ビジネス全般

薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会とりまとめ

令和3年6月30 日

1.はじめに

  • 薬学教育6年制課程が平成18 年度に開始され、臨床実践能力向上を目指し薬剤師の養成を実施している。また、医師・歯科医師・薬剤師統計における届出薬剤師は31.1 万人であり、様々な従事先※で活躍している。なお、6年制課程により薬剤師国家試験に合格した者は、平成24 年以降、令和3年までに10.4万人に達している。
  • これまで、医療の高度化・複雑化や少子高齢社会の進展等の状況の変化により、「患者のための薬局ビジョン」における、かかりつけ薬剤師・薬局の推進、医療機関におけるチーム医療の進展、地域包括ケアシステムの一員としての薬剤師の対応など、薬剤師に求められる役割や業務内容が変化している。
  • 薬剤師・薬局に関しては、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会において、薬剤師・薬局のあり方と医薬分業のあり方について議論し、平成30 年12 月に「薬機法等制度改正に関するとりまとめ」、「薬剤師が本来の役割を果たし地域の患者を支援するための医薬分業の今後のあり方について(医薬分業に関するとりまとめ)」がまとめられ、これを受け、令和元年の薬機法改正(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第63 号))において薬剤師・薬局のあり方の見直しを行った。
  • 薬剤師の養成に関しては、6年制になって以降、厚生労働科学研究費等で需給推計が行われており、平成30 年度厚生労働行政推進調査事業費補助金「薬剤師の需給動向の予測および薬剤師の専門性確保に必要な研修内容等に関する研究」では、地域での偏在も考えられるため、今後の人口減少社会における薬剤師の需要の変化を踏まえつつ、詳細な需給動向も今後検討すべきとされた。また、社会保障審議会医療部会においても、医療関係職種の需給調査は重要であり、薬剤師についても需給調査をすべきとの指摘があった。これらを受け、厚生労働省において令和2年度に薬剤師の需給動向把握事業が実施された。
  • 以上のような状況を踏まえ、本検討会では今後の薬剤師に求めるべき役割、今後の薬剤師の養成や資質向上等の課題について、需給推計の結果を踏まえつつ議論を行い、今後、厚生 労 働 省・文 部 科 学 省 、大学等 において対応・検討が必要と考えられる事項等をとりまとめた。

2.今後の薬剤師に求めるべき役割 及びそれを踏まえた需給推計

(1)今後の薬剤師が目指す姿

  • 薬剤師には、調剤や医薬品供給等を通じて、公衆衛生の向上・増進に寄与し、国民の健康な生活を確保する役割が求められている(薬剤師法第1条)。また、薬剤師は、 1.で述べたように 薬局や医療機関といった 調剤 に関わる分野だけではなく、 製薬企業( 医薬品 製造 販売業、 製造業)、医薬品販売業 、衛生 行政機関、 保健衛生施設、 大学等の様々な分野で活躍している。
  • これまでの薬剤師に関する指摘事項や今後の医療の進展や社会ニーズの変化 等 に対応するため、 薬剤師の役割は変化 が求められて おり、既に個々の薬剤師が取り組んでいる事項もあるが、従事先ごとの今後の薬剤師が目指すべき姿をまとめると以下のとおりである。

①薬局

  • 薬局における薬剤師の業務は、 「患者のための薬局ビジョン」 や 法改正 に基づき、医療機関等との連携、在宅医療への 対応 など 、かかりつけ薬剤師・薬局の 普及・ 機能充実等 の取組が進みつつあるものの、地域において薬剤師が役割を十分に発揮するためには 、 薬剤の調製などの対物業務を医療安全確保のもと適切 か つ効率的に実施することが重要であり、その前提のもと、 引き続き、 対物中心の業務から、患者・住民との関わりの度合いの高い対人業務へとシフト する ことにより、 薬物療法 や健康維持・増進 の支援 に一層関わり、患者・住民を支え ていくことが求められる。 具体的には以下のとおりである。
  • 薬機 法改正により、調剤後の継続的な服薬状況の把握・指導が 義務づけられたことも、 服用期間中の薬物療法に 積極的に関わっていく こと を求めたものであり、患者に寄り添った対応が必要である 。また、本年8月からは認定薬局 (地域連携薬局、専門医療機関連携薬局 制度が施行され、医療機関等と連携しながら薬剤師の専門性を発揮していくことが今後期待される。
  • 地域包括ケアシステムの中で役割を果たすためには、各地域の実情に応じ、他の職種や医療機関等と連携 し、 患者に対して一元的・継続的な薬物療法を提供することが重要であり、 そのような取組を通じて、 ポリファーマシーや重複投薬 、 相互作用の防 止、残薬 解消 を含む適切な薬 学 的管理を行っていく必要がある。 そのためには、医療機関 等 の業務、 薬剤師や 他の職種が担う役割についても理解しておくことが必要となる。特に、医療機関との連携に関しては、 医療現場 の業務 を理解 したうえで、患者の治療状況も把握・理解しておくことが 必要 であり、 医療機関における会議・研修等に参加する ことなどの 連携を充実させるための取組が効果的である。 また、介護施設や居宅における在宅医療へ関わるために、介護関係施設等との会議・研修等への参加も同様である。
  • なお、医療機関の敷地内に薬局が開設されることがあるが、 その際、 単に同敷地内の医療機関とだけ連携 する状況が見られる。また、医療機関の近くにあるいわゆる門前薬局において も 、 当該医療機関 から交付された 処方箋 の応需に特化する 場合 がある。このように特定の 医療機関に依存する 薬局の薬剤師は、地域の患者や住民との関わ り の高いサービスを提供 しているとはみなされず 、患者本位の医薬分業とはならない 。 地域の医療機関、薬局等と連携しつつ、地域包括ケアシステムの一員として患者・住民を支えていく役割を 果た す必要がある 。
  • 服薬 状 況の把握・ 指導、医療・介護関係者との連携等の業務は、 今後 ICTの活用等により、医療の質を 向上させ つつ、 より 効率的に 行っていく ことが必要 となる 。 今後は データヘルス集中改革プランの進展に伴う 電子処方箋やオンライン服薬指導等の取組 のほか、電子版お薬手帳の活用 により、薬剤師が扱う患者情報を含め業務が大きく変わっていくことが予想される。このような動きも踏まえ、 ICT を活用した薬剤師の業務を積極的に考えていくことが必要 となる 。
  • 対人業務 を 充実 する 一方で、調剤業務の機械化、薬剤師以外の職員による対応等 により 対物業務の効率化を進める とともに、 医療安全の確保に必要な管理体制等の検討も必要 となる 。
  • 薬局は民間による運営が大半を占めるが、医療法にお いて 医療提供施設 とされ 、薬機法 において 医薬品を安定的に供給することが求められている、公的役割を担っている施設であ る。 そのため 、 その業務を 調剤に限 ることは あるべき姿ではなく 、医薬品の供給拠点としての役割を果たしていく必要がある。( 薬機 法改正によ り 薬局の定義 が 改正 され、薬局は調剤だけではなく情報提供や薬学的知見に基づく指導の業務を行う場所であるとともに、医薬品の販売業の業 務を行う場所であることとされている。
  • 処方箋枚数は 、高齢者人口の増加等により 当面 は 増加するが、将来的には減少すると予測されて いることから 、これまでのような医薬分業の進展に伴う処方箋の増加に 対応 した ビジネスモデル は 成り立たなくなり、 薬局の本来の役割 を 発揮 するためには 、処方箋を持たなくても住民がアクセスできるような業務を行うべき である 。調剤だけが薬局の役割であるかのような「調剤薬局」という名称が用いられる状況は変えていくべきである。
  • 薬局では住民の生活を支えていく取組も必要となる。健康に関する関心・正しい理解、予防・健康づくり(セルフケア)を推進し、症状に応じて適切な市販薬を使用するセルフメディケーションを支援するため、要指導医薬品・一般用医薬品 、薬局製剤、衛生材料、介護用品等 の提供や必要な情報提供・相談対応等の健康サポート機能の取組が必要 である 。(例えば、薬剤師による薬の相談会の開催や禁煙相談の実施、健診の受診勧奨や認知症早期発見につなげる取組、医師や保健師と連携した糖尿病予防教室や管理栄養士と連携した栄養相談会の開催など)
  • 災害 時の 医薬品供給や 衛生管理( 避難所等の消毒、 感染症対策 等の 対応 等)や学校 等での 公衆衛生 (環境衛生 、薬物乱用対策 等) 、感染症防止対策等 への対応 も求められる。今は 新型 コロナ ウイルス 感染症 対応、特にワクチン の一連の 接種体制への積極的な関与も重要な役割 である 。 (医療機関の薬剤師も同様)
  • また、緊急避妊薬の取扱いにあたっては、 現在は オンライン診療に伴う緊急避妊薬の調剤の対応に関する研修が進められているが、 このような 研修 の推進も含 む取組により 、 薬剤師として女性の健康に関する相談等の適切な対応もできるようにすべき である 。
  • 上記の ような 各種 取組の推進のためには、免許取得後に 薬物療法をとりまく最新の知見 を幅広く 習得 するなど 生涯研修 による質の向上 が必要であるとともに 、がんなどの疾患領域に応じた専門性も求められる。
  • 薬局は小規模で薬剤師が少人数の施設が多いが、今後 、薬局に求められる役割・ 業務の充実を考え ると 、 小規模の薬局では 単独で全て の役割を担う ことが困難になることも考えられる 。 そのため、地域 全体で求められる薬局・薬剤師サービスを提供する観点から、 小規模薬局それぞれが対応可能な役割を踏まえつつ、 薬局 間 で 業務を補完するような 連携 について も考えていく必要がある。

②医療機関

  • チーム医療の推進により、 多職種と連携しながら 病棟の薬剤業務の充実が求められている。 病床機能別に病棟業務の時間を見ると、 急性期の 病床において 病棟業務 の時間が多く、 病院 機能 によって 病棟業務の 実施状況に差があり 、 回復期、慢性期などの病床 で 更 なる充実 が期待される。
  • 「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」(平成 22年 4 月 30 日厚生労働省医政局長通知)において薬剤師を積極的に活用することが可能な業務や、 「 医師の働き方改革を進めるためのタスクシフト/シェアの推進に関する検討会 」 (令和2年 12 月 23 日 議論の整理) において示された取組を含め、医薬品の専門家である薬剤師が薬物療法に積極的に関わっていくことが必要である。
  • 病棟業務のほか、 薬剤師 による 外来 支援業務 、治験・臨床研究、手術室 、ICU 、救命救急 等の 業務への 取組 も必要 である 。
  • 入退院時 等 における シームレスな薬学的管理を実践するため 、 地域 の 薬局等の関連機関 や機能の異なる医療機関間 との 連携に係る 業務にも今後関与していく 必要 がある 。 薬局と医療機関の連携のためには、医療機関の薬剤師として 在宅医療をはじめとする 薬局 の業務についても理解しておくことが必要 であり、薬局の薬剤師との会議や研修等により連携を充実させる取組が効果的である 。
  • また、上記の連携等の業務は、薬局の場合と同様に、電子処方箋等の取組や電子版お薬手帳の活用により、業務が大きく変わっていくことが予想されるため、 ICT を活用した薬剤師の業務を積極的に考えることが必要となる。
  • 医療機関における医療安全の取組として、医療安全管理部門に薬剤師 を配置 すること等により、院内における医薬品安全管理の組織体制を構築するとともに、他職種へ の 研修等を通して、必要となる情報提供や安全確保を目的とした取組が求められる。
  • 薬機法改正により、先駆け審査指定制度や条件付き早期承認制度等 が 法制化 され 、優れた医薬品が早期に実用化されることになるが、 医薬品リスク管理計画( RMP 等を活用して副作用のモニタリングを行うことにより、医薬品の適正使用により貢献していくことが求められる。(薬局 の薬剤師 も同様)
  • このような 業務の充実の一方で、 薬局の場合と同様に、 対物 業務 の 効率化も 考える必要 がある 。 特に、 中小規模の医療機関では 病棟 業務に係る時間が短 い傾向があり、十分な病棟業務や院内での活動の確保・充実のために、 業務効率化が求められる。
  • 上記のような 各種 取組の推進のためには、 免許取得後に 薬物療法をとりまく最新の知見 を幅広く 習得 するなど 生涯研修 による質の向上が必要であるとともに 、がんなどの疾患領域に応じた専門性も求められる。

③医薬品製造販売業・製造業

  • 研究開発 については、 抗体医薬品 などの バイオ医薬品や 遺伝子治療、 細胞治療、核酸医薬 といった 新たな作用機序や構造特性 (新規モダリティ を有する 医薬品 の 開発 、 今後の AI やビッグデータ等の利活用による 研究開発の進展 を背景に 、 これらに対応する 研究能力の強化 に加え、 新しい知識の拡充が求められている。
  • 医薬品の安定供給のためには医薬品の品質管理も重要 である。 薬剤師としては、薬理学的、製剤学的な知識のほか、薬機法 等 の法令の知識を有しており、医薬品の管理に責任を持って対応することが求められる。
  • 製薬企業では開発、薬事、製造・品質管理、市販後対応など様々な分野の業務があるが、 総括製造販売責任者、製造所の管理者、その他薬機法における責任を 有する役職(品質 保証 責任者、安全管理責任者 等 )での 薬剤師の 活躍 が期待 されており、 薬機 法改正による法令遵守体制の強化によりこれらの役職の責任・役割は 高まる 。

④医薬品販売業

  • 薬局における業務と同様に、医薬品販売業 (店舗販売業、配置販売業 における薬剤師は、 健康に関する関心・正しい理解、予防・健康づくり(セルフケア)を推進し、症状に応じて適切な市販薬を使用するセルフメディケーションを支援するため、要指導医薬品・一般用医薬品の提供や必要な情報提供・相談対応等の健康サポート機能 へ の取組が必要 である 。
  • 卸売販売業の薬剤師は、医薬品の流通に関わる薬剤師として、品質を維持しながら医薬品情報とともに、薬局・医療機関等に必要な医薬品を迅速に提供する役割が引き続き必要 である 。

⑤大学

  • 薬学部・薬科大学数が増加(平成 14 年 度 は 46 大学、令和2年 度 は 75 大学で約 1.6 倍に増加)しており、今後もこの状況が続く又は維持されるのであれば、将来的な薬学教育人材の育成・確保が更に必要な状況となっている。
  • 医療人である薬剤師の養成のためには、教員 は 最新の臨床現場を理解した上で対応することが求められる。そのためには、臨床 での 業務にも携わっている 教員や臨床薬学など実践的な 薬剤師教育に関わる教員を増やしていくことも 必要である。 また、単に臨床での薬剤師業務の職業教育を行うのではなく、知識と理論に基づいた判断を行う臨床薬学の教育が行われる必要がある。そのためには、 基礎と臨床の双方の領域が連携し 、基礎で学ぶ知識・理論と臨床現場での 実践的な 業務との関 わ りを踏まえた 教育 を行っていく ことが求められる。
  • 薬学教育では基礎、臨床ともに研究能力の 向上は不可欠であり、最近は特にその 充実強化が求められ る状況になっていることを踏まえ、 研究能力 を持った薬剤師を育成できる教員が必要である。
  • また、薬剤師の 教育は、大学卒業・免許取得で完結するもの ではなく、卒後の生涯研修 が不可欠である。それを担う人材育成のため、大学教員のみが薬学教育 や卒後の研修 を担うということではなく、大学教員以外に職域に限らず薬剤師免許を持つ者も後進の育成 に参画できる 薬学教育の環境を作っていくことが必要である。

⑥衛生行政機関・保健衛生施設

  • 国や地方自治体において、 薬事・感染症・食品・環境・薬物対策など への対応の重要性が高まっており 、 医療・介護分野への対応も含め、 薬学部の知識を活かした 行政官としての 更なる 活躍 が期待される。
  • 特に 今回の新型コロナウイルス感染症 に関しては 、 都道府県庁や保健所等において 、 感染症対策の最前線で 、消毒薬 や マスク等の 衛生 用品 の供給における対応、 感染防止対策や感染者への対応、ワクチン接種体制の構築など、薬剤師も他の職種と同様に日々取り組んでいる。このような危機管理上の対応も薬剤師として専門的知見に基づき 対応すべき である 。

(2)需給推計

  • 今回は、令和 2 年から令和 27 年における薬剤師の需給推計を行った。需要推計にあたり、薬剤師の従事先の多くを占める薬局と医療機関については、現在と 同程度の業務を行った場合と、上記(1)のような今後 目指すべき姿に基づき、業務が充実する場合を仮定 して推計した。また、供給推計は、 毎年 新たな薬剤師が同程度輩出される場合と、今後の大学進学者数減少に伴い養成数が一定割合減少すると仮定して推計した。

(需要推計)

  • 需要は 、院外処方箋の発行の伸びや高齢化の進展により、概ね今後 10 年間は増加 し 、それ以降は人口 減少による影響を受ける 。 これに加え、 上記(1)の 業務変化(業務の充実と 効率 化)も需要に大きな影響を与える 要因 となる 。
  • 今回 試算した需要 の推計は、 投薬対象者数、 処方箋枚数、病床数などの推計をもとに機械的に算出したもの である 。 今後の 薬剤師の 業務変化によって変わりうるものであり、 今後 推計どおりの推移になるとは限らず、引き続き業務実態の変化をもとに推計 すること が必要である 。
  • (1)の今後の薬剤師が目指す姿のように進むと薬剤師の需要は増 加 す ることになるが、 今後の薬剤師業務が現状と変化がなく、調剤業務に比重を置いた状況が維持された場合、需要は増えず、 更 には機械化など対物業務の効率化により、全体として需要が減少することも考えられる。
  • 今後の薬剤師 需要 は、人口減少や 高齢化の進行状況等により、地域間(都道府県、二次医療圏)で大きく異なることが予想される。地域の医薬品提供体制を維持するための薬剤師確保の取組も考える ことが 必要 である 。

(供給推計)

  • 現在も新設校が増えており、全体の入学定員も増加している。 供給は 、養成数が変わらなければ、毎年一定数 の新たな薬剤師が 増加していく 可能性がある 。
  • 薬剤師の養成を考える際には、入学者が卒業するのは 6 年後であり、その間は一定数の学生が養成され続けるため、養成数の変化の影響は、長期的な検討が必要となる。

(需給推計)

  • 変動要因を考慮すると、 概ね 今後 10 年間は 、 需要と供給は同程度で推移するが、 将来的には、需要が業務充実により増加すると仮定 し た と しても、供給が需要を上回 り、薬剤師が過剰になる 。 薬剤師業務の充実と資質向上に向けた取組が行われない場合は需要が減少し、供給数との差が一層広がることになると考えられる。
  • 今回の 需給推計 は投薬対象者数、処方箋枚数、病床数などの薬剤師業務に影響を与える要因の推移をもとに仮定条件をおいて推計したものであり 、 現時点 で は地域偏在等により 、特に病院 を中心として 薬剤師 が 充足しておらず、不足感が生じている。 薬局・医療機関で取り組もうとしている業務に応じて薬剤師の必要 数 も変わることに留意が必要 である 。

3.まとめ(提言)

(1)薬剤師の養成等

①養成

  • 6年制が始まる前後に薬学部・薬科大学の新設が相次ぎ、入学定員数は 4年制当時と比較して 大幅に 増加し 平成 14 年 度 は 8,200 人、 令和2年 度 は11,602 人で約 1.4 倍に増加 、現在も大学が新設されている状況に ある。一方で、毎年 入学定員を充足していない大学、入 学 試 験 の実質競争倍率が相当低い大学( 1.0~1.1 倍程度)が存在している。
  • 入学しても、 入学後の進級率/卒業留年率 は 大学によって非常に大きな差があり、 標準修業年限の 6 年間で卒業し、国家試験に合格できる学生は私立大学の場合 6 割に満たない状況であり、学生の質 の維持 に課題がある大学が存在する。 学生の質に影響を与える関連事項として、 入学試験における前述の 実質競争倍率の低さ、受験科目の少なさ(私立大では理科は化学のみ等の1科目でよい大学が大半 である )も考えられる 。
  • 6年制の卒業生の進路は、薬剤師の免許が必須ではない従事先も存在するが、免許の必要性に関わらず、6年制の薬学教育を受けている以上、薬剤師免許 の 取得 を目標と すること は 当然のことである。
  • 薬剤師国家試験では 薬剤師 の免許 を与えるための一定の質を確認しているが 、 上記のような 学生の質の低下により、 薬学教育において 国家試験に合格できるレベルに到達させることを 重視し 、国家試験対策が中心となってしまう 大学も存在するため、薬剤師の養成を考える際には、養成数という量の問題だけではなく、養成する学生の質の問題もあわせて 考える必要がある。
  • なお、6年制の定員は私立大学が多く、学生によっては多額の奨学金の貸与を受ける場合もあり、就職にあたり奨学金の返済 を 考慮していることもあるため、このような状況も後述の薬剤師確保の取組に影響を与えるとの指摘があった。
(入学定員)
  • 今後、人口減少により大学進学者数が減少すると予測される中で、仮に現状の入学定員を維持した場合、次のような課題が生じる。
    • 入学定員を充足していない大学 や 入 学 試 験 の実質競争倍率が 相当 低い大学 が 更 に 増加する 可能性 がある 。
    • 入学 者の 学力の更なる低下 により、 卒業・国家試験合格が困難な学生が 更に 増 加す る可能性 がある 。
    • 将来的に薬剤師が過剰になった場合、薬剤師免許を取得しても、待遇面の問題を含め、十分な就職 先 の確保が困難となり、学生が 薬剤師に魅力を感じなくなる可能性 がある 。 高校生が薬剤師に魅力を感じなくなると、 希望する学生が減少し、 学生の質の確保が更に困難に なり得る
    • 大学の教員についても、大学数や学生 数 が維持されると、今と同程度の教員を確保し続ける必要がある。
  • 大学の設置は大学設置基準を満たすことで許可されるため、 大学の意向により全体の入学定員数が増加している状況であ る。 薬剤師の需給によ り 定員数 を コントロールする仕組みとはなっておらず、既に薬学部・薬科大学が存在している自治体周辺に 更 に 新設 され る一方で 、薬学部・薬科大学が存在しない 県 もあ り、大学が偏在してい る。
  • 周辺地域に 薬学部・薬科大学が 既に あるにも関わらず、新たな大学や学部を新設することは、魅力ある教育カリキュラムとすることや入学試験の試験科目を 充実させること等により、入学する学生の質を周辺の大学 より相当高いレベルとしない限り、上記のような課題が 更 に進 むこと が 懸念される。 現に最近新設された薬学部でも、新設当初から入学定員を満たさない大学が存在する。
  • したがって 、 今 後の人口減少 による影響 や 今回の 需要推計を踏まえ ると 、将来的に薬剤師が過剰 になる と 予想され る状況下では、 薬剤師の業務変化、病院を中心とした薬剤師の不足感、薬局・医療機関で取り組もうとしている業務に応じた薬剤師の必要数の推計等を踏まえた、今回の需給推計の精査を引き続き 行 うことが必要であるが 、 入学定員数の抑制 も含め 教育の質の向上に資する、適正な定員規模のあり方や 仕組み など を早急に 検討 し、対応策を実行 すべき である 。
  • 上記の検討を行う とともに 、 後述の 国や自治体における薬剤師確保の取組を 含め、 薬剤師の 偏在を解消する ための方策を併せて検討する こと が重要となる。 特に、病院薬剤師の対応を考える際には、 地域の実情を踏まえ 、病院の機能・規模やチーム医療の観点から、 病院ごとに必要な薬剤師数 、業務 等の情報 を 把握した上で、 需給推計や 確保対策を考える必要がある。
  • このような課題については、個々の大学だけで 検討する ことは 困難であるため、 薬剤師会や 病院薬剤師会、 国公立 ・ 私立大学 、 国・ 自治体等 の関係 者間 でも検討すべき である 。
  • 薬剤師が過剰になることに対して、国家試験の合格者数を抑制すること による対応 も考えられるが、国家試験に合格できない学生を 更 に 増やすことになり、 薬剤師 を 養成 する 教育機関 としての役割 を考えると 、 国家試験 合格者数の抑制のみ で の対応は 望ましい方向とは言え ず、 慎重に考える必要がある 。
(薬剤師確保)
  • 全国の薬剤師総数に基づき 薬剤師の養成数 を考える とともに 、 薬剤師の従事先には 業態の偏在や 地域偏在があ り 、 偏在を解消するための 薬剤師確保の取組が必要 である 。 特に病院薬剤師の確保は 喫緊の 課題 である 。 医療計画における医療従事者の確保の取組、 地域医療 介護 総合確保基金の活用や自治体の予算に よる 就職説明会への参加、就業支援、復職支援、奨学金の 補助などの取組 のほか 、 実務実習において学生の出身地で実習を受ける ふるさと実習の取組など が 実施されているが 、 取組の実態を調査するとともに、 需要の地域差を踏まえ 、 これらの取組の更なる充実も含め、 地域の実情に応じた 効果的な取組を検討すべき である 。
  • 大学は、大学 が 設置 されている 自治体 及び周辺の自治体等 における薬剤師養成・ 確保についても、 自治体 とも 連携 のうえ 取り組んで いく 必要がある。なお、薬剤師の卒業した大学や出身地については、令和 2 年の医師・歯科医師・薬剤師統計から届出事項としており、 今後は このような情報の分析も可能であり、薬剤師確保のために活用すべきである。
  • 薬剤師の確保だけではなく、 へき地や離島等を含め、 地域で必要な 医薬品の提供 や薬剤師によるサービス提供 ができるよう 、 地域で 考えていく ことも必要で ある 。
  • 今回実施した需給推計は、変動要因について仮定をおいて 機械的に推計 したもの である 。今後も 薬剤師の業務実態を把握するとともに、継続的に需給推計 を行い、地域偏在等 の課題への対応も含めた検討に活用 すべきである 。特に薬局については、医療機関における医療施設調査のよう に 統計法に基づき 業務実態が把握できる調査を行うことについて関係 部署 と調整 するなど、業務実態の効果的な把握方法を検討 すべき である 。

②薬学教育

(カリキュラム)
  • 薬剤師が目指す姿については、薬剤師が 従事先 で意識を持って取り組むほか、教育課程において学生が今 後の 薬剤師に求められることを 能動的に学修できる 力を身につける ようにすることが重要 である 。 今後 、 薬学 教育モデル・コア カリキュラムの見直しを文 部 科 学 省で検討 する際には 、 2.2.(1)の 「 今後の薬剤師が目指す姿 」 を踏まえたカリキュラムとすべき である 。
  • 臨床実践能力を養成するためには、 臨床薬理学に加え、 解剖学 、 生理学、病態学、 病理 学 など臨床に関する内容を 更 に 充実させ るとともに、今後の在宅医療への対応を踏まえると介護分野の内容も必要である。
  • 要指導医薬品・一般用医薬品、薬局製剤、衛生材料、介護用品等の提供や必要な情報提供・相談対応等の健康サポート機能 へ の取組を適切に行えるよう、これらの適正使用の推進とともに、地域住民の健康増進を進めるための取組 に関する内容 を 更 に充実させるべきである。
  • 今般の新型コロナウイルス感染症対応 では 、感染予防対策を含め薬剤師も様々な業務に関わっているが、このような感染症対応 が専門的知見をもとに迅速かつ適切に実施できるよう、新興・再興感染症などの感染症の対応や治療薬・ワクチンに係る内容を 更 に充実させるべきである。
  • 臨床現場において、多職種連携、患者との対話を通じた薬学的知見に基づく指導を適切に行うためには、コミュニケーション能力を身につけることも必要であり、既にカリキュラムでは薬剤師として求められる基本的な資質としてコミュニケーション能力が示されているが、今後の薬剤師に求められる業務を踏まえると、このような内容を更に充実させるべきである。
  • 実務実習については、現在の改訂モデル・コアカリキュラムで参加・体験型の実習を充実させており、病院と薬局が連携して代表的な8疾患を中心に広く疾患 を学んで いる。実務実習に関し ては、 実習 内容 と質 の充実 (多職種連携を学ぶ取組、地方に所在する施設や 機能・ 規模が異なる施設での実施など) や実施期間 (全体の実習期間、病院と薬局のそれぞれの実施期間などに関する指摘があった 。 今後の実務実習に関しても、モデル・コアカリキュラムの見直しの中で、 現在の実務実習の実施状況の検証を行いながら、 医学教育における臨床実習や 諸外国における 取組なども参考にしつつ、 臨床 での実習 の 充実に向けて 検討すべき である 。
  • 薬学 に関する学部又は学科 の大学設置基準では 、 (医学 又は 歯学 に関する学 部のように)附属病院が必須ではなく、「薬学実務実習に必要な施設」を確保 することが求められているが、実務実習以外 でも 、 他 職種の学部 ・大学 との連携を含め、臨床現場の実態が 学習できるようなカリキュラムと すべき である 。 また、 薬科大学のような単科大学は、他の医療系学部 を有する大学との 多職種 連携を 前提としたカリキュラムとすべき である 。
  • コロナ禍の対応においてオンライン授業が進んでいるが、今後も恒常的にデジタル技術を積極的に取り入れるべき である 。多職種連携教育においても他学部 ・大学 と オンラインを活用して対応した 事例もあり、 有効な手段となり得る。
  • 今後の医薬品に関わる科学技術の進展は更に加速することが予想され、それらの進展に対応するためにも、研究能力を持った薬剤師の 育成 が重要である。このため、現状の卒業研究の充実強化が必須であり、卒業後の進路にかかわらず、全ての学生が問題解決能力を持った対応を可能とするためのカリキュラムが必要である。
  • 研究 開発 に関しては、これまでの 基礎科学 を中心として様々な分野が関わっており、必ずしも薬学部でなくても研究が進められているが、薬学という学問と臨床 に係る 教育を受けている薬剤師としては、引き続き 研究開発 に関わっていくことが日本の創薬力強化にもつながることが期待される。
  • 研究能力 を 育成 するとともに、創薬のための人材 も 養成するための カリキュラムと すべき である 。 特に 抗体医薬品 、 遺伝子治療、細胞治療 、ゲノム医療 といった 、 バイオ医薬品や 新規 作用 機序/構造特性 (新規モダリティ を有する 医薬品 への対応が今後重要となる。 シーズの探索等、医薬品 研究 開発の初期段階を含め、学生が広い視野で医薬品をとらえられるような教育の充実が期待される。
  • また、 政府における 健康 ・ 医療 ・介護に係る データ 利活用 基盤 の整備に向けた取組など、医療分野のデジタル トランス フォーメーションの進展を考えると、 AI やビッグデータ等の利活用による研究開発にも対応 できるよう、データサイエンスも薬学教育には 必要となる 。また、統計学的手法も必要となるため、生物統計や薬剤疫学 分野の 研究 の推進も取り組むべき である 。
  • 薬学教育が6年制に移行し、大学院が4年の博士課程になってから、大学院に進学する学生が大きく減少している。今後、大学院の充実と定員の確保が、教員確保の観点からも重要な課題であ り、特に臨床 に係る知識・ 経験を有する 教員 の 育成に向け て、 臨床薬学 教育・研究の場の確保も含め 、長期的な視野で の 取組 が 必要であ る。 また、 博士号をもつことの重要性について学生の認知を高めるように努めるとともに、薬剤師として働きながら博士号を取得すること を 行いやす く するための方策を立てる必要がある。大学だけでなく、医療機関や薬局とも連携して、社会人入学を支援するシステムを構築することが望まれる。
(教員)
  • カリキュラムを充実させたとしても、大学の取組が適切に実施されないとカリキュラムで求めている 学生を育成することはできないため、薬学をとりまく最新の状況も理解しながら教育ができるよう、 教員の質を向上させ、 カリキュラム を踏まえた 教育に対応できる 教員 が養成されることが 重要である 。国家試験対策に偏重 する内容であれば、 カリキュラムで求めている教育とはいえない 。
  • 大学設置基準で求めている 「 薬剤師としての実務の経験を有する専任教員 」については「おおむね 5 年以上の薬剤師としての経験を有する者」とされているが、 最近の薬学教育に求められる状況を考慮すると、過去の臨床経験 では十分ではないこと が想定されるため、 医療現場と交流すること等により、最新の 臨床現場 を理解することも 重要 である。それ以外の教員も薬学教育に関わるのであれば 同様に 薬剤師の臨床現場の理解が必要である。また、 臨床現場 を理解した教員の確保については、専任教員以外でも、薬局・医療機関で勤務している薬剤師 、医師等 の協力により講義を行うなどの対応 を体系的に進める べきである。
  • また、上記のような臨床現場の理解とともに、 研究能力を持つ学生 を育成できる よう、 教員 自らも研究能力を有することも併せて必要である 。
(卒業までの対応)
  • 国家試験は 薬剤師として有するべき 知識 ・技能・態度等 を 確認し ており 、それにより 質 の維持は担保されているが、 進級率・ 合格率(特に 標準 修業 年限 である 6 年間 での合格率 が低い大学 があること は 、教育機関として 改善すべき 課題 である 。
  • 文部科学省において平成 26 年 11 月にとりまとめられた「平成 26 年度質の高い入学者の確保と教育の質の向上に向けてのフォローアップ状況」 で 、入学者の課題や修学状況等について改善を促しており、例えば以下のような大学側の課題に関する 指摘 は、本検討会の議論でも同様の内容が繰り返し指摘された。大学側はこのような事実を真摯に受けとめ、 引き続き改善が求められる 。
(フォローアップで指摘されていた事項の例)
    • 18 歳人口が減少する中、入学者の質を下げてでも経営の観点から定員分の学生数を確保しようとする現状があるという指摘もある。このような現状は公教育を行う機関である大学の信頼を損なうものであり、改めなければならない。
    • 各大学においては、国家試験を目指して無事卒業させることに汲々として理念と乖離した教育を行うのではなく、「どのような薬剤師、薬学卒業生 を育成しようとしているのか」について一貫したポリシーを持ち、将来的に社会のニーズがどのように変遷していくのか見極めながら全体的戦略を考えていくことが必要であると考えられる。
  • 大学は、 教育機関としての質を示すために、大学側の都合がいい数字だけではなく、 国家試験の新卒合格率 のほかに 、進級率や標準修業年限内での国家試験合格率など の情報を正しく 公 表 する 必要がある。 薬剤師を希望する 高校生 が誤解しない よう 、 新卒合格率の数値 や全国順位等を 殊 更 に強調するのではなく、 事実に即し た 情報を わかりやすく 適切に公表すべき である 。 併せて、文部科学省が示している様式にしたがっ た 修学状況 の公表は 、 大学のホームページのわかりやすい場所 で行う べき である (新卒合格率を示しているのであれば同じ箇所に掲載する等) 。
  • このような課題は、情報 の 公表だけでは解決にならず、 留年や 卒業延期 が多いこと は 、学生の質の問題 もあり得る 。 入学試験 において 、 単に 定員確保の ため学生を合格させ たり、定員の一部だけ優秀な学生を入学させようとしたりす るのではなく、 入学者受入方針( アドミッションポリシー をあらかじめ受験生 や高等学校の進路指導担当者等 に 適切に 示すとともに、修学状況など を 理解させたうえで 、薬学部で学ぶ意思を確認しておく必要がある 。
  • 薬学部 で の 教育 は、高等教育機関である大学の理系学部として教育と研究は一体不可分であり、 薬剤師として必要な 知識・技能・態度の教育だけでなく 研究能力 も 身につけ させ ること が 強く求められる 。 臨床を前提とした 研究能力を 身に付け るためには、 国家試験対策中心の学習に偏重することなく、6 年間を通して研究のカリキュラムを維持すべき である 。
  • 6 年制 導入における法改正に際し、 附帯決議 で実施すべき と され た 大学の第三者評価 (薬学 教育 評価機構による薬学教育評価) の結果 を 効果的に活用し、 評価結果について、 薬学教育評価機構において 評価する点及び改善すべき点をわかりやすく公表するとともに、 改善すべき点は 大学側で 適切に見直し を行 い、そのフォローアップ結果についても 同様にわかりやすく 公表す べき である 。

③国家試験

  • 国家試験は、 薬剤師資格を有する者として必要とされる倫理観・使命感や基本的な知識等のほか、薬学の全領域に及ぶ一般的な理論や、医療を中心とした実践の場において必要とされる知識・技能・態度等を確認するものである。このため、学術の進歩や医療の変化、薬剤師業務の変化に対応した 出題とすべき であり、 第 101 回国家試験から導入された合格基準の検証を含め、定期的に 合格基準・出題基準の見直し要否の検討を医道審議会で 行うべき である 。 また、薬学教育モデル・コアカリキュラムが改訂された場合には、それに基づき出題基準の対応も検討すべき である 。
  • 現在、特に 6 年次は国家試験の対策中心になっている大学が多いが、国家試験の負担を軽減させるため、 物理・化学・生物などの薬剤師 として不可欠な基礎科目 については 、 4 年次の薬学共用試験の CBT (知識を問う問題)で、国家試験の必須問題レベル の理解度 まで 達成 させ、 代わり に、国家試験時には、基礎知識分野の 試験問題 を 軽減 し た上で 、 医療薬学、臨床薬学など、実務に即した思考力を判定する問題 を 充実 し 、 臨床に関する 問題を中心に学習させることを検討すべき である 。( 平成 28 年の医道審議会薬剤師分科会薬剤師国家試験制度改善検討部会で今後の検討課題とされた事項)
  • その際 、 薬剤師として必要不可欠な資質 確保の前提となるのは基礎科目の「物理・化学・生物」であり、 これら 基礎科目 の 学習 が軽視され てはならない ことに留意が必要 である 。

(2)薬剤師の業務・ 資質向上

①薬局及び医療機関の 薬剤師の業務

  • 現状 を 維持 した業務 では、 薬剤師の取組が患者や国民、医療関係者に認識され ず 、 厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会における 「薬機法等制度改正に関するとりまとめ」 で指摘されているよう な 医薬 分業の意義が 十分に 発揮できない 。 薬剤師が地域包括ケアシステムの中でパートナーとしての意識を持ち、業務や意義を関係者に伝える必要がある。 また、「患者のための薬局ビジョン 」の策定から時間が経過しており、国民が 薬剤師の存在意義を 実感できる薬剤師業務の変化が求められる 。
  • 「患者のための薬局ビジョン」の達成状況等を踏まえたうえで、 薬剤師の業務に関して以下のような検討を行うとともに、今後の薬局の役割や機能も併せて検討することで、地域において薬剤師が住民に果たすべきサービスを考えていくべき である 。 また、薬剤師が 実施したこと が 患者の行動変容 に結びつくこと が重要であり、対人業務 を中心とすること によって得られた患者への成果を把握 ・検証する方法を検討 すべき である 。
(調剤業務)
  • 対人業務の充実と対物業務の効率化のためには、 薬剤師しかできない業務に取り組むべきであり、 それ以外の 業務は機 器 の導入や薬剤師以外の者による対応 等 を 更に進める必要があるが、その際には、 医療安全の確保を前提に見直しを検討することが必要で ある 。 (例 調剤機器の精度 管理などメンテナンス、薬剤師以外 の職員に対する 研修など による 資質の確保、 調剤の内容の多様化 への対応 、多剤 の 適 切な服用のための一包化などの作業を含めた対応)なお、特に 病院 において 薬剤師 が 不足 する中で 、病棟等における業務を充実させるためには 、 薬剤師確保に努めつつ、 対物業務については、 薬剤師以外の人材の活用等を検討 すべきとの意見があった。
  • このような検討は、 以下の ICT 対応を含め、 対物 中心の 業務から対人 中心の 業務へ業務をシフトする上で重要な課題であるとともに、調剤業務自体は薬剤師の独占業務であり、医療安全を確保しつつ、適切に調剤を行うことは業務の根幹であることから、薬剤師に関する事項を広く検討課題としている本検討会で引き続き検討する。
(ICT 対応)
  • 電子処方箋による 処方薬を含む 患者 情報の共有化、薬剤師 業務の質を向上させるため の 医療機関 等 との連携方策に取り組むべきである 。 電子処方箋の仕組みの早期実現、それに伴う患者情報の活用方策、 プロトコールに基づく薬物治療管理(PBPM の推進など、 医療機関等との連携を進めるべき である 。
  • データヘルス集中改革プランの進展に伴う 電子処方箋により処方薬の情報がリアルタイムで把握可能になると 、 要指導医薬品・一般用医薬品の 情報の管理 を含め、 服用薬 を 一元的・継続的 に 把握 する ために お薬手帳の利用方法 を 変 えていく必要がある。 特に電子版お薬手帳 は 電子処方箋 システムとの 連携 により、 服薬状況等の 様々な情報が簡便に搭載することが 可能になることが期待されるため、このような連携が円滑にでき るよう検討を進めるべき である 。 また、このような ICT 化により情報の共有化が実現された時代における、 かかりつけ薬剤師・薬局の 役割 も検討すべき である 。
(調剤以外の業務)
  • 特に薬局は、 要指導医薬品・一般用医薬品 の提供も前提に、 処方箋に 基づかない業務 に取り組 み、薬事衛生全般にわたっての薬剤師職能の発揮が求められる 。( 例: 健康サポート業務、セルフケア を推進する中での セルフメディケーション を支援する 対応、 感染症に関して感染防止対策や治療薬・ワクチンの対応、 公衆衛生の対応、薬物乱用対策への対応、学校 における健康教育など)

②薬剤師の資質向上

(卒後研修)
  • 臨床 実践 能力を担保するためには、免許 を 取得 した だけでは十分 ではない 。薬学教育での実習や学習のみならず、免許取得 直 後の医療機関や薬局での 臨床での 研修 により、薬剤師として様々な施設を経験 し 、医療の実態を知ること が 重要 であり、 薬剤師の養成における資質向上策として、 実習・研修の質の確保を前提とした上で、 卒前 (実務実習 ・卒後で一貫した検討が必要 で ある 。
  • 免許取得直後の 薬剤師 を対象にした 研修 を 実施 している 医療 機関もあるが 、 検討会では 、 このような 研修を 、医師の臨床研修のように 広く 実施することが必要 であ り、早期に検討すべき との多く の 指摘 があった 。 卒後の臨床研修に係る 本年度の 予算や科研費 (厚生労働行政推進調査事業費補助金 をもとに 研修制度の 実現に向けて 、 卒前の実務実習との関係性を含め、研修プログラムや実施体制等の 具体的 な 方法を 今後検討すべき である 。
(生涯研修・ 専門性)
  • 薬剤師をとりまく様々な変化に対応するためには、免許取得後も常に自己研鑽に努めて専門性を高めていく対応が必要となる。 研修に関しては、薬剤師認定制度認証機構 CPC )の認証を受けた研修機関が実施している研修の受講が進んでおり、そのような研修を薬剤師は活用すべき である 。
  • 薬剤師の 専門性の認定が 学会等 で行われている が、 臨床実践能力を 更 に高めるため には、 このような 専門性 を 取得すること も求められる 。 専門性に関しては、第三者による確認など客観的な方策も含め、 認定の質の確保について検討が望まれる 。

③その他

(周知・広報)
  • 薬剤師の業務について 、 国民・患者 の理解も重要 である 。業務を行う上でも、医療・介護関係者に薬剤師の取組について周知が必要であり、 薬剤師や関係団体、国においても広報を進め る べき である 。薬と健康の週間をはじめとして、普及啓発も含め対応すべき である 。
  • 6年制では、臨床 実践能力を有し、高い専門性のほか、責任感や倫理観を持った薬剤師の養成 を行っており 、国民に対してもそのような姿を見せていくことが必要であり、自ら専門家として行動していくことが不可欠 である 。そのような取組を進めることで、国民や、医療従事者から信頼される存在になる。

4.おわりに

  • 本検討会の検討対象となった薬剤師の養成や資質向上等に関する事項は、薬剤師法や薬機法に基づく制度のほか、学校教育法など薬学教育に関する制度、医療法における医療計画や地域医療介護総合確保基金での対応、医療保険制度や介護保険制度における報酬上の措置など関連制度が密接に関係する。そのため、それら関連制度の検討にあたっては、本検討会での議論を踏まえることが期待される。また、今回の需給推計 を含むとりまとめ に関しては、需給 調査をすべきとの指摘があった 社会保障審議会医療部会でも 必要に応じて 報告・議論することが適当と考え る。
  • 薬剤師の養成は、薬学教育( 入学者の質の担保、 カリキュラム、薬学共用試験、実務実習 、教員の養成 等)から国家試験、免許取得後の資質向上等の卒前・卒後の対応を一体的に考えながら議論 のうえ、長期的な視野で取 り 組む ことが必要である。とりまとめは広範な内容となっているが、これらの内容が適切に実施され、薬剤師が今後求められる役割が果たせるよう、薬学教育に関わる大学関係者、関係団体、厚生労働省や文部科学省において連携しながら検討すべきである。

参照

ホーム政策について審議会・研究会等医薬・生活衛生局が実施する検討会等薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会 > 2022年1月20日(令和4年1月20日)

-ビジネス全般

© 2022 Real-World Data/Evidence website