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Let's 解読!「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」Part 01

まずは、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」の前文を読んでみましょう。

というか、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」は長いので「人を対象とする生命科学研究に関する倫理指針」とか短くしてもらえたら楽なんですけど、難しいのかな。

生命科学と医学はどちらかがどちらかを包含するような関係だとしてもらっても全然差し支えないのですが、そうすると困る人がいるのかもしれませんね。

人を対象とする生命科学・医学系研究の役割について

人を対象とする生命科学・医学系研究は、医学・生命科学及び医療技術の進展を通じて、国民の健康の保持増進並びに患者の傷病からの回復及び生活の質の向上に大きく貢献し、人類の健康及び福祉の発展に資する重要な基盤である。

また20世紀後半に始まったヒトゲノム・遺伝子解析研究は、生命科学及び保健医療科学の進歩に大きく貢献するとともに、この研究を通じて得られた技術が様々な研究領域において用いられることにより、人類の健康や福祉の発展、新しい産業の育成等に重要な役割を果たしている。これらの研究基盤や研究そのものは、今後も持続的に発展が求められるものである。

ふむふむ。国民と患者を分けて表現しているのは相変わらず気になる部分ではありますが、「健康の保持増進」「傷病からの回復」「生活の質の向上」というのが三本柱なわけですね。

生命科学と保健医療科学(と医学)の違いはよく分かりませんが(というか区別する必要があるのか?)、ゲノム情報の登場と普及によって、色んな進歩があったのでゲノム情報は今後ますます重要になるよ、ということですね。わかります。

指針はなぜ必要なのか

人を対象とする生命科学・医学研究は、人類及び社会への貢献が期待される一方で、研究対象者の身体及び精神へ侵襲を与え、有害事象をもたらす場合もある。

また、倫理観の変容、診療及び医療サービスの変化とそれに伴う権利侵害等、様々な倫理的、法的又は社会的問題を招く可能性があるという側面も併せ持つ。

研究対象者の福利は、科学的及び社会的な成果よりも優先されなければならず、また、人間の尊厳及び人権は普遍のものとして守られなければならない。

そこで、学問の自由を尊重しつつ、人を対象とする生命科学・医学系研究が人間の尊厳及び人権を尊重して適正かつ円滑に行われるための制度的枠組みの構築が行われてきた。

この部分は、ネガティブなニュアンスが含まれているので、実際に施行される指針からは削除されるようです。

とはいえ、「研究を行う上では、研究対象者に対するリスクも抱える」ということを前段で真正面から述べておくことは、武士道というか負の側面から目を背けないという点で結構好印象だったので残念。

日本人って、マイナス面をマイナスとして自分から正直に話すことを好意的にとらえる人多いと思うんだけどなぁ。

もちろん、他人から指摘されて白状するのは受け入れがたい国民性だということもありますね。

関連法規やその他の規制について

我が国では、日本国憲法個人情報の保護に関する関係法令( 個人情報の保護に関する法律( 平成15年法律第57号。以下「個人情報保護法」という。) 、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律( 平成15年法律第58号。以下「行政機関個人情報保護法」という。) 及び独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律( 平成15年法律第59号。以下「独立行政法人等個人情報保護法」という。) をいう。) 、世界医師会による「ヘルシンキ宣言」及び科学技術会議生命倫理委員会における「ヒトゲノム研究に関する基本原則」( 平成12年6 月14日科学技術会議生命倫理委員会決定) に示された倫理規範等を踏まえ、平成1 4年以降、関係省庁において次の指針※を順次定めてきた。

※ 告示番号は制定当時のもの。

  • ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針( 平成13年文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第1 号)
  • 疫学研究に関する倫理指針( 平成14年文部科学省・厚生労働省告示第2 号)
  • 臨床研究に関する倫理指針( 平成15年厚生労働省告示第255号)
  • 人を対象とする医学系研究に関する倫理指針( 平成26年文部科学省・厚生労働省告示第3 号)

加えて、研究対象及び手法の多様化並びに医学・生命科学及び医療技術の進展に伴い、規制範囲や方法等について継続的な見直しが必要とされている。

ヒトゲノム研究に関する基本原則について(平成12年6月14日)科学技術会議生命倫理委員会

というウェブサイトを見つけました。

URLはこちら。https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/kagaku/rinri/genso614.htm

平成12年って西暦2000年だから、いまから20年前ですよ。びっくり。

今回の指針改定について

今般、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針とヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の適用範囲が一体化しつつあり、両指針に定められている手続に共通点が多いことから、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針にヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針を統合した、新たな倫理指針を定めることとした。

研究には、多様な形態があることに配慮して、本指針においては基本的な原則を示すこととし、研究者等が研究計画を立案し、その適否について倫理審査委員会が判断するに当たっては、この原則を踏まえつつ、個々の研究計画の内容等に応じて適切に判断することが求められる。

重要なのは「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針にヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針を統合した」という部分ですね。吸収合併です。

また、「本指針においては基本的な原則を示す」「この原則を踏まえつつ、個々の研究計画の内容等に応じて適切に判断することが求められる」というのも超・重要です。

要するに、指針はあくまで指針であって原則にすぎない、ということを述べています。責任は個々の研究責任者が負いなさい、ということを言っているわけです。

そのため、「だって、倫理指針にこう書いてあったんだもん!」という言い訳は通用しません。自分の身は自分で守りましょう。

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