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オミクロン「BA.1株」とステルスオミクロン「BA.2下部」の違い
オミクロン株「BA.1株」の亜種である「BA.2株」が、Stealth Omicron(ステルスオミクロン)と呼ばれています。
ある種のPCR検査ではBA.2株の検出が難しく、隠れてしまうことが Stealth と呼ばれる所以です。
もう少し詳しく見ていきましょう。
オミクロン株はスパイクタンパク質「del69/70」の一部がなくなっているのが特徴です。
そのため、「del69/70」の欠失をPCR法で検出するSGTF法でオミクロン株を検出していた国がありました。
SGTFとは、S gene target failure の頭文字をとったものです。
Thermo Fisher社TaqPathにおいて採用されているプライマーにおいて、ORF1, N, S遺伝子のPCRでS遺伝子が検出されない(S gene target failure; SGTFと呼ばれる)特徴をもつ。一方で、これまで多くの国で流行の主体となっているデルタ株ではS遺伝子が検出されることから、この特徴を利用し、デルタ株が主流である国においてはオミクロン株の代理マーカーとして、SGTFが利用できる(WHO: Classification of Omicron (B.1.1.529) )。なお、SGTFはアルファ株でもみられ、代理マーカーとして使用された。
SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)について(第3報)2021年12月8日 国立感染症研究所
ところが、「BA.2株」には「del/69/70」があります。ですので、「del69/70」の欠失をPCR法で検出するSGTF法は使えません。
ゆえに、「SGTF法ではオミクロン株として検出されない、隠れてしまう」ことから、ステルスオミクロンと呼ばれるようになりました。
なお、日本でオミクロン株を検出する際には、「L452R」という変異がないことをもって、デルタ株とオミクロン株の違いを見分けていました。
この方法では、BA.1株もBA.2株も同じ「オミクロン株」として検出されます。とはいえ、BA.1株とBA.2株は別物として区別する必要があるとWHOも述べているので、何らかの対応は必要でしょう。
ステルスオミクロンの特徴
ステルスオミクロン(BA.2株)の特徴として、「高い感染力」があげられます。
病原性については、動物実験の情報(pre print)に限られるため、人間についてあれこれ述べるのは早計でしょう。
感染力
オミクロンのBA.1株自体が、高い感染力を特徴としていました。
ところが、ステルスオミクロンと呼ばれるBA.2株は、BA.1株よりも感染力あるいは増殖能力が高いという報告が複数確認できます。
令和4年1月26日 第69回 新型コロナウイルス感染対策アドバイザリーボード
「オミクロンBA.2株の実効再生産数は、オミクロンBA.1株のそれより、18%高い」との報告がなされています。
2022年1月28日付 UK Health Security Agency の Report
BA.1株と比較して、BA.2株では「家庭内接触者に対する secondary attack rate が高い(BA.2: 13.4% vs BA.1: 10.3%)」と報告されています。
なお、ワクチン接種有無で調整されてはおらず、感染性(transmissibility)よりは、ウイルスの全体的な増殖能力を反映している、との注釈があります。
Analysis from routine contact tracing data indicated higher secondary attack rates amongst contacts of BA.2 cases in households (13.4%; 95% CI: 10.7%-16.8%) than those for contacts of other Omicron cases (10.3%; 95% CI: 10.1%-10.4%) in the period 27 December 2021 to 11 January 2022. These secondary attack rates are not adjusted for vaccination status and reflect overall growth advantage rather than transmissibility.
SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation in England Technical briefing 35
Transmission of SARS-CoV-2 Omicron VOC subvariants BA.1 and BA.2: Evidence from Danish Households
BA.1株と比較して、BA.2株では「家庭内接触者に対する secondary attack rate が高い(BA.2: 39% vs BA.1: 29%)」と報告されています。
The secondary attack rate (SAR) was estimated as 29% and 39% in households infected with Omicron BA.1 and BA.2, respectively.
Transmission of SARS-CoV-2 Omicron VOC subvariants BA.1 and BA.2: Evidence from Danish Households
病原性
ハムスターを対象とした、BA.2株に関する研究結果報告があります。
様々な角度からBA.2株について分析されていますが、病原性(pathogenicity)に関して「ハムスターを用いた感染実験では、BA.2がBA.1よりも病原性が高いことが示された。」と報告されています。
Furthermore, infection experiments using hamsters show that BA.2 is more pathogenic than BA.1.
Virological characteristics of SARS-CoV-2 BA.2 variant.
doi: https://doi.org/10.1101/2022.02.14.480335
まとめ
手洗いうがい、ワクチン接種をはじめ、基本的な感染症対策を心がけましょう。