2022年6月、日本政府が閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2022」、通称「骨太の方針2022」は、単なる政策文書以上の意味を持っています。これは、日本のヘルスケアシステムを根本から再構築するという国家的な意思表明でした。この変革の背景には、避けることのできない二つの大きな力があります。一つは、世界に先駆けて進む超高齢社会であり、もう一つは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック対応において露呈した、断片化されたデータ基盤の脆弱性という厳しい教訓です 1。
この壮大な計画の中心に据えられているのが「医療DX」です。厚生労働省の定義によれば、これは単に紙の記録をデジタル化することではありません。疾病の予防、診断、治療、処方、請求、そして介護に至るまで、医療のあらゆる段階で発生する情報を、全体最適化された基盤を通じて連携させることを目指しています。その究極の目的は、業務を効率化し、国民一人ひとりが自らの健康情報を活用できるようにし、より質の高い医療とケアを受けられる社会を築くことです 2。
しかし、この野心的なビジョンは、日本の医療が長年抱えてきた複雑で断片化された、そして時には変革に抵抗する現場の現実と衝突しています。本記事は、この「トップダウンの壮大な構想」と「ボトムアップの厳しい現実」との間に存在する緊張関係を解き明かすことを目的とします。
これから、政府が描く壮大なビジョンから、その実行における細部に至るまでの旅にご案内します。主要な各施策を検証し、最新のデータを用いてその進捗を評価し、企業や社会全体への影響を深く分析し、そして日本の取り組みをグローバルな文脈の中に位置づけていきます。この記事を読み終える頃には、日本の医療DXが直面する課題の深刻さと、その先に広がる可能性の大きさの両方を、明確に理解していただけることでしょう。
Table of Contents
「医療DX令和ビジョン2030」が描く壮大な青写真
政府の戦略的な最終目標は、「医療DX令和ビジョン2030」として具体化されています。このビジョンは、単なる医療の効率化を超え、社会全体のあり方を変革することを目指しており、厚生労働省や関連する政治団体が示す3つの核となる野心に基づいています 1。
第一に、「国民の健康寿命の延伸と患者エンパワーメント」です。これは、国民が自身の保健医療情報(PHR: Personal Health Record)に容易にアクセスできる環境を整備し、主体的な健康管理を促すことを目的としています。自分の検査結果やアレルギー情報などを生涯にわたって一元的に把握できれば、より安全で質の高い医療を受けられるだけでなく、自らの健康維持・増進への意識も高まります 2。
第二に、「危機対応能力の強化と医療システムの効率化」です。COVID-19対応の教訓から、次の感染症危機に迅速かつ確実に対応できるデータ収集・共有基盤の構築が急務とされました。平時から医療情報を円滑に収集・活用できる仕組みを整えることで、有事の際の迅速な状況把握と対策立案を可能にすると同時に、日常の医療提供体制の効率化も図ります。
第三に、「経済成長とイノベーションの促進」です。集約された質の高い医療ビッグデータを研究開発に活用することで、創薬や新たな治療法の開発を加速させます。これは、製薬・医療機器産業の国際競争力を高め、新たなヘルスケア関連産業を育成するという、明確な経済戦略の一環でもあります。医療DXは、国民の健康を守るだけでなく、日本の新たな成長エンジンとなることが期待されているのです 4。
このビジョンは、日本の医療ITに対するアプローチが、これまでの個別最適化から、国家レベルでの全体最適化へと根本的に転換したことを示しています。過去の断片的なシステム導入がもたらした非効率性を乗り越え、国が主導して一貫したデジタル基盤を構築するという強い意志が、このビジョンには込められています。
ビジョンを支える3つの柱
「医療DX令和ビジョン2030」の壮大な目標は、それを実現するための3つの具体的な技術基盤プロジェクトによって支えられています。これらは個別に行われるのではなく、相互に連携し、医療DXのエンジンとして機能するよう設計されています 1。
全国医療情報プラットフォームの創設
これは、日本の医療情報の「スーパーハイウェイ」と呼ぶべき中核的なインフラです。既存のオンライン資格確認システムのネットワークを大幅に拡充し、これまで個別に管理されていたレセプト(診療報酬明細書)や特定健診情報に加え、電子処方箋、電子カルテ、予防接種、介護情報などをクラウド上で連携させます。これにより、患者の同意のもと、必要な時に必要な情報を全国の医療機関や薬局、さらには介護事業所などが安全に共有・交換できる全国的なプラットフォームを構築することを目指しています 6。このプラットフォームがなければ、医療情報のサイロ化は解消されません。
電子カルテ情報の標準化
全国医療情報プラットフォームが情報の「道路」だとすれば、電子カルテの標準化は、その道路を走る車が使う「共通言語」を定めることに相当します。現在、電子カルテはベンダーごとに仕様が異なり、医療機関同士でのデータ交換が極めて困難です。この「データサイロ」を打破するため、政府は国際標準規格を活用し、診療情報提供書(紹介状)などの「3文書」と、傷病名やアレルギー情報などの「6情報」から、データ項目や電子的仕様を国が標準として定めます 10。標準化された電子カルテデータがなければ、プラットフォームは空の道路に過ぎません。
診療報酬改定DX
これは、医療現場とシステムベンダーの負担を軽減するための「効率化エンジン」です。日本では2年に一度、診療報酬の改定が行われますが、そのたびに全国の医療機関とベンダーは、短期間で集中的なシステム改修作業に追われ、膨大な業務負荷が生じていました。この課題を解決するため、国が診療報酬の算定ルールを組み込んだ「共通算定モジュール」を開発・提供します。ベンダー各社はこの共通モジュールを自社のシステムに組み込むことで、改定時の対応が大幅に簡素化され、コスト削減と迅速な対応が可能になることが期待されています 12。このDXは、標準化されたシステムの上でこそ、その真価を発揮します。
誰がこの巨大プロジェクトを動かすのか?強力な推進体制
医療DXという国家的な大事業を推進するためには、強力なリーダーシップと明確な役割分担が不可欠です。この点を踏まえ、政府は異例とも言える強固な統治構造を構築しました。
その象徴が、内閣総理大臣を本部長とする「医療DX推進本部」の設置です。これは、医療DXが単なる厚生労働省の一政策ではなく、内閣の最重要課題の一つであることを内外に示すものです。この本部には、厚生労働大臣、デジタル大臣、総務大臣、経済産業大臣といった関係閣僚が参加し、省庁の垣根を越えた連携と迅速な意思決定を可能にしています 5。
各省庁の役割分担も明確化されています。
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厚生労働省は、医療政策の主管官庁として、医療DX全体のビジョン策定や制度設計、医療現場との調整といった中核的な役割を担います 5。
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デジタル庁は、その技術的な専門知識を活かし、マイナンバーカード基盤の整備や、全国医療情報プラットフォーム、標準型電子カルテといった中核システムの設計・開発・運用を主導します 17。
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総務省は、全国の自治体との連携や、通信インフラの整備といった観点からプロジェクトを支えます。
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経済産業省は、ヘルスケア産業の振興やスタートアップ支援など、経済成長戦略としての側面から医療DXを推進します 5。
このように、医療DXは、総理官邸の強力なリーダーシップのもと、関係省庁がそれぞれの専門性を持ち寄って推進する、まさに「オールジャパン」体制で進められています。この強固なガバナンスは、これまでの縦割り行政の弊害を乗り越え、複雑なステークホルダーが絡み合う医療分野での大改革を断行するという政府の固い決意の表れと言えるでしょう。
変革の最前線:マイナ保険証が直面する理想と現実
日本の医療DX計画において、最も国民の目に触れ、そして最も大きな摩擦を生んでいるのが、従来の健康保険証をマイナンバーカード(通称「マイナ保険証」)に置き換える取り組みです。これは単なるカードの切り替えではなく、全国の医療情報を連携させるためのデジタルな「入り口」を確立する、極めて重要なステップと位置づけられています。しかし、その理想とは裏腹に、現場では混乱が続いています。
描かれた理想:医療のための統一デジタルIDとは
政府が推進する「マイナ保険証」と、その基盤となるオンライン資格確認システムが目指すのは、医療現場の長年の課題を解決し、患者と医療従事者の双方に利益をもたらす未来です。
その最大のメリットは、医療機関の受付業務の劇的な効率化です。従来、患者が提示する保険証の情報は、職員が手作業でシステムに入力していました。このプロセスは時間がかかるだけでなく、入力ミスも発生しがちでした。オンライン資格確認では、マイナンバーカードをカードリーダーにかざすだけで、患者が加入する医療保険の資格情報がオンラインで即座に、かつ正確に確認できます。これにより、受付の待ち時間が短縮され、事務作業の負担が大幅に軽減されると期待されています。
さらに、このシステムは単なる資格確認にとどまりません。患者が同意すれば、医師や薬剤師は、その場で患者の過去の薬剤情報や特定健診の結果を閲覧できるようになります。これにより、複数の医療機関で処方された薬の重複や、危険な飲み合わせ(併用禁忌)をリアルタイムでチェックでき、より安全で質の高い医療を提供することが可能になります。この「医療従事者間での情報共有」こそが、患者にとって最大のメリットであり、医療DXが目指す「質の高い医療」の核心部分と言えるでしょう。
厳しい現実
政府の野心的な計画とは裏腹に、「マイナ保険証」の普及は極めて困難な道のりを歩んでいます。最新のデータは、理想と現実の間に横たわる大きな溝を浮き彫りにしています。
まず、「導入」と「利用」の乖離が深刻です。デジタル庁のダッシュボードによれば、マイナンバーカード自体の保有率は人口の7割を超え、国民の多くがカードを手にしています 19。また、政府の強力な普及策により、その多くが健康保険証としての利用登録を済ませています。しかし、問題は実際の利用率です。医療機関の窓口でマイナ保険証が実際に使われる割合は、2024年に入っても5%前後という極めて低い水準で推移しており、国民全体でも国家公務員でさえも利用が進んでいないのが実情です 20。これは、カードを「持っている」ことと、それを医療現場で「使いたい」「使える」と信頼していることの間に、天と地ほどの差があることを示唆しています。
医療機関側も同様の状況です。政府は2023年4月までに、ほぼ全ての病院・診療所・薬局に対して、顔認証付きカードリーダーの導入を原則として義務化しました 6。その結果、物理的な機器の設置率は9割を超えています 6。しかし、ハードウェアの存在が、円滑な運用や医療従事者の積極的な活用を意味するわけではありません。多くの施設が機器を導入しながらも、後述するトラブルの多発により、積極的な利用をためらっているのが現状です 23。
この状況をまとめたのが以下の表です。政府の目標と現場の現実がいかにかけ離れているかが一目瞭然となります。
表1:マイナ保険証導入の進捗評価(2024年半ば時点)
評価項目 |
政府の目標・理想 |
現実(データ) |
根拠 |
マイナンバーカード保有 |
国民全体への普及 |
人口の約74%が保有 27 |
19 |
保険証利用登録 |
全保有者の登録 |
保有者の約85%が登録済み 21 |
19 |
実際の利用率 |
全ての受診で利用 |
全体の5.47%(2024年3月)20 |
20 |
医療機関のシステム導入 |
ほぼ全ての施設で導入・運用 |
導入率90%超だが、トラブル多発 6 |
6 |
利用者・現場の評価 |
業務効率化、利便性向上 |
「役に立たない」「トラブルが多い」との声が多数 28 |
29 |
この表が示すのは、トップダウンの目標設定と現場の実態との深刻な乖離です。政府は「インフラ整備」という点では目標を達成したかのように見えますが、そのインフラが信頼され、活用されるという最も重要な点において、大きな壁に直面しているのです。
疲弊するシステム:「マイナ保険証」トラブル
マイナ保険証の利用率が低迷する最大の理由は、その信頼性の欠如にあります。全国の医療現場からは、システムの根幹を揺るがすようなトラブルが絶え間なく報告されており、約束された「効率化」とは真逆の「混乱」を生み出しています。これらの問題は、単なる初期の不具合ではなく、制度設計と導入プロセスの構造的な欠陥に根差しています 27。
データ紐付けの誤り:信頼を根底から覆す致命的欠陥
最も深刻な問題は、他人の医療情報が誤って紐付けられる事案です。患者がカードリーダーにマイナ保険証をかざすと、全くの別人の資格情報が表示されるという、あってはならないエラーが多数報告されています 27。これは、保険者(健康保険組合など)が加入者の情報を登録する際の人的ミスや、住民基本台帳データとの照合システムの不備が原因です。自分の薬剤情報や診療情報が他人に閲覧される可能性があるという事実は、国民のプライバシーへの不安を煽り、制度への信頼を根底から破壊するものです。
電子証明書の有効期限切れ:静かに迫る「2025年問題」
マイナンバーカードには、本人確認に用いる「電子証明書」が内蔵されており、これには発行から5回目の誕生日という有効期限があります。この期限が切れると、カードは保険証として機能しなくなります。2020年のマイナポイント事業を機にカードを取得した多くの国民の電子証明書が、2025年以降に一斉に期限切れを迎えるため、更新手続きの窓口がパンクし、気づかずに医療機関を訪れた患者が資格確認不能となる「有効期限切れパニック」が起きるのではないかと懸念されています。これは「予見された危機」であり、政府の長期的な運用計画の甘さを露呈しています 34。
ハードウェアとシステムの不安定性
医療現場からは、カードリーダーの頻繁なフリーズ、顔認証のエラー、システムの応答速度の遅さ、ネットワークの切断といった、ハード・ソフト両面の不安定性に関する悲鳴が上がっています 31。再起動に10分以上かかり、受付業務が完全に停止してしまうケースも珍しくありません。これは、約束された「業務効率化」とは正反対の現実であり、現場のスタッフに多大なストレスを与えています。
ヒューマンファクター:現場に押し付けられるITサポート業務
高齢で顔認証がうまくいかない患者、暗証番号を忘れてしまった患者への対応は、すべて医療機関の受付スタッフの負担となっています 30。本来の医療事務とはかけ離れたITサポート業務に時間を取られ、他の患者を待たせることになり、結果として医療サービス全体の質の低下を招いています。
これらの問題は、政府がシステムの安定性と信頼性を確保する前に、普及目標の達成を優先して拙速に導入を進めた結果と言えます。現場の運用を無視したトップダウンの推進が、利用者である国民と、サービス提供者である医療機関の双方から信頼を失うという、最悪の事態を招いているのです。
保険証廃止の行方:2024年の期限とその後
こうした数々の問題が解決されない中、政府は当初の計画通り、2024年12月2日をもって従来の健康保険証の新規発行を停止し、マイナ保険証を基本とする体制へ移行する方針を堅持しています 41。
この移行措置に伴い、マイナンバーカードを保有していない人や、カードを紛失・返納した人などには、申請に基づいて「資格確認書」という紙の証明書が交付されることになります。政府はこれを「セーフティネット」と説明していますが、現場からは多くの批判が上がっています。
第一に、資格確認書はマイナ保険証のトラブル発生時の代替手段にはならないという点です。マイナ保険証のトラブルで資格確認ができない患者は、その場で資格確認書を提示することはできません。つまり、トラブル対応の確実な手段として機能してきた「従来の保険証の併用」という選択肢が失われることになります 28。
第二に、資格確認書の有効期限は最長1年であり、継続的に交付を受けるには更新手続きが必要になる可能性があり、国民にとって新たな負担となりかねません。
医療現場からは、システムの信頼性が確保されるまでは保険証を存続させるべきだという声が強く上がっています 28。しかし、政府は「保険証廃止」という政治目標を優先し、数々の課題から目を背けているように見えます。このままでは、2024年12月以降、医療へのアクセスが困難になる患者が続出し、医療現場がさらなる混乱に見舞われることは避けられないでしょう。マイナ保険証の導入は、日本の医療DXが直面する最も象徴的かつ深刻な課題であり、その行方はプロジェクト全体の成否を占う試金石となるはずです。
デジタル処方箋:進む薬局、停滞する医療機関のなぜ
医療DXのもう一つの重要な柱が、電子処方箋の導入です。これは、紙の処方箋をデジタル化することで、医療の安全性と効率性を飛躍的に高める可能性を秘めています。しかし、その普及は「マイナ保険証」と同様、あるいはそれ以上に大きな壁に直面しており、特に医療機関側の導入の遅れは深刻な状況です。
仕組みと利点:安全で効率的な投薬を目指して
電子処方箋は、オンライン資格確認システムを基盤として構築された「電子処方箋管理サービス」という全国規模のサーバーを介して、医師・歯科医師と薬剤師が処方箋情報をやり取りする仕組みです。
その流れは以下の通りです。
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医師・歯科医師が、患者の診察後、処方内容を電子処方箋管理サービスに登録し、HPKIカード(後述)で電子署名を行う。
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患者は、医療機関から受け取る「引換番号」を薬局に提示する。
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薬剤師は、その番号をもとに電子処方箋管理サービスから処方データをダウンロードする。
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薬剤師は、調剤後、その結果を再び管理サービスに登録する。
この仕組みがもたらすメリットは多岐にわたります。薬局では、処方箋内容を手入力する必要がなくなるため、入力ミスやそれに伴う調剤過誤のリスクが大幅に減少します。また、事務作業の負担が軽減され、薬剤師は患者への服薬指導など、より専門的な業務に集中できます。
患者と医療システム全体にとっての最大の利点は、医療安全の向上です。電子処方箋管理サービスには、患者が過去に処方・調剤された薬剤情報が蓄積されます。医師や薬剤師は、患者の同意のもと、複数の医療機関や薬局をまたいだ最新の服薬履歴をリアルタイムで確認できます。これにより、危険な薬の重複投与や併用禁忌をその場でチェックし、未然に防ぐことが可能になります。これは、従来のレセプト情報(約1ヶ月遅れ)では不可能だった、極めて重要な安全機能です 45。
二極化する導入状況:薬局と医療機関の大きな温度差
電子処方箋の導入状況は、施設の種類によって極端な二極化を示しています。この対照的な現実は、制度設計におけるインセンティブの偏りを明確に物語っています。
薬局:進む導入
薬局側の導入は比較的順調に進んでいます。2025年初頭のデータでは、全国の薬局の約6〜7割が電子処方箋に対応可能な体制を整えています 45。これは、前述の通り、電子処方箋が薬局の日常業務における最大の負担である「処方箋の手入力」というペインポイントを直接的に解決するためです。業務効率化と調剤過誤リスクの低減という明確なメリットが、導入の強力な動機となっています。
医療機関:深刻な停滞
一方で、処方箋を発行する側である医療機関(病院・診療所)の導入は、壊滅的と言えるほど遅れています。2025年初頭時点での導入率は、医科診療所で約1割、病院に至ってはわずか数パーセントにとどまっています 45。電子処方箋システムは、処方箋が発行されなければ始まりません。この医療機関側の深刻な導入の遅れが、システム全体のボトルネックとなり、電子処方箋の普及を阻む最大の要因となっています。政府が掲げた「2025年3月までに概ね全ての施設で導入」という目標は、もはや達成不可能であることが明白です 45。
なぜ医師は導入しないのか?ボトルネックを分析
医療機関、特に診療所レベルで電子処方箋の導入が進まない理由は、複合的かつ根深いものです。単なるコストの問題だけでなく、医師のワークフローやインセンティブ構造に深く関わっています。
HPKIカードという高いハードル
電子処方箋を発行する際、医師は「HPKI(Healthcare Public Key Infrastructure)カード」と呼ばれる、保健医療福祉分野専用のICカードを用いた電子署名が義務付けられています。しかし、このHPKIカードの普及率が極めて低いのです。2024年後半のデータでも、全医師における取得率は2〜3割程度にとどまっています 49。多くの医師にとって、電子処方箋のためだけに新たなカードを申請し、管理する手間は、導入をためらわせる大きな心理的・物理的障壁となっています。
医師にとってのメリットの欠如
この問題の核心は、インセンティブの非対称性にあります。薬局が「業務効率化」という直接的なメリットを享受できるのに対し、処方箋を発行する医師側には、ワークフローをわざわざ変更してまで電子処方箋を導入するだけの強い動機がありません。
処方箋の発行は、診察全体から見ればごく一部の作業です。重複投薬チェックなどの安全性向上というメリットは、主に患者と薬剤師にもたらされるものであり、多忙な医師が日々の業務の中で直接的な利益として体感しにくいのが実情です。特に、院内処方を行っている診療所や、長年通院している安定した患者層を抱えるかかりつけ医にとっては、既存の紙ベースの運用で何ら不都合はなく、変革の必要性を感じにくいのです。
コストとシステム連携の複雑さ
国は導入補助金を用意していますが、それでもなお、既存の電子カルテやレセコン(レセプトコンピュータ)とのシステム改修・連携にかかる費用や手間は、特に経営基盤の弱い中小の診療所にとっては大きな負担です。厚生労働省の調査でも、導入しない理由として「システム導入・改修費用が高額」であることが上位に挙げられています 47。
結論として、電子処方箋システムは、その設計思想において、下流(薬局)のメリットは十分に考慮されているものの、エコシステムに不可欠な上流(医師)の参加を促すための、説得力のある価値提案に失敗していると言えます。医師にとって、導入の手間(HPKIカード、システム改修)が、得られるメリットを上回っている限り、この深刻な停滞状況を打破することは極めて困難でしょう。
データ基盤の礎:電子カルテ標準化という長年の課題
日本の医療DXが目指す「全国の医療情報連携」という壮大な構想を実現するためには、その根幹をなすデータ、すなわち電子カルテ(EHR: Electronic Health Record)が、施設やベンダーの壁を越えて自由にやり取りできる状態でなければなりません。しかし、日本の医療ITは長年、「ベンダーロックイン」という根深い問題に苛まれてきました。このデータサイロを破壊し、真の相互運用性を確保するための「電子カルテの標準化」は、医療DXプロジェクトの中で最も技術的に複雑かつ、長期的な成功を左右する重要な取り組みです。
歴史的課題:「ベンダーロックイン」とデータのサイロ化
日本の医療現場におけるIT化は、国による統一的な計画ではなく、各医療機関が個別にシステムを導入する形で進んできました。その結果、電子カルテシステムは多数の民間ベンダーによって、それぞれ独自の仕様やデータ形式で開発・提供されてきました。これが「ベンダーロックイン」と呼ばれる問題を引き起こしています 53。
ある医療機関がA社の電子カルテを導入すると、そのデータはA社のシステムでしか最適に扱えません。もし将来、B社のより優れたシステムに乗り換えようとしても、過去の膨大なカルテデータをB社のシステムに移行するには、莫大なコストと手間がかかるか、最悪の場合は不可能です。これにより、医療機関は事実上、最初に導入したベンダーに「縛り付け」られてしまいます。
この問題の最大の弊害は、患者の医療情報が医療機関ごとに分断され、「データのサイロ」が生まれることです。患者がある病院から別の診療所に転院しても、その診療録は簡単には引き継がれません。これにより、重複した検査が行われたり、過去の重要な治療歴が見過ごされたりするリスクが生じ、医療の質と効率の両方を損なってきました。
電子カルテの普及率自体も、施設規模によって大きな格差があります。400床以上の大病院では9割以上が導入している一方で、医療機関の大半を占める小規模な病院や診療所では、その普及率は5割程度にとどまっています。導入が進まない理由としては、高額な導入・維持コスト、スタッフのITリテラシーへの不安、そして「紙カルテで十分間に合っている」という現場の慣性が挙げられます 57。
政府の解決策:医療情報の「共通言語」を定める
この根深い問題を解決するため、政府はトップダウンで医療情報の「共通言語」、すなわち国家標準を定めるという強力なアプローチを選択しました。これは、ベンダーに互換性のあるシステム開発を促し、医療機関に標準化されたシステムの導入を義務付けることで、データの自由な流通を可能にしようという戦略です。
その第一歩として、政府はまず共有すべき情報の範囲を定めました。具体的には、医療機関間の連携で特に重要となる「診療情報提供書(紹介状)」「退院時サマリー」「健診結果報告書」の3文書と、「傷病名」「アレルギー情報」「感染症情報」「薬剤禁忌情報」「検査情報」「処方情報」の6情報です。これらの情報から優先的に標準規格化が進められています 7。
そして、この共通言語の技術的な基盤として採用されたのが、国際標準規格である「HL7 FHIR(エイチエルセブン ファイアー)」です 60。FHIRは "Fast Healthcare Interoperability Resources" の略で、現代のウェブ技術(RESTful APIなど)をベースに設計された、医療情報を交換するための新しい世界標準です。従来の複雑な規格とは異なり、実装が比較的容易で、スマートフォンアプリなど多様なアプリケーションとの連携にも優れています。日本が独自の規格を作るのではなく、このグローバルスタンダードを採用したことは、将来の拡張性や国際的な連携を視野に入れた、極めて重要な戦略的判断と言えます。これにより、日本の医療ITが世界から孤立することを防ぎ、国内外の最新技術を柔軟に取り入れる道が開かれました。
「標準型電子カルテ」は未導入施設への切り札となるか
電子カルテを導入済みの医療機関には標準規格への準拠を促す一方、依然として半数近くを占める未導入の診療所をどうするかという課題が残ります。これらの施設がデジタル化の波から取り残されれば、全国医療情報プラットフォームには大きな穴が空いてしまいます。
この課題に対する政府の答えが、「標準型電子カルテ」の開発・提供です 6。これは、国が主導して開発する、クラウドベースの電子カルテシステムです。その特徴は以下の通りです。
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低コストでの提供:中小の診療所が導入しやすいよう、補助金などを活用し、安価な利用料を目指します。
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必要最小限の機能:診療科を問わず共通で必要とされる基本的な機能に絞り込み、シンプルで使いやすいシステムを目指します。
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標準規格への準拠:HL7 FHIRに完全準拠し、全国医療情報プラットフォームにネイティブに接続されます。
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拡張性:国が提供するのは基本機能のみですが、民間事業者が開発する様々なオプション機能(オンライン診療、予約システムなど)をAPI連携で追加できる「プラットフォーム型」の設計となっています 67。
この標準型電子カルテは、2025年度から無床診療所を対象としたα版(テスト版)のモデル事業が開始される予定で、そのフィードバックを元に本格的な展開を目指します 10。これは、高コストやITへの苦手意識から導入をためらってきた診療所にとって、デジタル化への第一歩を踏み出すための強力な後押しとなる可能性があります。
根強い障壁と現場の声:長年の慣性をどう乗り越えるか
政府による標準化の推進と補助金制度の整備 72 にもかかわらず、医療現場、特に小規模な診療所における電子カルテ導入への抵抗感は根強く残っています。
現場の医師やスタッフからは、多くの懸念の声が上がっています 77。
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ワークフローの混乱:「これまで慣れ親しんだ紙カルテの運用を変えたくない」「新しいシステムの操作を覚える時間がない」といった、日々の業務フローが崩れることへの強い不安。
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データ移行の負担:過去の膨大な紙カルテを電子データに移行する作業は、時間的にもコスト的にも大きな負担となります。
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セキュリティへの不安:クラウド上に重要な患者情報を保管することへの抵抗感や、サイバー攻撃による情報漏洩への懸念。
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災害時のリスク:停電やネットワーク障害が発生した際に、カルテが全く参照できなくなることへの恐怖。
日本医師会も、標準化の方向性には賛同しつつ、医療機関のサイバーセキュリティ対策や導入・運用コストに対する十分な国の支援、そして災害時でも利用できるようなバックアップ体制の確保を強く求めています 81。
政府の戦略は、既存ユーザーには「標準化」を、未導入ユーザーには「標準型製品」を提供するという、二正面作戦です。これは、深く根付いた問題に対する現実的なアプローチですが、その成功は、マイナ保険証の失敗で損なわれた信頼を回復し、現場の不安を丁寧に解消できるかどうかにかかっています。技術的な正しさだけでは、長年の慣性を乗り越えることはできないのです。
民間企業への影響:新たなビジネスチャンスと競争
日本の医療DXは、単に医療提供体制を変革するだけではありません。それは、ヘルスケアに関連するあらゆる民間企業の事業環境を根底から覆し、新たなビジネスチャンスと厳しい競争環境を生み出す、巨大な市場変革の引き金となります。製薬企業から医療機器メーカー、そして新興のITスタートアップまで、すべてのプレイヤーがこの地殻変動への適応を迫られています。
製薬・医療機器メーカーの新たな事業環境
これまで製薬・医療機器業界のビジネスモデルは、MR(医薬情報担当者)による医師への情報提供と関係構築を軸に展開されてきました。しかし、医療DXによってデータが可視化・共有化されることで、その根幹が揺らぎ始めています。
勘と経験からデータ駆動型マーケティングへ
全国医療情報プラットフォームが整備されれば、どの地域のどの医療機関で、どのような疾患の患者に、どの医薬品が処方されているかといった情報が、匿名化された形で集約・分析可能になります。これにより、企業のマーケティング戦略は、個々の医師へのヒアリングといった定性的なアプローチから、実際の処方動向に基づいたデータ駆動型のエリアマーケティングへと大きく転換せざるを得なくなります。
リアルワールドデータ(RWD)の爆発的活用
プラットフォームは、臨床現場で得られる膨大な「リアルワールドデータ(RWD)」の宝庫となります。製薬企業は、このRWDを活用することで、医薬品開発のあり方を劇的に変えることができます。例えば、治験の対象患者を効率的に探し出したり、市販後の医薬品の有効性や安全性を大規模データで追跡・評価したりすることが可能になります。また、医療経済評価(HEOR)において、自社製品が実際の医療現場でどれだけの価値(費用対効果)を生み出しているかを客観的なデータで示すことが、保険償還や薬価交渉においてますます重要になるでしょう 83。
「薬を売る」から「患者を支える」へ
データを通じて、診断から治療、予後管理に至るまでの「ペイシェント・ジャーニー(患者の旅)」を俯瞰的に捉えることが可能になります。これにより、企業に求められる役割は、単に医薬品や医療機器を「提供する」ことから、患者の治療全体をサポートする「パートナー」へと進化します。疾患啓発活動による早期受診の促進、患者向けの服薬支援アプリの開発、あるいは治療効果を高めるデジタルセラピューティクス(DTx)の提供など、「製品を超えた価値」を創造できる企業が、将来の競争を勝ち抜くことになるでしょう 87。この変化に対応できない企業は、単なるコモディティ化した製品の供給者に成り下がるリスクに直面します。
ヘルスケアITエコシステム:スタートアップ、投資、新ビジネスモデルの誕生
政府主導の医療DXは、規制に守られてきた医療IT市場に風穴を開け、革新的な技術を持つスタートアップにとって巨大なチャンスをもたらしています。
新興プレイヤーの勃興
これまで大手ベンダーが独占してきた市場に、新しいプレイヤーが次々と参入しています。AIを活用した画像診断支援システム、ウェアラブルデバイスと連携した遠隔患者モニタリング、オンライン診療プラットフォーム、特定の診療科に特化した業務効率化SaaS(Software as a Service)など、多種多様なスタートアップが、医療現場の具体的な課題を解決するソリューションを提供し、注目を集めています 88。
活発化する投資
この新たな市場の可能性に、ベンチャーキャピタルも注目しています。一般的な市場環境の冷え込みにもかかわらず、日本のヘルスケアIT分野への投資は活発化しており、大型の資金調達のニュースも相次いでいます。医療ビッグデータ関連ビジネスの市場規模は、今後も高い成長が見込まれており、多くの投資家が次のユニコーン企業を探しています 87。
「アドオン市場」の創出
特に、電子カルテの標準化は、新たなビジネスモデルを生み出す起爆剤となります。国が提供する「標準型電子カルテ」は、意図的に基本機能に絞り込まれています。そして、国際標準であるHL7 FHIRは、外部のアプリケーションが容易に接続できるAPI(Application Programming Interface)を備えています 64。
この構造が意味するのは、医療IT市場が「ヘルスケア版アプリストア」へと変貌する可能性です。スタートアップは、巨大で複雑な電子カルテ全体を開発する必要はありません。特定の診療科の専門的なワークフローを支援するアプリ、患者とのコミュニケーションを円滑にするアプリ、経営分析を高度化するアプリなど、特定の機能に特化した「アドオン(追加機能)」を開発し、標準型電子カルテに接続して提供することができます。これにより、参入障壁が劇的に下がり、イノベーションの競争が加速することが期待されます。
法的ゲートウェイ:「次世代医療基盤法」の役割
この活発なデータ利活用ビジネスを法的に支えているのが、「次世代医療基盤法」です。この法律は、国の認定を受けた民間事業者(認定匿名加工医療情報作成事業者)が、医療機関から患者の医療情報を収集し、個人を特定できないように匿名加工した上で、製薬企業や研究機関などの第三者に提供することを認めるものです 96。
この法律は、医療ビッグデータを研究開発や新産業創出に活用するための「公式なゲートウェイ」の役割を果たします。これにより、企業は法的に保護された枠組みの中で、質の高い医療データにアクセスし、新たな価値を創造することが可能になります。実際に、この法律に基づいて提供されたデータを活用し、がんや希少疾患などの領域で、新たな治療法の開発や治療実態の解明に向けた研究がすでに行われています 99。医療DXによってデータの量と質が向上すれば、この法律の重要性はさらに増していくでしょう。
社会全体の課題と世界の潮流
日本の医療DXは、技術やビジネスの領域にとどまらない、より広範な社会的課題を内包しています。デジタル化の恩恵を誰一人取り残さずに行き渡らせるにはどうすればよいのか。高度に接続されたシステムをいかにして脅威から守るのか。そして、集約された膨大な個人情報を、個人の権利と社会の利益のバランスを取りながら、いかにして公正に管理するのか。これらの問いへの答えは、プロジェクトの持続可能性そのものを左右します。
デジタルデバイド:誰も置き去りにしないために
医療DXがもたらす最大の懸念の一つが、高齢者やデジタル機器の操作に不慣れな人々が、新しい医療サービスから取り残されてしまう「デジタルデバイド(情報格差)」です 59。オンライン診療の予約、マイナ保険証の操作、自身の健康情報の確認など、デジタルスキルを前提としたサービスが増えれば増えるほど、この問題は深刻化します。
この課題に対し、全国の地方自治体やNPO法人が様々な支援策を講じています。例えば、公民館でのスマートフォン教室の開催、高齢者宅を訪問して操作方法を教える「デジタルサポーター」の派遣、あるいは高齢者でも直感的に使えるような健康管理アプリの開発など、地域の実情に応じた草の根の取り組みが広がっています 103。これらの活動は、単に操作方法を教えるだけでなく、デジタル技術への不安を取り除き、社会とのつながりを維持するための重要な役割を担っています。医療DXを成功させるためには、こうした地道な「人による支援」が、技術インフラの整備と同じくらい重要であることを認識しなければなりません。
常に存在する脅威:サイバーセキュリティという大きな課題
医療情報を全国規模で接続し、プラットフォーム化することは、効率性と利便性を高める一方で、巨大なリスクを生み出します。それは、サイバー攻撃の格好の標的となることです。
近年、日本の医療機関を狙ったランサムウェア攻撃が急増しており、その被害は甚大です。電子カルテシステムが暗号化され、診療録が一切閲覧できなくなり、長期間にわたって通常診療が停止に追い込まれる事例も発生しています 53。これは、患者の生命に直接的な危険を及ぼすだけでなく、病院経営にも壊滅的な打撃を与えます。
全国医療情報プラットフォームの構築は、このリスクをさらに増大させます。数多くの医療機関が接続されることで、システムの「攻撃対象領域(アタックサーフェス)」が飛躍的に拡大するからです。特に、セキュリティ対策が手薄になりがちな中小の診療所が、システム全体への侵入口(バックドア)として狙われる危険性があります。
マイナ保険証のトラブルで既に国民の信頼が揺らいでいる中、もしこの国家的なプラットフォームが大規模なサイバー攻撃を受け、情報漏洩やシステム停止といった事態が発生すれば、その影響は計り知れません。それは、医療DXプロジェクト全体への信頼を完全に失墜させ、計画を何年にもわたって後退させる可能性があります。したがって、サイバーセキュリティは単なる技術的な課題ではなく、このプロジェクトの成否を左右する、核となる戦略的脆弱性なのです。
患者の声:データ管理、プライバシー、信頼をめぐる議論
この変革の中心にいるべきなのは、患者自身です。しかし、集約された膨大な医療データは、一体誰のもので、誰がコントロールする権利を持つのでしょうか。この根源的な問いは、日本の医療DXにおいて、まだ十分に議論されていません。
世界的には、患者が自らの医療情報を管理し、その利用方法について自ら決定する「自己情報コントロール権」という考え方が重要視されています 111。EUのGDPR(一般データ保護規則)のように、個人データの収集・利用には本人の明確な同意を基本とし、厳格なルールを課す法制度も存在します 117。
日本の現状は、医療機関や政府が主導する「プロバイダー中心」のデータ共有モデルであり、患者は主に受診の場で同意を求められる受動的な立場に置かれがちです。国民が安心して自らの情報を提供するためには、透明性の高いルール、分かりやすい同意の仕組み、そして万が一の場合の厳格な罰則規定を含む、包括的な法的保護が不可欠です 121。個人のプライバシー保護と、データを活用することによる社会全体の利益(研究開発の促進など)との間で、いかにしてバランスを取るか。この点について、国民全体を巻き込んだオープンな対話と、それに基づく信頼の醸成が、今まさに求められています 125。
世界の先駆者から学ぶ:日本の現在地
日本の医療DXの取り組みを客観的に評価するためには、国際的な比較が不可欠です。世界には、すでに先進的なデジタルヘルス国家を築き上げた先駆者たちがいます。
-
エストニア:旧ソ連から独立後、国家戦略としてデジタル化を推進。「X-Road」という分散型のデータ連携基盤を構築し、行政サービスの99%をオンライン化しました。医療分野では、電子処方箋がほぼ100%普及するなど、高いレベルのデジタル化を実現しています 126。
-
デンマーク:「sundhed.dk(健康.dk)」という国民向けの健康ポータルサイトが有名です。国民は、このサイトを通じて、自らの病院での診療記録、検査結果、処方歴など、包括的な医療情報にいつでもアクセスできます。これは、情報を国民の手に返し、主体的な健康管理を促す「患者中心」モデルの好例です 129。
-
台湾:国民健康保険(NHI)のICカードを、医療だけでなく、身分証明など多目的に利用できる統一IDとして早期に普及させました。COVID-19のパンデミック時には、このカードを利用したマスクの配給管理システムを迅速に構築し、世界から称賛されました 133。
これらの国々の成功は、単なる技術導入だけでなく、国民の信頼を得るための透明性の高いガバナンスと、利用者の利便性を第一に考えた制度設計に基づいています。以下の比較表は、日本のアプローチとこれらの先進国との違いを明確に示しています。
表2:各国の医療情報プラットフォームの国際比較
特徴 |
日本(全国医療情報プラットフォーム) |
デンマーク(sundhed.dk) |
エストニア(X-Road/e-Health) |
台湾(NHI-MediCloud) |
主な目的 |
医療機関間の情報共有による質の向上、業務効率化 |
国民への情報提供による自己管理支援(患者中心) |
安全なデータ交換による行政サービス全体の効率化 |
医療の質の向上と公衆衛生対応 |
データ構造 |
集中型クラウドプラットフォーム |
集中型ポータル(データは分散管理) |
分散型データ連携基盤(X-Road) |
集中型クラウドデータベース |
患者のアクセスと管理 |
マイナポータル経由で一部閲覧可能。管理権は限定的。 |
ポータルサイトで包括的なアクセスと管理が可能。 |
ポータルサイトで包括的なアクセスとログ確認が可能。 |
My Health Bankで自身の記録を閲覧・管理可能。 |
キーとなるID |
マイナンバーカード |
CPRナンバー(国民登録番号) |
e-IDカード(国民IDカード) |
NHI-ICカード(国民健康保険証) |
顕著な成功例 |
(構築途上) |
国民の健康リテラシー向上、高い満足度 |
電子処方箋の普及率99% |
迅速なパンデミック対応(マスク管理) |
主な課題 |
国民・医療現場の信頼獲得、システム安定性 |
(特になし) |
(特になし) |
医療費の増大圧力 |
この比較から、日本のモデルが「プロバイダー(医療提供者)中心」であるのに対し、デンマークやエストニアのモデルはより「シチズン(国民)中心」の思想に基づいていることがわかります。この哲学的な違いが、国民の信頼度や満足度の差に繋がっている可能性があります。
また、スイスのビジネススクールIMDによる「世界デジタル競争力ランキング」では、日本は総合順位で30位台と低迷しており、特に「人材のデジタルスキル」や「将来への備え」といった項目で著しく評価が低いのが現状です 136。これは、日本が強力な技術基盤を持ちながらも、それを社会全体で活用し、変革に繋げる能力に課題を抱えていることを示唆しており、医療DXの推進においても克服すべき重要な点です。
おわりに:日本の医療DXが目指すべき道
日本の医療DXは、国の未来を左右するほどの壮大さと必要性を備えたプロジェクトです。超高齢社会における医療の持続可能性を確保し、国民の健康を増進させるために、その成功は不可欠です。基盤となるインフラの整備は着実に進んでいますが、その道のりは決して平坦ではありません。特に、変革の最前線であるマイナ保険証の導入において露呈した数々の問題は、国民と医療現場の信頼を大きく損ない、プロジェクト全体の推進力を削ぐ深刻な事態を招いています。今、この国家的な事業は、成功と失敗の分岐点に立たされています。
前進への道:命令からパートナーシップへ
これまでの政府のアプローチは、明確な目標を掲げ、期限を区切って実行を迫る「トップダウン型」でした。この強力なリーダーシップがなければ、これほどの大改革に着手することすらできなかったでしょう。しかし、その一方で、スピードを重視するあまり、現場の現実や利用者の声を軽視し、システムの安定性や信頼性の確保が後手に回ったことも事実です。
今、求められているのは、このアプローチの転換です。一方的な「命令(Mandate)」から、医療提供者、そして国民との対話に基づく「パートナーシップ(Partnership)」へと移行しなければなりません。医療DXの真の成功は、導入されたシステムの数ではなく、それが現場でどれだけ円滑に機能し、利用者から信頼され、具体的な利益をもたらしているかによって測られるべきです。
未来への提言:各ステークホルダーが取るべき行動
この危機的な状況を乗り越え、医療DXを真の成功に導くために、各ステークホルダーは以下の行動を取ることが求められます。
政府・政策立案者
-
スピードより安定性を優先: これ以上の拙速な義務化は避けるべきです。特にオンライン資格確認システムが、現場で誰の目にも明らかなほど安定し、信頼できるものになるまで、従来の保険証の存続を含めた柔軟な移行期間を設けるべきです。
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「信頼回復」イニシアチブ: システムの不具合について、国民と医療現場に対して透明性の高い情報開示を行い、具体的な改善策とその進捗を丁寧に説明するべきです。現場にかけた負担を率直に認め、対話の姿勢を示すことが信頼回復の第一歩です。
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医師のインセンティブを再設計: 電子処方箋のような医師の協力が不可欠なシステムについては、そのワークフローを徹底的に見直し、導入の手間を上回る明確で具体的なメリット(診療報酬上の評価、事務作業の劇的な削減など)を設計し、自発的な導入を促すべきです。
医療提供者(病院・診療所・薬局)
-
積極的に関与し、記録: 単に抵抗するだけでなく、日本医師会などの団体を通じて、システムの改善に向けた具体的なフィードバックを積極的に行うべきです 139。システム関連のトラブルや、それが業務や患者ケアに与えた影響を詳細に記録・集計し、政策提言のための客観的なデータとして活用することが重要です。
-
「ヒューマンウェア」に投資: DXは単なる技術の購入ではありません。新しいシステムを円滑に運用するためのスタッフ教育、業務フローの見直し、そして患者への丁寧な説明といった「人的な投資」こそが、移行期の混乱を最小限に抑える鍵となります。
民間企業(製薬・医療機器・IT)
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現実世界の課題を解決: 壮大なビジョンを語るだけでなく、今の医療現場が直面している具体的な「痛み」を解決する製品やサービスにこそ、ビジネスチャンスがあります。例えば、混乱する受付業務を支援するツールや、中小診療所向けの安価で堅牢なサイバーセキュリティサービスなどが考えられます。
-
倫理的なデータ管理の担い手: 国民の信頼が揺らいでいる今こそ、最高水準のデータプライバシーとセキュリティ対策を自主的に導入し、「信頼できるパートナー」としての評価を確立することが、他社との強力な差別化要因となります。
-
エコシステム: 独自規格の閉じたシステムではなく、国際標準(HL7 FHIR)に基づき、国のプラットフォームや他のサードパーティ製アプリと連携できるオープンなソリューションを構築すべきです。未来の勝者は、孤立した城を築く者ではなく、相互接続されたネットワークの価値ある結節点となる者です。
日本の医療DXは、多くの困難を抱えながらも、大きな一歩を踏み出しました。この挑戦を成功に導けるかどうかは、技術の優劣だけでなく、関係者全員が信頼に基づいたパートナーシップを築き、現実的な課題に一つひとつ真摯に取り組んでいけるかにかかっています。その先にこそ、国民一人ひとりが質の高い医療を安心して受けられる、持続可能なヘルスケアの未来が待っているのです。
引用文献
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- 政府の医療DX推進本部の初会合、役割を確認(政府) | 株式会社医療経営研究所, https://www.iryoken.co.jp/contents/new/detail---id-2474.html
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- 医療DX:全国医療情報プラットフォームの概要 | デロイト トーマツ グループ - Deloitte, https://www.deloitte.com/jp/ja/Industries/health-care/perspectives/hc-iryoplatform.html
- 全国の医療機関で電子カルテ情報を共有可能とする仕組み2024年度から順次稼働 - GemMed, https://gemmed.ghc-j.com/?p=54482
- 第66回 医療DX令和ビジョン2030の 実現に向けて(厚生労働省大臣官房医薬産業振興・ 医療情報審議官 城 克文氏) | 日本の医療の未来を考える会, https://www.iryounomirai.com/2023/05/post-4237/
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- 「全然使ってないじゃん」デジタル庁のマイナ保険証利用率は? 2024年11月7日厚労省・デジタル庁要請(マイナ連絡会) - YouTube, https://www.youtube.com/watch?v=TdQ-y-JD4Ak
- 「資格確認できない」「窓口負担誤登録」12月2日以降も相次ぐマイナ保険証トラブル, https://hodanren.doc-net.or.jp/info/news/2024-12-7/
- マイナ保険証『有効期限切れ』“3割の医療機関でトラブル”との調査も 「資格確認書を全員に交付すべき」と専門家 - FNNプライムオンライン, https://www.fnn.jp/articles/-/880436?display=full
- マイナ保険証はデメリットしかない?基本的な仕組みや義務化の詳細、利用方法を解説, https://www.gmosign.com/media/work-style/myn-hokensho-demerit/
- 話題のマイナ保険証、機器の設置率やトラブル報告は? - ケアネット, https://www.carenet.com/news/general/carenet/56808
- 「マイナ保険証」でトラブル続出 「根本的に無理がある」その原因は?【Nスタ解説】 - YouTube, https://m.youtube.com/watch?v=f_Mn8jTLr7s&pp=ygULI-agueWFg-OBrm4%3D
- 【保団連調査】マイナ保険証の期限切れトラブル31%・3023医療機関 25年度は2768万件が更新期限を迎える, https://hodanren.doc-net.or.jp/info/news/2025-05-10-2/
- マイナ保険証を使おうとしたら『有効期限切れ』保険証が使えないトラブル急増「資格確認書を全ての人に」 - FNNプライムオンライン, https://www.fnn.jp/articles/-/880381
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- 2024年12月健康保険証廃止!マイナ保険証の対応と想定される質問, https://classico-os.com/column/20240913/mainahokensyo-2/
- 健康保険証は2024年12月2日に廃止となります。マイナ保険証をご利用ください。 - これまでのお知らせ|SCSK健康保険組合, https://www.kenpo.gr.jp/scsk-kenpo/contents/topics/news/2024/mynumber.html
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- 電子処方箋の導入率、医療機関では2025年3月末でも「1割に届かない」見込み、目標を見直し、診療報酬対応も検討へ—社保審・医療保険部会 | GemMed | データが拓く新時代医療, https://gemmed.ghc-j.com/?p=64916
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- 2024年世界デジタル競争力ランキング 日本は31位も、世界最下位のデジタル人材スキル, https://reskilling.com/news/1577/
- 2024年版IMD世界競争力ランキング、スイス2位、日本は38位へ後退 - ジェトロ, https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/06/f228876d68486d7d.html
- 発行物 日本の国際競争力の回復に向けて - 福井県立大学, http://www.fpu.ac.jp/rire/publication/column/d154799.html
- 日本医師会の目指す医療DX - 鳥取県医師会, https://www.tottori.med.or.jp/docs/joho/05206tottori.pdf