エビデンス全般

新しい資本主義「分配戦略」

コロナ克服・新時代開拓のための経済対策

第3章 取り組む施策

Ⅲ.未来社会を切り拓く「新しい資本主義」の起動

2.分配戦略 ~安心と成長を呼ぶ「人」への投資の強化~

自律的な経済成長の実現には、民間投資を喚起して生産性を向上することで、収益・所得を大きく増やすだけでなく、人的資本のボトムアップや成長分野への労働移動等の「人」への投資を図ることで、一人ひとりの能力が向上し、高まった力を発揮しながら活躍できる社会となって初めて、次なる成長の機会が生まれる。
こうした「成長と分配の好循環」の実現を図るため、働く人や成長の恩恵を受けられていない方々への分配機能の強化、リスキリングや労働移動円滑化、さらには少子化対策を含めた「人」への投資を強化する。あわせて、人生100年時代の到来を見据え、全ての方々が安心して生活できる全世代型社会保障の構築を検討し、若い世代の将来への不安の解消を図る。

(1)民間部門における分配強化に向けた強力な支援

① 賃上げの推進

<賃上げを行う企業への支援の強化>

働く人への分配機能の強化のため、賃上げを行う企業への税制支援の抜本的強化を行うとともに、賃上げの機運醸成に取り組む。あわせて、最低賃金引上げを含めた賃上げの原資となる付加価値を創出する事業再構築や生産性向上に取り組む中小企業に対して、賃上げの促進を考慮して、強力な助成支援を行う。さらに、下請企業における労務費等の上昇の取引価格への転嫁の円滑化に向けて、大企業と中小企業の共存共栄を目指すパートナーシップ構築宣言の更なる推進に取り組むほか、「中小事業者等取引公正化推進アクションプラン」の着実な実施や企業取引関係情報の活用高度化など、下請取引に対する監督体制強化に取り組む。

<最低賃金引上げの環境整備>

上記に加えて、最低賃金引上げへの対応を支援するため、設備投資や労働者の処遇改善等を行う事業者への助成の拡充等を行うとともに、雇用調整助成金等の休業規模要件の特例的な緩和を令和4年3月末まで延長する。

また、最低賃金引上げの環境整備のためにも事業再構築や生産性向上に取り組む中小企業の支援を行う。

  • 賃上げを行う企業への税制措置(経済産業省)
  • 中小企業等事業再構築促進事業(経済産業省)【再掲】
  • 中小企業生産性革命推進事業(経済産業省)【再掲】
  • 下請取引に対する監督体制強化(公正取引委員会)【再掲】
  • 取引適正化等推進事業(経済産業省)【再掲】
  • 業務改善助成金の拡充(厚生労働省)
  • キャリアアップ助成金による非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善の推進(厚生労働省)
  • 雇用調整助成金の特例措置(厚生労働省)【再掲】

② 労働移動の円滑化・人材育成の強力な推進

企業の成長と給与の引上げを両立する鍵は「人」であり、「人」への投資である。働き手がデジタルなどの新しい時代のスキルを身につけられるよう、「人」への投資を抜本的に強化するために今回の経済対策を含め、3年間で4,000億円の予算を大胆に投入する施策パッケージを講じる。

まずは、正規雇用・非正規雇用を問わず、職業訓練と再就職支援を組み合わせ、労働移動やステップアップを強力に支援するため、求職者支援制度やトライアル雇用助成金等の拡充、民間派遣会社を通じたITスキル等の研修・紹介予定派遣等を行うほか、人材開発支援助成金やキャリアアップ助成金において企業等の民間ニーズを把握しながらデジタル人材育成の強化等を行う。

あわせて、デジタル・グリーンなど成長分野を支える人材の確保・育成や学び直しを支援するため、大学等のリカレント教育や職業訓練の拡充などに取り組む。企業の人的投資を促進するため、企業の非財務情報開示の充実等に取り組むとともに、中小企業等の人材やその伴走支援に関わる人材の確保・育成の支援を行う。

  • コロナ禍での非正規雇用労働者等の労働移動支援事業(厚生労働省)【再掲】
  • 求職者支援制度による非正規雇用労働者の再就職、転職、能力開発への支援(厚生労働省)【再掲】
  • トライアル雇用助成金の活用促進(厚生労働省)【再掲】
  • 産業雇用安定助成金等による在籍型出向の活用促進(厚生労働省)【再掲】
  • 人材開発支援助成金によるデジタル人材育成・非正規雇用労働者支援(厚生労働省)【再掲】
  • キャリアアップ助成金による非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善の推進(厚生労働省)【再掲】
  • ハローワークにおける人材不足分野に係る就職支援(厚生労働省)【再掲】
  • 雇用仲介の改革による労働市場整備(厚生労働省)
  • DX等成長分野を中心とした就職・転職支援のためのリカレント教育推進事業(文部科学省)
  • デジタルと専門分野の掛け合わせによる産業DXをけん引する高度専門人材育成事業(文部科学省)【再掲】
  • 公的職業訓練及び教育訓練給付によるデジタル人材育成支援(厚生労働省)
  • 地域デジタル人材育成・確保推進事業(経済産業省)【再掲】
  • 再エネの最大限導入のための計画づくり支援事業(環境省)【再掲】
  • 新たな学び直し・キャリアパス促進事業(経済産業省)
  • ウィズコロナ時代の新たな医療に対応できる医療人材養成事業(文部科学省)
  • 非財務情報開示の充実や四半期開示見直しなどの一体的な市場環境整備(金融庁)
  • 地域金融機関等による人材マッチング等支援(金融庁、内閣府)【再掲】
  • 事業環境変化対応型支援事業(経済産業省)【再掲】

③ 働き方改革等による多様な働き方の推進、多様な人材の活躍などの支援

働く人のやりがいと生産性を共に高める働き方改革を推進する。ポストコロナの「新しい日常」に対応した働き方として、時間や場所を有効に活用できる良質なテレワークの定着を促進する企業支援を行うほか、兼業・副業の促進、選択的週休3日制度の普及を図ることや各種手続・規制の見直しなどにより、多様で柔軟な働き方を選択でき、安心して働くことができる環境の整備に取り組む。

あわせて、新型コロナウイルス感染症の影響により厳しい状況にある中、一人ひとりの事情に沿ったきめ細かい支援を行っていくため、デジタル分野での女性活躍も含め、女性や就職氷河期世代などの支援をきめ細かく講じるほか、男女間の賃金格差の解消を図ることも視野に入れ、「同一労働同一賃金」に基づく非正規雇用労働者の待遇改善等を推進する。

フリーランスが安心して働ける環境を整備するため、事業者がフリーランスと取引する際の契約の明確化などを検討し、新たなフリーランス保護法制を含む所要の措置を講じる。

  • 障害者のテレワーク雇用を促進するための企業向けガイダンスの開催(厚生労働省)
  • 良質なテレワークの定着促進のための企業支援(厚生労働省)
  • 新たな学び直し・キャリアパス促進事業(経済産業省)【再掲】
  • 金融機関職員の地域・組織・業態を超えた事業者支援のノウハウ共有や兼業・副業の普及促進(金融庁)
  • 地域女性活躍推進交付金(内閣府)【再掲】
  • 配偶者暴力・性暴力被害者等への相談・支援体制の強化(内閣府)
  • 地域における就職氷河期世代の支援(内閣府)

(2)公的部門における分配機能の強化等

① 看護、介護、保育、幼児教育など現場で働く方々の収入の引上げ等

看護、介護、保育、幼児教育など、新型コロナウイルス感染症への対応と少子高齢化への対応が重なる最前線において働く方々の収入の引上げを含め、全ての職員を対象に公的価格の在り方を抜本的に見直す。民間部門における春闘に向けた賃上げの議論に先んじて、保育士等・幼稚園教諭、介護・障害福祉職員を対象に、賃上げ効果が継続される取組を行うことを前提として、収入を3%程度(月額9,000円)引き上げるための措置を、来年2月から前倒しで実施する。

看護については、まずは、地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員を対象に、賃上げ効果が継続される取組を行うことを前提として、段階的に収入を3%程度引き上げていくこととし、収入を1%程度(月額4,000円)引き上げるための措置を、来年2月から前倒しで実施した上で、来年10月以降の更なる対応について、令和4年度予算編成過程において検討し、必要な措置を講ずる。

また、医療、介護・障害福祉、保育の人材育成・確保の更なる支援に取り組む。

政府調達の対象企業の賃上げを促進するため、賃上げを行う企業から優先的に調達を行う措置など政府調達の手法の見直しを検討する。

  • ウィズコロナ時代の新たな医療に対応できる医療人材養成事業(文部科学省)【再掲】
  • 介護福祉士修学資金等貸付事業(厚生労働省)
  • 保育士修学資金貸付等事業(厚生労働省)

② 「こども・子育て支援」の推進

少子化の克服、子供を産み育てやすい社会の実現のため、子供の視点に立った政策を総合的に推進する。

新型コロナウイルス感染症が長期化しその影響が様々な人々に及ぶ中、子育て世帯については、我が国の子供たちを力強く支援し、その未来を拓く観点から、児童を養育している者の年収が960万円以上の世帯を除き、0歳から高校3年生までの子供たちに1人当たり10万円相当の給付を行う。具体的には、子供1人当たり5万円の現金を迅速に支給することとし、その際、中学生以下の子供については、新型コロナウイルス感染症対策予備費を措置し、児童手当の仕組みを活用することで、「プッシュ型」で年内に支給を開始する。これに加えて、来年春の卒業・入学・新学期に向けて、子育てに係る商品やサービスに利用できる、子供1人当たり5万円相当のクーポンを基本とした給付を行う。ただし、地方自治体の実情に応じて、現金給付も可能とする。

少子化への対応も含む子供を巡る様々な課題への適切な対応に向けて、子供目線での行政の在り方について、本年末までに基本方針を決定し、法案提出について検討を進める。

できるだけ早期の待機児童の解消を目指し、保育の受け皿整備や放課後児童クラブ(学童保育)の整備、保育人材の確保に取り組むとともに、利用環境の整備や業務効率化を図るため、保育所、幼稚園、放課後児童クラブ等におけるICTの活用を推進する。また、GIGAスクール運営支援センター整備や、先端的教育用ソフトウェア(EdTech)の活用普及などGIGAスクール構想の一層の推進等により、教育のICT環境の整備等に取り組むとともに、新しい学びに対応した学校施設の整備を推進する。

結婚・妊娠・出産を支援するため、不妊治療の保険適用の円滑な実施に向けた必要な支援や産後ケア事業等に取り組むとともに、妊娠期から子育て期に至るまでの切れ目ない支援を行うため、母子保健と児童福祉の一体的相談支援機関の整備等を推進する。

子育て世帯にとって大きな負担となっている教育費や住居費への支援を強化するため、新型コロナウイルス感染症の影響により厳しい状況にある学生等の学びを継続するための緊急給付金を支給するとともに、子育て世帯・若者夫婦の省エネ住宅の取得の支援や、親世帯等との近居による子育て支援、子育て世帯等の入居を拒まないものとして登録された住宅における家賃低廉化等の支援を行う。
子供が安全かつ安心に育ち、健康で文化的な生活ができる環境を整備するため、通学路における交通安全の確保に係る対策、文化芸術の鑑賞・体験への支援などを講じる。児童虐待等の防止を図るとともに、貧困の状況にある子供、望まない孤独・孤立の問題を抱える子供、ひとり親家庭、医療的ケア児を含む障害児、児童養護施設等退所者など、様々な家庭・子供への支援に取り組む。

  • 子育て世帯に対する給付(仮称)【再掲】
  • 保育の受け皿整備(保育所等整備事業)(厚生労働省)
  • 放課後児童クラブの整備(子ども・子育て支援整備交付金)(内閣府)
  • 認定こども園、私立幼稚園、学校施設の施設整備(文部科学省)
  • 保育士修学資金貸付等事業(厚生労働省)【再掲】
  • 保育所、幼稚園、放課後児童クラブ等におけるICT化の推進(厚生労働省、文部科学省、内閣府)
  • 個別最適な学びを実現するためのGIGAスクール構想の推進(文部科学省)【再掲】
  • 学びと社会の連携促進事業(経済産業省)
  • 不妊治療の保険適用の円滑な実施に向けた対応(厚生労働省)
  • 産後ケア施設の整備(厚生労働省)
  • 新たな子育て家庭支援の基盤を早急に整備していくための支援(厚生労働省)
  • 地域の実情・課題に応じた少子化対策の推進(地域少子化対策重点推進交付金)(内閣府)
  • 新型コロナの影響により厳しい状況にある学生等の学びを継続するための緊急給付金(文部科学省)【再掲】
  • 奨学金業務システムの刷新等(文部科学省)
  • 住宅ローン減税等の住宅投資促進策(国土交通省)
  • こどもみらい住宅支援事業(国土交通省)
  • UR賃貸住宅を活用した近居による子育て支援(国土交通省)
  • セーフティーネット登録住宅を活用した子育て支援(国土交通省)
  • 合同点検を踏まえた通学路における交通安全の確保に係る対策(警察庁、国土交通省)
  • 子供の文化芸術の鑑賞体験等総合パッケージ(文部科学省)【再掲】
  • 虐待防止のための情報共有システム構築事業(厚生労働省)
  • 特定免許状失効者管理システムの構築等(デジタル庁)
  • 地域女性活躍推進交付金(内閣府)【再掲】
  • 配偶者暴力・性暴力被害者等への相談・支援体制の強化(内閣府)【再掲】
  • 子供の未来応援地域ネットワーク形成支援事業(地域子供の未来応援交付金)(内閣府)【再掲】
  • 孤独・孤立対策の強化(孤独・孤立対策連携プラットフォーム(仮称)設立準備等)(内閣官房)【再掲】
  • ひとり親家庭等に対するワンストップ相談体制強化、子どもの食事等支援(厚生労働省)
  • 医療的ケア児支援センター開設支援事業(厚生労働省)

参照

コロナ克服・新時代開拓のための経済対策(令和3年11月19日閣議決定)第1&2章

-エビデンス全般

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