ここ数年、私の周りで「リアルワールドエビデンス」なる言葉を頻繁に耳にするようになってきており、業界内では市民権を得始めたように感じています。
そこで、「ヘルスケア業界に、直接は関わらない方々の耳に届く日も近いかもしれない」「わかりやすくまとまったブログ等があると多少なりとも役に立つのでは」と考え本ウェブサイトを立ち上げました。
既に「ビッグデータ」や「データサイエンス」等は、かなり一般的になってきていますが、「リアルワールドエビデンス」もその一つ、と思っていただければ大体あっています。
これまで、ヘルスケア業界(特に医薬品・医療機器業界)では、RCT (Randomized Controlled Trial) というものがエビデンス創出のゴールデンスタンダードとして実施されていましたが、その対比として出てきたのが RWE (Real World Evidence) です。
データ、エビデンスについて
リアルワールドデータという言葉も比較的よく目にしますね。データやエビデンス、情報といった言葉の定義はこちらもご覧ください。
どう違う?データ・情報・知識・エビデンス
伝統的な Randomized Controlled Trial との違い
伝統的なRCTは、その名の通り、「ランダム化して、比較対照群を設定し、研究目的のために新しくデータを取っていく」という手法です。新しい治療Aが本当に効くかどうかを確かめるためのゴールデンスタンダードとして現在も実施されています。これからも、当面はゴールデンスタンダードであり続けることでしょう。
そのメリットは、下記です。
- 比較対照を置いているので、治療Aを経験した人と、治療Aを経験していない人を比べられる
- 治療Aを経験するかしないかは、ランダム割り付け(くじ引き)されるので、「この患者さんには治療Aが効きそうだから治療Aにしよう(治療Aに対して有利になる)」「この患者さんにはどんな治療をしても効果が得られなさそうだから、対照群にしよう(治療Aに対して有利になる)」というような「偏り」を避けられる
- 研究目的に新しくデータを取っていくので、「治療Aの効果を検証するために必要なデータ」を漏れなく集めるための準備・対策ができる
一方で、新しく出てきたRWEは、ものすごくザックリ言うと「実臨床下(リアルワールド)のデータを用いて、治療Aが実際の医療の現場でどの程度、役に立っているのかを明らかにする」という概念です。
前述のRCTは、治療Aの効果そのもの「のみ」に焦点を当て、その再現性を担保するために、ある意味「実臨床下(リアルワールド)」との乖離が避けられない、という宿命があります。
例えば、小児や高齢者、複数の疾患を持っている方などは、RCTに積極的に参加するのはどうなのか、倫理的にもハードルは高いのではないでしょうか。
そういった場面で出てきたのが RWE です。いままで RCT で積極的な対象にはなっていなかった方々に対しても、実臨床下で集められたデータをもとに検証すれば、今まで分からなかったことが見えてくるのではないか、という期待があります。
ビッグデータとの関連性
なぜ今盛り上がっているのか?については、電子カルテの普及も含め、まさに「ビッグデータ」の流れと同様かなと感じています。
ビッグデータについて臨床試験や臨床研究と絡めながら考察した記事は下記です。
掘り下げて考えてみよう!ビッグデータの3V (Velocity, Volume, Variety)
リアルワールドデータやリアルワールドエビデンスについて、その概要を掴むには、次の書籍が良くまとまっておりお勧めです。