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(1) 費用対効果評価の活用方法
- 費用対効果評価の結果は、保険償還の可否の判断に用いるのではなく、いったん保険収載した上で、価格の調整に用いる。
- 今後の実施状況を踏まえ、費用対効果評価に係る組織体制の強化や、課題を整理した上で、活用方法についての検討を継続していく。
(2) 対象品目の選定基準
① 費用対効果評価の対象とする品目の範囲、選定基準
- 費用対効果評価の対象とする品目は、医療保険財政への影響度を重視する観点及び薬価・材料価格制度を補完する観点から、革新性が高く、財政影響が大きい医薬品・医療機器を主なものとする。
- 基準については、対象となる品目数や現在の費用対効果評価に係る体制等を踏まえ、以下の通りとする。
- 医薬品と医療機器で共通の選定基準を用いる。
(ⅰ)新規収載品(制度化以降に収載された品目)の選定基準
- 以下の要件①、②のいずれにも該当する品目を選定する(表1)。
【要件①】
- 類似薬効比較方式・類似機能区分比較方式、原価計算方式の品目のうち、有用性系加算(画期性加算、有用性加算、改良加算(ハ)(医療機器)のいずれか)が算定された品目。
- 原価計算方式の品目のうち、開示度50%未満の品目(加算の有無によらない)。
【要件②】
- 収載時の保険適応希望書に記載されたピーク時市場規模(予測)が50 億円以上の品目。
<ピーク時市場規模(予測)に応じて、以下の該当区分を設ける>
-
- ピーク時市場規模(予測)が100 億円以上の品目(H1 区分)
- ピーク時市場規模(予測)が50 億円以上100 億円未満の品目(H2区分)
- 著しく単価が高い品目など、中医協総会において必要と判断された品目(H3 区分)(※)
- H2 区分とされた品目については、「評価候補品目」として位置づける。H1、H3 及びH4 区分の選定状況を踏まえ、医薬品及び医療機器について、年間の評価可能品目数の上限を目安にピーク時市場規模(予測)の高いものから順に費用対効果評価の対象として選定する。
- 保険収載時にピーク時市場規模(予測)が選定の要件に該当しなかった品目であっても、市場規模の拡大により、年間の市場規模が50 億円を超えた場合は対象とする。その場合、年間の市場規模に応じてH1 又はH2 区分として位置付ける。なお市場規模については、薬価調査・材料価格調査及びNDB により確認を行う。
(※)H3 区分の例- 著しく単価が高い品目、すでに費用対効果評価を行った品目のうち、評価終了後に評価に大きな影響を与える知見が得られ、再評価が必要であると認められた品目など、優先的に検証することが必要と中医協総会が判断した品目
(ⅱ)既収載品(制度化以前に収載された品目)の選定基準
- 下記のいずれかに該当する品目を選定する(H4 区分)。
- 算定方式によらず、有用性系加算が算定された品目であり、市場規模が1000 億円以上の品目
- その他、著しく単価が高い品目など、中医協総会において必要と判断された品目(上記H3 区分の例に準ずる)
- 既収載品の市場規模については、薬価調査・材料価格調査及びNDB により確認を行う。
(ⅲ)類似品目への対応薬等への対応
- 以下に該当する品目を「類似品目(H5 区分)」として選定する。
- 費用対効果評価の対象品目(以下、代表品目)を比較対照として算定された医薬品
- 代表品目を比較対照として算定され、代表品目と同一の機能区分に分類されている品目
- 代表品目が、費用対効果評価の対象となってから価格調整されるまでの期間に収載された品目を対象とする。
- 類似品目については、費用対効果評価の分析は行わないこととし、代表品目の評価結果に基づき、代表品目に準じた価格調整を行うこととする。
② 品目選定のタイミング、公表の手続き
(ⅰ)品目選定のタイミング
- 費用対効果評価の対象となる品目については、速やかに選定を行う。
- 分析・評価を円滑に進めるために、同時に多くの品目を選定するのではなく、時期を分散して選定する。
- 具体的な品目選定のタイミングとしては、下記の通りとする。
(ア)新規収載品(制度化以降に収載された品目)(H1~H3 区分)
-
- H1 及びH3 区分に該当する品目については、保険収載を機に選定する(年4回)
- H2 区分に該当する品目については、保険収載を機に「評価候補品目」として選定し、H1、H3 及びH4 区分の選定状況を踏まえ、年間の評価可能品目数の上限を目安に、医薬品及び医療機器について、ピーク時市場規模(予測)の高いものから順に選定する(年2回)
- 保険収載時に対象品目に選定されなかったものであっても、市場規模の拡大等により、選定基準(H1 区分、H2 区分)に該当した品目については、選定する(年4回)
(イ)既収載品(制度化以前に収載された品目)(H4 区分)
-
- 新規収載品の状況を踏まえつつ、優先的に評価が必要な品目を、新規収載の機会を活用して選定する(年4回)
(ウ)類似品目(H5 区分)
-
- 類似品目については、保険収載時に対象品目として選定する(年4回)
- H1、H3 及びH4 区分の品目については、選定後速やかに費用対効果分析を開始する。
- H2 区分の品目については、「評価候補品目」とされた時点ではなく、費用対効果評価の対象として選定されたのちに費用対効果分析を開始する。
(ⅱ)品目選定に係る公表の手続き
- 対象品目の選定に係る公表の手続きについては、
- 新規収載品(制度化以降に収載された品目)(H1~H3 区分)及び類似品目(H5 区分)については、薬価算定組織及び保険医療材料等専門組織において、該当基準に該当するか否かの案を作成し、中医協総会において了承を行う。
- 制度化以降に収載され、保険収載時に対象品目に選定されなかったものであっても、市場規模の拡大等により、選定基準(H1、H2 区分)に該当した品目は、薬価算定組織及び保険医療材料等専門組織の意見を聞いたうえで、厚生労働省において選定基準に該当するか否かの案を作成し、中医協総会において了承を行う。
- 既収載品(制度化以前に収載された品目)(H4 区分)については、薬価算定組織及び保険医療材料等専門組織の意見を聞いたうえで、厚生労働省において選定基準に該当するか否かの案を作成し、中医協総会において了承を行う。
③ 除外基準 (稀少疾患や重篤な疾患等への対応について)
- 英国のように費用対効果評価の結果を「償還の可否判断」に用いる場合は、患者アクセスは大きな課題となりうるが、いったん保険収載したうえで価格調整を行うのであれば、患者アクセスの懸念は軽減される。
- 一方、価格調整のみを行う場合であっても、以下の品目では開発阻害やアクセス制限につながる可能性が否定できないため、一定の配慮を行う。
①対象患者数が少ないために単価(薬価等)が高くなってしまう品目
②ICER(QALY)では品目の有する価値を十分に評価出来ない品目 - 制度の透明性を確保する観点から、配慮する品目や要素についての判断基準が必要。
- これらのうち、①に該当するものとして、以下の品目は費用対効果評価の対象から除外する
- 治療方法が十分に存在しない稀少な疾患(指定難病、血友病及びHIV 感染症)のみに用いられる品目
- 小児のみに用いられる品目(日本における小児用法・用量が承認されている品目に限る)
- 上記に該当する品目であっても、市場規模が大きな品目(350 億円以上)又は著しく単価が高い品目等については、中医協総会の判断により費用対効果評価の対象とすることができる。
- また、適応症の一部に稀少な疾患等が含まれる品目及び②に該当する品目については、費用対効果評価の対象とするが、総合的評価ならびに価格調整において配慮を行う((4)②、(5)④を参照)。
(3)分析のプロセス(企業によるデータ提出、再分析)
① 分析前協議(事前協議)の方法
- 分析前協議については、企業と公的分析班は直接接触しないこととし、国立保健医療科学院が企業や公的分析班と協議をしながら、照会を行うこととする。
- 協議内容については記録し、専門組織に報告、決定する。
- 分析前協議では、対象集団、比較対照技術、分析に用いる臨床試験等の基本的な方針や分析の枠組みを協議する。また、分析前には決定することができず、その後の分析(企業分析、公的分析)を進める中で協議することが必要な事項については、あらかじめ整理を行う。
② 分析実施中の協議
- 分析前協議において、分析の枠組み等について可能な限り決定し、それに基づき分析作業を進めることを原則とするが、分析(企業分析、公的分析)を進める中で必要な事項について、相互に照会することが出来る仕組みとする。
- 協議の内容は、分析実施中に得られた新たな知見を採用するか否かの判断など、分析を行う上で科学的に必要な事項に限定し、相互に照会することができる仕組みとする。
- 中立性を保つため、企業と公的分析班は直接接触しないこととし、協議内容は記録した上で専門組織に報告する。
③ 費用対効果評価専門組織の役割、体制等
(ⅰ)専門組織の関わりについて
- 費用対効果評価に係る一連の手続きの中で、「中医協総会」と「専門組織」が役割分担を行う。
- 具体的には、医療関係者(診療側)や保険者(支払い側)の立場からの検討は中医協総会において行い、専門組織では、中立的な立場から専門的な検討を行うこととする。
- 費用対効果評価の科学的妥当性や中立性を確保するため、専門組織は以下の3つの段階で関与を行う。
(ア)分析前協議の内容の確認、分析の枠組み等の決定
(イ)企業分析の内容の確認(決定された分析の枠組みに基づいて分析が行われているか等)
(ウ)企業分析ならびに公的分析の結果に基づく総合的評価 - また、専門組織が必要と認めた場合は、当該分野の専門家が個別の論点等について詳細な検討が出来る仕組みとする。
(ⅱ)専門組織の構成について
- 専門組織は、分析結果の評価等を専門的な立場から行うため、医療経済、臨床、医療統計及び医療倫理の専門家から構成する。
- また、薬価算定組織や保険医療材料等専門組織と同様に、あらかじめ各分野の臨床の専門家を指名した上で、品目に応じて当該分野の専門家が分析前の協議内容や分析内容の確認等を行うことができる体制とする。
- 以上を踏まえ、委員構成は表3~5の通りとする。
(ⅲ)会議の実施方法について
- 専門組織では具体的な品目に関する議論を行うことから、非公開で行う。
(ⅳ)利益相反について
- 専門組織の委員には中立性が求められるため、対象企業及び競合企業との利益相反について確認を行う。
(ⅴ)企業からの意見聴取等について
- 希望する企業は、専門組織において直接の意見表明及び相互に必要な質疑応答を行うことができる。
- また、策定された評価結果(案)について不服がある企業は不服意見書を提出するとともに、専門組織において直接の不服意見表明を行うことができる。
④ 公的分析の方法や体制
(ⅰ)公的分析の方法
- 提出された企業分析の科学的妥当性を検証(レビュー)する。
- その結果、企業分析に課題があり、科学的妥当性に疑義がある等の場合は、新たに独立した分析(再分析)を行う。
(ⅱ)公的分析の実施体制
- 公的分析については、中立的かつ高度な専門性を有する体制によって行う。
- 国立保健医療科学院が公的分析を主導し、各種調整を行う。そのうえで、大学等を公的分析班と位置付けて複数設置し、公的分析を実施。国立保健医療科学院が公的分析班の分析結果について評価、とりまとめ等を行う。
- 大学等の名称は公開とする。
- 各品目をどの公的分析班が対応するかについては、利益相反、担当品目数などを考慮した上で、国立保健医療科学院が指定する。
(ⅲ)利益相反に関する対応
- 各品目をどの公的分析班が対応するかについては、利益相反、担当品目数などを考慮した上で、国立保健医療科学院で指定を行う(再掲)。
- 公的分析の中立性を確保する観点から、各公的分析班がどの品目を担当しているかについては評価が終了するまで非公開とする。また、接触禁止規定を設け、公的分析班は企業と直接接触しない体制とする。
- 企業の機密情報等を扱うことから、公的分析班には守秘義務を求める。
- 分析を行うにあたり確認が必要な事項がある場合、国立保健医療科学院が企業や公的分析班と協議をしながら、照会を行うこととする。
⑤ 分析にかかる標準的な期間の設定
- 費用対効果評価を適切に進める上で、事前協議、企業分析及び公的分析等について、その内容に応じて必要な期間の確保を行う。
- 費用対効果評価の結果に基づく価格調整を遅滞なく行うため、各段階での標準的な期間は以下のように設定する。
- 企業分析 9 ヶ月程度
(内訳)- 分析前協議(分析の枠組み決定まで) 3~6 ヶ月程度
- 枠組みに基づく企業分析 3~6 ヶ月程度
(但し、合計の期間は9 ヶ月程度を上回らないこととする)
- 公的分析 3 ヶ月程度(再分析を行う場合は6 ヶ月程度)
- 総合的評価及び価格決定 3 ヶ月程度
- 企業分析 9 ヶ月程度
- 各品目の進捗状況については定期的に中医協総会に報告する。
- 費用対効果評価に係る分析の知見を有しない小規模な企業の場合など、標準的な期間での分析が困難な場合も想定されることから、標準的な期間を超えた場合はその理由を中医協総会に報告する。
⑥ 分析ガイドラインのあり方
- 分析の科学的妥当性の確保や品目ごとの公平性の確保の観点から、費用対効果評価に関する分析は、分析ガイドラインに沿って実施する。
- 品目ごとの分析ガイドラインの解釈(用いるデータの範囲等)は、分析前協議等において具体的に協議を行う。
- 試行的導入の経験を踏まえ、分析ガイドラインについて、必要な見直しを行う。
- また、制度化以降においても、必要に応じて適宜見直しを行う。
⑦ データが不足している場合等の対応
- データが不足している等の理由で、「分析不能」であることが確認された品目については、専門組織での協議を経たうえで、中医協総会において分析・評価を中断することができる。
- 分析・評価が中断された場合、中医協総会は専門組織での検討を踏まえ、品目毎に期間を設定し、企業側に必要なデータの集積及び提出を求める。その上で、必要なデータが得られない場合は、専門組織及び中医協総会での協議を踏まえ、最も費用対効果評価の悪いものとみなして価格調整を行う。
- 分析の途中に、当該品目が販売停止もしくは当初予定していた市場が大幅に縮小した場合等は、専門組織での協議を経た上で、中医協総会において分析・評価を中止できる。
- 企業が分析不能とした品目のうち、公的分析班及び専門組織で分析可能と判断された品目については、公的分析の結果を用いて価格調整を行う。
- 分析が中断又は中止とされた事例を集積した上で、今後の仕組みの参考にする。
(4)総合的評価
① 科学的な観点からの検証方法
- ICER については、科学的に妥当な分析が行われることを前提として、分析に適したデータが複数ある場合など、ICER を1点で決めることが困難な場合は、幅をもった評価を許容する。
- 複数の対象集団に分けて分析を行う場合には、対象集団毎にICER を算出する。
- 複数の対象集団があることにより複数のICER が得られる品目の場合は、各対象集団における価値を価格に適切に反映させるため、まず算出されたそれぞれのICER 等に基づき、対象集団毎に価格調整を行ったうえで、それらの重みつき平均を用いて価格調整を行う。
② 配慮を行う品目 (稀少疾患や重篤な疾患等への対応について)
- 英国のように費用対効果評価の結果を「償還の可否判断」に用いる場合は、患者アクセスは大きな課題となりうるが、いったん保険収載したうえで価格調整を行うのであれば、患者アクセスの懸念は軽減される。(再掲)
- 一方、価格調整のみを行う場合であっても、以下の品目の場合は開発阻害やアクセス制限につながる可能性が否定できないため、一定の配慮を行う。(再掲)
①対象患者数が少ないために単価(薬価等)が高くなってしまう品目
②ICER(QALY)では品目の有する価値を十分に評価出来ない品目 - 制度の透明性を確保する観点から、配慮する品目や要素についての判断基準が必要。(再掲)
- これらのうち以下の品目については、費用対効果評価の対象とするが、総合的評価ならびに価格調整で配慮を行う。
- 適応症の一部に、治療方法が十分に存在しない稀少な疾患(指定難病、血友病及びHIV 感染症を対象とする)が含まれる品目
- 適応症の一部に、日本における小児用法・用量が承認されている小児疾患が含まれる品目
- 抗がん剤 (承認された効能効果において悪性腫瘍が対象となっており、悪性腫瘍患者を対象に分析を行った場合)
- 「公的介護費や生産性損失」を含めた分析結果については、国内の知見に基づき行われたものに限り、併せて提出することは可能とする。価格調整には用いないが、提出された分析結果は公表し、事例を集積した上で、今後の仕組みの参考とする。
- 総合的評価において配慮が必要とされた品目の価格調整方法については、(5)④を参照。
③ 評価結果のとりまとめ方、報告、公表の仕方
- 評価が終了した品目については、分析の枠組み(対象疾患、比較対照技術等)やICER を含む主要な分析結果などを公表する。
- 価格調整にあたり、ICER の値が以下(①~④)のいずれに該当するかを速やかに公表する。対象集団毎に分析が行われた場合には、対象集団毎の結果も併せて公表する。
① 500 万円/QALY 未満
② 500 万以上750 万円/QALY 未満
③ 750 万以上1000 万円/QALY 未満
④ 1000 万円/QALY 以上
(総合的評価で配慮が必要とされた品目:① 750 万円/QALY 未満、② 750 万以上1125 万円/QALY 未満、③ 1125 万以上1500 万円/QALY 未満、④ 1500 万円/QALY 以上) - また、費用対効果評価の手法に関して科学的議論を深め、今後の分析の質を高めるために、分析内容や議論となった科学的論点、ICER の値などについて、報告書等の形で公表する。
(5)価格調整
① 価格調整の対象範囲
- 価格調整の範囲については、薬価・材料価格制度を補完する視点からの検討を踏まえ、以下の通りとする。
- 類似薬効比較方式(類似機能区分比較方式)については、有用性系加算部分を価格調整範囲とする。
- 原価計算方式については、
- 開示度が50%未満の品目については、医薬品は営業利益および有用性加算部分、医療機器は営業利益およびその補正部分を価格調整範囲とする。
- 開示度が50%以上の品目については、医薬品は有用性加算部分、医療機器は営業利益率の補正部分を価格調整範囲とする。
② ICER に応じた価格調整方法
- 価格調整方法は、ICER が一定の幅をもって評価された場合にも対応できる階段方式とする。
- ICER の幅が基準値をまたぐ場合は、どちらの段の価格調整率を採用するのが科学的により妥当かについて、中立的な専門組織で検討する。
- ICER の値が基準値をまたぐ場合の基本的な考え方は、以下の通り。
- 科学的により確からしい値が属する段を採用することを原則とする。
- ただし、ICERの幅の両端が同様に確からしい場合は、またぐ領域の大きい方の段を採用する。
- また、ICER の幅が一定以上であるなど、科学的な確からしさ(推計の精度)に課題がある場合には、ICER の幅のうち最も大きい点が属する段を採用する。
③ 価格調整にかかる基準値の設定
- 現在償還されている医療技術の水準、過去の支払意思額調査の結果、1人当たりGDP、諸外国の基準値、試行的で採用した基準値等を踏まえ、500 万円及び1,000 万円/QALY を採用する。
- 基準値前後での価格変動が大きくなりすぎないよう、かつ階段方式の利点を失わないために、500 万/QALY と1000 万/QALY の中間の750 万/QALY も価格調整における基準値とする(図2)。
④ 総合的評価において配慮が必要とされた品目の価格調整方法
- 総合的評価において配慮が必要とされた以下の品目については、価格調整に用いる基準値を別に設定することで配慮を行う(表2)。
- 適応症の一部に、治療方法が十分に存在しない稀少な疾患(指定難病、血友病及びHIV 感染症を対象とする)が含まれる品目
- 適応症の一部に、日本における小児用法・用量が承認されている小児疾患が含まれる品目
- 抗がん剤 (承認された効能効果において悪性腫瘍が対象となっており、悪性腫瘍患者を対象に分析を行った場合)
- 具体的には、1人当たりGDP や諸外国の基準値等を参考に、750 万/QALY、1125 万/QALY、1500 万/QALY とする(図3)。
- 抗がん剤、及び適応症の一部に稀少な疾患や小児疾患が含まれる品目については、当該品目の適応症のうち、該当するものについてのみ、この基準値を用いる。
⑤ 価格調整率
(ⅰ)類似薬効比較方式(類似機能区分比較方式)
- 価格調整対象部分について、以下の価格調整を行う(図4)。
- ICER 500 万円未満/QALY : 価格調整率 1.0 (価格調整なし)
- ICER 500-750 万円未満/QALY: 価格調整率 0.7
- ICER 750-1000 万円未満/QALY: 価格調整率 0.4
- ICER 1000 万円以上/QALY : 価格調整率 0.1
- 患者に必要な医薬品等の安定供給を確保するという観点から、以下の通り、下げ止めを設ける。
① 25%以下の有用性系加算が認められた品目
- 調整前の薬価(材料価格)を10%引き下げた価格を、最終的な薬価(材料価格)の下げ止めとする。
② 25%超え100%未満の有用性系加算が認められた品目
- 認められた有用性系加算に応じて、調整前の薬価(材料価格)を、以下の計算式に基づき算出された率で引き下げた価格を、最終的な薬価(材料価格)の下げ止めとする。
最終的な薬価(材料価格)の下げ止め
= {10 + (当該品目の有用性系加算率(%) -25)/ 15 } %
③ 100%以上の有用性系加算が認められた品目
- 調整前の薬価(材料価格)を15%引き下げた価格を、最終的な薬価(材料価格)の下げ止めとする。
- ○ また、ICER 500 万円/QALY となる価格 (抗がん剤等では750 万円/QALY となる価格)を下回らない価格とする。
(ⅱ)原価計算方式
- 「原価計算方式における加算部分(医薬品)、または営業利益率の補正部分(医療機器)」については、類似薬効比較方式(類似機能区分比較方式)の価格調整範囲と同様の価格調整率を用いる(図4)。
- 「営業利益率」については、以下の価格調整を行う(図5)。
- ICER 500 万円未満/QALY : 価格調整率 1.0 (価格調整なし)
- ICER 500-750 万円未満/QALY: 価格調整率 0.83
- ICER 750-1000 万円未満/QALY: 価格調整率 0.67
- ICER 1000 万円以上/QALY : 価格調整率 0.5
- 患者に必要な医薬品等の安定供給を確保するという観点から、以下の通り、下げ止めを設ける。
① 25%以下の有用性系加算(※)が認められた品目
・調整前の薬価(材料価格)を10%引き下げた価格を、最終的な薬価(材料価格)の下げ止めとする。
② 25%超え100%未満の有用性系加算(※)が認められた品目
・認められた有用性系加算に応じて、調整前の薬価(材料価格)を、以下の計算式に基づき算出された率で引き下げた価格を、最終的な薬価(材料価格)の下げ止めとする。
最終的な薬価(材料価格)の下げ止め
= {10 + (当該品目の有用性系加算率(※) (%)-25 )/ 15 } (%)
③ 100%以上の有用性系加算(※)が認められた品目
・調整前の薬価(材料価格)を15%引き下げた価格を、最終的な薬価(材料価格)の下げ止めとする。
(※) 原価計算方式で算定された医薬品の場合は、加算係数(0.2~1.0)を乗じる前の加算率 - また、ICER 500 万円/QALY となる価格 (抗がん剤等では750 万円/QALY となる価格)を下回らない価格とする。
⑥ 比較対照技術に対して費用が削減される品目(ICER が算出不能な品目)等への対応
(ⅰ)比較対照品目(技術)に対し効果が増加し(又は同等であり)、費用が削減される品目(ICER の算出が不可能な品目の場合)
- これらの品目は、費用対効果の観点からはその活用が望ましいものであるため、これらのうち以下の条件をいずれも満たすものについては、価格の引上げを行う。
条件① 比較対照品目(技術)より効果が高いこと(又は同等であること)が臨床試験等により示されていること
条件② 比較対照品目(技術)と比べて、全く異なる品目であること、又は基本構造や作用原理が異なるなど一般的な改良の範囲を超えた品目であること - 引上げ率は価格調整範囲(※1)の50%とし、かつ引上げ額は調整前の価格全体の10%を上回らない額とする。また、引上げ額は比較対照品目(技術)と比べた患者1人あたりの費用削減額の2分の1に相当する額以下とする。
(ⅱ)ICER が200 万円/QALY 未満の品目
- これらの品目は、費用対効果の観点からはその活用が望ましいものであるため、これらのうち以下の条件をいずれも満たすものについては、価格の引き上げを行う。
条件① 比較対照品目(技術)より効果が高いことが別に定める条件(※2)を満たす臨床試験等により示されていること
条件② 比較対照品目(技術)と比べて、全く異なる品目であること、又は基本構造や作用原理が異なるなど一般的な改良の範囲を超えた品目であること - 引上げ率は価格調整範囲(※1)の25%とし、かつ引上げ額は調整前の価格全体の5%及びICER が200 万円/QALY となる価格を上回らない額とする。
(※1)営業利益は除く。
(※2)別に定める条件・・以下のいずれも満たす臨床研究等
(ⅰ) 受理あるいは掲載時点において、Clarivate analytics 社の”InCites Journal Citation Reports”により提供されているimpact factor(5 年平均)が15.0 を超える学術誌に原著論文として受理されている(ただし、レビュー雑誌、創刊10 年以内の雑誌はのぞく)。
(ⅱ) (ⅰ)を満たす臨床研究等のうち、日本人を含むアジア人を対象とした集団において、費用対効果評価における比較対照品目(技術)よりも優れていることが統計学的に示されている。
⑦ 価格調整のタイミング、手続き
- 評価結果を迅速に価格に反映させる観点から、新医薬品、新医療機器(C1 等)の保険収載のタイミング(年4 回)で費用対効果評価の結果に基づく価格調整を行う。
- 価格調整にあたっては、中立性及び透明性を確保する観点から、専門組織における評価結果(案)、それに基づく価格調整結果(案)を中医協総会に報告し、了承を得る。
- これらの結果については、薬価算定組織、保険医療材料専門組織にも報告する。
- 調整後価格の公表から価格調整までは、在庫への影響等を考慮し、一定の期間を設ける。
(6) 費用対効果評価にかかる体制の強化
- 今後、人材の育成をはじめとした、費用対効果評価にかかる体制の強化に取り組む。
- 具体的には、公的分析を実施可能な人材を育成するため、新たに教育プログラムの設置を検討する。併せて、厚生労働省ならびに国立保健医療科学院の体制充実を図る。
(7) 費用対効果評価に係る今後の検討について
- 中医協においては、2012 年5月に費用対効果評価部会を設置し、我が国における費用対効果評価の在り方について検討を進めてきた。
- 今回の骨子のとりまとめに当たっては、これまでの中医協における検討、試行的導入の結果、有識者の検討結果及び関係業界からの意見等を踏まえ、費用対効果評価専門部会及び合同部会において論点整理及び対応案の検討を行った。
- 本年4月より、本骨子の内容に基づき運用をすすめるとともに、費用対効果評価にかかる事例を集積し、体制の充実を図ることとする。
- その上で、適正な価格設定を行うという費用対効果評価の趣旨や、医療保険財政への影響度、価格設定の透明性確保等の観点を踏まえ、より効率的かつ透明性の高い仕組みとするため、諸外国における取組も参考にしながら、選定基準の拡充、分析プロセス、総合的評価、価格調整方法及び保険収載時の活用のあり方等について検討する。
- また、総合的評価や価格調整において配慮する要素や品目の範囲、配慮の方法等については、今後企業から提出される分析結果や諸外国における運用等を参考に検討を行うこととする。