ビジネス全般

認知症政策研究事業(令和4年度厚生労働科学研究)

1.研究事業の目的・目標

【背景】

我が国における認知症の人の数は平成 24 年で約 462 万人、65 歳以上高齢者の約7人に1人と推計されている。また、この数は高齢化の進展に伴いさらに増加が見込まれており、令和7年には認知症の人は約 700 万人前後になり、65 歳以上高齢者に対する割合は、現状の約7人に1人から約5人に1人に上昇する見込みとされている。このため平成 27 年に策定(平成 29年改訂)された認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)では認知症の人の意思を尊重しできる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続ける社会の実現を目標として掲げている。

さらに、令和元年6月には認知症施策推進大綱(以下、認知症大綱)が策定され、共生と予防を二本柱として施策を推進することとされている。

本研究事業は、認知症に関する地域特有の状況も含めた現状を正確に把握し、それらの分析や先進的な科学研究の成果から、取組の好事例を示し、検証によりモデルを構築し、政策に活かすことが求められる。また、その成果を認知症ご本人およびご家族の意見も踏まえながら検証し、社会に広く還元することが求められる。

【事業目標】

  • 認知症の人の意思を尊重し、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続ける社会の実現に寄与する。
  • 一次予防(発症リスク低減、発症遅延)、二次予防(早期発見、早期対応)、三次予防(重症化防止)の観点から予防の取組に資するエビデンスの構築を行う。
  • 経済的負担も含めた社会への負担を軽減し、医療・介護サービス等の地域包括ケアシステムを包括した社会全体の取組のモデルを構築する。

【研究のスコープ】

  • 認知症の人や介護者の課題を抽出、整理するための実態調査
  • 適時・適切な医療・介護等の提供につながる手法の開発・検証、ガイドライン作成のための調査研究

【期待されるアウトプット】

新オレンジプラン、認知症大綱において示された政策の運用・推進に資する成果を創出する。具体的には以下の成果が期待される。

  • 施策の計画・立案、推進・評価にあたって必要となる認知症の人や介護者の実態に関する基礎資料の作成
  • 認知症疾患における介護者との関係性社会・環境要因との関連の解明
  • 政策的な観点から、地域や職域などにおいて認知症予防に向けて資源の活用法や地域づくりをすすめる視点からの方策等の検討
  • 認知症に関連した行動心理症状を含めた諸問題を政策的観点から解決するための方策等の検討

【期待されるアウトカム】

新オレンジプラン・認知症大綱の目標である認知症予防や、認知症の人の意思を尊重し、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続ける社会の実現に寄与する。つまり、独居する認知症を含む全ての人が、安心・安全に地域で生活し、安心・安全で適切な医療およびケアを受けることに寄与する。

2.これまでの研究成果の概要

  • 「認知症の人やその家族の視点を重視した認知症高齢者にやさしい薬物療法のための研究」(平成 30~令和2年度)では、高齢者の多剤服用の問題を調査するとともに、認知症を有することがどのように影響を与えるかに関して検討を行った。
  • 「認知症に関する血液・髄液バイオマーカーの適正使用のための研究」 (令和元~2年度)では、血液・髄液バイオマーカーが数多く開発される中、その適正な使用に関して検討を行い、これに関する手引きを作成した。
  • 「独居認知症高齢者等が安全・安心した暮らしをするための環境づくりのための研究」(令和元~3年度、継続中)では、認知症者独居世帯・認認介護世帯の生活状況や医療介護サービスの受給状況等の実態調査を行い、これらの世帯における問題点や課題を整理している。

3.令和4年度に継続課題として優先的に推進するもの

  • 「軽度認知障害の者への支援のあり方に関する研究」 (令和3~5年度)においては、認知症診断がついていないために医療の枠組みに取り込まれていない人々(軽度認知障害の人々)については、一次予防(発症リスク低減、発症遅延)の取組が効果を上げることが期待されているが、未だ支援方策が未だ十分確立されていないことから、優先的に推進させる必要がある。

4.令和4年度に新規研究課題として優先的に推進するもの

「感染症蔓延を考慮した認知症に対する遠隔医療およびケアを可能・促進化する研究」

COVID-19 感染症蔓延下においては、心理的ストレス、外出自粛による活動低下などにより、認知機能低下の進行及び認知症発症リスクの増大が懸念されており、さらにこのような中で外来受診やデイケア参加の抑制等が問題になっている。受診しない認知症者にどのようにアクセスするか、受診の希望はあっても感染症のために来院できない認知症者にどのように認知機能評価を行うか、日常生活をモニタリングして見守りながら生活をいかに活性化させるかは大きな課題となっているが、これに対しては遠隔医療およびケアによる解決が望まれている。そこで、認知症における遠隔医療およびケアを可能にし、促進するための検討を行う。

「いわゆる「治療可能な認知症」と呼ばれる病態を適切に鑑別診断し治療に導くプロセスを検討する研究」

令和元年度の老人保健健康増進等事業において、いわゆる「治療可能な認知症」に関する実態調査を行ったが、そこでは特発性正常圧水頭症、うつ病、癲癇、せん妄などの各種病態との鑑別が重要であることが浮き彫りになった。調査対象の診療機関においては適切に鑑別診断を行うべく努力されてはいるものの、それぞれの疾患において十分な鑑別がなされていない場合もあった。例えば、特発性正常圧水頭症の場合はアルツハイマ―型認知症が合併しているケースが2~3割存在すること、うつ病に関しても認知症と合併しているケースや認知症の前駆症状として発現している場合が存在すること、またてんかんに関してはそれを鑑別するてんかん専門医の数が少ないことなどの問題がある。本研究では、これらの認知症と鑑別すべき疾患を適切に治療に導くプロセスを検討する。

「独居認知症高齢者等の地域での暮らしを安定化・永続化するための研究」

認知症者が一人で暮らす世帯(認知症者独居世帯)、認知症者が認知症者を介護する世帯が増加し社会問題化しており、これらの認知症者独居世帯等の生活状況や医療介護サービスの受給状況等の実態を把握し、その問題点や課題を調査してきた。独居認知症高齢者等の地域での暮らしは不安定要因が多く、それを減らすためにはこれらの人々が社会とのつながりの機会を持ち、地域での疏通性を高め、さらに孤立のリスクに直面したときには可及的速やかにサポートを行っていく体制が必要である。本研究では、人的・経済的なサポートが限られる中で既存の地域包括ケアシステムを有効活用しつつ、独居認知症高齢者等の地域での暮らしの安定化・永続化を可能にする地域システムを考案し、検証する。

「認知症の病態を適切に評価するための認知機能および神経心理検査方法の検討」

認知症の治療およびケアには適宜適切な評価を行うことが必要であり、そのために現在まで複数の認知機能および神経心理検査方法が開発されているが、一部の検査には版権が設定されていることから、全国の病院・診療所および介護施設等において標準的な病態の評価を促進することが困難な状況にある。本研究では幅広く使用できる検査法・評価法を拡充することにより、認知症の病態の標準的な評価方法の検討を行う。

5.令和4年度の研究課題(継続及び新規)に期待される研究成果の政策等への活用又は実用化に向けた取組

  • 「軽度認知障害の者への支援のあり方に関する研究」 (令和3~5年度)においては、認知症診断がついていないために医療の枠組みに取り込まれていない人々に対しても支援を行うべく検討するものであり、高齢者が安心・安全に、適切な医療および心理的ケアを受けることに貢献する。
  • 「感染症蔓延を考慮した認知症に対する遠隔医療およびケアを可能・促進化する研究」(新規)においては、COVID-19 のような感染症のために阻害された認知症に対する医療とケアに関して、遠隔化技術を応用することにより今後感染症蔓延下においても高齢者が安心・安全に、適切な医療およびケアを受けることに貢献する。
  • 「いわゆる「治療可能な認知症」と呼ばれる病態を適切に鑑別診断し治療に導くプロセスを検討する研究」(新規)においては、治療可能な認知症と呼ばれる病態を、適切に鑑別し、適切に治療に導くプロセスを検討し、高齢者が安心・安全に、適切な医療を受けることに貢献する。
  • 「独居認知症高齢者等の地域での暮らしを安定化・永続化するための研究」(新規)においては、独居認知症高齢者等の問題点や課題の整理を踏まえて、これらの人々が地域での疏通性を高め、さらに孤立のリスクに直面したときには可及的速やかにサポートを受けられるよう、既存の地域包括システムを有効活用し、独居認知症高齢者等の地域での暮らしの安定化・永続化に貢献する。
  • 「認知症の病態を適切に評価するための認知機能および神経心理検査方法の検討と開発」(新規)においては、幅広く使用できる検査法・評価法を拡充することにより、治療およびケアには適宜適切な標準的な検査・評価を行うことを促進し、高齢者が安心・安全に、適切な医療およびケアを受けることに貢献する。

参照

令和4年度厚生労働科学研究の概要

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