腎臓に対する安全性は確立されていないこと、及び小児を対象とした臨床試験は実施されていないことから、小児への本剤の投与に際しては、本剤投与によるベネフィット・リスクを比較検討した上で、投与の要否を検討することが適切である。また、小児への本剤投与については、腎機能を含む全身状態に注意しながら慎重に行う必要がある。
3.3.4 妊婦及び授乳婦への投与について
非臨床試験において胎児の発生及び出生児の身体発達に関連した毒性は認められない。しかしながら、人道的見地から行われた本剤の投与においては妊娠中の女性は除外基準と設定されていたこと、妊娠中の女性を対象として安全性を検討した臨床試験は実施されていないことから、妊娠している可能性のある女性又は妊婦へは、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与を検討すべきと考える。なお、ラットを用いた受胎能・初期胚発生試験において、黄体数・生存胚数への影響が認められており、添付文書にて注意喚起が必要と考える。
非臨床試験において、本薬は母乳を介して出生児体内へ移行するものの、児に安全性上問題となる所見は認められていない。しかしながら、臨床において授乳婦及び児に関する情報は得られていないことから、潜在的リスクを考慮し、授乳婦へは治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与を検討することが適切と考える。
3.3.5 その他
3.3.5.1 その他の有害事象について
本剤投与時に以下のような有害事象が認められたとの報告があるため、当該情報を提供する必要がある。
浮動性めまい、全身性そう痒症、注入部位血管外漏出、医療機器使用部位皮膚炎、斑状出血、失神寸前の状態、医療機器使用部位刺激感、リパーゼ増加(グレード 3)、アミラーゼ高値(グレード 1)、総コレステロール増加(グレード 2 以下)、LDL コレステロール増加(グレード 2 以下)、便秘、消化不良、四肢痛、頭痛、悪心、嘔吐、振戦、食欲減退、ALT 増加(グレード 2 以下)、AST 増加(グレード2 以下)、下痢、接触皮膚炎、そう痒症、注入部位出血、注入部位疼痛、心電図 T 波逆転(グレード 1)、PT 延長(グレード 1)、高血糖、紅斑、鼻漏、血清カルシウム(グレード 1)、カリウム増加(グレード 1)、低血圧。
3.3.5.2 モニタリングについて
本剤については、現時点で得られている安全性情報が限定的であることから、有害事象の早期発見のために臨床症状や臨床検査値(白血球数、白血球分画、ヘモグロビン、ヘマトクリット、血小板数、クレアチニン、グルコース、総ビリルビン、AST、ALT、ALP、プロトロンビン時間等)を投与中は毎日モニタリングすべきである。
3.4 製造販売後の対応について
本剤の品質、有効性及び安全性に関する情報が非常に限られており、また、特に日本人における有効性及び安全性に関する情報は限られていることから、以下の点について適切に対応する必要がある。
- 本剤の有効性及び安全性に関する情報を速やかに入手及び評価できる体制を整えた上で、本剤の副作用その他の事由によるものと疑われる疾病、障害又は死亡の発生を知ったときは、速やかに報告すること。特に、医薬品医療機器等法第 228 条の 20 第 1 項第 1 号に掲げる期間内に報告が必要な事項については、同項の規定にかかわらず、速やかに提出すること。
- 本剤の有効性及び安全性に関する情報は極めて限られていることから、現在進行中の治験又は臨床試験の成績が得られ次第、当該成績をとりまとめて速やかに報告し、公表すること。
- 製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、可能な限り本剤が投与された全症例について副作用情報等の本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。
- 本剤の有効性及び安全性に係る最新の情報を医療従事者が容易に入手可能となるよう必要な措置を講ずること。
- 市販直後調査期間終了後も本邦における安全性の一定の評価が終了するまでの間は、市販直後調査に準じた監視活動及びリスク最小化活動を行うこと。
- 本剤が特例承認を受けたものであること及び当該承認の趣旨が、本剤を使用する医療関係者及び患者又は代諾者に説明され、理解されるために必要な措置を講じること。
- 本剤の投与が適切と判断される症例のみを対象に、あらかじめ患者又は代諾者に有効性及び安全性に関する情報が文書をもって説明され、文書による同意を得てから初めて投与されるよう、医師に対して要請すること。
- 医師主導臨床試験(ACTT 試験、NCT04280705)についても、情報を収集し、適切に評価等の対応を行うこと。
3.5 効能・効果、用法・用量について
本剤を特例承認する場合には、以下の承認条件を付した上で、効能・効果及び用法・用量は、米国 FDAの Emergency Use Authorization の際に作成された FACT SHEET の内容に準じ、以下のように設定することが妥当と考えられる。用法・用量については成人の SARS-CoV-2 による感染症患者を対象とした本剤の臨床試験において当該用法・用量以外は検討されていないことから、当該用法・用量の範囲内で使用すべきであると考える。なお、今後得られる情報により、本剤の最適な用法・用量が決定される可能性があることに留意する必要がある。また、小児の用法・用量はモデリング&シミュレーションによる小児の血漿中濃度推移の予測結果に基づくものであり、本剤を使用した臨床試験成績が得られていない年齢層も含まれることから、小児への投与を検討する場合には、その時点における最新の情報に基づき、ベネフィット・リスクを比較検討した上で、本剤の投与の要否について判断する必要がある。
[効能・効果]
SARS-CoV-2 による感染症
[用法・用量]
通常、成人及び体重 40 kg 以上の小児にはレムデシビルとして、投与初日に 200 mg を、投与 2 日目以降は 100 mg を 1 日 1 回点滴静注する。
通常、体重 3.5 kg 以上 40 kg 未満の小児にはレムデシビルとして、投与初日に 5 mg/kg を、投与 2 日目以降は 2.5 mg/kg を 1 日 1 回点滴静注する。
なお、総投与期間は 10 日までとする。
[承認条件等]
1)本剤は、承認に当たり、薬機法第 14 条の 3 第 2 項の規定に基づき、医薬品医療機器等法施行令第 28条各号に掲げる以下の義務を課すこととしたこと。
- 第 1 号関係
本剤の有効性及び安全性に関する情報は極めて限られていることから、現在進行中の治験又は臨床試験の成績が得られ次第、当該成績をとりまとめて速やかに報告すること。 - 第 2 号関係
本剤の副作用その他の事由によるものと疑われる疾病、障害又は死亡の発生を知ったときは、速やかに報告すること。 - 第 3 号関係
本剤が特例承認を受けたものであること及び当該承認の趣旨が、本剤を使用する医療関係者及び患者又は代諾者に説明され、理解されるために必要な措置を講じること。 - 第 4 号関係
本剤の販売又は授与の相手方及びこれらの相手方ごとの販売数量又は授与数量を必要に応じて報告すること。
2)本剤は、承認に当たり薬機法第 79 条第 1 項の規定に基づき、以下の条件を付したこと。
- 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
- 本剤は、医薬品医療機器等法第 14 条の 3 第 1 項の規定に基づき承認された特例承認品目であり、現時点での使用経験が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、可能な限り本剤が投与された全症例について副作用情報等の本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。また、得られた情報を定期的に報告すること。
- 本剤の安全性に関する追加的に実施された評価に基づき、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。
- 本剤の有効性及び安全性に係る最新の情報を、医療従事者が容易に入手可能となるよう必要な措置を講じること。
- 本剤の投与が適切と判断される症例のみを対象に、あらかじめ患者又は代諾者に有効性及び安全性に関する情報が文書をもって説明され、文書による同意を得てから初めて投与されるよう、医師に対して要請すること。
- 医薬品医療機器等法施行規則(昭和 36 年厚生省令第 1 号)第 41 条に基づく資料の提出の猶予期間は、承認取得から起算して 9 カ月とする。なお、現在実施中の臨床試験の成績が得られた際には速やかに当該成績を提出することとし、その他の資料についても遅くとも承認取得後 9 カ月までには独立行政法人医薬品医療機器総合機構に提出すること。また、提出された資料等により、承認事項を変更する必要が認められた場合には、薬機法第 74 条の 2 第 3 項に基づき承認事項の変更を命ずることがあること。
3)本剤は、医薬品医療機器等法第 14 条の 3 第 1 項に基づく承認であるため、同法第 75 条の 3 の規定により、同法第 14 条の 3 第 1 項各号のいずれかに該当しなくなったと認めるとき、又は保健衛生上の危害の発生若しくは拡大を防止するため必要があると認めるときは、これらの承認を取り消すことがあること。
以上
参照
https://www.pmda.go.jp/drugs/2020/P20200518001/230867000_30200AMX00454000_A100_1.pdf