エビデンス全般

脱・エビデンスピラミッド。GRADEシステムとRWE

2020年7月4日

今回は、現代医療の根幹をなす「エビデンス」という概念について、その評価方法と新たな潮流を深く掘り下げてみたいと思います。医療従事者、研究者、そして患者さん自身が、ある治療法を選択したり、新しい医薬品を評価したりする際、その判断の拠り所となるのは何でしょうか。それは、科学的な根拠、すなわち「エビデンス」に他なりません。

根拠に基づく医療(Evidence-Based Medicine, EBM)という考え方が浸透して久しいですが、その実践は決して単純なものではありません 1。目の前にある情報が、どれほど信頼でき、どれほど確信を持って臨床の意思決定に用いることができるのか。この問いに答えるためには、エビデンスを体系的に評価し、その価値を正しく理解するための指針が必要となります。

この記事では、二つの重要な概念、「エビデンスピラミッド」と、近年急速にその重要性を増している「リアルワールドエビデンス(RWE)」の関係性について解説していきます。

  • まず、エビデンスの質と推奨の強さを評価するための世界標準的な枠組みであるGRADEシステムを理解することから始めます。
  • 次に、伝統的なエビデンスの階層構造であるエビデンスピラミッドが何を意味し、どのような限界があるのかを明らかにします。
  • そして、その限界を補完するものとして登場したリアルワールドエビデンスが、このピラミッドの中でどのように位置づけられ、どのような価値を持つのかを考えていきます。

エビデンスを格付けする - GRADEシステムの本質

GRADEシステムの定義と目的

医療における意思決定の質を高めるためには、まず、その判断の根拠となるエビデンスの「質」を客観的に評価する方法が必要です。ここで登場するのが、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development, and Evaluation)システムです 2。GRADEシステムは、システマティックレビューや診療ガイドラインを作成する際に、エビデンスの質を評価し、それに基づいて行われる診療行為の推奨の強さを段階付けするための、透明性の高い体系的なアプローチです 3。今日では、世界保健機関(WHO)をはじめとする100以上の組織が採用しており、この分野における世界標準の枠組みと見なされています 5

その主な目的は二つあります。一つは、ある治療法や診断法に関する研究結果、すなわちエビデンスが、どの程度の確信度(質)を持つかを評価することです。もう一つは、その評価結果と他の要因を総合的に考慮して、特定の診療行為をどの程度強く推奨できるかを決定することです 2。このシステムが提供するのは、単なる点数付けではなく、臨床家、研究者、そして患者さんが、診療ガイドラインの推奨事項を正しく理解し、共有された意思決定を行うための、構造化された共通言語なのです 5

「エビデンスの質」と「推奨の強さ」の重要な分離

GRADEシステムの最も革新的で重要な特徴は、「エビデンスの質」の評価と「推奨の強さ」の決定を明確に分離している点にあります 5。これは、一見すると些細な違いに思えるかもしれませんが、実はEBMの基本原則に深く根差した、極めて重要な概念です。なぜなら、「臨床的な決断は、エビデンスだけで行われるものでは決してない」からです 8

従来の多くの評価システムでは、エビデンスの質が高い研究(例えば、大規模なランダム化比較試験)があれば、自動的にその治療法は強く推奨される、という傾向がありました。しかし、GRADEシステムはこの単純な考え方を退けます。たとえ非常に質の高いエビデンスが存在したとしても、その治療法がもたらす利益がごくわずかであったり、逆に重大な害や高いコストを伴ったり、あるいは患者さん自身の価値観や希望にそぐわなかったりする場合には、推奨は「弱い」ものになり得ます 2

逆に、エビデンスの質がそれほど高くない観察研究から得られた知見であっても、その介入がもたらす利益が非常に大きく、害やコストが無視できるほど小さい場合には、「強い」推奨がなされることもあります 5。このように、GRADEは、エビデンスの質を客観的に評価した上で、そこから推奨を導き出す過程において、介入による利益と不利益のバランス、患者さんの価値観や好み、そして医療資源の利用という、現実の臨床現場で考慮されるべき複数の要素を体系的に、かつ透明性をもって組み込むための枠組みを提供します 2

この分離こそが、GRADEシステムを単なる研究評価ツールではなく、臨床判断の複雑なプロセスを支援するための洗練された枠組みたらしめているのです。それは、科学的な客観性と、個々の患者さんを取り巻く主観的な状況との間に橋を架ける試みであり、この柔軟な構造が、後述するリアルワールドエビデンスのような多様な情報源を評価する上でも極めて有効に機能します。

エビデンスの質の4段階評価

GRADEシステムでは、エビデンスの質、すなわち「推定された効果が真の効果に近いとどの程度確信できるか」という確信度を、4つのレベルに分類します 2。これらのレベルは、「高」、「中」、「低」、「非常に低」と定義されています 11

「高(High)」とは、その研究が示す効果の推定値は、真の効果に非常に近いと強く確信できる状態を指します 2。これは通常、適切に実施されたランダム化比較試験(RCT)から得られるエビデンスの出発点となります 4

「中(Moderate)」は、効果の推定値は真の効果に近い可能性が高いものの、将来的には大きく異なる可能性も残されていると、中程度の確信を持っている状態です 2

「低(Low)」は、効果の推定値に対する確信は限定的であり、真の効果は推定値と大きく異なるかもしれない、という状態を意味します 2。これは、後述する観察研究から得られるエビデンスの標準的な出発点です 4

そして、「非常に低(Very low)」は、効果の推定値に対してほとんど確信が持てず、真の効果は推定値とはおそらく著しく異なっているだろう、という状態です 2

重要なのは、これらの分類が固定的なものではなく、流動的であるという点です。研究デザインの種類によって初期のレベルが決まりますが、その後の詳細な吟味によって、質は格下げ(ダウンレード)されたり、格上げ(アップグレード)されたりします。この格付けプロセスは、研究の限界や結果の矛盾、間接性といった様々な要因を考慮して行われ、エビデンスの質という連続的な概念を、意思決定のために分かりやすく分類するための、実践的な手段なのです 5

エビデンスの階層構造 - 伝統的なエビデンスピラミッド

ピラミッドの構造と論理

医療におけるエビデンスの強さを理解するための古典的で直感的なツールとして、「エビデンスピラミッド」が長年にわたり用いられてきました 12。このピラミッドは、様々な種類の研究デザインを、その科学的信頼性の高さに応じて階層的に配置したものです 14。ピラミッドの頂点に近づくほど、バイアス(偏り)が少なく、因果関係を証明する力が強い、より質の高いエビデンスとされ、逆に底辺に近づくほど、その信頼性は低いと見なされます 6

この階層構造の論理は、研究デザインが「バイアスをどれだけ効果的に排除できるか」という点に基づいています。ピラミッドの上位に位置する研究ほど、研究者の意図や偶然の要因が結果に与える影響を最小限に抑えるための工夫が凝らされており、それによって得られる結論の信頼性が高まると考えられているのです 6。臨床上の疑問に答えるためのエビデンスを探す際には、このピラミッドのできるだけ上位に位置する研究を探すことが、EBMの実践における基本的な指針とされてきました 13

各階層の研究デザイン解説

エビデンスピラミッドの各階層は、特定の種類のリサーチデザインに対応しています。その主なものを下から順に見ていきましょう。

ピラミッドの最も底辺に位置するのは、「専門家の意見」や個別の「症例報告」、そして基礎研究である「動物実験」や「in vitro(試験管内)研究」です 14。これらは新たな仮説を生み出す源泉として重要ですが、科学的な厳密性には欠け、一般化することは困難です 13

その一つ上に位置するのが、「観察研究」と呼ばれる一群の研究です。これらは、研究者が積極的に介入することなく、対象となる集団を観察することで知見を得る手法です。代表的なものに「コホート研究」と「症例対照研究」があります 14。コホート研究は、ある特定の要因を持つ集団と持たない集団を、未来に向かって追跡し、疾病の発生率などを比較します 13。一方、症例対照研究は、ある疾病を持つ患者群(症例)と持たない対照群を設定し、過去に遡って要因への曝露状況を比較する研究です 14。これらの研究は、実際の人間を対象とするため臨床的な示唆に富みますが、要因の割り付けがランダムではないため、未知のバイアスが結果に影響を与える可能性が残ります。

ピラミッドの上層部に位置するのが、「ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial, RCT)」です 14。RCTは、研究対象者を無作為(ランダム)に治療群と対照群(プラセボや標準治療を受ける群)に割り付け、その効果を比較する研究手法です 16。ランダム化によって、治療法の違い以外の要因(年齢、性別、重症度など)が両群で均等に分布することが期待されるため、観察された結果の差は、治療そのものの効果であると結論づけることができます。このバイアスを最小化する力から、RCTは治療効果の検証における「ゴールドスタンダード(黄金標準)」と見なされています 14

そして、ピラミッドの最頂点に君臨するのが、「システマティックレビュー」と「メタアナリシス」です 12。これらは個別の研究ではなく、特定の臨床上の問いに関連する質の高い研究(主にRCT)を網羅的に収集し、批判的に吟味し、その結果を統計的な手法を用いて統合・要約する「研究の研究」です 13。複数の研究結果を統合することで、単一の研究よりもはるかに強力で安定した結論を導き出すことができ、最も信頼性の高いエビデンスとされています 14

ピラミッドの限界:内的妥当性と外的妥当性のトレードオフ

エビデンスピラミッドは、エビデンスの質を理解するための非常に有用なツールですが、その構造には本質的な限界も存在します。この限界を理解することは、リアルワールドエビデンスの重要性を把握する上で不可欠です。

ピラミッドの階層は、主として「内的妥当性(Internal Validity)」の高さを基準に構築されています 6。内的妥当性とは、研究のデザインや実施方法が適切で、交絡因子などのバイアスが十分に排除されており、観察された結果が真にその介入(治療)によるものであると確信できる度合いを指します。RCTがピラミッドの上位に位置するのは、ランダム化という手続きによって、この内的妥当性が極めて高く保たれるからです 6

しかし、内的妥当性を追求するあまり、犠牲になりがちなのが「外的妥当性(External Validity)」です 18。外的妥当性とは、その研究結果を、研究が行われた特定の環境や集団を超えて、より広い範囲の、いわゆる「実世界(リアルワールド)」の患者さんや臨床現場に一般化できる度合いを指します 20

RCTは、内的妥当性を最大化するために、非常に厳格な選択基準・除外基準を設けることが一般的です。例えば、高齢者、妊婦、複数の合併症を持つ患者、様々な併用薬を服用している患者などは、結果の解釈を複雑にする要因となりうるため、研究の対象から除外されることが少なくありません 18。その結果、RCTで得られた知見は、理想的にコントロールされた環境下での、均質で健康状態の比較的良好な患者集団における「有効性(efficacy)」を示すものとなります。しかし、日常の臨床現場で医師が向き合うのは、RCTからは除外されたであろう、多様な背景を持つ不均一な患者さんたちです。

この構造的な問題は、エビデンスピラミッドが本質的に抱える「エビデンス・ギャップ」を生み出します。つまり、ピラミッドが最も質の高いエビデンスとして称揚するRCTの結果が、そのまま現実の多様な患者さんに当てはまる保証はない、というギャップです。このピラミッドの構造自体が、内的妥当性は高いが外的妥当性に課題を抱えるエビデンスと、その逆の特性を持つエビデンスの必要性を示唆しています。このギャップを埋めるための重要なピースこそが、次章で詳しく解説するリアルワールドエビデンスなのです。

リアルワールドエビデンス(RWE)の台頭とその位置づけ

リアルワールドデータ(RWD)からリアルワールドエビデンス(RWE)へ

近年、医療界で急速に注目を集めているのが「リアルワールドエビデンス(RWE)」ですが、この概念を理解するためには、まずその源泉となる「リアルワールドデータ(RWD)」について正しく把握する必要があります。この二つは密接に関連していますが、同一のものではありません。

リアルワールドデータ(RWD)とは、日常の臨床現場や患者さんの生活の中から、研究目的ではなく、主に診療や健康管理の過程で定常的に収集される、健康状態に関するあらゆる生(なま)のデータを指します 22。その情報源は非常に多岐にわたります。例えば、病院で日々記録される電子カルテのデータ、診療報酬請求のために作成されるレセプトデータやDPCデータ、特定の疾患を持つ患者さんを登録・追跡する患者レジストリ、健康診断の結果、さらにはスマートフォンアプリやウェアラブルデバイスから得られる個人の健康記録(Patient-Generated Health Data)なども含まれます 25。これらは、いわば医療における「ビッグデータ」であり、その膨大な量と多様性が大きな特徴です 26

一方、リアルワールドエビデンス(RWE)とは、この膨大で雑多なリアルワールドデータを、科学的な手法を用いて適切に分析し、そこから導き出された臨床的な知見、すなわち医薬品や医療機器の有効性や安全性に関する科学的根拠のことを指します 23。この区別は極めて重要です。なぜなら、収集されたままのRWDは、単なる情報の集合体に過ぎず、様々なバイアスや欠損を含んでいる可能性があるからです 26。その生データを、後述するような統計的な手法を用いて厳密に解析し、バイアスを制御し、信頼できる結論を導き出すプロセスを経て、初めて価値ある「エビデンス」へと昇華されるのです。

このRWEの台頭は、単なる科学的な好奇心から生まれたものではありません。それは、三つの大きな潮流が合流した結果と捉えることができます。第一に、電子カルテやウェアラブルデバイスの普及といった技術革新が、かつてない規模のRWDへのアクセスを可能にしました(手段の獲得) 25。第二に、莫大な費用と時間を要する伝統的な臨床試験の効率化が求められる中で、より迅速かつ低コストで知見を得られる可能性を秘めたRWEへの経済的な期待が高まりました(動機の発生) 18。そして第三に、前章で述べたRCTの外的妥当性の限界、すなわち「エビデンス・ギャップ」を埋めるという科学的な必要性が明確に認識されたことです(機会の発見) 21。この技術、経済、科学という三つの力が収束し、RWEを現代医療における不可欠な要素へと押し上げたのです。

エビデンスピラミッドにおけるRWEの位置

では、このリアルワールドエビデンスは、伝統的なエビデンスピラミッドの中で、どこに位置づけられるのでしょうか。一般的に、RWEは、日常診療の範囲で収集されたデータに基づくため、研究者が介入を行わない「観察研究(非介入研究)」のカテゴリーに分類されます 17。具体的には、コホート研究や症例対照研究、あるいはデータベース研究といった、ピラミッドの中層から下層にかけての部分に相当します。

GRADEシステムの評価においても、RWEの基盤となる観察研究は、ランダム化が行われていないため、潜在的な交絡のリスクを常に内包していると見なされ、そのエビデンスの質は原則として「低(Low)」からスタートします 4。これは、RWEがRCTに比べて本質的に信頼性が劣るという意味ではなく、その性質上、結果の解釈にはより慎重な吟味が必要であることを示しています。しかし、重要なのは、この出発点が最終評価ではないということです。次章で詳述するように、研究のデザインや解析手法の工夫次第では、その質を「中(Moderate)」、あるいは稀ではありますが「高(High)」へと格上げすることも可能なのです 10

RCTを補完するRWEの不可欠な役割

RWEの真価は、RCTに取って代わることではなく、RCTが持つ限界を補完し、両者が協力してより完全なエビデンスの全体像を描き出す点にあります 17。この関係性を理解する鍵は、「有効性(efficacy)」と「有用性(effectiveness)」という二つの言葉の違いにあります 17

「有効性(efficacy)」とは、理想的に管理された環境下、すなわちRCTの中で示される治療の効果です。そこでは患者の選択基準が厳格で、服薬遵守も徹底されるため、その医薬品が持ちうる最大の効果が測定されます。一方、「有用性(effectiveness)」とは、日常の臨床現場、すなわちリアルワールドにおける治療の効果を指します 17。そこには、様々な合併症を持つ患者がおり、服薬を忘れることもあれば、経済的な理由で治療を中断する人もいます。RWEは、この混沌とした現実の中での治療の真の価値、すなわち「有用性」を明らかにすることに長けています。

具体的にRWEが補完する役割は多岐にわたります。第一に、RCTでは追跡期間が限られるため評価が難しい、医薬品の長期的な安全性や有効性の評価が可能です 33。第二に、発生頻度が極めて低い副作用は、数千人規模のRCTでは検出できないことがありますが、数百万、数千万もの患者データを含むRWDを解析することで、稀な有害事象のシグナルを捉えることができます 32。第三に、RCTでは除外されがちな高齢者、小児、妊婦、あるいは特定の合併症を持つ患者といった、多様なサブグループにおける治療効果を検証することができます 19。第四に、患者さんの生活の質(QOL)や満足度といった、患者報告アウトカム(PRO)を大規模に収集・分析し、患者さんにとって本当に意味のある価値を評価することも可能です 19

このように、RWEはRCTが生み出す「理想的な条件下でのエビデンス」と、臨床現場が求める「現実世界でのエビデンス」との間のギャップを埋める、不可欠な橋渡しの役割を担っているのです。

RWEの質をいかに評価し、高めるか

GRADEシステムによる観察研究の評価

リアルワールドエビデンス(RWE)の価値を正しく認めるためには、その質の評価が不可欠です。ここで再び、GRADEシステムが重要な役割を果たします。前述の通り、RWEの源流である観察研究は、ランダム化が行われていないという性質上、未知の交絡因子の影響を受ける可能性を否定できないため、GRADEシステムではエビデンスの質が原則として「低(Low)」から評価が始まります 4

しかし、GRADEシステムの洗練されている点は、この初期評価が固定的なものではなく、研究内容の厳密な吟味を通じて、質を格下げ(ダウンレード)したり、逆に格上げ(アップグレード)したりする動的なプロセスを持つことです 4

エビデンスの質を格下げする要因としては、5つのドメインが考慮されます 11。第一に「バイアスのリスク」で、研究デザインや実施方法に内在する限界を指します。第二に「非一貫性」で、複数の研究間で結果が大きく異なる場合です。第三に「間接性」で、研究の対象集団や介入、評価項目が、真に知りたい臨床上の問いと異なる場合です。第四に「不精確さ」で、結果の信頼区間が広く、効果の推定が不安定な場合です。そして第五に「出版バイアス」で、肯定的な結果が出た研究ばかりが公表され、否定的な結果の研究が埋もれてしまう可能性を指します 11。これらの要因が認められる場合、エビデンスの質は「低」から「非常に低」へと格下げされることがあります。

一方で、観察研究であっても、特定の条件を満たす場合には、その質を「低」から「中(Moderate)」、あるいは「高(High)」へと格上げすることが可能です 10。そのための主な基準は三つあります。第一に「効果の大きさ」です。観察された効果が非常に大きい場合(例えば、相対リスクが2倍を超える、あるいは0.5倍未満など)、その結果がバイアスだけで説明される可能性は低いと判断され、質が格上げされます 1。心臓弁置換術後の患者における抗血栓療法の劇的な血栓塞栓イベント減少効果は、その典型例です 40。第二に「用量反応関係」の存在です。薬剤の投与量が増えるにつれて効果も増大する、といった明確な関係が示されれば、その因果関係の確からしさは増します 1。第三に、「すべての妥当な交絡因子が効果を弱める方向にしか作用しない」と考えられる場合です。つまり、未測定の交絡因子を考慮したとしても、観察された効果がさらに強まることはあっても弱まることはない、と合理的に推論できる状況です 10

このように、GRADEシステムは、研究デザインの種類だけで一律に質を決めるのではなく、個々の研究の特性を多角的に吟味することで、RWEの信頼性を柔軟かつ体系的に評価する枠組みを提供しているのです。

RWEに潜むバイアスとの闘い

RWEの信頼性を議論する上で避けて通れない最大の課題は、「バイアス」の存在です。バイアスとは、研究結果が真実から体系的にずれてしまう偏りのことであり、RWEの源となるRWDは、その収集過程の性質上、様々なバイアスを含みやすいという弱点を持ちます 41。これらのバイアスを理解し、制御することが、質の高いRWEを生成するための第一歩となります。

主なバイアスには、三つの種類があります。第一は「選択バイアス(Selection Bias)」です 41。これは、分析対象となる患者集団が、本来評価したい集団全体を代表しておらず、何らかの形で偏っている場合に生じます。例えば、特定の病院のデータだけを用いると、その病院を受診する患者層(重症度や社会経済的背景など)に特有の偏りが結果に影響を与える可能性があります。また、健康管理アプリの利用者のデータは、健康意識が高い人々に偏っているかもしれません 41

第二は「交絡(Confounding)」です 41。これは、評価したい要因(例:薬剤Aの投与)と結果(例:心筋梗塞の発生)の両方に関連する第三の因子(交絡因子)が存在し、あたかも評価したい要因が結果を引き起こしたかのように見せかけてしまう現象です。例えば、薬剤Aを処方される患者が、もともと健康に気を使う生活習慣を送っている人々であった場合、心筋梗塞の発生率が低いのは、薬剤Aの効果ではなく、その良好な生活習慣(交絡因子)によるものかもしれません。

第三は「情報バイアス(Information Bias)」または「測定バイアス」です 41。これは、データの測定や記録の仕方に偏りがある場合に生じます。RWDは診療目的で収集されるため、研究目的で収集されるデータほど厳密ではありません。電子カルテへの入力ミス、診断名の表記揺れ、あるいは特定の条件下で検査値が測定されない(欠測)といった不完全さが、情報バイアスの一因となります 41。これらのバイアスを放置したまま分析を行えば、誤った結論を導きかねません。

バイアスを制御する統計的手法

RWDに内在するバイアスという課題に対し、研究者たちはそれを克服するための強力な統計的手法を開発してきました。これらの手法は、観察データから、あたかもランダム化比較試験(RCT)を行ったかのような状況を統計的に作り出し、より信頼性の高い因果関係の推定を試みるものです。ここでは、その代表的な三つの手法を、数式を使わずに概念的に解説します。

一つ目は「傾向スコアマッチング(Propensity Score Matching, PSM)」です 42。これは、交絡バイアスを軽減するための非常にポピュラーな手法です。まず、患者さんの年齢、性別、合併症の有無といった様々な背景情報を用いて、その人が「ある治療を受ける傾向(確率)」を統計モデルで予測し、「傾向スコア」として算出します 43。次に、治療を受けた患者さん一人ひとりに対して、治療を受けていない患者さんの中から、この傾向スコアが非常に近い(つまり、背景特性がよく似ている)人を見つけ出し、ペアを作ります 44。この「似た者同士」のペアを多数作り、そのペア間で治療効果を比較することで、背景特性の違いによる交絡の影響を最小限に抑え、治療そのものの純粋な効果を評価しようとするのが、この手法の狙いです 44

二つ目は「操作変数法(Instrumental Variable Analysis, IV)」です 47。これは、測定されていない未知の交絡因子が存在する場合でも、因果効果を推定できる可能性を秘めた、より高度な手法です。この分析では、「操作変数」と呼ばれる特別な変数を利用します 49。操作変数とは、(1) 治療の選択には影響を与えるが、(2) 結果にはその治療を通じてしか影響を与えず、(3) 結果に影響を与える未知の交絡因子とは関連がない、という三つの厳しい条件を満たす変数のことです 47。例えば、特定の薬剤を処方する医師の「好み」や、専門病院までの「距離」などが操作変数として用いられることがあります。これらの変数は、患者の治療選択に影響を与えますが、患者自身の健康状態とは直接関係がないと考えられるため、「自然のランダム化装置」として機能します。この操作変数を利用して治療選択に生じた「偶然の変動」のみを抽出し、分析することで、未知の交絡因子の影響を取り除いた因果効果を推定するのです 49

三つ目は「差分の差分法(Difference-in-Differences, DiD)」です 51。この手法は、ある政策や介入が導入される「前」と「後」のデータが、介入を受けた「治療群」と受けなかった「対照群」の両方で利用できる場合に用いられます。分析の核心は、まず治療群における介入前後の結果の変化(差分1)を計算し、次に対照群における同時期の結果の変化(差分2)を計算します。そして、この二つの差分のさらに差(差分の差)を取ることで、介入がなかった場合に自然に生じたであろう時間的な変化を取り除き、介入そのものの純粋な効果を推定します 51。この手法が成立するための最も重要な前提は「平行トレンド仮定」と呼ばれ、もし介入がなければ、治療群と対照群の結果は同じように推移しただろう、という仮定です 51

これらの高度な統計手法の存在は、RWEの価値を考える上で極めて重要です。なぜなら、RWEの信頼性は、元のデータ(RWD)の質だけでなく、こうしたバイアスを制御するための分析手法がいかに厳密かつ透明性をもって適用されたかに大きく依存するからです。雑多なデータを知見へと変えるのは、まさにこの方法論的な厳格さなのです。

RWEの活用と新たな潮流

規制当局によるRWEの受容

リアルワールドエビデンス(RWE)の価値が認識されるにつれて、その活用は学術研究の領域を越え、医薬品や医療機器の承認審査という、極めて重要な領域にまで及んでいます。かつて、規制当局の承認審査はランダム化比較試験(RCT)から得られるエビデンスを絶対的な基準としていましたが、近年、その姿勢には大きな変化が見られます。

米国の食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)、そして日本の医薬品医療機器総合機構(PMDA)といった世界の主要な規制当局は、RWEを規制上の意思決定に活用するための公式なフレームワークやガイダンスを次々と公表しています 23。これは、RWEがもはや単なる補足情報ではなく、特定の状況下においては承認の根拠となりうる「規制グレード」のエビデンスとして認められつつあることを示しています。

実際に、RWEが承認の決め手となった事例も登場しています。例えばFDAは、臓器移植後の拒絶反応を抑制する薬剤であるプログラフ(タクロリムス)について、肺移植患者への適応拡大をRWEに基づいて承認しました 55。肺移植の領域では倫理的な観点から大規模なRCTの実施が困難でしたが、既存の患者レジストリデータを用いた質の高い観察研究が、その有効性を裏付ける十分な証拠と判断されたのです 56。また、乳がん治療薬であるイブランス(パルボシクリブ)の男性乳がん患者への適応拡大も、希少疾患であるためにRCTの実施が難しい中、複数のデータベースから得られたRWEが承認を後押ししました 55。これらの事例は、特に希少疾患や、倫理的・実践的な理由でRCTの実施が困難な領域において、RWEが果たす役割の重要性を明確に示しています 57

医療技術評価(HTA)と支払者の意思決定

医薬品の価値は、規制当局による承認だけで決まるわけではありません。その医薬品が実際に患者さんのもとに届くためには、公的医療保険でカバーされるか、あるいは医療機関の薬剤リストに採用されるか、といった関門を通過する必要があります。この意思決定を担うのが、医療技術評価(Health Technology Assessment, HTA)機関や、保険者などの支払者(Payer)です。

近年、これらの組織もまた、RWEを重要な判断材料として活用するようになっています 59。HTA機関は、医薬品の臨床的有効性だけでなく、費用対効果も厳しく評価します。RCTのデータだけでは、実臨床における長期的な費用や、他の治療法との比較における真の価値を評価するには不十分な場合があります。そこでRWEが、実際の医療現場での薬剤の使用実態、医療資源の消費、そして長期的なアウトカムに関する情報を提供し、より現実に即した価値評価を可能にするのです 61

さらに、RWEは「価値に基づく価格決定(Value-based Pricing)」や「成果連動型契約」といった、新しい支払いモデルの基盤ともなっています 63。これは、医薬品の価格を、リアルワールドでの治療成果(パフォーマンス)に応じて変動させる仕組みです。RWEを用いて実際の治療効果を測定し、その結果に基づいて製薬企業への支払額を決定することで、支払者は費用対効果の不確実性を低減させることができます 63。このように、RWEは医薬品開発の最終段階である市場アクセスにおいても、その価値を証明するための不可欠なツールとなりつつあります。

新たな研究デザインの登場:ハイブリッド研究

RCTと観察研究という伝統的な二分法では捉えきれない、新しいタイプの研究デザインが次々と登場しています。これらは「ハイブリッド研究」とも呼ばれ、RCTの持つ内的妥当性の高さと、RWEの持つ外的妥当性の広さを融合させる試みです 65

その代表例が、「外部対照群(External Control Arm)」を用いた臨床試験です 65。これは、新薬を投与する単一の治療群のみで試験を実施し、その比較対象となる対照群を、電子カルテや患者レジストリといったRWDから統計的に構築する手法です。特に、患者数が極めて少ない希少疾患や、致死性の高いがんなど、倫理的にプラセボ群を設けることが困難な場合に非常に有用です。RWDを用いて、過去の治療成績や疾患の自然歴(何もしなかった場合に病気がどう進行するか)を再現した「歴史的対照群」や「合成対照群」を作成し、新薬の効果と比較するのです 66

もう一つの重要なデザインが、「実用的臨床試験(Pragmatic Clinical Trial, PCT)」です 65。PCTは、ランダム化というRCTの核となる要素は維持しつつも、できるだけ日常の臨床現場に近い環境で試験を実施することを目指します。参加者の選択基準を緩やかにして多様な患者を含めたり、厳格な検査スケジュールを設けずに通常の診療に任せたり、評価項目を電子カルテから直接収集したりすることで、研究のための特別な負担を減らし、リアルワールドでの「有用性(effectiveness)」を直接的に評価します 65。これらのハイブリッド研究は、エビデンス生成をより効率的で、倫理的で、そして臨床的に意義のあるものへと進化させています。

エビデンス生成を加速するテクノロジー

RWEの活用とハイブリッド研究の発展を背後で支えているのが、目覚ましい技術革新です。特に、人工知能(AI)と、それに関連する技術が、エビデンス生成のあり方を根本から変えようとしています。

まず、「AIと機械学習(ML)」の役割が挙げられます 68。RWDの多く、特に電子カルテの診療録は、医師が記述した自由形式のテキストデータ(非構造化データ)であり、そのままでは解析が困難です。ここに自然言語処理(Natural Language Processing, NLP)というAI技術を用いることで、テキストの中から診断名、症状、治療内容といった重要な情報を自動的に抽出し、構造化データに変換することができます 68。また、機械学習モデルは、人間では気づけないような複雑なデータのパターンを学習し、特定の治療が効きやすい患者サブグループを特定したり、疾患の進行を予測したりすることが可能です 69

次に、「フェデレーテッド・ラーニング(連合学習)」というプライバシー保護技術も重要です 72。RWDは機微な個人情報を含むため、複数の医療機関がデータを共有して共同研究を行うことには大きな障壁がありました。フェデレーテッド・ラーニングは、各医療機関が自身のデータを外部に出すことなく、手元でAIモデルを学習させ、その学習結果(モデルのパラメータ)だけを中央のサーバーに集約して、より高性能な統合モデルを構築する技術です 73。これにより、プライバシーを保護しながら、大規模な共同研究が可能になります。

さらに未来を見据えれば、「デジタルツイン」という概念が控えています 76。これは、ある一人の患者のRWD(ゲノム情報、検査データ、生活習慣、治療歴など)をすべて統合し、その患者の仮想的な分身(patient-in-silico)をコンピュータ上に構築する試みです 76。このデジタルツインを使えば、実際に投薬する前に、様々な治療法を仮想的にシミュレーションし、その患者にとって最も効果的で副作用の少ない治療法を予測することが可能になると期待されています 76

これらの技術革新は、RWEの生成と活用を飛躍的に加速させるだけでなく、エビデンス生成のプロセスそのものを変革しています。それは、従来の研究が直線的で段階的なプロセスであったのに対し、リアルタイムのデータ収集と分析、そしてフィードバックが絶えず繰り返される、動的で循環的なプロセスへの移行を意味します。この循環こそが、医療全体が継続的に学習し、自己改善していく「学習するヘルスケアシステム(Learning Health System)」の実現に向けた鍵となるのです 30

RWEを巡る倫理とガバナンス

データガバナンスの課題

リアルワールドエビデンス(RWE)がもたらす恩恵は計り知れませんが、その基盤となるリアルワールドデータ(RWD)の活用には、解決すべき重大な課題が山積しています。その中でも根幹をなすのが「データガバナンス」の問題です。データガバナンスとは、組織が保有するデータ資産を、安全性と品質を保ちながら効果的に活用するための管理体制やルール、プロセスの総称です 79

RWDは、様々な医療機関やシステムから、異なる目的、異なるフォーマットで収集されるため、本質的に不均一で不完全です 81。データの「品質」を確保するためには、情報の欠損や不正確な入力をどう扱うか、という課題があります 81。また、異なるシステム間でデータを連携させるための「相互運用性(interoperability)」の確保も不可欠です。これには、医療用語の標準化(例:SNOMED CT, LOINC)や、データ交換規格(例:HL7, FHIR)の導入が求められます 79

さらに、機微な医療情報を扱う以上、「セキュリティ」の確保は最優先事項です。不正アクセスやデータ漏洩からデータを保護するための堅牢な体制が不可欠となります 83。これらの課題に対処するためには、組織内に「データスチュワード」や「データオーナー」といった責任の所在を明確にした役割を設け、全組織的なデータ管理方針を策定し、継続的に運用していくという、強固なデータガバナンスの確立が不可欠なのです 79

プライバシーと同意のジレンマ

RWDの活用は、伝統的な研究倫理に新たな問いを投げかけます。その核心にあるのが、プライバシー保護とインフォームド・コンセント(説明と同意)のジレンマです。

RCTでは、研究に参加する個人から、特定の研究目的のためにデータを使用することについて、明確なインフォームド・コンセントを得るのが原則です。しかし、RWDの多くは、日々の診療の過程で収集されたものであり、収集時点では将来の研究利用が想定されていません 85。この二次利用に際して、改めて患者一人ひとりから同意を取得することは、特に大規模なデータベース研究では現実的に不可能です。

このジレンマを解決するために、いくつかの方法が模索されています。一つは、個人を特定できる情報をすべて削除または置換する「匿名化(de-identification)」を施した上で、倫理審査委員会の承認を得て同意を免除(waiver of consent)してもらうアプローチです 86。米国のHIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)なども、この方法を認めています 87

もう一つは、「包括的同意(broad consent)」という考え方です。これは、将来行われる可能性のある、特定されていない様々な研究に対して、あらかじめ包括的に同意を得ておくというモデルです 86。しかし、これには患者が具体的に何に同意したのかが曖昧になるという批判もあります。そこで、より患者の自己決定権を尊重するモデルとして、患者が自身のデータの利用状況を追跡し、研究ごとに許可・拒否を動的にコントロールできる「動的同意(dynamic consent)」のような新しいアプローチも提案されています 88

これらの問題は、個人のプライバシー権と、データ活用によって社会全体が享受できる公衆衛生上の利益とを、どのように調和させるかという、根源的な倫理的課題を私たちに突きつけています 85

アルゴリズムバイアス:新たな倫理的脅威

AIや機械学習がRWE生成に活用されるようになり、新たな倫理的脅威として「アルゴリズムバイアス」が深刻な問題となっています 90。これは、AIモデルが学習するRWDに、社会に存在する構造的な偏見や医療格差が反映されている場合、AIがそのバイアスを無批判に学習し、増幅させてしまう現象です 90

その衝撃的な実例が報告されています。米国で広く利用されていたある商業アルゴリズムは、患者の将来の医療費を予測し、重点的なケアが必要なハイリスク患者を特定するために使われていました。しかし、このアルゴリズムは、実際には黒人患者の健康リスクを体系的に過小評価していました 90。その原因は、アルゴリズムが「疾患の重症度」ではなく「過去の医療費」を代理指標として学習していたことにあります。歴史的に、黒人患者は同程度の健康状態の白人患者に比べて医療へのアクセスが限られ、結果として医療費が低くなる傾向がありました。AIは、この「医療費が低い」という結果を「健康リスクが低い」と誤って学習し、本来ケアが必要なはずの重症な黒人患者を、ハイリスク群から除外してしまったのです 90

同様の問題は、皮膚がんの画像診断AIでも指摘されています。多くの診断AIは、主に白人の皮膚画像のデータセットで学習されているため、有色人種の皮膚がんを見落とすリスクが高いことが明らかになっています 90。これらの事例は、RWDとAIの不用意な利用が、既存の健康格差を固定化、あるいはさらに悪化させかねないという、重大な警鐘を鳴らしています。これは、もはや個々の研究参加者の保護という従来の倫理の枠組みを超え、社会全体の公平性や正義といった、より大きな倫理的課題を提起しています。

国際的な調和への道

RWEがグローバルな医薬品開発や公衆衛生政策において重要な役割を果たすためには、その評価基準や用語、データガバナンスのあり方について、国境を越えた協力と調和が不可欠です。現在、この国際的な調和に向けた動きが活発化しています。

その中心的な役割を担っているのが、世界の主要な医薬品規制当局の連合体である「医薬品規制当局国際連携(ICMRA)」です 94。ICMRAは、RWEの活用を促進するための国際協力の重要性を強調し、そのための重点分野として、(1) RWDとRWEに関する用語の調和、(2) ガイダンスやベストプラクティスの規制的収斂、(3) 公衆衛生上の課題への備え、(4) 透明性の確保、という4点を挙げています 95

また、医薬品規制調和国際会議(ICH)も、RWEの用語定義や、研究計画書・報告書の標準フォーマットなど、具体的な調和領域を特定したリフレクションペーパーを公表し、国際的な議論を主導しています 96。これらの取り組みは、RWD/RWEの信頼性と受容性を世界的に高め、研究者、製薬企業、規制当局、そして患者が、国境を越えてエビデンスを共有し、活用できる環境を整備することを目的としています。RWEがもたらす恩恵を最大化するためには、このような地道な国際協調が不可欠であり、その努力が続けられています 98

エビデンスの二重らせん - RCTとRWEの共存と統合

本記事では、現代医療におけるエビデンスの評価と活用のあり方を、GRADEシステム、エビデンスピラミッド、そしてリアルワールドエビデンス(RWE)という三つのレンズを通して探求してきましたが、私たちはどのような結論にたどり着くのでしょうか。

かつて、エビデンスの世界は、ランダム化比較試験(RCT)を頂点とする単一のピラミッドによって支配されていました。その階層は、内的妥当性、すなわちバイアスのない純粋な因果関係を証明する力を絶対的な基準としていました。しかし、その厳格さゆえに、ピラミッドは現実の多様な臨床現場との間に「エビデンス・ギャップ」を生み出すという構造的な宿命を抱えていました。

RWEの台頭は、このピラミッドを破壊するものではありません。むしろ、ピラミッドが光を当ててこなかった、もう一つの重要な側面、すなわち外的妥当性、つまりリアルワールドでの「有用性」を照らし出すために現れた、不可欠な存在です。

未来のエビデンスの姿は、RCTとRWEがピラミッドの頂点を争う闘争の歴史ではなく、両者が互いの長所を認め、短所を補い合う共存と統合の物語として描かれるべきです。それは、生命の設計図であるDNAの二重らせんに似ています。一方の鎖が、厳密にコントロールされた環境下で因果関係の確固たる証拠を提供するRCTであるならば、もう一方の鎖は、混沌とした現実世界の中から多様な患者における真の価値を浮かび上がらせるRWEです。

この二つの鎖は、GRADEシステムという評価の枠組みと、高度な統計手法やAIといった技術の力によって、固く結びつけられます。そして、この二重らせん構造こそが、絶え間なく自己を複製し、進化していく「学習するヘルスケアシステム」の基盤を形成するのです。そこでは、日常の臨床から得られたデータが新たな研究の種となり、研究から生まれたエビデンスが、再び臨床現場の意思決定を豊かにしていくという、ダイナミックな循環が生まれます。

私たちが目指すべきは、単一の絶対的なエビデンスに固執することではなく、この強固でしなやかなエビデンスの二重らせん構造を理解し、賢明に活用していくことです。それこそが、多様化・複雑化する現代の医療課題に立ち向かい、すべての患者さんにとって最善の医療を実現するための、最も確かな道筋であると結論づけます。

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