ヘルスケア業界でリアルワールド系の話が出ると、多くの方の頭には「それってプロダクトの有効性とか安全性の検証に使えるのか?」という疑問が湧きます。
いままで治験や臨床試験では、当然のごとく、「プロダクトの有効性や安全性を証明する」ことが目的だったことが背景にあるのでしょう。
September 4, 2018
Real-World Evidence and Real-World Data for Evaluating Drug Safety and Effectiveness
JAMA. 2018;320(9):867-868. doi:10.1001/jama.2018.10136
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2697359
上記文献は、もともとは疫学的な手法で「壊血病には柑橘系の果物が効く(1700年代)」や「糖尿病にはインスリンが効く(1920年代)」ということが発見されていた、というところから始まります。
そして、1940年代後半に、医学界で「ランダム化比較試験(RCT, Randomized Controlled Trial)」というデザインが使われ始めたことで、科学的厳密性を高めるのと引き換えに、試験参加者が実際の医療で出会う患者像から乖離し始めたということが述べられています。
現在でも、治験参加者は、組み入れ基準の設定により、「併存疾患がない」「規則的に研究機関を訪問できる能力や時間があり、物理的に無理なほど遠くには住んでいない」のような「ふるい(あるいは、選別)」にかけられた方々となります。
そもそも治験に関する情報を得られるかどうか自体にも、何らかの要因があるわけです。
そんなRCTの限界に頭を悩ませていたところに、2000年代に入ってインターネットやビッグデータという解決の糸口が現れました。
カルテを電子カルテにしてインターネットで繋げば、効率的に情報を活用できるし、遠方の患者さんでも治験の参加基準を満たしているかどうか分かるんじゃないか、という期待が出てきました。
RCTでは倫理的に悩みながらも比較対照群を設定する場合もありましたが、これからの比較対照は「既存治療の情報」で代用できるのではないか、というアイデアも出てきます。
そしてアメリカが21st century cures act でリアルワールドについて言及し、「これやります!」とコミットしたことで時代は加速します。