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1 はじめに
近年、科学技術の発展により、様々な新しいプログラムが開発され、利用されるようになってきた。そのような新しい製品の中には、従来の医療機器と同様に、疾病の診断、治療又は予防を目的としたものも現れてきたことから、平成 25 年の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和 35 年法律第 145 号。以下「医薬品医療機器等法」という。)の改正により、単体プログラムについても医薬品医療機器等法の規制対象としている。
医薬品医療機器等法に基づき規制される医療機器プログラム(医療機器のうちプログラムであるものをいう。以下同じ。)は、医療機器としての目的性を有しており、かつ、意図したとおりに機能しない場合に患者(又は使用者)の生命及び健康に影響を与えるおそれがあるプログラム(ソフトウェア機能)(人の生命及び健康に影響を与えるおそれがほとんどないもの(一般医療機器に相当するもの)を除く。)であり、その該当性に関する基本的な考え方等は、「プログラムの医療機器への該当性に関する基本的な考え方について」(平成26 年11 月 14 日付け薬食監麻発 1114 第5号厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課長通知)において示してきたところである。
本ガイドラインは、プログラムの開発者に対して、医薬品医療機器等法における規制の基本的要素と判断の参考となる情報を提供することで、医療機器プログラム開発に係る事業の予見可能性を高めることを目的とするものである。
なお、本ガイドラインは、発出時点での規制及び相談事例等に基づいて作成されたものであり、随時更新される可能性があることに留意する必要がある。
2 基本的考え方
(1)医療機器プログラムの範囲
医薬品医療機器等法第2条第4項において、医療機器は「人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であつて、政令で定めるもの」と定義されている。
また、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行令(昭和 36 年政令第 11 号)別表第一において、疾病診断用プログラム、疾病治療用プログラム及び疾病予防用プログラム(プログラムを記録した記録媒体も同様)が医療機器として定められている。
一方、各プログラムの定義において、「副作用又は機能の障害が生じた場合においても、人の生命及び健康に影響を与えるおそれがほとんどないものを除く」旨、併せて規定されており、その機能等が一般医療機器(クラスⅠ医療機器)に該当するものについては、医療機器の範囲から除かれ、医薬品医療機器等法に基づく規制を受けない取扱い1となっている。なお、医療機器プログラムには、電気通信回線を通じて提供されるものと、記録媒体により提供されるものがある。
(2)医療機器プログラムの基本的考え方
医薬品医療機器等法に基づき規制される医療機器プログラムは、疾病の診断、治療又は予防に寄与するなど、医療機器の定義に該当する使用目的を有しており、それをインストール等2することによってデスクトップパソコン等の汎用コンピュータ又はスマートフォン等の携帯情報端末(以下「汎用コンピュータ等」という。)に医療機器としての機能を与えるもの、あるいは既存の医療機器にインストール等することで医療機器たる更なる機能を付与するものである。したがって、医療機器プログラムが意図したとおりに機能しない場合(適切な情報提供がなされない場合や不適切な広告に基づいて使用者が誤った理解に基づき使用した場合等を含む。)には、患者(又は使用者)の生命及び健康に影響を与えるおそれがあり、有体物である医療機器と同様の潜在的リスクを公衆衛生に及ぼす可能性がある。
なお、汎用コンピュータ等を利用して医療機器を操作するプログラムは、原則、操作対象の医療機器に含めたものとして取り扱われる必要がある3,4。
医療機器プログラムを含むプログラムは、汎用コンピュータ等及び各種の外部接続機器等の多様化、高度化等とも相まって、様々な仕様、用途、目的のものが日々開発されている。そのため、本ガイドラインで対象とするプログラムの考え方や規制範囲等については、これら新たな仕様や使用目的等のプログラムが開発されることによって変更が生じうることについて留意する必要がある。
(3)本ガイドラインの対象範囲
本ガイドラインは、プログラム単体として流通するプログラムの医療機器該当性を対象としている。有体物と一体として流通するプログラム、医療機器の付属品であるプログラムは、本体部分も含めて、有体物として医療機器該当性を判断することとなり、その該当性判断は本ガイドラインの対象範囲に含まれない。
3 該当性判断
特定のプログラムが、医薬品医療機器等法の医療機器に該当するか否かは、製造販売業者等による当該製品の表示、説明資料、広告等に基づき、当該プログラムの使用目的及びリスクの程度が医療機器の定義に該当するかにより判断される。使用目的が変われば、同じ機能を有するプログラムであっても医療機器該当性の判断が変わる可能性があるため、事業者においてプログラムの使用目的は十分に検討される必要がある。
複数の機能を有するプログラムの医療機器該当性の判断に当たっては、少なくとも1つの機能が医療機器プログラムの定義を満たす場合、全体5として医療機器としての流通規制を受けることになる。この場合、医療機器ではない機能が医療機器としての承認又は認証範囲に含まれるような誤認を利用者に与えないように表示、広告等を行うなど、医療機器の定義を満たす機能と医療機器ではない機能を適切に区別する必要があることに留意する必要がある。
汎用コンピュータ等の Web カメラ等の内部又は外部センサ(以下「汎用センサ等」という。)と連動して、医療機器としての機能を発揮するプログラムは、汎用センサ等を含めた一体の製品として見たときに、医療機器の定義を満たすか否かにより判断される。
4 医療機器プログラムに該当しない事例
以下を使用目的とする単一のプログラムは、医療機器の定義を満たさないため、医薬品医療機器等法の規制対象とはならない。
(1)患者説明を目的とするプログラム
①医療関係者が患者や家族に治療方法等を理解してもらうための患者説明用プログラム
(2)院内業務支援、メンテナンスを目的とするプログラム
①医療関係者が患者の健康記録等を閲覧等するプログラム
過去に実施した患者への処置、治療内容、健康情報等を記録、閲覧又は転送するもの
②診療予約や受付、会計業務等医療機関における一般事務作業の負担軽減等を目的とした院内業務支援プログラム
③医療機関に医療機器の保守点検や消耗品の交換の時期等を伝達するメンテナンス用プログラム
(3)使用者(患者や健康な人)が1 自らの医療・健康情報を閲覧等することを目的とするプログラム
①個人の健康記録を保存、管理、表示するプログラム
医療機器等から取得したデータ6(血糖値、血圧、心拍数、体重等)を使用者が記録(収集及びログ作成)し、そのデータを医療関係者、介助者、家族等と共有したり、オンラインのデータベースに登録、記録したりすることを可能にするもの(経時的表示や統計処理をした数値の表示を含む。)
②スポーツのトレーニング管理等の医療・健康以外を目的とするプログラム
使用目的が競技力の向上、体力の向上等を目的として個人の適切な運動強度の設定や運動量の管理等のために用いられ、疾病の診断や病態の把握、疾病の兆候の検出を目的としていないもの(診断等に用いることが可能な情報を用いる場合を含む。)
(4)生命及び健康に影響を与えるリスクが低いと考えられるプログラム
①有体物の一般医療機器(クラスⅠ)と同等の処理を行うプログラム
プログラムに不具合が生じることなどにより副作用又は機能の障害が生じた場合においても、人の生命及び健康に影響を与えるおそれがほとんどないもの
留意点として、複数の機能を有するプログラムの場合は、機能ごとに分類して確認を行い、いずれの機能も医療機器プログラムの定義を満たさない場合は医薬品医療機器法の規制対象外となる。
医薬品医療機器等法の規制対象とならないプログラムの例については、別途事例集に掲載しているが、これらの例示は全てのプログラムを網羅しているわけではなく、今後、事例が追加される場合があることに留意する必要がある。
なお、治験の対象とされるプログラム(被験機器たるプログラム)については、医療機器の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成 17 年厚生労働省令第 36 号)等に基づき適切に管理・提供すること。また、臨床研究等において有効性・安全性評価の対象となるプログラムについては、医療機器の定義に当てはまるものであっても、医薬品医療機器等法が適用されない場合がある(「7臨床研究等における取扱いについて」参照)。
5 該当性判断の手順
(1)事前準備(使用目的、処理方法などの明確化・整理)
プログラムの医療機器該当性の判断に当たっては、以下を参考に、開発予定又は開発中のプログラム(以下「開発プログラム」という。)において事業者(開発者)が想定している1 使用者、使用目的、処理方法などを確認、整理、精査等すること。
【判断に必要な項目(明確にすべき項目)】
- プログラムの構成、提供方法
- プログラムは単体で流通(電気通信回線を通じて提供、記録媒体により提供)するか
- プログラムは有体物の一部(構成品、付属品)か
- 併用する機器、プログラムの有無
- プログラムの使用者
- 医療関係者の管理下ではない利用者(患者・健康な人・患者家族等)
- 医療関係者の管理下の利用者(患者・健康な人・患者家族等)
- 医療関係者
- プログラムの使用目的又は効果
- 健康情報の管理
- 運動管理
- 医学的判断に使用しない情報提供
- 院内業務支援、メンテナンス
- 疾病の診断・治療・予防
- 治療方針、治療計画等の策定又は支援
- 他の医療機器の制御
- プログラムが行う処理方法
- データの表示、保管、転送
- 診断以外を目的としたデータの加工・処理
- (入力情報を基に)疾病候補、罹患リスクの表示
- (入力情報を基に)推奨治療方法を提示
- 処理のアルゴリズム
- 診断・治療ガイドライン等の公知7の情報に従った処理を行うもの
- 独自のアルゴリズムで処理を行うもの
- 一般人が容易に検算できる四則演算程度の計算を行うもの
- 同一の機能を有する医療機器の確認
(2)使用目的等の確認と一般的名称の検索
開発プログラムについて、その仕様(想定される使用者、入力情報、出力情報等)、使用目的(治療支援1 、診断支援等)等に応じ、そのクラス分類や定義から見て適切と思われる一般的名称を、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第二条第五項から第七項までの規定により厚生労働大臣が指定する高度管理医療機器、管理医療機器及び一般医療機器(告示)及び医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第二条第八項の規定により厚生労働大臣が指定する特定保守管理医療機器(告示)の施行について」(平成 16 年 7 月 20 日付け薬食発第 0720022 号厚生労働省医薬食品局長通知。以下「一般的名称通知」という。)から検索すること。なお、類別がプログラムであるもの(一般的名称に「○○プログラム」と掲載されているもの)については、185 種類(令和4年8月 31 日現在)存在する。
開発プログラムについて、相当するプログラム名称が一般的名称欄に存在する場合は、当該開発プログラムは、原則として、相当する一般的名称の医療機器に該当する。
また、開発プログラムの使用目的が、有体物たる一般医療機器の一般的名称定義欄に該当するプログラムである場合、当該プログラムは医療機器としての規制対象とはならない。
(3)該当性判断
(2)により、開発プログラムの一般的名称及びクラス分類について相当するものが存在しない、又は、わからない場合は、別紙1「医療機器該当性に係るフローチャート」に従い、医療機器該当性について判定する。
個々の具体的な事例における医薬品医療機器等法の適用につき判然としない場合には、監視指導・麻薬対策課において相談・助言等を行っていることから、これを活用すること8。
【留意事項】
- 医療機器の付属品として用いられるプログラムは、本体部分も含めて、有体物として医療機器該当性を判断すること。
- 複数の機能を有するプログラムの場合、機能ごとに医療機器該当性を確認することが必要であり、1つ以上の機能が医療機器に該当する場合、プログラム全体が医療機器として流通規制の対象となる。
- プログラムの利用者が事業者(開発者)の想定外の目的で使用しないよう、事業者は、使用対象者や適切な使用目的について、十分な周知啓発を行うことが重要である。周知啓発の方法(自己学習、オンライントレーニング、対面研修等)はプログラムのリスクに応じて決定すること。
6 人の生命及び健康に影響を与えるリスクの程度の考え方
医療機器プログラムについては、機能の障害等が生じた場合でも人の生命及び健康に影響を与えるおそれがほとんどないもの(一般医療機器(クラスⅠ)に相当するもの)は、医療機器の範囲から除外されているため、該当性の判断に当たっては、この点を勘案する必要がある。
本邦において、医療機器は患者へのリスクの高さに応じてクラス I からクラス IV に分類される。クラス分類の判定は GHTF クラス分類ルールに則って行われる。医療機器プログラムのクラス分類についても、有体物にインストールされて使用可能な状態としたものを想定した上で、プログラム部分が製品の有効性・安全性に与える影響を考慮して、原則、同様の考え方で判定する。判定に当たっては「高度管理医療機器、管理医療機器及び一般医療機器に係るクラス分類ルールの改正について」(平成 25 年5月 10 日付け薬食発 0510 第8号厚生労働省医薬食品局長通知)を参考にすること。なお、医療機器プログラムについては、原則として能動型機器に関するクラス分類ルールを適用する9。
該当性の判断にあたり、GHTF クラス分類ルールにより判断し難い場合は、次の2点を考慮して判断を行う10。
(1)医療機器プログラムにより得られた結果の重要性に鑑みて疾病の治療、診断等にどの程度寄与するのか。
(2)医療機器プログラムの機能の障害等が生じた場合において人の生命及び健康に影響を与えるおそれ(不具合があった場合のリスク)を含めた総合的なリスクの蓋然性がどの程度あるか。
また、認知行動療法等に基づき疾病の治療等を行うプログラムについては、上記(1)(2)を考慮するに当たり、以下の点を踏まえること。
- ① 特定の疾病と診断された患者を対象としたものかどうか。
- ② 医師の責任で実施すべき治療等の行為の一部又は全部を代替するものかどうか。
- ③ 個々の患者の情報を分析し、その患者に適した助言等を提示するものかどうか。
- ④ 独自のアルゴリズムの有無。
- ⑤ 不具合があった場合に患者の健康に及ぼす影響等があるかどうか。入力情報を基に疾病候補、疾病リスクを表示するプログラムについても、上記(1)(2)を考慮するに当たり、上記の点を踏まえること。(参考:別紙2のフローチャート(疾病リスクを表示するもの))
疾病の早期発見・早期診断につなげることなどを目的に、個人を特定して、具体的な疾病名を表示し、当該個人について当該疾病の罹患の有無、罹患している可能性又は将来罹患する可能性を表示するプログラムは、診断に用いられるものとして該当性について判断を行う。
7 臨床研究等における取扱いについて
医師又は歯科医師が主体的に実施する妥当な臨床研究において用いられる医療機器の提供については、医薬品医療機器等法が適用されない場合があるので、その取扱いについては「臨床研究において使用される未承認の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の提供等に係る医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律の適用について」(平成 30 年 4 月 6 日付け薬生発 0406 第 3 号厚生労働省医薬・生活衛生局長通知)を参照されたい。
なお、個々の具体的な事例における医薬品医療機器等法の適用につき判然としない場合には、監視指導・麻薬対策課において相談・助言等を行っていることから、これを活用すること。
8 医療機器に該当しないプログラムの標ぼうの留意事項
医療機器ではないものについて、医療機器と誤認させるような製品が流通することは、保健衛生上の観点から好ましくない。医療機器に該当しないことを確認したプログラムについては、利用者による誤解を防ぐために、「当該プログラムは、疾病の診断、治療、予防を目的としていない」旨の記載、表示を行うことが望ましい。
① 有体物として一般医療機器が存在する医療機器と同等のプログラムは、当該有体物と同等の性能等を、
② 有体物の一般医療機器が存在しないものについては、個別の判断により、一般医療機器相当の性能等を、
医療機器であるという誤解の生じない範囲でのみ標ぼうすることができるが、併せて医療機器でないことを明記すること。なお、どちらの場合も管理医療機器又は高度管理医療機器に相当する使用目的又は効果、性能等は標ぼうできない11。
【参考通知】
- 「高度管理医療機器、管理医療機器及び一般医療機器に係るクラス分類ルールの改正について」(平成 25年5月 10 日付け薬食発第 0510 第8号厚生労働省医薬食品局長通知))
- 「医療機器プログラムの取扱いにつ1 いて」(平成26 年 11 月 21 日付け薬食機参発 1121 第 33 号・薬食安発 1121 第1号・薬食監麻発 1121 第 29 号厚生労働省大臣官房参事官(医療機器・再生医療等製品審査管理担当)・医薬食品局安全対策課長・医薬食品局監視指導・麻薬対策課長連名通知)
- 「一般的名称のいずれにも該当しない医療機器及び体外診断用医薬品の一般的名称の取扱いについて」(平成 26 年 11 月 25 日付け薬食機参発 1125 第26 号厚生労働省大臣官房参事官(医療機器・再生医療等製品審査管理担当)通知
- 「医療機器プログラムの取扱いに関するQ&Aについて」(平成 26 年 11 月25 日付け厚生労働省大臣官房医療機器・再生医療等製品審査管理担当参事官室・医薬食品局安全対策課・医薬食品局監視指導・麻薬対策課事務連絡)
- 「医療機器プログラムの取扱いに関するQ&Aについて(その2)」(平成27年9月 30 日付け厚生労働省大臣官房医療機器・再生医療等製品審査管理担当参事官室・医薬食品局安全対策課・医薬食品局監視指導・麻薬対策課事務連絡)
- 「臨床研究において使用される未承認の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の提供等に係る医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律の適用について」(平成 30 年4月6日付け薬生発 0406 第3号厚生労働省医薬・生活衛生局長通知)
- 「人工知能(AI)を用いた診断、治療等の支援を行うプログラムの利用と医師法第 17 条 の規定との関係について」(平成 30 年 12 月 19 日付け医政医発 1219 第1号厚生労働省医政局医事課長通知)
- 「「プログラムの医療機器への該当性に関する基本的な考え方について」の一部改正について」(平成 30年 12 月 28 日付け薬生監麻発 1228 第2号厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課長通知)
- 「歯科用プログラムの医療機器該当性について」(平成30 年 12 月 28 日付け薬生機審発 1228 第4号・薬生監麻発 1128 第6号厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長・厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課長連名通知)
- 「疾病の兆候を検出し受診を促す家庭用医療機器の承認申請に当たって留意すべき事項について」(令和2年 10 月 26 日付け薬生機審発 1026 第 1 号薬生安発 1026 第 1 号厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長・厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課長連名通知)
- 「プログラムの医療機器該当性に関するガイドラインについて」(令和3年3月 31 日付け薬生機審発 0331第1号・薬生監麻発 0331 第 15 号厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長・厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課長連名通知)
- 「血中酸素飽和度を測定する機械器具の取扱いについて」(令和4年2月3日付け薬生監麻発 0203 第1号厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課長通知)
別紙1 医療機器該当性に係るフローチャート
フローチャート①
①A 有体物の医療機器の一部(構成品、付属品)か?
次のいずれかに該当する場合はYESに進む。
- 有体物である医療機器の構成品、付属品
- 必ず有体物とともに流通
注)判断したいプログラムがタブレットにインストールされた状態で流通し、プログラム単独では流通しない場合、「プログラムがインストールされたタブレット」という有体物として判断(クラスI相当の場合も医療機器に該当)。
①B 他の医療機器を制御するか?
「医療機器プログラムの取扱いに関するQ&A について」(平成26 年11 月25日付け事務連絡)のQA5のとおり、ハードウェア医療機器等を操作するプログラム操作対象の医療機器を含めたものとして申請する。(「電気刺激治療装置用パラメータ選択プログラム」「植込み能動型機器管理用プログラム」等の一般的名称の定義に規定があるものはプログラムで医療機器該当。)
①C 疾病の診断・治療・予防を意図しているか?
当該プログラムは疾病の診断・治療・予防に使用されることを目的としているか。プログラムの使用目的は、当該プログラムの機能、事業者等による当該製品の表示、説明資料、広告等に基づき、総合的に判断。身体の構造又は機能への影響を意図している場合もYESに進む。
<YESに進む場合の例>
- 疾病の診断(スクリーニング、疾病の兆候の検出、早期発見、重症度判定、トリアージ、個人を特定しての疾病罹患の可能性の提示を含む)、治療(治療計画の提案、リハビリテーション含む)
- 予防
- その他既存の医療機器と同一の使用目的又は効果
①D 同一の処理を行う医療機器があるか?
開発プログラムについて、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第二条第五項から第七項までの規定により厚生労働大臣が指定する高度管理医療機器、管理医療機器及び一般医療機器(告示)及び医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第二条第八項の規定により厚生労働大臣が指定する特定保守管理医療機器(告示)の施行について」(平成16年7月20日付け薬食発第0720022号厚生労働省医薬食品局長通知)から検索し、相当するプログラム名称が一般的名称欄に存在する場合は、当該開発プログラムは、原則として、相当する一般的名称の医療機器に該当する。一般医療機器と同等のプログラムは医療機器には該当しない。
①E GHTFルールに基づき判断すると、クラスⅡ以上に相当か?
GHTFクラス分類については、「高度管理医療機器、管理医療機器及び一般医療機器に係るクラス分類ルールの改正について」(平成25年5月10日付け薬食発0510第8号厚生労働省医薬食品局長通知)参照のこと。原則として、能動型医療機器に関するクラス分類ルール(GHTFルールの9~12)を適用する。
フローチャート②
②A:個人で使用か?医療機関で使用か?
医師等医療関係者の管理とは別に、使用者が自己判断で使用することのみを想定しているプログラムは「個人使用のみ」に該当し、フローチャート③へ進む。「医療関係者が使用」に該当するものはフローチャート④へ進む。
<「個人使用のみ」の例>
- 個人が、医療関係者からの指示を受けることなく、自らの意思で使用するプログラム
- 医療関係者の管理を受けずに介護施設内で使用されるプログラム
<「医療関係者が使用」の例>
- 医療関係者が自ら診療する患者の診療等のために使用するプログラム
- 医師の指示の下で、個人が使用するプログラム
- 使用者の情報を医師等の医療関係者にも共有することを前提としたプログラム
- 医師等の医療関係者の下で、在宅医療で使用することを目的としたプログラム
- 医師等の医療関係者の下で、介護施設等で使用することを目的としたプログラム
フローチャート③
③A:データの表示、保管、転送のみか?
使用者が自らの医療・健康情報(※)含めデータを記録、閲覧、保管するためだけに用いるプログラムはYESに該当し、医療機器非該当。データを時系列に沿って並べ、グラフ化するなど、閲覧のために単純な加工・処理を行うものも含む。
(※)医療機器等から得られた健康状態を示す計測値(体重、血圧、心拍数、血糖値等)、服薬履歴(お薬手帳)、母子手帳、健康診断の結果等
③B:生活環境改善、スポーツのトレーニング管理等の医療・健康以外の目的のみか?
<YESに進む場合の例>
- 生活環境の改善を目的とした家電の制御
- 運動管理(運動の効果効率の向上、運動強度管理)(※)
- 自宅にいる個人の安否確認、生存確認(※)
のみを目的とするもの
(※)リハビリテーション、また、心筋梗塞、熱中症等の疾病(疑い)の兆候の検知、疾病の診断、重症度判定を意図するものは、フローチャート①の「疾病の診断・治療・予防を意図しているか?」に戻り、当該設問をYESに進むこと。
③C:利用者へ情報提供のみを行うものか?
<YESに進む場合の例>
- 医薬品、医療機器の使用方法の説明
- 医学教科書等、既存の書籍の電子化(一般的なテキスト検索機能を備えたものも含む。)
- 統計情報の提供、統計情報と入力値との比較のみ行うもの
- 健康な人の健康維持・増進のために、一般的な食事、運動、体重管理等の生活習慣に関するアドバイスを行うもの(情報提供にあたって、アドバイスの根拠が利用者に検証可能な形で示されることが望ましい)
- 個人を特定せずに、一般的な情報の範囲で医療機関受診について助言する(例:常時「体調に異常を感じる場合は医療機関を受診したほうがよい」と表示。関心のある部位として「目」を入力すると、眼科の受診を勧める。)(診断と誤認を与えるものは除く)
③D:入力情報を基に疾病候補を表示するか?
フローチャートでここまで進んだ上で、本項目がYESになるものは利用者個人に対し、罹患している又は罹患する可能性のある疾病候補の提示に相当し、疾病の診断に用いることを目的にしているものの可能性が高い。
※疾病リスク・重症度判定の表示のみを行う場合は別紙2を参照できる。
③E GHTFルールに基づき判断すると、クラスⅡ以上に相当か?
①E参照
フローチャート④
④A:医療関係者、患者等への医学的判断に使用しない情報提供のみか?
<YESに進む場合の例>
- 医学教育・患者への説明
- 文献やデータベースの検索
- 計算機能(計算の算出過程を利用者が容易に検証可能なもの)のみを目的とするもの。
④B:院内業務支援、メンテナンス用か?
<YESに進む場合の例>
- 電子カルテ、オーダエントリシステム、文書管理
- 重篤度等の患者の情報を入力することにより、病棟の空室調整を行うプログラム。(重篤度等の患者の状態の診断をプログラムが行うものはNOに該当)
- 医療関係者間、医療関係者と患者間のオンライン会話の補助
④C:データの保管、転送のみか?
医療機器のデータを内容は変えずに転送、保存、形式変換、表示し、接続されている医療機器の機能やパラメータの制御又は変更を行わないプログラム
④D:診断、治療、予防以外を目的とした、データの加工・処理か?
<YESに進む場合の例>
- 医療機器の稼働状況の一覧化
- 単なるグラフ化、統計処理
- 医療安全の確保目的のデータの加工・処理
診断に用いることを目的としたデータの加工・表示(画像診断用に画像を表示等)はNOに該当する
④E:診断・治療ガイドライン等に従った処理のみを行うものか?
国内の医学会により標準的な医療と認められているものに限り、YESに該当する
<YESに進む場合の例>
健康診断の問診結果、受診者の生活習慣関連情報、生活習慣改善の指導状況、改善状況に関する情報を入力、保管、管理し、生活習慣の改善のために学会等により予め設定された保健指導のための参考情報を提示するプログラム(医療上の指導との誤認を与えないものに限る。)
④F入力情報を基に疾病候補を表示するか?
フローチャートでここまで進んだ上で、本項目がYESになるものは対象となる個人に対し、罹患している又は罹患する可能性のある疾病候補の提示に相当し、疾病の診断に用いることを目的にしているものの可能性が高い。
※疾病リスク・重症度判定の表示のみを行う場合は別紙2を参照できる。
④G GHTFルールに基づき判断すると、クラスⅡ以上に相当か?
①E参照
別紙2 医療機器該当性に係るフローチャート(疾病リスクを表示するもの)
フローチャート(疾病リスクを表示するもの)(1)
(1)A 入力した情報(症状、検査値等)に対し、現在又は将来の疾病発症リスクや疾病の重症度判定を表示するのみのプログラムか
本フローチャートでは疾病リスク・重症度判定のみを行うプログラムの医療機器該当性判断の整理であり、対象とするプログラムがそれに当てはまる(YES)の場合のみ、フローチャートの下流に進む。他機能を有する場合、該当性の判断が異なる場合があり、フローチャートの適用対象外
他機能例)
- 疾病リスクに対しアドバイスを行い、行動変容を推進
- 疾病リスクに対し疾病の治療・予防のための介入方針を提案
- 疾病リスクに対し最適な受診のタイミングを提案
(1)B-1 信頼性の高い医学薬学上公知の情報に従った情報提供か
1)医学薬学上公知(以下「公知」という。)の情報とは、医学書や国・学会のガイドラインなどに記載のある医学的に信頼性が高く、一般的に日本の医療関係者に認知されているものを指す。なお、公表論文は、単に公表されていることのみをもって、信頼性の高い公知の情報とは言えない。
信頼性の高い公知の情報の例:
- 教科書として使用される医学書
- 医学系学会ガイドライン
2)公知の情報を基にしていても、結果の算出の過程が不明瞭なもの(ブラックボックス化したもの)や、新たな判断指標を設けてその指標に基づいて疾病リスクなどを判定するものなどはNOに該当する。
(例)
- 学会ガイドラインの大部分を基に作成したプログラムではあるが、一部に新たなアルゴリズムや情報を取り入れ、新しい指標を作成し、重症度などの判定を行うプログラム→NO
- 学会ガイドラインで公表されている疾病リスク予測ツール→YES
- 患部の画像から疾病候補、疾病リスクを提示する→NO
3)情報の引用元を明記するなど、使用者が当該プログラムの提供する情報、判断の根拠が公知の情報であることが把握できる必要がある。
(1)B-2 一般的な情報提供(書籍の電子化に相当)か
1)一般的な情報提供とは、一般向けの医学書籍や製薬会社等が提供するパンフレットなどに記載のあるフローチャートやチェック表などを単に電子化したものを指す。
(例)
- チェック表に記載していくと、プログラムが合計点を足し上げて、書籍中に記載のある基準に基づいて重症度を表示するプログラム。→YES
2)書籍などに記載の統計学的な計算式により疾病リスクなどを判定するものは単なる電子化ではないため、一般的な情報提供とは言えず、NOに該当する。また、検算に関数電卓やそれより高度な計算機を要する計算を自動的に行うものは、NOに該当する。
(例)
- 論文中の重回帰式を用いて疾病リスクを算出するプログラム→NO
3)想定しているプログラムの使用者が、元にした書籍等の内容を検証することが難しいと考えられる場合であって、プログラムが自動的な処理を行う場合は、NOに該当する。
4)情報の引用元を明記するなど、使用者が当該プログラムの提供する情報、計算処理の根拠が書籍等に記載の情報であると把握できるようにする必要がある。
フローチャート(疾病リスクを表示するもの)(2)
(2)A 特定の個人の疾病の診断・治療・予防に使用することを目的としている又はその旨を明記しているか
1)以下のようなことを標榜している場合又は開発コンセプトとして意図してる場合はYESに含む。GHTFクラス分類において診断を目的とするプログラムはクラスII以上と分類され、YESの場合、原則として、医療機器に該当する。
(例)
- 疾病の早期発見
- 早期治療
- 疾病のスクリーニング
- 医師の診断補助・追加検査の推奨
(2)B 特定の個人の現時点の疾病リスク・重症度の判定をするものか
1)個々人の情報に対し、対象者の現時点の状態を判定しているものは、現在に該当する。それ以外のものは将来に該当する。
(2)C 特定の患者を対象として疾病リスク・重症度の判定をするものか
1)患者に対して、疾病リスク・重症度判定を行うことは、疾病の診断や治療のために使用することが想定され、またプログラムが間違った判断を行った場合、現在患者が行っている治療に影響を与える可能性があるため、リスクが高い。また、病院などに通院していなくても、身体に何かしらの異変を感じている方を対象とした場合は患者に該当するものとする。
2)健常者に対して、疾病リスクを提示し、一次予防としての健康増進に用いるものは非該当の可能性が高い
(2)D 入力した値と統計データとの比較結果を提示するのみのものか
1)第7回ゲノム医療等実用化推進タスクフォース(TF)資料中に、疾患リスク情報を提供する消費者向け遺伝子検査ビジネスと診断(医行為)との関係について以下の様な記載がある。
「消費者の遺伝子型とともに疾患リスク情報を提供する消費者向け遺伝子検査ビジネスにおいて、
- 遺伝要因だけでなく、環境要因が疾患の発症に大きく関わる「多因子疾患」のみを対象としており、
- 統計データと検査結果とを比較しているにすぎない場合
には、「診断」を行っているとは言えず、医行為には該当しない。
※一方、消費者個人を特定して疾患リスクを予測・判断する行為は「診断」であり医行為に該当する。」
2)プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン(令和3年3月31日)の判断事例中の以下のような事例に当てはまるものはYESに該当する。
- 糖尿病のような多因子疾患の一部の因子について、入力された検査結果データと特定の集団の当該因子のデータを比較し、入力された検査結果に基づき、当該集団において当該因子について類似した検査結果を有する者の集団における当該疾患の発症リスクを提示するプログラム(利用者に診断との誤認を与えないものに限る。)
- 特定の集団のデータに基づき統計処理等により構築したモデルから、入力された検査結果データに基づく糖尿病のような多因子疾患の発症リスクを提示するプログラム(利用者に診断との誤認を与えないものに限る。)
3)医療機器との誤認を防ぐため、統計データと検査結果とを比較しているにすぎないと使用者にわかる記載にする必要がある
(例1)数学的アルゴリズムを使用して皮膚病変部の画像を解析し、病変部のリスク評価結果をユーザーに提供するプログラム。使用者が入力した発疹の写真又は症状に関する情報を解析し、「**病である可能性は*%」などと、個々人の情報を分析し、その個人に適した評価結果や助言等を表示するプログラム
(例2)被験者(健康な人)の認知機能に関する検査結果や被験者の動画から得られた動作に関する情報等を医学上公知ではない独自のアルゴリズムにより解析し、被験者が認知症又は軽度認知障害(MCI)に将来罹患する可能性がどの程度か、発症リスクを提示するプログラム
(例3) 糖尿病について、入力された検査結果データと特定の集団の当該因子のデータを比較し、入力された検査結果に基づき、当該集団において当該因子について類似した検査結果を有する者の集団における当該疾患の発症リスクを提示するプログラム(利用者に診断との誤認を与えないものに限る。)