ICMJE (International Committee of Medical Journal Editors) が出している ICMJE Recommendation の 2019年12月版を読んで、「Author と Contributor の違い」「利益相反」「査読者と編集者」についてかみ砕いてみました。
Table of Contents
Author と Contributor の違い
Author
ICMJEの推奨に基づくと、Authorとして論文に名前が載るためには、下記4つの基準をすべて満たしている必要があります。同時に、下記4つの基準を満たしているのであれば、著者として名前が載らなければなりません。
- 「研究・試験(原文では "work")のコンセプトまたはデザイン構築」または「研究・試験(原文では "work")のためのデータ収集 or 解析 or 解釈」に実質的な貢献を果たした
- 研究・試験(原文では "work")に関する、重要な知的コンテンツの草案を考え出した、あるいは、そのコンテンツについての重要な改訂を行った
- 原稿の最終版に対して、最終承認を行った
- 研究・試験(原文では "work")のあらゆる側面に対する説明責任を果たすことに同意する
- 正確性 (accuracy) や完全性 (integrity) に関する質問に対して、調査され解決されることを保証する
なお、著者として指名されたすべての人が、この4つの基準を全て満たしているかどうかを判断することは、投稿先の雑誌ではなく、著者の共同責任とされています。
現実には、著者候補が出そろったときに「この人は本当に著者の4基準を満たしているんですか?」と名指しで異を唱えることは難しいでしょうから、著者候補を検討する最初の段階で(あるいは研究や試験が動いているときに平行して)、論文投稿時のことを見据えて4基準を頭の片隅に置いておくことになります。
Contributor
Authorに求められる4基準のどれか1つでも満たしていない場合は、Contributorとして、Acknowledgmentのパートに明記することが推奨されています。
具体的には、次のような ”ヘッダー” を付けて、どんな形で contribute したのかが分かるようにしておくことが望ましいでしょう。
- clinical investigators
- participating investigators
- served as scientific advisors
- critically reviewed the study proposal
- collected data
- provided and cared for study patients
- participated in writing or technical editing of the manuscript
こうして羅列してみると、実際には、contributorとして挙げられるのが適切にもかかわらず、政治的な理由でauthorに名前が載っているケースは少なくなさそうですよね。
利益相反
利益相反のうち、金銭的な関係を特定するのは比較的簡単です。
金銭的な関係とは、例えば次のようなものです。
- 雇用関係
- コンサルタント契約
- 株式所有(ストックオプションを含む)
- 謝礼金の支払い
- 特許保持
- 専門家としての証言(有償のもの)
これらがあると、潜在的な利益相反があると世間から見做されることが普通です。
例えば、自社製品に関する研究を企業が実施し、その研究者の中にその企業の社員がいた場合、不利なことを積極的に述べる動機は低くなるでしょう。
なお、「金銭的な関係がある場合、その研究は無意味なもの」ではない点は強調しておきます。
あくまで、利益相反があるということを開示して、読者に批判的に読む・解釈することを促す、ということが大切になります。
きちんとした正当な理由がある場合、お金の支払いが必要ならば支払い、なぜ支払ったのか、だれに支払ったのかを開示することさえすれば、何ら後ろ暗いものはありません。
抜け道を探してコソコソ支払ったりする方が大問題ですし、そこにかける労力が無駄です。
査読者と編集者
査読者
- 査読者は、原稿に対する自分の意見にバイアスを生じさせる可能性のある関係や活動を編集者に開示する必要があります。
- もし、査読するに当たってバイアスが入り込む可能性がある場合は、その原稿の査読は避けることが望ましいとされます。
- また、査読者は、レビューしている内容を自分の利益のために利用してはなりません(当たり前)。
編集者
- 雑誌の編集者においても、担当原稿に対して利益相反に該当するような関係又は活動がある場合は、編集上の決定を考え直す必要があります。
- そのため、編集者側で、意思決定に関わる者は、利益相反報告と同様の情報を(編集チーム内で)共有し、利益相反が編集者側の意思決定を歪める状況を回避しなければなりません。
- 編集者は個人的な利益のために原稿を使って得た情報を使用してはなりません(当たり前)。
- 編集者は定期的に自分自身、そして雑誌スタッフの公開声明 (disclosure statement) を発表することが求められます。