WHOはWorld Health Organizationの略であり、日本語では世界保健機関と呼ばれます。
健康とは何かをWHO憲章の前文で定義しており、義務教育の教科書にもその定義が書かれるくらいに有名です。
Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.
健康とは、身体的、精神的、社会的に完全な良好な状態であり、たんに病気あるいは虚弱でないことではない。
https://www.who.int/about/who-we-are/constitution
WHOというと、世界的な人口統計や各疾患の疫学情報、医療費、健康寿命、などなどの様々な標準的なデータを定期的に打ち出しているという印象があるでしょう。
また、WHOは国際連合の専門機関の1つでもあり、世界全体の健康に関する専門家が集まる組織の1つとみることもできます。
WHOの功績
WHOはその発足は1948年であり、2021年現在に至るまで70年を超える歴史を持っています。
その歴史の中で数多くの実績を残してきているわけですが、その中でも最も有名なのは天然痘の撲滅でしょう。
1958年に天然痘撲滅計画が始まり、WHOによる天然痘撲滅宣言がなされたのは1980年でした。
結果だけ見ると22年を要したという計算ですが、実は1967年に大きな方向転換がなされ、そこから状況は効率的に撲滅計画が進んだのです。
その方向転換とは、「”全人類への種痘” ではなく ”流行地域で集中して種痘”」という、資源の集中でした。
もともとの全人類への種痘という計画そのものが無謀だったのだと、後からは何とでも言うができますが、実際にはどちらがいいのかは難しい問題です。
「流行地域での種痘は焼け石に水なので、まだ流行していない地域への流入を防ぐんだ」という考え方も、それを聞いただけでは正しそうですよね。
結果的に天然痘は1980年に撲滅することができたとされ、WHOの重要な功績の1つとして歴史に刻まれることになりました。
WHOの役割の1つ:ICD
WHOの重要な役割の1つに、世界の健康情報の標準化があります。
その中でも有名なのがICDです。
ICDとはInternational Classification of Diseasesの頭文字をとったもので、日本語では「国際疾病分類」と呼ばれます。
ICDは 2018年6月に、実に30年ぶりに改訂されて第11版が公表されました。今までは第10版が使われており、ICD-10などと呼ばれていました。
最新は第11版であり、ICD-11と呼ばれます。
ICD-11の日本国内への適用のための準備は着々と進められているところですが、どんなところがポイントなのか簡単に列挙してみましょう。
ICD-11のポイント
- 新しいプライマリケアの概念。
- OrphaNetとのパートナー提携により、OrphaNetに登録されている希少疾患の情報を広く取り入れることが可能。
- 機能評価 (Functioning Assessment) に関する補足セクションが新設。
- 患者安全イベントのドキュメント管理を標準化。
- 伝統医学に関する情報収集やカテゴリの枠組みを追加。