ビジネス全般

当面の規制改革「医療・介護・感染症対策」

4.医療・介護・感染症対策

ア 質の確保された抗原定性検査キットの利用環境の整備

【a,b,e:令和3年内に検討開始、結論を得次第速やかに措置、c:令和3年内を目処に検討開始、結論を得次第速やかに措置、d:令和3年度内に措置】

経済との両立、感染拡大の防止を図る観点から、質の確保された抗原定性検査キットの利用環境の整備を進める。具体的には以下の措置を講ずる。

  1. 「研究用」などと称する「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(昭和35 年法律第145 号。以下「薬機法」という。)未承認の抗原定性検査キットが薬局、ドラッグストア、ネット通販サイトなどで広く流通しているが、偽陰性者による感染拡大、偽陽性による医療現場の混乱を防止するため、薬局、ドラッグストア等に対して、販売自粛を求めることを含め対応を早急に検討する。
  2. ワクチン・検査パッケージに登録した飲食店やイベント事業者について、抗原定性検査キットを医薬品卸事業者からネット販売を通じて入手できることを明確化し、その旨を周知する。職場についても同様の対応を検討する。あわせて、同パッケージに登録していない飲食店やイベント事業者についても一定の要件の下、同様の取扱を行う方向で検討する。
  3. 新型コロナウイルス感染症への緊急対応として、抗原定性検査キットのOTC(Over The Counter:医師による処方箋を必要とせずに購入できる医薬品)化を検討する。
  4. 「新型コロナウイルス感染症流行下における薬局での医療用抗原検査キットの取扱いについて」(令和3年9月27 日厚生労働省事務連絡)に関し、無症状者が(確定診断の目的ではなく)セルフチェックの目的で抗原定性検査キットを検査の特性等を理解した上で、利用することは差し支えないことを明確化し、周知する。
  5. 薬局から抗原定性検査キットを購入する者に対する書面への署名の徴求について廃止を含め検討する。

イ 医療機器等の広告規制の見直し

【a:早期に検討開始、令和4年年初措置、b前段:令和3年度検討開始、令和4年度結論・措置、b後段:令和3年度検討開始、令和4年度結論】

  1. 新型コロナウイルス感染症への対応の観点から、薬機法に基づく承認を受けたパルスオキシメータについて、令和4年年初を目途に販売店やインターネット等における広告を可能とするよう検討する。
  2. 医家向け医療機器の広告規制の在り方について、単なる性能等の情報提供にとどまらない、適正・安全に使用するための注意事項等も含めた、一般人が機器の選択を行うために必要な情報提供の在り方について、一般人の使用による危害のおそれが小さい機器に関する広告の規制の必要性の有無や程度を含め、検討を行う。
    また、新型コロナウイルスに係る抗原定性検査キットのように、質の確保されていない製品が広く流通している実態も踏まえ、公衆衛生上悪影響を生じるおそれがある製品等について、その使用により国民が不利益を被ることのないよう、法令面を含め、必要な対応を検討する。

ウ オンライン診療・服薬指導の促進等

【a,c,d:令和3年度措置、b:令和3年度検討開始、早期に結論、e:令和3年度検討・結論、f:令和4年度措置】

オンライン診療・服薬指導の特例措置の恒久化等を通じ、受診から薬剤の受領までの一連の過程をオンラインで完結できるようにすることで、利用者本位・患者本位の医療の実現を図る。診療報酬上の取扱いを含め、オンライン診療・服薬指導の適切な普及・促進を図るための取組を進める。

  1. オンライン診療の適切な実施に関する指針(平成30 年3月(令和元年7月改訂))(以下「オンライン診療指針」という。)を改訂し、信頼性、安全性をベースに、「かかりつけの医師」やそれ以外の医師が初診に対応することができる場合について具体化を行う。改訂に当たっては、以下の事項を適切に盛り込む。
    • オンライン診療は、疾病や患者の状態によっては、対面診療と大差ない診療効果がある場合も存在しうることをオンライン診療指針その他の関連文書(以下「指針等」という。)で明確化すること。また、初診からオンライン診療が可能となることを踏まえ、初診は対面診療が原則であるとの考え方を見直し、その旨を指針等に明記すること。
    • 疾患や患者の状態によっては、オンライン診療のみで診療が完結する場合があることを指針等で明確化すること。
    • 「かかりつけの医師」に当たるかどうかについては、最後の診療からの期間や定期的な受診の有無によって一律に制限されるものではないことを指針等で明確化すること。
    • オンライン診療を行う医療機関・医師と対面診療を行う医療機関・医師は、異なってもよいことを指針等で明確化すること。
    • 医師がオンライン診療を実施するに当たり求められる診療計画について、診療録への記載とは別に、作成することは必須ではなく、診療録に必要事項が記載されていれば足りるものであり、また、患者に対しては、所要の情報の口頭による提供で足りることを指針等で明確化すること。
    • 医療機関の情報セキュリティについては、オンライン診療の場合に対面診療に比べ厳格な情報セキュリティを求めることは合理性に欠けることを踏まえ、早期にオンライン診療指針の見直しに向けた検討を行うこと。具体的には次の事項については少なくとも見直しを検討すること。
      • 情報通信及び患者の医療情報の保管について十分な情報セキュリティ対策が講じられていることを、医師が確認しなければならないこととされていること。
      • 個人情報及びプライバシーの適切な保護の範囲
      • PHR(Personal Health Record)を診察に活用する場合に、PHRの安全管理に関する事項について医師がPHRを管理する事業者に確認することとされていること。
      • 汎用サービスが端末内の他のデータと連結しない設定とすることとされていること。
      • チャット機能やダウンロード機能は原則使用しないこととされていること。
      • オンライン診療システム事業者がシステム全般のセキュリティリスクに対して責任を負うこととされていること。
    • 患者の本人確認の方法について、顔写真付きの身分証明書を有しない場合に2種類以上の身分証明書を用いることとすることは対面診療に比べ厳格であることを踏まえ、早期にオンライン診療指針の見直しに向けた検討を行う必要があること。
    • 診療前相談を効果的にかつ効率的に行うため、実際の診療前相談に先立って、医師の判断で、事前にメール、チャットその他の方法により患者から情報を収集することは可能であることを指針等で明確化すること。
  2. 高齢者の医療の確保の観点から、通所介護事業所内におけるオンライン診療に関する課題を整理する。
  3. ADHD(Attention deficit hyperactivity disorder:注意欠陥多動性障害)治療薬に関する民間組織(厚生労働省の薬事承認条件に基づき設置)の事実上の規制により、現行のオンライン診療指針に準拠したオンライン診療であっても必要な薬剤を入手できない現状に関し早急な是正を求める意見があることについて、当該民間組織に対して情報提供を行うとともに、現在改訂が進められているオンライン診療指針との整合性も踏まえた運用となるよう検討を促す。
  4. 今年度内に、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則」(昭和36 年厚生省令第1号)及び関連通知の改正により、オンライン服薬指導についての新型コロナウイルス感染症を受けた特例措置(「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」(令和2年4月10 日厚生労働省事務連絡))の恒久化を実現する。具体的には、現在、原則は対面による服薬指導となっているが、患者の求めに応じて、オンライン服薬指導の実施を困難とする事情の有無に関する薬剤師の判断と責任に基づき、対面・オンラインの手段のいずれによっても行うことができることとする。また、処方箋については、医療機関から薬局へのFAX等による処方箋情報の送付及び原本の郵送が徹底されることを前提に、薬局に原本を持参することが不要であることを明確化する。さらに、服薬指導計画と題する書面の作成は求めず、服薬に関する必要最低限の情報等の記載でも差し支えないこととする。加えて、薬局開設者が薬剤師に対しオンライン服薬指導に特有の知識等を身に付けさせるための研修材料等を充実させることとし、オンライン服薬指導を行うに当たって研修の受講は義務付けない。
  5. 薬剤師の働き方改革等の観点を含め、在宅(薬剤師の自宅等)での服薬指導を早期に可能とする方向で検討する。検討に当たっては、対面及びオンラインでの薬局内における服薬指導の実態を踏まえ、患者の個人情報保護の方法や薬剤がない場合に服薬指導をどのように行うことが適切かなどの課題について、議論を進める。
  6. 医療用医薬品においてオンライン服薬指導が可能とされていることを踏まえ、要指導医薬品についてオンライン服薬指導の実施に向けた課題を整理する。

エ 電子処方箋の普及及び医療分野における資格確認・本人認証手段の見直し

【a:目標設定については令和3年度内に措置、以降継続的に措置、b:令和3年度内に検討・結論、c:早期に検討を開始し、令和5年1月までに措置、d:令和3年度検討開始、早期に結論】

  1. 令和5年1月の電子処方箋システムの稼働をにらみ、紙処方箋から電子処方箋への迅速かつ全面的な転換を実現するため、電子処方箋システムの医療機関・薬局への導入及び電子処方箋システムの稼働に合わせ整備予定の処方・調剤情報のシステムへの登録数に関する年度ごと(令和5年度当初から毎年度)の数値目標を設定し、毎年度更新する。また、併せて毎年度の電子処方箋発行数を参考指標として公表する。
  2. 電子処方箋の発行に必要な資格確認・本人認証の手段として、HPKI(Healthcare Public Key Infrastructure:保健医療福祉分野の公開基盤)以外にどのような方法があり得るか、医療機関による本人確認の活用やクラウド電子署名など幅広く、現場のニーズを踏まえて検討し、年度内に結論を得る。
    なお、検討に当たっては、現行の紙処方箋の実務においてその都度明示的な医師の資格確認が行われていない実情を踏まえつつ、紙に比べ電子処方箋が実務的に使い勝手が良いものとなるよう、医療機関・電子署名サービス提供事業者による医師の資格確認に際して、医師登録原簿を都度照会する必要はないこととし、円滑な運用ができることとする。
  3. 上記結論を踏まえ、社会保険診療報酬支払基金が令和5年1月から運用を開始する電子処方箋システムについて、HPKI以外の資格確認・本人認証の方法に運用開始時から対応できるよう検討する。
  4. 電子処方箋以外の医療現場での書類について、デジタル化によって、医療従事者の負担軽減等を実現する観点から、電子署名の要否などについて整理を行う。

オ 社会保険診療報酬支払基金等における審査・支払業務の円滑化

【a:令和3年度検討開始、令和4年度以降に措置、b:令和3年度以降継続的に措置、c:令和4年度末目途措置、d:令和4年度上期措置、e:令和3年度検討開始、令和4年度上期結論】

  1. 社会保険診療報酬支払基金の審査支払システムを最大限活用するため、現時点でコンピュータチェックにより完結しないこととなっている、AIによる振分けの対象とならない目視対象のレセプト(入院レセプト等)について、AIによる振り分けの適用に向けた具体的な検討を開始し、適用可能な部分について適用する。
  2. 自動的なレポーティング機能を有効に活用するため、審査結果の差異の検証が完了しているか否かにかかわらず差異の分析が可能となるよう、差異のデータは、順次、一定数を定期的に公表する。
  3. より効果的・効率的な審査支払システムによる審査等のためには、紙レセプトはもとより、電子媒体による請求が行われている場合も含め、オンライン請求への移行を進める必要があることから、オンライン請求を行っていない医療機関等の実態調査を行うとともに、その結果も踏まえ、将来的にオンライン請求の割合を100%に近づけていくための具体的なロードマップを作成する。
  4. 令和3年3月に取りまとめられた「審査支払機能の在り方に関する検討会」の報告書において令和4年度中に実施予定とされている、再請求等のオンライン化を確実に実施するため、具体的なオンライン化の時期を決定する。
  5. 柔道整復療養費について、公的な関与の下に請求・審査・支払いが行われる仕組みを検討するとともに、併せてオンライン請求の導入について検討を行う。

カ プログラム医療機器(SaMD)に関する承認審査等の見直し

【a:令和4年度措置、b:令和4年度結論、c:令和3年度検討開始、令和4年度措置、その後継続的に措置、d:令和3年度検討開始、早期に結論】

  1. 画像診断用途のSaMD(Software as a Medical Device:プログラム医療機器)については、当該SaMDが実使用される臨床現場で現に行われている診断技術の水準を踏まえ、それらとの比較における有用性が審査上重要であることを明確にする。
  2. SaMDの承認後の追加学習を通じた有効性向上のためのアップデートなど一定範囲のアップデートについて、SaMDの上市後の機能向上が欧米諸国と同程度に確保され、臨床現場に恩恵をもたらすことを目指し、国際整合を踏まえつつ、アップデート後の有効性の状況をPMDA(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency:独立行政法人医薬品医療機器総合機構)が予め開発事業者に確認できることなど一定の条件の下で、PMDAによる審査省略を含め審査の簡略化を検討する。
  3. 厚生労働省は、類型ごと、対象疾患ごとに承認実績が存在するSaMDについて、早期に登録認証機関による認証に移行するよう、産業界の協力も得つつ、認証基準の策定及び改正を主体的に行う。あわせて、PMDAによる承認審査について、開発事業者の予見性を高めるために、あらかじめ審査のポイントに関する情報(有効性・安全性を評価するための試験条件や評価のポイント等)を整理・公表する。
  4. 厚生労働省は、SaMDの上市が欧米諸国と同程度以上に円滑に進められるようPMDAの審査体制の強化を含め必要な取組を検討するために、国内のSaMD認証状況(件数や所要期間等)や海外のSaMD審査の実態把握に係る必要な調査を行う。

キ プログラム医療機器の開発に関する医療機器製造業規制等の見直し

【a:令和3年度措置、b:令和3年度検討開始、令和4年度結論】

  1. SaMDの設計のみを行う製造事業者について、設計に関する業務の管理が適切に行われる体制を確保している限りにおいて、居宅など事業所以外での勤務を含め、責任技術者が登録を受けた所在地で勤務する必要はないことを明確化し、周知する。
  2. 現行の医療機器等総括製造販売責任者の資格要件について、諸外国の状況も含めた実態の把握を行い、SaMDの適切な製造管理及び品質管理並びに製造販売後安全管理を行うための課題を明らかにした上で、資格要件として定められている学歴に該当しない場合の対応として、オンラインでの研修等を含めて検討する。

ク 治験の円滑化

【a:令和4年度措置、b:令和4年度検討・結論、c:令和4年度上期措置、d:令和3年度検討開始、令和4年春頃目途措置】

  1. 治験実施医療機関の医師等が、被験者に対して、治験に関する必要な説明を行い、同意の取得を非対面・遠隔で実施するための適切な方法やデータの信頼性確保等に関するガイダンスを策定する。策定に当たっては、国内外におけるオンライン技術を用いた治験の実施方法や各国のルール等に関する調査を踏まえたものとする。
  2. 治験依頼者から被験者への治験薬の直接配送に関して、海外における取扱いの状況等の調査を実施の上、国際整合を踏まえつつ、実施の可否を検討する。
  3. DCT(Decentralized Clinical Trials:分散化臨床試験)において必要となる被験者宅への訪問看護師を円滑に確保することを可能とするため、訪問看護ステーションの活用のほか、治験施設支援機関(SMO)に所属する看護師の活用を含め、治験実施医療機関に所属する看護師以外の看護師をどのように活用しうるかを整理し、必要な措置を講ずる。
  4. DCTを含む治験の開始等に際して必要となるPMDAへの治験届出について、令和4年度に予定されているオンライン化に先立ち、メールによる提出をした場合の事後的な紙・電子媒体の提出を不要とすることについて検討し、必要な措置を講ずる。

ケ 新型コロナウイルス感染症の検査・診療体制の整備の推進

【a の前段:措置済み、a の後段,b:令和3年度早期に措置】

  1. 新型コロナウイルス感染症の検査・診療体制を確保するため、医療機関が、学校や公民館等の空きスペースを活用して実施する巡回診療に関しては、「定期的」及び「継続」の要件について、柔軟に取り扱って差し支えない旨を明確化することとする。また、医療機関が所在する都道府県以外の都道府県においても巡回診療を実施する場合に、新たに診療所の開設手続を行うことなく巡回診療が実施できることとする。
  2. 新型コロナウイルス感染症の検査体制を確保するため、車両等を用いた移動式の衛生検査所であっても、衛生検査所として登録できることを明確化する。
    また、複数の地方公共団体において検査を実施する場合に、一つの地方公共団体において手続を行うことで足りることとする。

参照

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