ビジネス全般

化学物質リスク研究事業(令和4年度厚生労働科学研究)

目次

1.研究事業の目的・目標

【背景】

わが国の日常生活において使用される化学物質の種類は年々増加し、数万種に及ぶといわれ、その用途も多様であり、様々な場面で国民生活に貢献している反面、化学物質への暴露形態も多様化していると懸念される。化学物質によるヒトへの健康影響は未然に防がなければならない一方で、いかなる化学物質にいつ、どのように、どの程度暴露しているかに関する情報全てを把握することはできない。そのため、可能な限り現実に則した化学物質のリスク評価、リスク管理を行うことが重要である。また、国際的には、2002 年開催のヨハネスブルグサミット(WSSD)を受けて、2006 年開催の国際化学物質管理会議において「国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)」が採択され、化学物質が健康や環境への影響を最小とする方法で生産・使用されるようにすること、また化学物質に対して脆弱な集団を保護する必要性があることが再確認されており、さらに、国連の持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)におけるターゲットにおいても、化学物質対策に関連するものが掲げられるなど、国際協力の下で化学物質の有害性評価を推進する必要がある。

【事業目標】

化学物質を利用する上でのヒトへの健康影響を最小限に抑えることを目的として、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(以下、化審法という。)、「毒劇及び劇物取締法」(以下、毒劇法という。)、「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」(以下、家庭用品規制法という。)の科学的基盤を確立する。

【研究のスコープ】

  • 化学物質の有害性評価の迅速化・高度化・標準化に関する研究
  • 化学物質の新たなリスク評価手法の開発(化学物質の子どもへの影響評価、ナノマテリアルのヒト健康への影響評価)に関する研究
  • シックハウス(室内空気汚染)対策に関する研究
  • 家庭用品に含まれる化学物質の健康リスク評価に関する研究

【期待されるアウトプット】

本事業により各種化学物質等の安全性評価法の確立や、確立した試験法の OECD テストガイドラインへの反映が期待される。また、動物を用いない試験法、例えば試験管内で実施可能な試験法や計算科学的な試験法の確立が期待される。

【期待されるアウトカム】

本事業により確立された試験法や OECD テストガイドライン、知見は、日々の国民生活に使用される化学物質の有用性を踏まえた上でのヒト健康影響を最小限に抑える種々の行政施策の科学的基盤となる。

また、OECD テストガイドラインの確立によって国際的な化学物質管理の推進に貢献することが期待される。加えて、動物を用いない試験法確立によって、国際的な動物実験削減・代替へ道筋を付けることが期待される。

さらに、これらは関係法令等に基づく各種施策へ活用することによって、国民生活の安全確保に寄与するとともに産業界にとってもより合理的な化学物質対策を実施することが期待される。

2.これまでの研究成果の概要

① 化学物質の有害性評価の迅速化・高度化・標準化(令和3年度継続中)

化学物質の安全性評価手法として、OECD テストガイドラインの作成活動に研究成果を活用する等、国際貢献に寄与した。また、QSAR(Quantitative Structure-Activity Relationship:定量的構造活性相関)等の網羅的な毒性予測手法の開発や改良を行い、反復曝露の毒性評価の効率化に向けてデータの蓄積・解析を進めている。

② シックハウス(室内空気汚染)対策(令和3年度継続中)

シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会での議論に必要な基礎データとして、研究成果を活用した。さらに化学物質の分析に必要不可欠なヘリウムガスの世界的な供給不足に関して、代替キャリアガスを使用した測定法の開発を進めている。

③ ナノマテリアルのヒト健康への影響評価(令和3年度継続中)

ナノマテリアルの評価手法として、吸入曝露及び気管内投与手法等において、新たな評価手法が有効である可能性を示した。

④ 家庭用品に含まれる化学物質の健康リスク評価等に関する研究(令和3年度継続中)

家庭用品規制法で定められている試験法のうち、溶剤、防炎加工剤、防虫剤について、GC-MS法の検討をした。溶剤3種、防虫剤2種については試験法の開発と妥当性評価試験が終了し、十分な精度及び感度を有し、既存の方法よりも簡便な測定方法が確立された。また、防炎加工剤2種については試験法の開発が終了し、妥当性評価試験を実施する予定である。ほか、規制対象外の家庭用品及び有害物質に関する情報収集を行った。さらに、ヘリウムガスを使用しない代替試験法の開発を進めている。

3.令和4年度に継続課題として優先的に推進するもの

家庭用品中の有害物質の規制基準に関する研究

多様化する化学物質の種類、用途に対応するため、個々の化学物質の有害性・暴露評価(リスク評価)を効率的かつ厳密に行い、効果的な基準策定法を確立する。令和3年度終了の「家庭用品規制法における有害物質の指定方法のあり方に関する研究」での検討結果を踏まえた追加検討のため、物品費等を増額する必要がある。

他7件増額

4.令和4年度に新規研究課題として優先的に推進するもの

QSAR を化審法の新規化学物質審査へ活用するための方法を検討するための研究

化学物質の変異原性を計算科学的に予測するシステム「Ames/QSAR」を、どのように化審法の新規化学物質審査等で活用するべきか、具体的な活用方法を検討する。

変異原性陽性の優先評価化学物質へのがん原性試験実施要否を検討する際に指標となる新たな試験法検討のための研究

ヒト健康の有害性評価に必要な有害性情報が十分ではない優先評価化学物質について、低コストで実施可能な新たな変異原性評価手法を検討する。

化学物質に係るヒト健康影響を推定するための in vitro アッセイが既存の反復毒性試験等の動物実験を代替する可能性を比較・検証するための研究

これまでに基本的技術が開発済みである動物実験代替法に資する試験管内で実施する試験方法に関し、コスト等にも留意して実用化可能かどうかの検証を行う。

毒物又は劇物の指定等にかかる判定基準の策定に資する研究

毒劇物の毒性又は劇性の判定基準として、主に動物実験による致死性を指標として判定してきた。現在、動物実験の代替法の研究を行っているところであるが、致死性以外の新たな指標の策定、指標を判定するための実験方法の確立に関する研究を行う。

5.令和4年度の研究課題(継続及び新規)に期待される研究成果の政策等への活用又は実用化に向けた取組

  • 「家庭用品中有害物質の規制基準に関する研究」において、防炎加工剤、噴射剤、木材防腐・防虫剤及び有機水銀化合物を対象とし、有害試薬を使用せず、高精度かつ効率的な試験法有害物質の試験法のプロトコール案を作成し、薬事・食品衛生審議会における審議を経た上で、家庭用品規制法施行規則を一部改正する予定である。
  • (新規)「QSAR を化審法の新規化学物質審査へ活用するための方法を検討するための研究」でとりまとめたプロポーザルをベースに、厚生労働省が化審法の新規化学物質審査等におけるAmes/QSAR の活用方法を示すためのガイドラインを策定する予定である。
  • (新規)「変異原性陽性の優先評価化学物質へのがん原性試験実施要否を検討する際に指標となる新たな試験法検討のための研究」で得られた検討結果を用いて、リスク評価手法の詳細を記載し公開している「技術ガイダンス」へ反映する予定である。

参照

令和4年度厚生労働科学研究の概要

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