ビジネス全般

製薬協 政策提言2023 エグゼクティブサマリー

医薬品産業を取り巻く環境の変化と課題

  • 医薬品産業の使命は、国⺠の健康寿命の延伸経済成⻑安全保障への貢献である。しかし新型コロナウイルスワクチン開発の後れなど、⽇本の創薬⼒低下が懸念されている。
  • 2010 年の新薬創出等加算の試⾏導入及び後発品の使用促進策などにより⻑期収載品に依存しないビジネスモデルへの転換が促されたが、2018 年の薬価制度抜本改革等により⽇本市場の魅⼒度が低下し、ドラッグラグ・ドラッグロスが表面化している。
  • 国家戦略としての医薬品産業政策を講じ、⽇本を魅⼒的なイノベーション創出拠点にしていくとともに、イノベーションを適切に評価する薬価制度のもと国際競争⼒のある国内市場を形成する必要がある。
  • 製薬企業はライフコースを通じて人々を支えるべく、診断・治療にとどまらない予知・予防も含めた製品・サービスの開発や、安全保障への対応としてのサプライチェーンの強靭化等にも取り組む。

イノベーション創出を促進する環境整備

1)産学官⼀体となった⽇本の創薬⼒の強化

  • ⽇本から世界をリードするイノベーションを継続的に生み出すために、国内アカデミアの卓越した研究領域に注目し、産学研究者のシナジーによって革新的創薬研究技術の確⽴や創薬シーズの創製を目指すコンソーシアムを構築
  • シーズ創出から事業化・生産までの流れをシームレスにつなぐバリューチェーンを構築し、魅⼒的な製品・サービスを効率良く創出するバイオコミュニティ形成、及び公的スタートアップ支援機関との連携や「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」から生まれた革新的技術の実用化に向けた仕組みの構築
  • バイオ開発(CMC)・製造人材の育成強化︓即戦⼒バイオ製造人材育成支援、将来のバイオ製造人材の教育支援、BCRET 活動支援

2)国⺠・患者中⼼の効率的な医療を実現する健康医療データ基盤構築と法制度整備

  • 健康医療データ基盤の構築︓電子カルテの普及、データの標準化、データ連携、データ基盤の構築
  • 個人情報保護法制の整備︓次世代医療基盤法の改正、個人情報保護法の医療分野の特別法の制定
  • 全ゲノム解析等実⾏計画の加速推進︓事業実施組織の速やかな整備、産業界の利活用の仕組みの早期構築、臨床情報・オミックスデータの格納、基⾦創設による複数年にわたる安定的な予算確保、ゲノム医療法の早期成⽴

3)イノベーション創出を促進する税制の強化

  • イノベーションを一層推進、研究開発投資を高水準で持続的に実施している企業を評価、研究開発投資に⾒合った減税、⻑期安定的で予⾒可能性の高い研究開発税制等の実現

4)薬事、知的財産関連施策等の推進

  • 国内薬事関連施策の推進、国際規制調和の推進、研究開発投資を促進する適切な市場独占期間の確保及び知的財産権に基づく税制措置、国際的な知的財産権保護の促進

持続可能な医療・社会保障の在り⽅

1)全世代型社会保障制度に向けた効率的・効果的な医療の提供

  • 医療提供体制︓超高齢化や人口減少の局面において、地域の医療ニーズに迅速かつ確実に応えるため、地域医療連携の推進や医療のデジタルシフトは急務である。地域医療構想、かかりつけ医機能、電⼦処⽅箋等の整備を着実に進め、オンライン診療・服薬指導のあり⽅について検討が必要である。
  • 医療保険制度︓負担能⼒に応じて全ての世代で公平に支えるための⾒直しが必要である。大きなリスクに備えるという社会保障制度の役割が果たされるべきであるが、給付範囲については医療全体の課題として製薬協は議論に真摯に向き合う。
  • 医薬品の適正使用の推進︓製薬協は適切な情報提供活動、薬剤耐性(AMR)問題、革新的医薬品の最適使用やポリファーマシーへの対応等、医薬品の適正使用の推進に取り組む。

2)イノベーションの評価

  • 革新的医薬品をいち早く国⺠へ届けるためには、メリハリのある財源配分のもとイノベーションの価値を適切に評価する、市場の魅⼒度向上に資する薬価制度改革が必要である。
  • 新薬創出等加算に代わり、特許期間中の革新的新薬を市場実勢価格に基づく改定の対象から除外し、シンプルに薬価を維持する「患者アクセス促進・薬価維持制度(仮称)」を導入する。
  • 先進諸国に遅れることなく新規性・革新性の高い新薬を適切に評価し⽇本に導入するため、企業が価値を主体的に説明し、独⽴した第三者機関が妥当性を評価する新たな価値評価プロセスを導入し、併せて柔軟な類似薬選定を可能とする。医薬品の多様な価値について、収載時に示されたものは類似薬選定や加算の根拠に、収載後に示されたものは薬価維持制度の適用や再算定緩和に活用する。

出典

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