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デジタル広告市場「広告主サイドからみた実務とDSP」

2021年8月16日

広告主サイドからみた実務

広告主からみた実務のイメージ

  • 広告主は、広告キャンペーン等の企画に際して、「広告予算のうち、どの媒体にいくらの予算を振り分けてどのように運用すれば、広告効果を最大化できるのか」という視点に基づいて、広告戦略を設定する。
  • この広告戦略の設定に際し、広告代理店が、広告主と DSP 等との間に入り、広告主の広告目的を踏まえて、予約型広告や運用型広告への予算の配分や出稿先メディア等を含めてコンサルティングを行うことが多い(特に広告主が大企業の場合)。
  • 運用型広告については、DSP 等から管理画面が提供され、その管理画面上で必要に応じて配信条件を設定・変更する。広告主が広告代理店と契約を行う場合、管理画面の設定等は、ほとんどの場合広告代理店が行っているといわれている。
    ※ 運用型のみを取り扱うアドテク事業者も存在するが、Google、Facebook、Amazon、Yahoo!、Twitter、LINE は、予約型も含め両タイプの広告を提供している。
  • なお、広告代理店には、デジタル広告とともに旧来型の新聞・雑誌・テレビ等とも組み合わせてメニューを提示できる総合代理店や、デジタル広告専業の代理店が存在する。

<参考>日本市場の特徴と市場背景に関する事業者の意見・認識等

  • 日本の運用型広告は、クリックが発生して初めてマネタイズされるタイプ(クリック課金型)を広告主が希望することが多いと指摘されている。この背景としては、日本においては、広告の効果について分かりやすいアウトカムを求める傾向が強いという点が指摘されている。
  • 日本では、このような傾向に強く影響を受けて、デジタル広告が、「ブランディング」のための手段ではなく、「販促」のための手段として発展したとの指摘がある。つまり、「見せる」ではなく、「行動させる(買わせる)」ということに主眼があった。
  • なお、日本では、欧米と比べて、クリック課金型の単価が欧米に比べて低いとの指摘もある。
  • これに対し、欧米では、特に近年、日本と比べて、この「見せる」部分に価値を見出す意識が高まっているといわれている。
  • こうした中、広告トレンドが「米国から2年遅れ」といわれている日本においても、近年は、デジタル広告においても、「クリック広告ではなく、ブランド力を高められるようなサイトで、ちゃんと広告が掲載されて、かつ、ちゃんと読んでもらった上で消費者を誘引しつつ、ブランド・ビルディングをも目指す、といった意識を持つ広告主も徐々に増え始めている」との意見もある。

DSP(Demand Side Platform)

DSP とは

DSP は、広告主の広告目的や消費者に関するデータ等に基づいて広告出稿の管理・最適化を行うためのツール又はそのツールを提供する事業者であって、広告主(又は広告代理店)は、DSP から提供される管理画面を用いるなどして注文を行う。

※ アドネットワーク(=複数の媒体社サイトを広告配信対象としてネットワークを組み、広告の受注を請け負うサービス)と、入札管理ツールとしてのDSP は、従来別の概念であったが、近年、これらの機能に差異がなくなってきており、ほぼ同義であるとの見方もあり、以下、DSP についてはアドネットワークを含むものとして論じる場合がある。

DSP 市場における競争状況

  • 「デジタル広告の取引実態に関する中間報告書」(2020 年4月 28 日 公正取引委員会)(以下「公取委アンケート調査」という。)では、85%弱の広告主は Google への支出額があると回答しており、また、他のプラットフォーム事業者への支出額と比べて支出額に占める割合も多いという傾向が示されている(公取委アンケート調査 別紙1、18 ページ)。
    これは、検索連動型広告や YouTube 等への支出を含むため、Google のDSP への支出額そのものの傾向を表したものではないが、検索や YouTubeへの広告で Google を使う以上、Google の DSP も使う広告主が多いとの指摘がある。
    DSP 事業者の感覚としても、通常、広告主は、メディアとしての Googleや Yahoo!、Facebook 等の選択に加え、DSP の選択において Google に加えてどの DSP を使うかを検討するといった状況ではないかとの意見がある。
  • 公取委最終報告によれば、「Google 広告」(=Google Ads)を含む DSP 市場の市場シェア(売上高ベース)は、グーグルが 60-70%、ヤフーが0-5%であり、「Google 広告」を含まない DSP 市場の市場シェアは、グーグルが5-10%、ヤフーが0-5%である(公取委最終報告 28 ページ参照)。

<参考>公取委最終報告

Google 広告(Google Ads)を含む DSP 市場の市場シェア(広告主〔広告代理店〕に対する売上高ベース)(2019 年度)

事業者名 市場シェア
グーグル 60―70%
ヤフー 0―5%
その他 30―40%
合計 100%

広告主との接点(DSP 市場)におけるプラットフォーム事業者の強み

広告主にとっては、プラットフォーム事業者の有する以下のような強みがDSP の選択における要素となるとの指摘がなされている。

  • 配信先の網羅性
    • 広告主にとっては、プラットフォーム事業者が有する自社メディアの重要性が高いために、DSP の選択において、当該プラットフォームを選択肢から外すという発想は起こりにくい状況(いわばロックイン状態)との意見がある。
      ※ なお、Google については、YouTube の在庫が開放されなくなったことも更にその強さを増したとの意見がある(課題⑦参照)。
    • また、パブリッシャーのカバレッジの広さを指摘する声もある。
  • グローバルなデータ量及びその分析力
    • グローバルにビジネスを展開するプラットフォーム事業者においては、全世界数十億人をベースとしてターゲティングの最適化を図っており、日本のみを対象に1億人ベースで作っているシステムでは勝てないとの意見もある。
      ※ 日本の広告システムと外資系プラットフォームでは、システムの最適化をかける際の変数も桁違いとの指摘もある。
  • Google Analytics の存在
    • Google について、多くの広告主は、Google が原則無料で提供するGoogle Analytics(以下「GA」という。)を利用して、自社サイト訪問者の分析等を実施しており、このことにより、広告の効果分析において、広告主サイドが基礎とする指標を提供しているとの指摘がある。
  • 機能の網羅性
    •  プラットフォーム事業者にはなくて他の DSP にあるという機能はほぼない、つまり、機能面でもプラットフォーム事業者には網羅性があるとの意見もある。
  • 圧倒的な資本力
    • プラットフォーム事業者にあっては、「R&D の額が他社とは2桁違う。結局のところ、資本力から生じる正のスパイラルが生じている。」との指摘がある。
      ※ この点については、後述のアドサーバーや SSP についても同様との指摘あり。

以上のような強みを組み合わせたトータルとしての強みにより、プラットフォーム事業者は、広告主に対して高い費用対効果を提供していると考えられる。

<参考>公取委アンケート調査

  • 公取委アンケート調査(別紙1、57 ページ)によれば、広告主・広告代理店に対して、デジタル・プラットフォーマーと取引する理由について質問したところ、「多くの消費者の注目・時間を引きつけるメディア(検索サイト、SNS、動画共有サイト等)の保有」との回答が 79.1%に達した。
  • そのほか、「広告の配信先となる媒体社※のネットワーク」(同 70.9%)、「膨大なデータ量を通じて高めたターゲティングの精度」(同 65.1%)、「複数のアドテクサービスを統合することによるサービスの利便性」(同 36.0%)、「リアルタイムビッディング等のアドテクの技術力」(同 23.3%)が上位を占めている。
    ※公取委アンケート調査においては「媒体社」と表記されるが、本競争評価では、以下「パブリッシャー」と表記することもある。

参照

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