平成28 年3月31 日作成
平成31 年3月29 日改定
令和3年4月28 日改定
文部科学省科学技術・学術政策局
Table of Contents
1 事業の背景及び経緯
社会経済のグローバル化、先進諸国の少子高齢化・労働人口減少と途上国の急激な人口増加、エネルギー・水・食料等の資源の逼迫、地球環境問題、感染症・テロ問題など、複雑かつ多様な課題が顕在化し、また、潜在的な課題も想定される現代社会において、そのような課題の解決のための科学技術イノベーションへの期待が高まっている。また、限られた資源の下で効率的に科学技術イノベーションを展開するためには、経済・社会等の状況、その課題と、そして科学技術の現状と可能性等を多面的な視点から把握・分析するとともに、客観的根拠(エビデンス)に基づいた合理的な政策形成が求められる。
平成7 年に制定された科学技術基本法の規定により策定された科学技術基本計画(以下「基本計画」という。)に基づき、科学技術振興のための政府研究開発投資が行われるとともに、科学技術と社会との関係が強く意識されるようになってきた。また、マーバーガー前米国大統領補佐官の提唱に基づく米国のSciSIP プログラムや欧州におけるホライゾン・スキャニング、テクノロジーアセスメント等の取組も行われてきた。
このような背景の下、平成23 年に科学技術振興機構研究開発戦略センター(以下「CRDS」という。)は、戦略プロポーザル“エビデンスに基づく政策形成のための「科学技術イノベーション政策の科学」の構築”をとりまとめるとともに、第4期基本計画において、「科学技術イノベーション政策のための科学」の推進が明記された。これらの状況を受け、平成23 年度にSciREX 事業が開始されたところである。
平成26 年度には、SciREX 事業の進展に伴い、事業全体を一層効果的かつ強力に推進する観点から行われた体制の見直しにより、中核的拠点機能を置き、その核となる科学技術イノベーション政策研究センター(以下「SciREX センター」という。)を政策研究大学院大学に設置した。
さらに平成27 年度には、SciREX 事業についての中間評価が行われ、事業推進に当たっての課題も指摘された。これらの指摘を受け、平成27 年12 月21 日に開催された「科学技術イノベーション政策のための科学推進委員会」において、「科学技術イノベーション政策における『政策のための科学』推進事業の今後の推進方策について」(以下「アクションプラン」という。)が定められた。また、平成28 年1月22 日に閣議決定された第5期基本計画においては、「第7章 科学技術イノベーションの推進機能の強化」において、「客観的根拠に基づく政策の企画立案、評価、政策への反映等を進めることにより、実効性のある科学技術イノベーション政策を推進していく」旨が明記され、あわせて、「第6章 科学技術イノベーションと社会の関係深化」おいて、「共創的科学技術イノベーションの推進」のためのステイクホルダーの対話・協働・共創等が示されたところである。SciREX 事業は、これらに対し、科学技術・学術政策研究所(以下「NISTEP」という。)やCRDS といった公的シンクタンク等と共に、エビデンスに基づく政策形成の一翼を担う責務がある。
科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」推進事業基本方針(以下「基本方針」という。)は、上記の状況を受け、平成28 年度に当面5年間をめどとした事業の実行に当たり、事業の推進方策等の基本的な方針を定めるものとして策定し、その5年間の事業の評価が令和2 年12 月以降行われている。この評価を踏まえた基本方針の改定を今後行うこととなるが、令和3 年度当初から新たな重点課題の設定による政策研究を行う必要があることから、暫定的に重点課題の設定による政策研究の在り方について、令和3年4 月に基本方針の改定を行う。
2 事業の目的及び目標
(1)事業の目的
本事業の推進に当たっては、科学としての「科学技術イノベーション政策のための科学」の深化と、客観的根拠に基づく政策形成の実現に向けた「政策形成プロセス」の進化が不可欠であり、両者を車の両輪として推進し、共進化を図っていく。
「科学技術イノベーション政策のための科学」の深化に当たっては、自然科学のみならず、人文社会科学を含む幅広い研究分野の領域を超えた融合が必要であり、このため、「科学技術イノベーション政策のための科学」という新たな学際的学問分野の発展により、各分野の研究者や政策担当者など、幅広い人材が連携する「開かれた場」を構築する。これは、「政策のための科学」の科学的方法論の開発や提示等で終わるものではなく、その成果が政策形成の実践の場で活用できるものを目指す。「科学技術イノベーション政策のための科学」は、科学としての論理の構築に伴う分析的側面と、そこで得られた分析結果等を用いて科学技術イノベーション政策を形成する設計的側面の2つの側面を持っており、それらを両方行うことで、「科学技術イノベーション政策のための科学」が深化していくものであることに留意しなければならない。
一方、「政策形成プロセス」の進化のためには、これまでの行政システムを見直すとともに、政治・行政に携わる者の意識を改革し、素養を養うことが不可欠である。
また、政策形成に携わる者と研究者との対話を継続的に行い、双方の問題意識を共に理解し、両コミュニティが、双方の信頼関係の下、それぞれの役割や責任に応じて協働することが必要である。その際、政策ニーズ自体も、社会の状況により変化しうるものであることに留意し、課題を捉え直し、試行錯誤を繰り返しながら進めていくことが重要である。
加えて、本事業の推進により得られた客観的根拠とそれに基づく政策形成プロセスの進化(知見・手法・人材等)は、社会の共有資産として、国民の政策形成への参加の基盤となることが期待される。
なお、SciREX 事業が対象としている「政策形成」の過程とは、政策の企画・立案、実施、評価とその政策への反映の全てを含むものである。
(2)事業の推進の目標
上記の目的を達成するため、本事業は、基本計画に定める科学技術イノベーション政策の実効性の確保及び次期基本計画の検討に具体的に貢献することを基本的な目標とする。なお、科学技術イノベーション政策は、基本計画に示すように、いわゆる研究開発の推進のための政策にとどまるのではなく、経済・社会課題解決のための科学技術の貢献や、イノベーションを実現するための規制や税制などの制度改革も含むものである。
具体的には、以下を目標とする。
- 政策担当者と研究者間の対話の機会の拡大と、双方向のコミュニケーションによる政策形成への結実
- 「科学技術イノベーション政策のための科学」という新たな学際的学問分野を発展・深化させ、各分野の研究者や政策担当者など、幅広い人材が連携する「開かれた場」の構築
- データや情報を適切に収集し、客観的根拠(エビデンス)を的確かつ適切に活用し、現実の政策形成ができる人材、研究者及びこれらをつなぐことのできる人材の創出と、これらの人材が活躍できるキャリアパスの確立
- 政策形成に携わる者、研究者、これらをつなぐ者によるネットワークの構築と研究コミュニティの拡大
3 事業の基本的構成等
(1)SciREX 事業におけるプログラムの構成
本事業の目的・目標達成のためには、客観的根拠に基づく合理的なプロセスによる政策形成の実践に資する研究開発を進めていく必要があるとともに、客観的根拠に基づく合理的なプロセスによる政策形成の基盤として、人材育成とデータ・情報基盤の確立も引き続き重要である。
本事業は、第1期から引き続き、次の3つのプログラムから構成する。なお、中核的拠点機能は、基盤的研究・人材育成拠点が行う研究活動の総体として置かれているものである。
- 基盤的研究・人材育成拠点(中核的拠点機能を含む)(実施主体:SciREX センター及び各拠点大学)
- 公募型研究開発プログラム(実施主体:科学技術振興機構社会技術研究開発センター(以下「RISTEX」という。))
- データ・情報基盤(実施主体: NISTEP)
(2)重点課題の設定による政策研究と共進化の強力な推進
平成27 年度に実施された中間評価において、各拠点や関係機関等の更なる連携強化や生きた政策課題に積極的に取り組むことなどが指摘されたことを受け、SciREX 事業では、平成28 年度から3年間を期間として各拠点・関係機関が共通の課題として取り組む重点課題を設定し、研究プロジェクトを進めてきた。これにより、各拠点・研究機関等の連携や各拠点による研究機能の総体である中核的拠点機能の充実が進められ、研究による知見の蓄積等、成果も出ている。一方、これらの研究プロジェクトは、行政の意思決定過程への直接的な貢献や、行政官との密な連携という点では、課題が残る部分もあった。研究対象としていた内容は、中長期的な政策の方向性の検討に際し重要な要素の一つではあったものの、行政の具体的な動きとの関係性が必ずしも明確でない面もあった。そのため、各研究プロジェクトと行政官が、継続的に対話・協働し、研究と具体的な政策への反映を共に模索し続ける関係性構築が難しかった。
平成31 年度(2019 年度)から新たに実施した研究プロジェクトでは、こうしたことを踏まえ、実施期間を2年間とし、また、事業開始当初から目指してきた政策に具体的貢献ができるような成果の創出や行政官と研究者の真の共進化の推進を強力に実現させるため、①研究プロジェクトにおいて取り組む重点課題は、行政側の具体的な政策ニーズ発で両者の十分な議論のもと検討する、②行政側も研究を共に進める者として位置付け、担当課として組織の業務として取り組む、③研究プロジェクトを進める中で、SciREXコミュニティ内外に対して知見を共有し、更に議論を深めるための場を定期的に設定する、といったような再設計を試みた。このようなプロセスに基づき、9つの重点課題に対する研究プロジェクトが遂行され、行政官と研究者の共進化が図られるとともに、コミュニティ内外における知の蓄積と関係構築が図られつつある。
このような取組を更に加速させる形で、令和3年度(2021 年度)から、実施期間を2年間とした、新たな研究プロジェクトを開始する。新たなプロジェクトでは、既存の枠組みを超えてSciREX コミュニティの更なる拡大を図るとともに、社会的な要請の大きい政策課題にも取り組むことで、社会的ニーズに対応した政策立案に貢献する。また、研究プロジェクトの成果を最大化するため、各研究プロジェクトのマネジメント体制についても改善を図る。
研究プロジェクトを進めるに当たっては、行政側の政策ニーズ及び研究者の学術的関心はいずれも尊重されるべきものであり、互いに刺激し合いながら議論を進める。
また、新たな重点課題に基づく研究プロジェクトの進め方自体が研究者と行政官の挑戦的な取組の一つとして、SciREX 事業を更に深化させることをコミュニティ全体として目指していく。
4 事業推進にあたっての指針
(1)透明性の確保、国民への説明責任等
経済・社会の大変革時代と国内外の課題の複雑化・多様化という状況の中で、科学技術イノベーション政策の推進に当たっては、第5期基本計画で述べられているように、これまで以上に、「先見性と戦略性」、「多様性と柔軟性」を持つ必要がある。限られた資源をより効率的に活用しながら、科学技術イノベーション政策を展開・推進し、複雑化・多様化する社会の課題を克服するためには、これらの課題の正確な把握とそれにふさわしい解決方法、さらには、その解決方法を支える基盤の在り方まで、様々な観点からの検討がなされなければならない。その上で、客観的根拠(エビデンス)に基づき、合理的なプロセスにより政策を形成することが求められている。資源的な制約の下で、客観的根拠に基づき効果的に問題解決に向かう政策選択が必要であり、かつ、政策の内容が客観的根拠を必要とするばかりでなく、政策形成のプロセスもまた合理性を備えたものでなければならない。
「未来への投資」である科学技術イノベーション政策に関しては、様々な分野からのアプローチにより、科学技術とイノベーションの関係やそのプロセスに対する理解を深め、経済・社会への影響を包括的に可視化していくことが重要であり、その結果を基に、社会との対話を進めていかなければならない。さらには、これらの成果を踏まえ政策形成の実践の場に適用する手法を確立することにより、政策形成の在り方を改善し、政策形成における透明性を確保することで、国民への説明責任を果たす必要がある。これらについても、本事業の推進により達成されるべきものである。
また、近年、ビッグデータやAI の利活用が進み、エビデンスや「政策のための科学」の在り方、さらには政策形成の手法そのものが変化しうる状況となっている。エビデンスに基づく政策形成を進めるには、こうした新たな研究や政策形成にも果敢にチャレンジしていくとともに、一方、これらのデータの扱いや解釈に十分注意することも必要であり、こうした点においても本事業が貢献することが求められている。
(2)適切なマイルストーンの設定と事業の実施
SciREX 事業の推進に当たっては、スケジュールを見据えて、適時適切に事業を推進していくことが重要である。SciREX 事業は基本計画の実効性の確保に資する取組や次期基本計画策定のためのエビデンス提供などの貢献が期待されている。したがって、科学としての「政策のための科学」の内容を深化させつつ、より現実の政策形成を見据えた成果の創出をするため、事業の目標の達成に向けた適切なマイルストーンに留意しながら、事業を推進することが必要である。また、近年、海外における共進化の取組も進んでおり、こうした知見も取り入れながら、事業全体としての成果を高めていくことが求められている。
5 事業全体の運営体制
客観的根拠に基づく科学技術イノベーション政策の形成を実現するため、文部科学省は、事業の運営管理に積極的な役割を果たすとともに、本事業による成果を積極的に活用し、あわせて政府全体の政策形成に寄与することを目指す。
事業の方向性の検討等については、アクションプランに基づき別途設置された「科学技術イノベーション政策における『政策のための科学』アドバイザリー委員会」(以下「アドバイザリー委員会」という。)が行う。
また、事業の具体的な実施内容の調整等については、同じくアクションプランに基づき設置する「科学技術イノベーション政策における『政策のための科学』推進事業運営委員会」(以下「運営委員会」という。)が行う。運営委員会の統括の下、各プログラム等を推進していく。
事業全体の俯瞰等については、従前のとおり、CRDS が実施することとする。
(1)文部科学省
事業担当部局として、事業全体の設計・執行を担う。事業が適切に遂行されるよう、基本的な事業方針や事業の課題等を定め、運営委員会への基本方針及び重点課題の提示等を行う。また、事業推進担当部署である科学技術・学術政策局企画評価課政策科学推進室は事業が適切に推進されるよう、省内や関係機関との各種調整を行う。具体的には、文部科学省内外の政策担当部署と連携した政策課題の抽出、本事業で得られた研究成果等の整理、担当部署に対する成果利用の働きかけなどを行う。
(2)科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」アドバイザリー委員会
SciREX 事業の実施に当たり、事業の方向性の検討等を行うため、アドバイザリー委員会を設置する。また、アドバイザリー委員会の広範かつ多面的議論を促進するため、各拠点や各関係機関のみならず、外部の有識者等から幅広く意見を聴取するとともに、現場の政策担当者や研究者等とも積極的に議論を行い、「政策のための科学」と「政策形成プロセス」の共進化に資する議論を深めるものとする。委員会の具体的な検討事項は以下のとおりである。
- 「政策のための科学」と「政策形成」の共進化の方向性や方法論
- 「科学技術イノベーション政策のための科学」の「科学」の在り方
- 政策形成プロセスの進化の在り方
- 科学技術イノベーション政策の哲学的・歴史的背景とその将来像
- 海外の類似の取組等と比較した、日本の取組の在り方
- 本事業の推進による、中長期的な将来像
- 研究プロジェクト等を通じた研究者と行政官の共進化の在り方
議論の結果については、随時、事業全体の方向性に関する意見としてとりまとめる。
文部科学省は、本事業の執行に当たりこれを尊重し、また、政策形成プロセスの進化に役立てていかなければならない。あわせて、事業を実施する各拠点や関係機関についても、アドバイザリー委員会の意見を生かしながら、それぞれの取組を推進すべきである。
(3)科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」推進事業運営委員会
SciREX 事業を実施する各拠点・関係機関の実務責任者からなる運営委員会を設置し、事業の実施内容の調整や追跡調査等を行う。運営委員会の事務局については、文部科学省科学技術・学術政策局企画評価課政策科学推進室とSciREX センターが共同で行う。
運営委員会では、文部科学省が定めた基本方針や重点課題に基づいて、各拠点・関係機関の取組や役割分担の検討・調整を行う。また、SciREX 事業全体、特に、重点課題に基づく研究プロジェクト(後述のとおり)についての情報共有等を行う。
アドバイザリー委員会とは、双方の委員会で行われる議論について情報共有を図り、事業全体の方向性と個別の課題の進捗状況に齟齬がないよう適切に連携を図る。
(4)CRDS
CRDS は内外の動向調査を行うことなどにより、「政策のための科学」の俯瞰に取り組む。これらと併せ、必要に応じ、自らが行っている各種活動の情報について、アドバイザリー委員会や運営委員会における情報提供を行う。
6 各プログラムの推進体制
個別のプログラムの詳細については以下のとおりとするが、SciREX センターを中心に、それぞれを連携させて実行することが必要不可欠である。具体的な連携の在り方については、次節に記載する。
なお、それぞれのプログラムについては、事業全体の中間評価に先立ち、外部委員による評価を受けており、そこにおいて課題等の指摘がされている。今後の事業実行に当たって、各実施主体は、当該指摘事項に留意し、必要に応じて改善を図らなければならない。
(1)基盤的研究・人材育成拠点
① 中核的拠点機能
基盤的研究・人材育成拠点が行う研究活動の総体として中核的拠点機能を置く。
SciREX センター及び各拠点においては、これまで実施してきた研究プロジェクトの知見も生かしながら、研究者と行政官の密な連携の下、重点課題に基づき、政策形成の実践に資する具体的な成果の創出を目指した実践的な研究を進める。SciREX センターは、中核的拠点機能の中心的役割を担う機関として位置付けられ、SciREX 事業のネットワークの形成や成果の政策形成への具体的な貢献を促進するため、事業全体の成果の発信と、関係者が議論する場の設定等を行う。
また、SciREX センターは、行政経験のある者からなるSciREX センターの政策リエゾンネットワークを活用・拡充し、研究活動と実際の科学技術イノベーション政策形成の現場との共進化をより強力に進めていくこととする。
また、中核的拠点機能を構成する各拠点は、それぞれの拠点における研究プロジェクトを主体的に実施する。研究プロジェクトの実施においては、自らが主体的に成果の普及・展開に取り組むとともに、当該研究分野の発展と関係者のネットワーク拡大に努める。
② 基盤的研究・人材育成拠点
基盤的研究・人材育成拠点については、平成23 年度に「総合拠点」(政策研究大学院大学)及び「領域開拓拠点」(東京大学、一橋大学、大阪大学/京都大学、九州大学)を設置し、客観的根拠に基づく政策形成に携わる人材や、「科学技術イノベーション政策のための科学」という新たな研究領域の発展の担い手となる人材、政策と研究をつなぐ人材を育成するとともに、関係する基盤的研究を推進するための国際的な水準の研究・人材育成拠点として、それぞれが基盤的研究・人材育成を進めてきており、引き続き基盤的研究及び人材育成を行う。
- 総合拠点:総合拠点として、教育プログラムを実施するとともに基盤的研究を実施。また、基盤的研究・人材育成拠点整備事業の主導及び、領域開拓拠点を牽引しつつ、取りまとめ機関として総合調整。
- 領域開拓拠点:領域開拓拠点として、各大学の特性を活かして、教育プログラムを実施するとともに基盤的研究を実施。
(2)公募型研究開発プログラム
RISTEX を事業主体とし、客観的根拠に基づく科学技術イノベーション政策の形成に寄与するため、政策ニーズも踏まえつつ、政策形成の実践に将来的につながりうる成果の創出を目指した研究開発を公募により推進する。
プログラムの実施に当たっては、公募を通じて「科学技術イノベーション政策のための科学」に関わる新たな研究人材の発掘と人材ネットワークの拡大に資することを目標とするとともに、研究開発の推進に当たっては、SciREX センターを中心としたSciREXコミュニティ全体と密に連携して進めていく。
(3)データ・情報基盤
NISTEP を中心に、政策形成の実践の場と、本事業を中心とした調査分析や研究に活用されるよう、必要なデータ・情報を体系的かつ継続的に蓄積し、データ・情報基盤を構築する。整備されたデータ・情報は、統計データを含む分析対象としての一次データ(特許、論文、人材、予算等)のほか、それを分析した結果の論文、提言、行政における審議会報告書、調査報告書など多岐にわたる。
本プログラムで得られたデータを社会の共有資産である既存のデータ・情報基盤に加えるとともに、それらを体系的かつ継続的に整備・利用できる環境を構築する。「政策のための科学」と「政策形成プロセス」の共進化の基盤として、情報へのアクセスが容易となるようなデータベース等の構築を目指すとともに、関係機関への積極的な提供等に努める。
7 連携のための取組
SciREX センターは、ネットワークの形成をはじめ共進化に向けた中核として一層機能することが求められており、SciREX センターが中心となって、各拠点・関係機関が連携することが必要である。
(1)研究開発における連携
平成28 年度からは、重点課題に基づいた研究開発(SciREX センターが自ら主体となって行うプロジェクト、拠点間連携プロジェクト、公募型研究開発プロジェクト)を、各拠点・関係機関の連携により進めてきた。これからの研究開発を進めるに当たっても、各拠点・関係機関の連携が進むよう取り組むこととする。
また、NISTEP も、積極的にこれらに協力し、SciREX 事業全体としての連携を図らなければならない。NISTEP は、国内外のデータベース等情報、研究所の活動により得られた知見、人的ネットワーク等に関して、研究プロジェクトへの情報提供等を行うとともに、可能であれば、プロジェクトの実施者として関与する。これに当たっては、SciREX事業担当部門以外のNISTEP 内の研究部門とのコラボレーションも積極的に進める。あわせて、科学技術指標等に携わる専門的な機関の立場から、他機関のデータソースとの連携・接続を図り、データ・情報等に関する助言も行う。
各プロジェクトの設計・実施を通じた各拠点・関係機関の連携は、SciREX センターが中心となって進め、政策担当者との連携も密に行う。また、SciREX センターは重点課題に基づいて進められる各拠点・関係機関の取組を把握し、それぞれの情報共有が十分図られるよう環境整備を図る。
(2)人材育成における連携
人材育成についても、各拠点のネットワークの強化を図り、連携して進めていくことが必要である。平成27 年度に実施された中間評価においては、人材育成を進めていくに当たって、「科学技術イノベーション政策のための科学」という学問分野やコアカリキュラムの確立が必要であることが指摘されている。また、行政との真の共進化を進めるには、中長期的な視野を持って、研究者と連携しながらエビデンスに基づく科学技術イノベーション政策を担う行政官の人材育成を行うことも重要である。これらを踏まえ、総合拠点が中心となって、全拠点協力の下で、コアカリキュラムの検討を進め、早期の確立を目指すとともに、平成29 年度より強化してきた行政官研修についても充実を目指す。これらに当たっては、各拠点のみならず、関係機関も協力することが必要である。
8 事業の評価
本事業では、例えば基盤的研究・人材育成拠点について最長15 年の長期間にわたる支援を想定しており、事業全体の工程管理の観点から評価時期、評価の仕組みや評価体制等について検討する必要がある。平成23 年度から27 年度の5 年間については、既に平成27年度に、本事業の進捗確認及び今後の一層の推進に向けての内容の改善を目的とした中間評価を実施したところである。平成28 年度から令和2 年度の5年間については、現在、中間評価を実施しているところである。令和3 年度以降の事業についても、評価を実施していくこととし、その具体的なあり方については今次中間評価の結果も踏まえつつ検討する。