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第二次世界大戦直後に誕生―審査支払制度と審査支払機関

2021年2月11日

医療経済の話題は近年様々な理由から注目を集めていますが、基本的な知識を押さえていないと主張ではなくて野次にしかならなかったりします。

モノやサービスの売買には通常は「売り手」と「買い手」以外は存在しないのですが、医療費の場合は「審査支払制度」というものが間に入っており、その支払いが適切なものかどうかという目が必ず入ることになります。

ただ、この審査支払制度というものは第二次世界大戦直後という特殊な状況下で生まれたこともあり、それからもうすぐ80年程になるという今、変化が求められているのは自然なことです。進歩した技術に対して、制度面が追い付いていないのは、大抵の国でも同様です。

審査支払制度のはじまり

第二次世界大戦で日本は敗戦しましたが、幸か不幸か、当時存在していた医療保険制度自体は維持しよう、というのが戦後内閣とGHQの判断でした。

その背景には、戦後、機能停止に陥ってしまった医療保険制度を早急に回復させなければならない、という切羽詰まった事情がありました。

戦後という特殊な状況と、戦後数年間の日本の急激なインフレによって、診療報酬の支払いに関してのトラブルが頻発してしまったのです。

診療報酬の支払いを支えているのは、月々回収される保険料ですが、戦後という状況で保険料を支払えない人も続出し、そのために診療報酬の支払いに遅延が生じることが当たり前になってしまうような状況でした。

また、請求から支払いまでに時間を要することから、急激なインフレ下においては、請求時の物価と支払い時の物価に大きな差が出てしまうことになりました。

戦後に実施された打ち手のうち、特に次の3つは押さえておくとよいでしょう。

  1. 組合方式で運営されていた国保が、自治体公営に切り替えられました。この変更理由は複数考えられますが、主な理由は財政基盤の安定でしょう。
  2. 診療報酬を支払うためのお金を貯め込む組織が新しく作られました。今でいう診療報酬支払基金です。1948年頃のこととされます。
  3. 薬価基準制度が導入されました。1950年のことです。当時、物価庁の所管で始まり、1953年から厚生省(現在の厚生労働省)に移管されました。

国保連と支払基金

診療報酬の審査支払機関には、国民健康保険団体連合会(国保連)と、社会保険診療報酬支払基金(支払基金)の2種類があります。

国民健康保険団体連合会(国保連)

国保連は、第二次世界大戦前から都道府県単位で設立され活動していました。

その当初の目的は、国民健康保険制度の啓蒙と普及です。

第二次世界大戦後の1948年には、啓蒙と普及の活動だけでなく、医療費の審査支払も実施するように変更されました。

1958年には新国保法が定められ、国保連の人格および名称が法で定義されました。

連合会の人格および名称

第七章 国民健康保険団体連合会

(設立、人格及び名称)
第八十三条 都道府県若しくは市町村又は組合は、共同してその目的を達成するため、国民健康保険団体連合会(以下「連合会」という。)を設立することができる。
2 連合会は、法人とする。
3 連合会は、その名称中に「国民健康保険団体連合会」という文字を用いなければならない。
4 連合会でない者は、「国民健康保険団体連合会」という名称又はこれに類する名称を用いてはならない。

診療報酬請求書の審査ー診療報酬審査委員会

第八章 診療報酬審査委員会

(審査委員会)
第八十七条 第四十五条第五項の規定による委託を受けて診療報酬請求書の審査を行うため、都道府県の区域を区域とする連合会(その区域内の都道府県若しくは市町村又は組合の三分の二以上が加入しないものを除く。)に、国民健康保険診療報酬審査委員会(以下「審査委員会」という。)を置く。
2 連合会は、前項の規定による事務の遂行に支障のない範囲内で、健康保険法第七十六条第五項の規定による委託を受けて行う診療報酬請求書の審査を審査委員会に行わせることができる。

(審査委員会の組織)
第八十八条 審査委員会は、都道府県知事が定める保険医及び保険薬剤師を代表する委員、都道府県及び当該都道府県内の市町村並びに組合(以下「保険者」という。)を代表する委員並びに公益を代表する委員をもつて組織する。
2 委員は、都道府県知事が委嘱するものとし、その数は、保険医及び保険薬剤師を代表する委員並びに保険者を代表する委員については、それぞれ同数とする。
3 前項の委嘱は、保険医及び保険薬剤師を代表する委員並びに保険者を代表する委員については、それぞれ関係団体の推薦によつて行わなければならない。

(審査委員会の権限)
第八十九条 審査委員会は、診療報酬請求書の審査を行うため必要があると認めるときは、都道府県知事の承認を得て、当該保険医療機関等若しくは指定訪問看護の事業を行う事業所に対して、報告若しくは診療録その他の帳簿書類の提出若しくは提示を求め、又は当該保険医療機関等の開設者若しくは管理者、指定訪問看護事業者若しくは当該保険医療機関等において療養を担当する保険医若しくは保険薬剤師に対して、出頭若しくは説明を求めることができる。
2 連合会は、前項の規定により審査委員会に出頭した者に対し、旅費、日当及び宿泊料を支給しなければならない。ただし、当該保険医療機関等又は指定訪問看護の事業を行う事業所が提出した診療報酬請求書又は診療録その他の帳簿書類の記載が不備又は不当であつたため出頭を求められて出頭した者に対しては、この限りでない。

社会保険診療報酬支払基金(支払基金)

支払基金は、第二次世界大戦後に新しく定義された法人です。法人の種類としては特殊法人に当たります。

設立の根拠法は、社会保険診療報酬支払基金法です。

支払基金の最も重要な使命の一つが「診療報酬の迅速な支払い」です。

審査支払機関(国保連または支払基金)が医療費審査を行う根拠

基本的には、業務委託契約によって、保険者の医療費審査権が移譲された、という部分が鍵となります。

各保険者は審査支払機関(国保連または支払基金)と、審査支払に関する業務委託契約を締結します。

その契約によって、保険者は審査権を審査支払機関に対して移譲した、という解釈ですね。

おわりに

医療費の審査支払制度の根幹にある意義や目的を知っておくことで、「なぜこんなことになっているのだろう」という疑問について考察する材料になります。

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