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国立大学法人法の一部を改正する法律案の概要
趣旨
国立大学法人等の管理運営の改善並びに教育研究体制の整備及び充実等を図るため、学長選考会議に学長の職務執行の状況の報告を求める権限を付与し、その名称を学長選考・監察会議とすること、監事の体制を強化すること等の措置を講ずるとともに、小樽商科大学、帯広畜産大学及び北見工業大学を設置する各国立大学法人を統合する等の措置を講ずる。
概要
1.中期計画の記載事項の追加並びに年度計画及び年度評価の廃止
①中期計画の記載事項として、目標の実施状況に関する指標を追加する【第31条第2項第3号】
②年度計画及び各事業年度に係る業務の実績等に関する評価(年度評価)を廃止する【第2条第7項及び第31条の2第1項】
2.国立大学法人等の組織体制の見直し
(1)学長選考会議の権限の追加等
①学長選考会議の名称を「学長選考・監察会議」とする【第12条第2項】
②同会議は、(3)③の報告を受けたとき又は学長の解任要件に該当するおそれがあると認めるときは、学長に職務の執行状況について報告を求めることができることとする【第17条第4項】
③同会議の委員について、学長を加えることができないこととするとともに、理事は教育研究評議会において選出された場合に委員となることができることとする【旧第12条第3項の削除等】
※大学共同利用機関法人の「機構長選考会議」についても①~③と同様の措置を講ずる【第26条等】
(2)指定国立大学法人の理事の員数の増加
指定国立大学法人の理事は、2名まで増員できることとする【別表第一備考第3号】
(3)監事の体制の強化
①複数の大学を設置する国立大学法人に置く監事の員数を、設置する大学の数に応じて増員する【第10条第1項】
②監事のうち少なくとも一人は常勤とする【第10条第2項等】
③監事は、学長に不正行為や法令違反等があると認めるときは、学長選考・監察会議又は機構長選考・監察会議に報告することとする【第11条の2等】
3.国立大学法人等による出資の範囲の拡大
①指定国立大学法人のみに限定している研究成果活用事業者への出資を全ての国立大学法人等について可能とする(③に関するものを除く)【第22条第1項第7号等】
②教育研究に係る施設、設備又は知的基盤の管理及び当該施設等の他の大学、研究機関その他の者の利用の促進に係る事業者への出資を可能とする【第22条第1項第6号等】
③指定国立大学法人について、大学発ベンチャー(大学の研究成果を活用して商品等の開発・提供を行う事業者)への出資を可能とする【第34 条の5第1項】
4.国立大学法人の統廃合【別表第一】
①国立大学法人小樽商科大学及び国立大学法人北見工業大学を国立大学法人帯広畜産大学に統合する
②国立大学法人奈良教育大学を国立大学法人奈良女子大学に統合する
アカデミック・スタートアップ創出に向けて
アカデミック・スタートアップの現状・課題
- アカデミック・スタートアップによる国の成長への寄与は非常に大きい(上場しているアカデミック・スタートアップは39社、時価総額の合計は約1.9兆円(R3.3現在))
- 米国などの諸外国と比較すると、アカデミック・スタートアップの設立数は圧倒的に少ない
- 従来より、アントレプレナーシップ教育やスタートアップ創業期のギャップファンドなど、大学における取組みを政府として支援してきたものの、大学を中心としたアカデミック・スタートアップ・エコシステムは形成されているとは言えない状況
- 小規模な大学でも様々なアイデアの活用や戦略的な取組により、スタートアップを創出させている中、大学におけるアイデアをイノベーション創出に繋げるために必要なヒトとヒトとの有機的つながりが希薄
- 潜在的なエンジェル投資家は一定数いると考えられるものの、マッチングの場が個人的な関係性に委ねられ、組織的な大学への投資誘引が不足
- 大規模大学(東大・京大など)では、官民イノベーションプログラムなどにより、一定の成果が見られるが、飛躍的なスタートアップ創出にはつながっていない
コロナショック後の未来を先導する大学発ベンチャーの創出、人材の育成
○大学発ベンチャーの創出 【大学発新産業創出プログラム(START)】
- 成長性のある大学等発ベンチャーの創出を目指し、起業前の事業化に向けた研究開発を支援。
- 特に大学等における起業活動支援の体制構築に対する支援を強化。
○アントレプレナーシップを有する人材の育成【次世代アントレプレナー育成事業(EDGE-NEXT)】
- 経済社会を牽引するアントレプレナーシップ(起業家精神※)を有する人材を育成
- 8つのスタートアップ・エコシステム拠点都市において、大学を中心としたアントレプレナーシップ教育プラットフォームを設置し、自治体や産業界と連携しながら、希望する学生全てが実践的な起業家教育を受けられる環境を整備
年俸制・クロスアポイントメント制度等の展開
- 人材流動性の向上や若手の活躍機会創出に向けたクロスアポイント制度の適用教員数は、4年間で7倍以上に。
- 新規採用教員は、原則年俸制を適用することとし、年俸制適用者の拡大を図ることで、5年間で2倍以上に。
魅力ある地方大学の実現に資する地方国立大学の特例的な定員増について
- 本気で地方創生に取り組む地方国立大学の、大学改革を先導するような具体的取組については、原則として学部の定員増が認められていない国立大学に、極めて限定的かつ特例的に定員増を認めることも、地方大学の振興方策の一つとなり得る。
- その際、従来運用上認められてこなかった定員増を提案する上で、各大学が留意しなければならない事項について、中央教育審議会としての考え方を整理。
①地方創生に資する取組であること
- 学長の強力なリーダーシップの下、各大学の強みを生かし、若者の地元定着につながるなど、他の大学の模範となる意義のある、地方創生に資する取組であること。
その際、地元の地方公共団体(首長)・産業界等がそれぞれ主体的に地方創生の必要性や取組の重要性を認識の上、国立大学のリソースを十分に活用するような取組であること。(例 地元定着のための地域独自の奨学制度、地域の特長を生かした産業創出 等)
②地域における緊密な連携が図られた取組であること
- 地域連携プラットフォームを通じた地域構想の策定や、オンライン教育の活用による地域の他大学との連携、地元企業と連携したインターンシップの実施等、地域の他の公私立大学をはじめとする高等教育機関や、地方公共団体、産業界等と緊密な連携がなされた取組であること。
③地域における雇用創出・産業創出やリカレント教育の推進に資する取組であること
- 地域連携プラットフォーム等の地方公共団体、地元産業界等との連携組織を設け、地域の特性やニーズを踏まえた、イノベーションの創出や社会実装に本気で取り組むことで、地域の産業創出や若者の雇用創出に貢献する取組であること。
- 地域の社会人や女性を対象として、リカレント教育を通じたキャリアアップ・キャリアチェンジ支援等、地域ニーズを踏まえた人材育成に資する取組であること。
- 上記について、学部、大学院を通じた教育研究の質の向上、外部資金の獲得や外部人材の登用を含む人事制度上の工夫等について計画性・透明性を持った取組が担保されていること。
④ 中長期的なKPI が設定された取組であること
- ステークホルダーへの説明や結果責任へのコミットの観点から、中長期的なKPI の設定を求める。
⑤ その他
- ポストコロナのDX 社会における人材育成については、地域に定着しながら都市部にある企業で働くことが可能になるなど、地方創生に資する新たな働き方が生じつつあることを考慮すること。
(今後に向けて)
- 魅力ある地方大学づくりは国立大学のみで成立するわけではない。公私立大学を含め、それぞれの高等教育機関が持つ「特色」と「強み」を最大限に生かして、地域における高等教育の在り方を再構築していくことが求められており、中央教育審議会大学分科会においては、引き続き、魅力ある地方大学づくりをテーマとして議論を継続し、魅力ある地方大学を実現するための様々な支援方策等について議論を深めていく予定。
- その際、魅力ある地方大学の実現と各大学における質保証の取組は表裏一体のものであり、各地域において必要とされる大学とはどのようなものであるのかについて、引き続き議論。
地域における大学等の連携・統合の促進に向けた方策
人口減少がより急速に進むこれからの20年間においては、地方における質の高い教育機会の確保が大きな課題
- 大学等は地域の人材を育成し、地域経済・社会を支える基盤。各地域は、人口減少、産業構造の変化、グローバル化、一極集中型から遠隔分散型への転換の中で、地域ニーズを踏まえた質の高い教育機会の確保と人材の育成がこれまで以上に重要。
- 地域においてもデジタル革命など新しい産業創出やイノベーションを生み出し、地域経済・社会を革新的に変えるチャンス
地域連携プラットフォームの構築
- 地域の国公私立大学等、地方公共団体、産業界等が一体となった恒常的な議論の場を構築し、連携体制の強化。地域人材の育成や課題解決に向けて取り組む。
- 大学等、地方公共団体、産業界等の関係機関がエビデンスに基づき、地域の現状・課題を把握した上で、地域の将来ビジョンを議論・共有し、地域の課題解決に向けた連携協力の抜本的強化を図る。
大学等連携推進法人の認定制度
- 多様化するニーズや社会からの要請に応えるため、各大学等が強みや特色を生かしつつ、一定の地域や特定分野で他大学等と連携・協力して教育等に取り組む。
- 地域の国公私立大学の枠組みを越えた緊密な連携や機能分担を推進するため、基準に適合した一般社団法人について、文部科学大臣が大学等連携推進法人として認定する制度を創設。