人を対象とする生命科学・医学系研究については、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(令和3年文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第1号。以下「指針」という。)により、その適正な実施を図ってきたところです。
今般、個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律(令和2年法律第44号)及びデジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律(令和3年法律第37号)の一部の施行に伴い、これらの法律の規定による改正後の個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号。以下「改正後個情法」という。)の規定を踏まえ、指針の見直しを行い、令和4年3月10日付けで「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針の一部を改正する件」(令和4年文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第1号。以下「改正指針」という。)を告示しましたので、下記のとおり通知します。なお、改正の趣旨は下記1、主な改正点は下記2のとおりです。
つきましては、貴機関、貴団体又は管下において研究に携わる者全てに改正指針が遵守されるよう、周知徹底をお願いします。また、各研究機関においては改正指針に基づき研究が適正に行われるよう、必要な組織体制や内規の整備等の対応をお願いします。
なお、改正指針に関して、下記3のとおりガイダンスを改訂するとともに、下記4のとおり指針運用窓口を設けていますので、改正指針の円滑な運用に向け、併せて関係者に対して周知徹底をお願いします。
記
Table of Contents
1.改正の趣旨について
改正後個情法を踏まえ、令和3年5月より、文部科学省、厚生労働省及び経済産業省の3省による「生命科学・医学系研究等における個人情報の取扱い等に関する合同会議」において、指針の見直しについて検討を行ってきた。今般、令和3年に実施したパブリック・コメントにおける意見や、同合同会議における議論を踏まえ、改正指針を令和4年3月10日に告示するとともに、同年4月1日から施行することとした。
2.主な改正点について
(1)用語の定義の見直し
生存する個人に関する情報についての用語は、改正後個情法における用語に合わせた。また、死者の情報に関する用語の定義は置かず、死者に係る情報を取り扱う研究について指針を準用する旨の規定を置いた。
「匿名化」の用語は用いないこととし、匿名化されている情報については、改正後個情法上の該当する各用語を当てた。
(2)指針の適用範囲の見直し
改正後個情法において仮名加工情報が新設されたこと等に伴い、「個人情報でない仮名加工情報」に相当する情報等についても、新たに指針の対象とすることとした。
(3)個人情報の管理主体の規定
個人情報の管理主体は、研究機関の長又は既存試料・情報のみを行う者が所属する機関の長であることを明示 した。
(4)インフォームド・コンセント等 の手続の見直し
改正後個情法における学術例外規定の精緻化により、 改正前の 指針で規定されるインフォームド・コンセント (以下「IC」という。 等の手続(試料・情報の取得・利用・提供)について、例外 要件 ごとに規定する必要 等 が生じたため、見直しを行った。
① 新たに試料・情報を取得して研究を実施する場合(指針第8の1(1))
- 侵襲及び介入を行わず、 試料を用いない研究 については、 一定の要件を満たす場合に 、IC手続 等 を適切な形で簡略化することができるものと した 。
- 改正後個情法第27 条の規定も踏まえ、 新たに取得した情報(要配慮個人情報を除く。)を共同研究機関に提供する場合のIC手続 等 について は、既存の情報(要配慮個人情報を除く。)を他の研究機関に提供する場合のIC手続 等 を準用すること と した 。
②自機関で保有する既存試料・情報を用いて研究を実施する場合(指針第8の1(2))
- IC手続等 を行うことなく利用できる既存試料・情報は、 既に特定の個人を識別できない状態に管理されている試料(当該試料から個人情報が取得されない場合に限る。)、既存の仮名加工情報、匿名加工情報 及び 個人関連情報とした。
- 社会的に重要性の高い研究に既存試料・情報を用いる場合及び試料を用いない場合について、 一定の要件を満たした 場合 に は 適切な同意又は オプトアウトが許容されること とし た。
③他の研究機関に既存試料・情報を提供する場合(指針第8の1(3)・(4))
- 提供される既存試料・情報の種類(試料又は要配慮個人情報を提供する場合か否か)によって場合分けをし 、試料及び要配慮個人情報を提供しようとする場合は原則ICを取得することとし、要配慮個人情報以外の情報を提供しようとする場合は原則適切な同意を取得することとした。
- IC手続 等 を行うことなく提供することができる既存試料・情報は、 既に特定の個人を識別できない状態に管理されている試料(当該試料から個人情報が取得されない場合に限る。)、個人関連情報( 一定の場合 に限る。) 及び 匿名加工情報 (IC取得が困難な場合に限る。) と した 。
- 一定の要件を満たす場合には IC手続 等 を簡略化できるものとし 、 簡略化の 要件を満たさない場合であっても、改正後個情法第 27 条第1項に定める例外要件に該当する場合は、オプトアウトによる提供が許容されるものと した 。
- 改正後個情法の内容も踏まえ、 オプトアウトにより既存試料・情報を提供する際に研究対象者等へ通知し、又は 研究対象者等が容易に知り得る状態に置くべき 事項に ついて 見直した 。
④外国にある者へ試料・情報を提供する場合の取扱い(指針第8の1(6))
- 外国にある第三者に提供する場合には、引き続き、改正前の 指針の規定を維持し、原則として、適切な同意を求めることとし た。
- 改正後個情法第 28 条第1項に定める例外要件である改正後個情法第 27 条第1項各号に該当する場合であっても、原則として (ア)研究対象者等の適切な 同意を得た場合、(イ)個人情報 保護 委員会が定める基準に適合する体制を整備している者に対する提供である場合又は(ウ)我が国と同等の水準国にある者に対する提供である場合に限り提供できるものとした。
- 改正後個情法第27 条第1項各号に該当する場合であっても(ア)の場合には、改正後個情法第 28 条第2項と同様、同意取得に当たっては、外国の名称等の情報を 研究対象者等 に提供する必要があるものとした。
- 改正後個情法第27 条第1項各号に該当する場合であっても(イ)の場合には、改正後個情法第 28 条第3項と同様、相当措置の継続的な実施を確保するために必要な措置を講ずるとともに、 研究対象者等 の求めに応じて当該必要な措置に関する情報を本人に提供する必要があるものとした。
- 改正後個情法第27 条第1項各号に該当 し、 (イ 又は (ウ)に該当しない場合で、かつ、同意の取得が困難な とき は、倫理審査委員会の意見を聴いた上で、オプトアウトが 許容 されるものとする 。
⑤その他
- 第三者提供の際の個人関連情報の取扱いについては、 改正後 個情法上の取扱いに準じた取扱いとした。また、提供を受けた 研究者等 は、研究を実施するに当たっては、自機関 で 保有 する 既存情報を用いて研究を実施しようとする場合の規定に準じたIC 手続 等 を行うものとした。
(5)改正前の指針第9章 (個人情報等及び匿名加工情報)の見直し
第9章において は、 個人情報等について改正 後 個情法を遵守し、 改正後 個情法の対象でない試料及び死者の試料・情報についても、個人識別性、死者の尊厳及び遺族等の感情に鑑み、改正後個情法や条例等 に準じた措置を講ずるよう努めることとした 。 また、 改正 後 個情法 では学術研究機関等に対しても法の 規律 が 適用 され ることに 伴い 、 改正前の 指針第 18 の2、第 19 、第 20 及び第 21 を 削除した。
(6)経過措置
改正前の指針及びそれ以前の指針 (廃止前の疫学研究に関する倫理指針、臨床研究に関する倫理指針、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針又は人を対象とする医学系研究に関する倫理指針) の規定により実施中の研究については、 個人情報保護関連法令及びガイドラインの規定が遵守される場合に限り、 なお従前の例によることができる。
3.ガイダンスの改訂について
改正指針の各規定の解釈や具体的な手続の留意点等については、今後、ガイダンスを改訂し、3省のホームページに掲載するので、必ず参照願いたい。
4.指針運用窓口について
改正指針の運用に関する質問等がある場合、下に掲げる3省の指針運用窓口のいずれにおいても受け付ける。
なお、医学的又は技術的に専門的な事項にわたる内容については、厚生労働省において検討し、必要に応じ専門家の意見も踏まえて対応する。
【指針運用窓口】
指針の本文など、本件に関する一連の資料を以下の3省のホームページに掲載しておりますので、御参照ください。
文部科学省研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室
ホームページ:文部科学省ライフサイエンスの広場 生命倫理・安全に対する取組
https://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics/seimeikagaku_igaku.html
厚生労働省大臣官房厚生科学課、医政局研究開発振興課
ホームページ:研究に関する指針について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/kenkyujigyou/i-kenkyu/index.html
経済産業省商務・サービスグループ ヘルスケア 産業課
ホームページ:個人遺伝情報ガイドラインと生命倫理
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/bio/Seimeirinnri/index.html