ビジネス全般

女性の健康の包括的支援政策研究事業(令和4年度厚生労働科学研究)

目次

1.研究事業の目的・目標

【背景】

これまで、わが国における女性の健康に関する取組は、主に疾病分野ごとに展開されてきている。また、女性の健康に関する研究においても、これまでは妊娠・出産や疾病等に着目して行われてきた。このため、女性の身体はライフステージごとに劇的に変化するという特性を踏まえた取組や、社会的な側面も含めた生涯に渡る包括的な支援は十分に行われていない状態であり、女性の健康施策を総合的にサポートする医療、診療体制も十分に構築されておらず、早急な対応を図る必要がある。

また、平成 26 年4月にとりまとめられた「女性の健康の包括的支援の実現に向けて〈3つの提言〉」においても、「生涯を通じた女性の健康支援の充実強化」について提言がなされるとともに、男女共同参画基本計画においても、女性の健康支援の重要性が指摘されているところである。そして、令和2年7月に閣議決定された「女性活躍加速のための重点方針 2020」Ⅰ-2.にあるように、女性の健康支援に関し、女性の心身の状態が人生の各段階に応じて大きく変化するという特性を踏まえ、女性の健康等に関する調査研究を進め、必要な情報を広く周知・啓発することが求められている。

【事業目標】

女性の健康の包括的支援に係る提言や法案において指摘されている女性の心身の特性に応じた保健医療サービスを、地域や職域において、専門的かつ総合的に提供する体制の整備、人材育成、情報の収集・提供体制の整備、女性の健康支援の評価手法を構築するための基盤を整備する。

【研究のスコープ】

  •  エビデンスに基づいた女性の健康に関する情報を収集・提供するための調査研究
  •  生涯を通じた女性の健康の包括的支援に資する基礎的知見を得るための調査研究
  •  女性の健康に関する知見を広く行き渡らせ、定着化を図るための普及・実装研究

【期待されるアウトプット】

生涯を通じた女性の健康の包括的支援に向けた政策の策定・運用に資するための成果を創出する。

(女性の健康に関わる者に対する学習教材人材育成・研修方法の開発、医療関係者の連携のためのガイドライン、ホームページ等情報発信基盤、女性特有の疾病に対する介入効果に関するエビデンス等)

【期待されるアウトカム】

上記の様な事業成果の導出により、女性の生涯を通じた健康の包括的支援を推進し、さらに、わが国の女性の活躍を促進すると共に健康寿命の延伸につながるものとなる。

2.これまでの研究成果の概要

女性の健康の包括的支援に関する情報発信基盤構築と多診療科医療統合を目指した研究

  • 女性の健康に関する情報発信を目的として立ち上げた女性の健康に関するホームページ「女性の健康推進室ヘルスケアラボ」において、健康状態のセルフチェックページ等を作成するなどしてライフステージごとの健康の悩みについての対応策等について、分かりやすく周知している(平成 30~令和3年度、継続中)
  • 産婦人科だけでなく、内科、小児科、精神科等、女性の健康についての幅広い内容を含む診療ガイドブックを作成し、ebook 化して公開した(平成 30~令和元年度)

多様な世代の女性に対する情報メディアを通じたアプローチの実践と情報発信基盤の構築に向けた研究

  • 多診療科連携に資する診療ガイドブックを eBook 化し、その内容に沿った研修を実施し、eラーニングシステムを構築した(令和元~3年度、継続中)

保健・医療・教育機関・産業等における女性の健康支援のための研究

  • 女性のヘルスケアアドバイザーの育成を目的とした養成プログラムを作成し、テキストブック及び成長段階に応じたのべ6種類のテキストの案を作成した。(令和元~3年度、継続中)
  • プレコンセプションケア促進を目的とした「ヘルスリテラシー」測定のための尺度項目を作成した(令和元~年度)

女性特有の疾病に対する検診等による介入効果の評価研究

  • 子宮内膜症等の女性特有の疾患の経済損失および予防や治療に関する費用対効果を明らかにした(令和元~3年度、継続中)

3.令和4年度に継続課題として優先的に推進するもの

多様な世代の女性に対する情報メディアを通じたアプローチの実践と情報発信基盤の構築に向けた研究

女性特有の疾病や悩みについての、エビデンスに基づいた情報および情報提供体制は限定されており、女性の健康の包括的に支援のための環境整備は十分とはいえない。そのため、社会全体として女性の健康に関する知識を習得、共有できる仕組みを構築していく必要がある。

女性特有の疾病に対する健診等による介入効果の評価研究

女性の健康について情報を得る手段は未だ十分とは言えず、知識が不足しているために、女性特有の疾患に関する症状が治療を必要とする疾患であるという認識が不足しており、妊娠して初めて産婦人科を受診することが多い等の状況がある。治療が可能な状態であっても、病院に行かずに、治療の機会を逃してしまうことで、長期的な体への負の影響を受けてしまう場合がある。そのため、女性特有の疾患を早期に発見することによる効用について検討し、スクリーニングを通じ、女性の QOL 向上に向けた体制構築のエビデンスを得ることが必要である。

4.令和4年度に新規研究課題として優先的に推進するもの

女性の夜勤や不規則勤務と乳がん等悪性腫瘍の発症との関連の検証及び対策の構築に向けた研究

海外の研究によると、夜勤をする女性は、乳がんや皮膚がん等の悪性腫瘍のリスクが上昇するという報告があるが、国内におけるデータは十分ではない。特に、夜勤など不規則な勤務体系の看護職は、女性が大半を占めており、日本における現状を把握する必要があり、また、影響がある場合には対策を検討する必要がある

女性の健康づくりに寄与する社会経済学的要因の分析及び対策に向けた研究

日本人の健康寿命は平成 22~28 年にかけて延伸しており、健康日本21(第二次)における目標である、平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加を達成中である。しかし平均寿命と健康寿命の差は、男性が約9年であるに対し、女性では依然として 12 年を越えており、女性の健康寿命の延伸に寄与する要因を解明し、それに基づいた対策を推進する必要がある。

若年から老年に至るまでの切れ目のない女性の健康支援のための人材育成および研修方法の開発に向けた研究

若年時から老年に至るまでのライフステージに応じた包括的な健康支援において、切れ目のない支援を行うためには、多岐に渡る実施主体が、十分な連携のもと取り組むことが必須である。医療専門職、教育関係者、企業関係者、さらには、地域住民やその他のステークホルダー、そして当事者である女性自身が積極的に活動に参加し、関係者が協同することが重要であるため、これら関係者の知識や能力の向上が必須であるため、その効果的な人材育成・研修方法やそれらに係る体制整備についても検討する必要がある。

新型コロナウイルス感染症流行後の生活の変化を考慮した女性の健康の維持・増進支援に向けた研究

健康の維持・増進の観点から、コロナ後の生活においても、食事や身体活動、睡眠等の生活習慣の改善は重要である。加えて、特に女性においては、コロナ後の新たな健康課題が発生している可能性も報告されつつある。しかし、新型コロナウイルス感染予防のため、従来行われてきた対面での指導等が困難であることや、自治体等では同感染症対策により十分なリソースを割けないことから、新しい生活様式に対応した新しい支援方法を開発し、研修等とあわせて実装可能なかたちで提供することが喫緊の課題である。

5.令和4年度の研究課題(継続及び新規)に期待される研究成果の政策等への活用又は実用化に向けた取組

  • 女性の健康に関するホームページ「女性の健康推進室ヘルスケアラボ」に関して、今後さらにホームページの活用を広めるため、アクセス分析などを行いニーズの高いコンテンツを作成していく。また、女性の健康支援のための診療ガイドブックを作成するとともに、その定着に向けた研修の実施や e ラーニングシステムを構築し、実装する。
  • 女性の健康に影響を与える社会経済要因およびその実態を明らかにし、健康寿命延伸に向けた効果的な対策を検討する。

参照

令和4年度厚生労働科学研究の概要

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