世界と伍する研究大学の在り方について 最終まとめ(案)

1.なぜ大学ファンドが必要か

(1)世界と伍する研究大学への支援

  • 我が国の財政が経済成長に伴い右肩上がりだった時代は、大学における挑戦的研究に対して新たな追加財政投資を行うことで研究力を高め、我が国の研究大学も世界における確固たる地位を築いてきた。その後、国の財政が厳しくなり、より効果的な資源配分が求められる中で、競争的資金と基盤的経費とのデュアルサポートシステムによる質の高い教育研究に向けた適正な競争的環境の醸成が目指された。また、国立大学については、国の機関から独立させ、柔軟な財務会計システムの下、学内資源の再配分を可能とするため、2004年に国立大学が法人化された。
  • しかしながら、国の制度環境整備が不十分であったことと相俟って、大学が国の機関であったときの発想を大きく変えることにつながらなかった。国は知識基盤社会における大学の価値創造力に期待しているにもかかわらず、縦割りのファンディングなどを通して大学における全学的視点に立った構想力を制約し、かえって優秀な研究者の時間の劣化を招く結果となった。大学は常に研究や大学院教育の質を国際的な切磋琢磨の中で向上させなければ存在意義を問われるとの緊張感を持ち、分野横断的なカリキュラム・デザインに基づいた博士課程の確立や、次代を担う自立した若手研究者を獲得・活躍させるための大胆な資源配分、研究時間を確保するための研究者の負担軽減、先行投資財源の機動的な確保や活用等につき、一層の加速が必要な状況である。
  • 他方、世界のトップレベルの大学は、独自に将来ビジョンを策定し、それを実現するための外部資金を自ら獲得し、大学独自基金を造成・運用することで財政的自律を進め、挑戦的な研究や若手への投資を行うことで飛躍的に研究力を拡大させ、新たな価値創造・イノベーション中核拠点としての地位を確固たるものにしてきている。
    e.g.)ハーバード大学は2005年時点では東京大学の2倍程度の事業規模であったが、今や3.5倍程度に拡大
  • このような世界のトップレベルの大学の取組も参考に、大学自らが、時代に即し、未来を生み出すイニシアチブをダイナミックかつ迅速にとるため、社会変革を駆動する大学の成長モデルを新たに開発し、大幅に機能を拡張していく必要がある。既存の組織やルールを前提とした縦割り構造から「価値創造思考の多様性の醸成」を行うプラットホームとしての大学を目指し、第6期基本計画に基づき、政府はファンディングの大くくり化などを進めるとともに、新規性の高い挑戦的な研究や若手研究者育成を目指す大学の財政的自律と構造改革を後押しするため、府省連携で10兆円規模の大学ファンドを創設し、世界と伍する研究大学の事業規模の拡大と大学固有の基金の成長を図ることとした。

(2)博士課程人材への支援

  • また、世界と我が国との研究力の差を縮めていくためには、我が国全体として、価値創造の源泉となり次代の研究力の源泉となる博士課程学生、若手研究者の厚みを拡大していくことが必須である。我が国においては、博士課程へ進学することがリスクと受け止められており、このような傾向が続くと、たとえトップレベルの研究大学が実現されたとしても、研究者の頭脳循環が止まり、国全体としての研究力や国際競争力が低下していくことが懸念される。
  • これまで若手研究者育成の重要性は認識しながらも、各大学においてこのような人への投資が低迷してきたのは、継続的な財政支援が見込めない中、将来負担が発生する人的投資に踏み切ることができなかったことが背景にあり、大学が安心してこのような人への投資を行えるようにするには、世界と伍する研究大学への支援と併せて、優秀な博士課程学生に対し支援を行う必要がある。

(3)我が国全体の大学への支援

  • 様々な機能を担う多様な大学すべてが我が国の知の基盤として重要な役割を担っており、この多様性は今後も我が国にとって重要な強みである。このため、大学ファンドによるトップレベルの研究大学への支援策のみならず、地域の中核大学や特定分野の強みを持つ大学の機能を強化し、成長の駆動力へと転換することで日本の産業力強化やグローバル課題解決にも貢献するような大学の機能を強化する支援策などを総合振興パッケージとして同時に講じ、我が国の高等教育システムや研究開発法人、大学共同利用機関法人を含めた我が国の研究力を向上させる全体像を描くことが必要である。

2.大学ファンドを前提とした世界と伍する研究大学の目指すべき姿

(1)世界と伍する研究大学の目指すべき姿

  • 大学ファンドの支援対象となる世界と伍する研究大学は、知の蓄積と社会的な価値創造やイノベーションの中核拠点として、世界トップクラスの研究者が集まり活躍できる環境を作るための研究大学としての機能を強化し、分野横断的なカリキュラム・デザインに基づく博士課程において優秀な博士人材を育成するとともに、若手研究者が独立した環境で存分に研究できる環境を通して、新しい学問領域を創出・育成し続けることで、世界から目に見える(フラッグが立っている)大学となることが必要である。
  • そのためには、国内外の若手研究者が「ここで自立して研究したい」と強く思う多様性(ダイバーシティ)と包括性(インクルージョン)が担保された魅力的な研究環境を持ち、彼らがやる気に満ち溢れ活躍出来る場を提供することで、優秀な人材が世界中から集まり続ける世界の知の拠点としての大学となることが必要である。
  • そして、当該大学における研究成果の社会実装が社会的価値の創出に繋がることを念頭において、起業家の輩出や産業界で幅広く活躍する博士人材の育成、エマージングテクノロジーの源泉となる知の創出を通じた新たな成長分野の形成、さらには人間や社会の望ましい未来像の実現に向けた高次の視点からの俯瞰的把握や、カーボンニュートラル、DXといったグローバル課題解決への貢献など、次代の社会構造への転換に向けて大胆なビジョンを描き、社会の多様な主体と常に対話しながら、活動を展開することが求められる。
  • そのためには、大学が示すビジョンや戦略の中で以下のような研究上の土壌(ポテンシャル)をいかに向上し続けていくかが示されていることが重要である。
  • 世界的な研究者マーケットでのトップ研究者や国内外の優秀な博士課程学生の獲得や活躍促進
  • 分野を横断したカリキュラム・デザインに基づく博士課程プログラムの構築
  • 世界トップクラスの研究者・学生が糾合する研究領域の創出・育成(World-class Critical Massの形成)
  • 新しい価値を生み出す研究分野間の対話や結合を可能とする卓越し且つ多様な学問分野の展開
  • 研究室の縦割りを越えて若手研究者が独立して活躍できる場の提供やモチベーションを喚起するアウトカムベースの業績評価の取組方法
  • 研究支援者の積極登用など研究時間の確保に向けた研究環境の整備
  • グローバルに活動を展開する大学を支える事務職員の採用や意識・資質の向上
  • 世界と伍する研究大学にふさわしい研究インテグリティの確保(大学の自律的な安全保障管理計画の策定等)
  • AI技術、バイオテクノロジーや量子技術などの戦略重点分野や新興・融合分野への取組、さらには新たな萌芽的挑戦

(2)知の価値づけと研究基盤への投資の好循環サイクル

  • 研究上の土壌を豊かにし、大学の持続的成長を図りながら目指すべき大学像を実現するためには、大学固有の知的アセット(有形・無形の知的資産)を磨き上げ、社会との対話の中で知的アセットを適切に価値化していくことで、産学協創、大学発ベンチャー創出とエクイティ獲得、卒業生を含む関係者からの寄附、さらには大学独自基金の拡充などを通して、新しい資金の流れを生み出し続けていくことが重要である。また、その資金を新たな学問分野や若手研究者など、長期的視野に立って、直ちに社会的価値につながらない次代の知の創出をもたらす研究基盤へ再投資するといった好循環を生み出すことが不可欠である。
  • それらを実現するため、大学ファンドの支援対象となる世界と伍する研究大学には年3%の事業規模の成長を達成し、大学独自の基金の拡充を確実に行うことで、自律的財政基盤を強化し、新たな分野や若手への支援など次代を見据えたビジョンの具現化に向け、資金循環の形成と学内の資源配分を行うことができるガバナンスを持ち、進化し続けるダイナミズムを有することが求められる。
  • 次代の社会構造への転換に向けて大胆なビジョンを世界と伍する研究大学が描いていくためには、内外の叡知を結集してビジョンを明確化、可視化するとともに、そのビジョンによって社会からの支持・支援の好循環を形成し、大学の自律的な機能拡張につなげていくことが必要である。このような長期の成長戦略にコミットし、取組を加速するためには、安定的・継続的な経営方針を維持することが可能な合議体(ガバニングボード)としての意思決定機関を持つことが適当である。このガバニングボードは3%成長の最終責任者でもあり、経営戦略の安定性だけでなく長期視点に立った研究や人材育成の観点や大学の自律性を重視した相互牽制機能にも資する。
  • 世界と伍する研究大学として知の価値づけと研究基盤への投資の好循環サイクルをまわすためには、上記の合議体とあわせて、以下のような機能を持つ者を配置し、その役割分担を明確にする必要がある。
  • ガバニングボードが決めた成長戦略の執行責任者⇒ 法人の長
  • 大学固有の知的アセットの形成に責任を有する教育研究の総括責任者⇒ プロボスト(大学総括理事)
  • 新たな学問分野や若手など長期的視野に立った次代の知の創出への確実な投資を行う総括責任者⇒ 法人の長とプロボスト
  • 法人の長の下、成長戦略とそれを裏付ける財務戦略の立案、実行を担う者⇒ CFO(事業財務担当役員)

3.世界と伍する研究大学を実現するために必要な施策

(1)政府に求められること

①国際卓越研究大学制度(仮称)の創設と規制緩和等の推進

  • 2.で記載した世界と伍する研究大学を実現していくに当たっては、政府に期待される役割が大きい。政府はこれまでの反省を踏まえ、確実に我が国に世界と伍する研究大学を実現していくとの覚悟の下、対象大学が自律的かつ創造的に自らの実践をデザインし、これを実行していけるよう、大学の機能拡張の取組を進めることを可能にするとともに、大学ファンドからの支援を有機的に組み合わせることで、世界にフラッグが見える大学へと成長させていくため、新たに国公私立共通の仕組みとして「国際卓越研究大学制度(仮称)」を構築していくことが必要である。
  • 本来的には、大学自らが収入を上げ、大学独自基金の造成などを通じて自律的な大学へと成長していくことが求められるが、そのための時間を大幅に短縮する観点から大学ファンドによる支援が行われるとの趣旨を踏まえ、国際卓越研究大学には着実に成長をしていく方向性を有するとともに、そのことが長期にわたって大学として継承されていく体制を整えることが求められる。そのため、2.(2)に記載した好循環サイクルの構築を可能とする責任あるガバナンスを有するとともに、2.(1)に記載した研究上の土壌(ポテンシャル)や、これらを如何に向上させていくかという実効性高く意欲的な事業・財務戦略を有することを認定の要件とすることが求められる。また、科学技術・イノベーション政策における大学ファンドの重要性に鑑みれば、その認定等に当たっては、大学政策を所管する文部科学省のみではなく、科学技術・イノベーション政策の司令塔であるCSTIが適切に関与する仕組みとすることも求められる。
  • 国際卓越研究大学制度の基本的枠組みについては、このような方向性に基づき、その概念、認定や評価の仕組みなどの基本的枠組みを、文部科学省において既存の大学制度との関係も含めて専門的見地から検討を行い、次頁のとおり取りまとめており(文部科学省における検討の詳細は別添参照)、この実現を図っていくことが政府には求められる。
  • 国際卓越研究大学の自律化を進めていくためには、高度な自律性や自主裁量を拡大するという観点から、その評価の仕組みも、事業成長のアウトカムへのコミットなど厳選したアウトカム指標を基調としたものとするとともに、例えば教育組織の新設改廃や定員管理についての国の関与や既存の評価の仕組みなどについても規制緩和を進めることが必要である。
  • これらとともに、単年度予算の繰越や教員による大学発スタートアップの創出など既存制度上でも可能な事項が大学に十分に浸透していないと指摘されており、制度上、大学の判断で実行可能な事項を示すホワイトリストの作成と共有も政府には求められる。
  • さらに、大学の自己資金を充実させる取組を促進する観点から、寄附金獲得増に向けた寄附控除の繰越などの税制上のインセンティブを高める仕組みの導入、産学連携を推進する観点からの知的財産権取得の促進に向けた施策を講じることが必要である。
  • なお、国立大学法人については現状、2.(2)で求められる合議体によるガバナンスを前提とした法制度となっておらず、「国際卓越研究大学」となることが見込まれる国立大学法人について、次々頁のとおり、合議体等を導入するための法改正があわせて必要となる。
<国際卓越研究大学制度(仮称)の基本的な枠組み>

国際卓越研究大学制度(仮称)の構築

世界最高水準の研究大学を形成するため、世界と伍する研究大学となるためのポテンシャルを有する大学を、変革への意志(ビジョン)とコミットメントの提示に基づき、「国際卓越研究大学(仮称)」として国が認定。国公私立大学を対象とする新たな枠組みを構築し、認定された大学に対して、大学ファンドからの助成を含め、総合的な支援を実施。

1. 基本方針の策定

国際卓越研究大学制度の意義や目標、認定、科学技術振興機構(JST)の助成の実施方針、科学技術・イノベーション政策との連携に関する基本的な事項など制度運用を行う上で指針となる事項を定めた基本方針を、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)や関係行政機関と協力した上で、文部科学大臣が策定。

2. 国際卓越研究大学の認定

世界と伍する研究大学となるためのポテンシャルを有する大学を、変革への意志(ビジョン)とコミットメントの提示に基づき、「国際卓越研究大学」として、文部科学大臣がCSTIの意見を聴いた上で認定。

(認定要件)

①自律と責任あるガバナンス体制(①合議体、②大学の長(法人の長)、③教学担当役員(プロボスト)、④事業財務担当役員(CFO)、⑤監事)
②国際的に卓越した研究成果の創出(新しい学問領域の創出や優秀な若手研究者の育成等、国際的に卓越した研究成果の創出に向けたポテンシャル)
③実効性高く意欲的な事業・財務戦略(財源に裏付けられた事業戦略とそれを確実に進める財務戦略(財源の多様化や大学独自基金造成等))

3. 国際卓越研究大学への支援・規制緩和

認定された大学が実施する体制強化の取組に対して、大学ファンドからの助成を含め、総合的な支援を実施。

  • 国際卓越研究大学は、研究力強化に向けた体制整備や事業成長に関する事業計画を作成。文部科学大臣がCSTIの意見を聴いた上で認可。
  • JSTは助成に当たっての実施方針を定め、国際卓越研究大学の事業計画に基づき、大学ファンドから助成。
  • 規制緩和や税制についても、現場のニーズを把握しつつ必要な検討を実施。大学から規制緩和を提案する機会を設けるなど、双方向型の環境を整備。
4. 国際卓越研究大学のモニタリング等

国際卓越研究大学への国の関与の仕組み(例えばCSTIや科学技術・学術審議会が共同で実施)を構築するとともに、モニタリング等を実施。

  • モニタリングに当たっては、コミットメントの達成状況(結果)を客観的指標に基づいて確認することを主眼とし、一定の周期で進捗状況を確認。
  • コミットメントが一定期間連続して達成されない場合など、結果責任を問う形で、認定の取消し・大学ファンドからの助成の打切りを実施。
5. 自律と責任あるガバナンス体制

国際卓越研究大学となる国立大学法人については、以下のガバナンス改革が可能となるような制度改革を実施。

  • 法人の意思決定に、経営等に関する大学内外の多様な専門的知見を取り入れ、法人執行部へのモニタリング機能を持たせるため、重要事項を決定し、法人の長の選考・監督を行う合議体を設置。
  • 合議体の構成員は学内外同数の者による選考組織において行い、合議体の構成員の相当程度(例えば過半数、半数以上等)は学外者とすることが適当。
  • 合議体は中長期の経営戦略等の策定、執行部の業務執行の監督を行い、業務執行は法人の長に委ね、教学事項等に関するマイクロマネジメントは行わない。
  • 経営機能と教学機能の大幅な強化を同時に進めるため、経営の執行責任を有する者(大学の長)と教学に責任を有する者(プロボスト)が役割分担することとし、教学担当役員を設置。
  • 教学担当役員(プロボスト)については、法令上教学面の責任者となっている大学総括理事とすることが考えられる。また、事業財務担当役員(CFO)については、法人内で権限等を定めることが適当。

※公私立大学については、各制度の趣旨や特性を踏まえ、対応。

【公立大学の場合】

  • 公立大学法人については、定款を定めることにより設立される法人であるという地方独立行政法人制度を踏まえ、その定款において、法人運営に関する重要事項を決定する権限を有する合議体として、例えば、理事会を置くことを定めることなどが考えられる。
  • 合議体の構成員の任命に当たっては、定款において、例えば、理事長が設立団体の長の承認を得た上で行うことを定めるなど、理事長のみで合議体の構成員を決めることのない仕組みを構築することが求められる。また、設立団体の長が理事長を任命するに当たっては、定款において、合議体の意見を聴くことを定めるなど、合議体が理事長の選考に関与することが求められる。
  • なお、大学が自律的に成長を続けていくという国際卓越研究大学の性格を踏まえれば、国際卓越研究大学の認定を受けようとする公立大学は、少なくとも法人化されたものである必要があると考えられる。

【私立大学の場合】

  • 学校法人においては、学校法人の業務を決し、理事の職務の執行を監督する理事会が置かれるとともに、寄附行為によって議決機関とすることも可能な評議員会が置かれている。学校法人においては、建学の精神に基づく運営が行われ、寄附行為の定めるところにより法人の機関の権限関係も様々であり、いわゆる合議体を理事会とするのか評議員会とするのかについては、法人毎の実情に応じて様々なパターンが考えられる。
  • 例えば、理事会を合議体とする場合であれば、寄附行為において、理事の任命に当たっての評議員会の関与を定めるなど、理事長のみで合議体の構成員を決めることのない仕組みを構築することが求められる。また、寄附行為において、理事長の選考は合議体で行うことを定めることが想定される。
  • なお、大学法人のみならず、学校法人制度全体のガバナンスについては、別途検討が進められていることから、必要に応じて、これらの結果も踏まえることとする。

②大学ファンドによる支援の基本的考え方

  • 政府においては、2.で示した世界と伍する研究大学の目指すべき姿の実現に向け、これを導いていく観点から、大学ファンドの支援について、以下の基本的考え方に基づき制度設計を行うことが必要。また、大学における3%程度の事業規模成長の達成に向け、その考えられる手法等を具体的に提示していくことも必要。
  • 大学ファンドによる支援は以下の基本的考え方に沿って政府において具体的な制度設計を行い、国際卓越研究大学制度における基本方針で明確化し、大学が成長し、次代を担う教育研究を行い、世界と伍する研究大学を実現していくという方針をぶれずに進めることが必要。
  • 従来の大学支援策とは一線を画した異次元の大学支援策として、支援大学の研究開発基盤の抜本的強化を図る観点から、一校に対して数百億円規模の支援を行っていく必要があり、支援対象校数は数校程度とし、無制限に拡大することがないよう厳正に管理すること。同時に、改革への意思やメカニズムを有しない研究大学が自動的に大学ファンドにより支援されることがないようにすること。また、支援対象大学は我が国の研究活動の拠点として、学術研究ネットワークを牽引する責務を負うことに留意すること。支援対象大学の決定にあたっては、大学の研究環境の体制整備の状況や大学ファンドからのキャッシュアウト可能な支援規模の推移等を勘案し、段階的に増やしていく方法とすること。
  • ファンド対象大学当たりの支援規模(額)については、外部資金の獲得実績や大学ファンドへの拠出などに応じて決定し、多様な財源確保による自己資金の充実や研究活動及び若手研究者支援の持続可能性確保のための大学独自基金の成長を促すこととし、そのルールを明確化すること。
  • 世界と伍する研究大学を目指す大学に対して、国は細切れではない思い切った支援を実施するとともに、過度な透明性を求めることで社会全体として短期的な成果主義に流されないよう、その活動を長期的に後押しすることが必要。そのため、大学ファンドからの支援についても、当該ファンドの目的に照らし、対象大学において財政基盤の自律化が果たされるまでの間、継続的・安定的に支援を行うことが必要。一方、厳格な結果責任を求めることで自律化を促し、大学ファンドから卒業させる仕組みを内在させること。
  • 大学ファンドによる支援の打ち切りは、短期的な大学の活動内容のプロセスを問うのではなく、支援を受けるに当たって求めたコミットメントが一定期間連続して達成されない場合など、長期的な観点から結果責任を問う形にすること。
  • 国によるモニタリング・評価については、世界と伍する研究大学のミッションに基づき、高い自律性と厳しい結果責任を求めるべく、国際的なベンチマークを踏まえ、事業成長及び研究力等の大学が提示するビジョンに係るコミットメントの達成状況を、客観的な指標に基づいて行うこと。
  • 大学ファンドによる支援金の使途については世界と伍する研究大学の経営の自由裁量の下で、柔軟かつ適切に決定されることが必要。また、支援金の使途の柔軟性については、実務を担当する事務職員が、安心して積極的に進められるよう、学内においてホワイトリストの共有が徹底されるよう、その共有を図ること。
  • 研究活動及び若手研究者支援の持続可能性確保のための将来的な自律的財務運営の実現に向け、大学独自基金を成長させることが必要であることを踏まえ、大学の独自基金の運用と大学ファンドへの拠出が相俟って大学独自基金を成長させる仕組みや、大学ファンドからの卒業時における大学独自基金への集約などについてのルールを明確にすること。
  • 大学ファンドから博士課程学生への支援については、当面は200億円程度とし、全ての大学を自動的に対象とするのではなく、これらの人材育成のビジョンを明確にし、真に社会に貢献する人材を輩出することが確認された大学のみを対象とすること。
  • これらの大学ファンドからの支援の在り方については、大学ファンドの運用益や財務状況を踏まえ、関係府省と調整する仕組みとすること。

(2)大学に求められること

世界と伍する研究大学を目指す大学については、2.で記載した目指すべき姿の実現に向けて、知的アセットを創出する環境及び、それらを価値化していく仕組みの構築に向けて、既存の制度に縛られず、学内外の叡知を結集して取組を進めていくことが必要であり、具体には以下のような事項に取り組むことが期待される。

①知的アセットを創出する環境の構築

  • 世界の研究者マーケットからの優秀な研究者獲得に向けた、高額給与の提示を可能とする人事給与制度、柔軟な雇用制度、最先端の研究設備の整備、研究補助者の充実など研究者が研究に専念できる環境の整備、多様な分野間で優秀な研究者が自由闊達に議論し、知的刺激を高め合えることができる日常的な研究環境等の整備。
  • 国内外の優秀な博士課程学生を一人の研究者として扱う世界標準にあわせた処遇の実施や、基本的な専門知識や先端課題認識力、問題解決力、分析力と強い表現力、プロジェクトマネジメント力などを伸ばしつつ、地球規模課題に取り組むなど、分野を横断したカリキュラム・デザインに基づく博士課程プログラムの開発。
  • 優秀な若手研究者に対する研究室立ち上げに向けた支援や積極的なテニュアの付与、能力給に基づく高額な給与支給を可能とする雇用システムなどのインセンティブ設計。
  • 若手研究者に対するグローバルな経験の積極的な付与、自大学からのインブリーディング抑制をはじめとした多様性・流動性の確保の推進などを通じた、世界の大学から競争による優秀な研究者を獲得できる環境の整備。
  • 研究評価や学生からの評価に応じた資源配分、定期的なピアレビューとその結果による処遇への反映などモチベーションを喚起するアウトカムベースの業績評価の実施。
  • URAや技術職員といった圧倒的に不足する専門職員や、学術プロセスを熟知した職員の積極的確保。人事、財務、テクノロジー、IRなどの分野における高い専門知識や経営マインドを有する専門家の大学経営人材としての積極的採用・活用とそのための新たな人事制度の構築。英語リテラシーの向上など事務局内のダイバーシティ対応を含む組織力強化の推進。
  • 世界トップクラスの研究者・学生が糾合する研究領域の創出・育成(World-class Critical Massの形成)に向けた研究分野への集中的投資。
  • 新しい価値を生み出す研究分野間の対話や結合を可能とする卓越し且つ多様な学問分野を確保するための幅広い研究投資。
  • AI技術、バイオテクノロジーや量子技術などの国家的戦略重点分野や新興・融合分野、新たな萌芽的挑戦への研究投資の促進。
  • 大学の自律的な安全保障管理計画の策定等、世界と伍する研究大学にふさわしい研究インテグリティの確保。
  • これら知の価値創出をリードするプロボストの配置
    • プロボストが教学に関する事項の実質的な責任者として、研究者の確保や教育研究組織の見直しなどにおいて、大学における教育研究の優越性維持等のために権限を発揮できる学内ガバナンスの構築が必要。教学の事項については、大学内の研究者や教員代表組織との綿密な連携の下進めることが必要であり、プロボストは学内の研究者や教員からの尊敬を得らえるようなアカデミアとしての資質とともに、大学としてのビジョンや事業戦略をよく理解し、丁寧に学内に説明することができる資質が必要。

②知的アセットを価値化していく仕組みの構築

  • 研究成果の社会実装を通した社会的価値の創出に向けては、内外の叡知を結集した合議体が大学のビジョンや事業・財務戦略の承認、その実行をリードする大学の長の選考や解任、執行部の監督といった、大学経営に関する重要事項についての意思決定を行い、大学内に知的アセットの創出、その価値化のためのガバナンスを整えていくことが必要。一方で、合議体が大学における知的アセット創出の源泉である教育研究に過度に関与しない抑制的な仕組みも必要。
  • 合議体の構成員には、世界と伍する研究大学のミッション実現に向けて強い使命感と責任感を有するとともに、大学経営に関する能力を有する者が参画していることが必要。具体的には例えば、グローバルな社会変革状況に知見を有する人材、様々な課題に対する事業戦略や事業戦略に基づく強固な財務戦略に知見を有する人材、大学の長等の大学執行部の経験を有し適切にモニタリングができる人材等。
  • 大学執行部内における適切な役割分担が必要であり、教学面において責任を有するプロボスト、事業財務運営に責任を有する事業財務担当役員(CFO)を設置し、世界と伍する研究大学のミッション実現に向けて、それぞれの者が存分に能力を発揮できる仕組みを整えることが必要。
  • 合議体及び執行機関はミッションや事業戦略の達成状況に関して、国を含めたステークホルダーに対して意思決定過程を公開することにより、透明性と緊張感を持って職務に取り組むことが必要。
  • 世界と伍する研究大学には、成長視点での事業戦略・計画とともに、その着実な達成に向けて多様な財源を確保しその財源を最大限活かすことができる強固な財務戦略・計画を構築することが必要であり、CFOが中心となり、実行可能な戦略・計画を立案することが必要。その際、各学部・研究科等の成果目標(財政的目標だけでなく、どう社会に貢献していくかなどの目標)を明確にした上で、ある部門が収益をあげていないこと自体を問題視するのではなく、大学がそのミッションを実行する上で必要なセグメントには必要な予算を投資すべきという共通認識を持つことが重要。
  • CFOの資質としては、ミッションを達成するための事業戦略・計画を策定するとともに、多様な財源を俯瞰して財務戦略・計画を立案し、チームを動かし学内外に適切に説明責任を果たす能力が必要。
  • 外部資金の獲得に向け、産業界との組織対組織連携やファンドレイジングの専門家確保などの体制構築による産学連携収入や寄附の増加、大学からのスタートアップ創出やエクイティ獲得に向けた学内の支援体制の構築、アントレプレナーの育成や特許戦略を構築する専門集団の育成、インキュベーターやアクセラレーターといった役割を担う民間企業の巻き込みなどが必要。
  • 大学全体が持つ価値ベースでの連携体制の構築等により、産学共同研究などにおける間接経費についても、それに見合った必要な額を確保できる制度を構築することが必要。
  • 寄附金や産学連携収入等の自己資金により基金を造成し、大学ファンドへの拠出も行いながら、運用益による財源の確保を戦略的に行っていくことが求められ、このような基金の運用に特化したCIO(チーフインベストメントオフィサー)や専門家の登用を進めることも必要。

4.地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ

  • 「世界と伍する研究大学」の実現に向け、従来の延長線上ではない発想で創設された大学ファンドは、高い研究水準を有するトップレベルの研究大学の支援という目的だけに留まらず、我が国全体の研究力を底上げする端緒としての役割をも担っていることを忘れてはいけない。
  • まず1.で述べたように、大学ファンドは、世界と伍する研究大学への支援と併せて、価値創造の源泉となり次代の研究力を生み出す、すべての大学に所属する優秀な博士課程人材の活躍促進を促すことで、我が国全体の研究力を飛躍的に発展させていくことが期待されている。
  • 加えて我が国には、トップレベルの研究大学のみならず、地域の中核大学や特定分野の強みを持つ大学の機能を強化し、成長の駆動力へと転換することで日本の産業力強化やグローバル課題解決にも貢献するような大学など、様々な機能を担う多様な大学が全国に存在している。したがって、こうした多様な大学のポテンシャルの引き出しを牽引すべく、大学ファンドにより支援を受けるトップレベルの研究大学がハブとなりながら、人材の流動性向上や、共同研究の促進などを通じ、日本全体の研究力を引き上げていくことが求められる。
  • こうした背景の下、国は、大学ファンドの創設と同時に、我が国の大学の多様性を広げ、そこに集う優秀な研究者、それらの有機的な連携を最大限引き出しながら、それぞれの大学のミッションと機能を十分に発揮できるよう、多様な大学の支援の在り方の全体像について、「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ(総合振興パッケージ)」として、とりまとめを行っている。
  • 総合振興パッケージでは、多様な大学がそれぞれの持つ強みや特色を伸ばす方策として、大学がミッションに基づきそれぞれのビジョンの実現に向けて戦略的な経営が展開出来るよう、基盤的経費と競争的資金による事業間の効果的な連携を図りつつ、ポテンシャルの高い特定分野の研究力強化や大学改革と連動させた研究環境改善の推進、さらには、地域ニーズを踏まえた質の高い人材育成モデルへの転換支援、社会変革を牽引する産学官連携拠点の形成支援やスタートアップ創出支援等の強化を図っていくこととしている。
  • また、同パッケージでは、地域の産学官連携を促進するため、関係者を繋ぐ仕組みの活性化や、地域社会における大学の活躍の加速化を図るべく、自治体や社会実装を担う官庁などが一丸となり大学の価値の社会変革への転換を伴走支援するなど、資金面のみならず、現場の大学がいち早く自らの研究成果を社会還元できるような制度面の改革も含めている。
  • 我が国全体の研究力底上げのためには、全体を俯瞰した上で、この場で検討がなされた「世界と伍する研究大学」の在り方についての最終まとめと同時にいち早く総合振興パッケージをとりまとめることで、我が国の意欲のある大学の多様性を維持発展させていくことが重要である。今後、大学ファンドによる運用益からの支援が開始されるタイミングも見据えつつ、大学ファンドの対象大学とそれ以外の大学との間の有機的な連携や効果的な資金配分の在り方については、パッケージの内容をさらに進化させることを前提として、より具体的な内容とするべく、引き続きさらなる検討が肝要であることを強く付言する。

5.終わりに

  • 昨年3月から12回に渡る議論を重ね、我が国に世界と伍する研究大学を実現するための考え方や大学ファンドを中心とした政策の在り方について最終とりまとめを行ったところであるが、この最終とりまとめは大きな方向性を示したものであり、政府においてはこれを踏まえ、詳細な制度設計を進めていくことが必要である。
  • 特に、国際卓越研究大学の対象となる国立大学法人に関する制度改革については、3%成長を果たしながら、新たな学問分野や若手研究者支援を実現していくという観点から、合議体がどのような役割を果たし、学内における役割分担と連携の中でいかなる主導性を発揮するのか、どのような構成員が適しており、どのように選考することが適切か立法化や制度化に向けたさらなる精緻な検討が求められる。また、経営協議会など既存のマネジメント組織との関係や連携の在り方などについても制度化に当たって留意することが必要である。
  • この制度改革と合わせ、中期目標・中期計画の評価の仕組みの簡素化・効率化、大学独自基金への積み立てを可能とする仕組みの創設、授業料設定の柔軟化、長期借入や債券発行要件の緩和などの規制緩和事項について、国際卓越研究大学の対象となる国立大学法人の経営的・財政的自律性を高める観点から早期に結論を得て、実行していくことが期待される。
  • また、国際卓越研究大学制度の成功の可否は、いかに法人運営の要となる合議体に有用な人材を確保できるかにあるが、一方で我が国にはこのような人材が諸外国と比して十分に育っていないとの指摘がある。そのため、このような人材の国内外からの発掘や育成を喫緊の課題として、国際卓越研究大学制度の制度化と同時並行で進めていく必要がある。あわせて、ファンド対象大学に求められる3%程度の事業規模成長の達成に向け、その考えられる手法等を具体的に提示することも重要な課題である。
  • 政府は、この大学ファンドは従来の政策とは異なる異次元の政策であるということを肝に銘じ、我が国の大学政策にゲームチェンジを引き起こし、真に世界と伍する研究大学を創出していくという確固たる意思と目的を、府省の縦割りを超え、ぶれることなく堅持し続けることが責務である。

参照

内閣府ホーム > 内閣府の政策 > 総合科学技術・イノベーション会議 > 専門調査会・懇談会等 > 総合科学技術・イノベーション会議 世界と伍する研究大学専門調査会 > 第12回

世界と伍する研究大学の在り方について 最終まとめ(案)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

トップへ戻る